浅利慶太氏の追悼公演として全国を回ってる劇団四季ミュージカル『エビータ』を観に岡山まで行ってきました。
このチケットを取った当初はまだ四国上演が決まっていなかったので、一番近い県としてこの日の公演をチェックしたわけですが、その後四国での上演も決定。ちょっと早まったか(苦笑)。
でも、隣の県でありながらも海を隔てているためなかなか行く機会のない岡山なので、久しぶりに行ってみるのも悪くないなと。香川に比べるとやはり都会だなぁと改めてw。
岡山市民会館からはライトアップされた岡山城が見えて奇麗でした(スマホ画像なので粗くなっちゃったけど)。
神戸公演では浅利さんの小さな祭壇が設けられてましたが、岡山市民会館はロビーが少し狭く置く場所がなかったのでパネルのみの設置に。
客席内は想像していたよりもコンパクトで、おそらく2階席からも近く感じられるんじゃないかなというくらい見やすそうな印象。私は1階席の真ん中より少し前あたりでしたが、いい感じに傾斜もついててとても見やすく快適な観劇ができました。
以下、ネタバレを含んだ感想になります。
2019.10.31ソワレ公演 in 岡山市民会館(岡山県)
主なキャスト
- エビータ:江畑晶慧
- チェ:芝清道
- ペロン:北澤裕輔
- マガルディ:日浦眞矩
- ミストレス:平木萌子
※あらすじと概要については前回の記事参照
全体感想
神戸公演の時からエビータとチェのキャストが変わったので、全体的な印象も少し違うように見えました。前回はヒリヒリするような感覚がありましたが、今回はどっしり構えて見る感じだったかな。やはりベテランの芝さんが入ると安定感がありましたね。
今回は前回よりも全体を落ち着いて見ることができたわけですが(個人的な問題です、ハイww)、『エビータ』はロックな音楽も多いのに最後にずっしりと重い課題を投げかけられる気持ちになる作品だなぁと思いました。
エバは私生児ということで世間の冷たい目にさらされたことがその心に激しい闘争心を生み、自分を見下げた人々への復讐のために生きたって印象が強い。まさに野心によってその短い生涯を燃え尽くしてしまったような…。
アルゼンチンの市民を味方につけるために感動的なスピーチをしたり、貧しい市民へお金をばらまいたりしていくのも、彼女の野心と復讐心ゆえに利用したという側面をこの作品は強く感じさせます。
特に、「共にいて、アルゼンチーナ」と感極まり歌いながらもその直後に「勝った!!」とドヤ顔見せたり、傍にいた軍人に「今に見てろ!」とそれまでのしおらしさが嘘のような激しい一面を見せる場面はゾクっときます。
本当のところ、エバはアルゼンチンの市民たちをどのように思っていたのだろうか…。私個人としては、彼らと自分を重ね合わせてはいたのだろうなと。自分の野心のために利用はしてたけど、アルゼンチン市民に寄せた想いというのも嘘はなかったんじゃないかなと…そう信じたい気持ちにさせられましたね。
それゆえに、ラストシーンはとても印象深いものがあります。
ただ、作品全体としては…歌がちょっとクドイと思えるところも正直あるんですよね(汗)。特にロック以外のところ。
「エリートのゲーム」でペロンが権力闘争に勝ち抜くシーンは、椅子取りゲームの演出でちょっとコミカルな印象はあるのですが、ちょっと、歌が、くどい(苦笑)。
同じ旋律の繰り返し回数が多いというのは前々から感じてたんですが・・・やっぱり今回も「長いよなぁ」って思ってしまった。テンポがあまりよくないんですよ。
それから、ミストレスのソロですが・・・ここも3番まで歌う必要ってあるのかなってずっと思ってる(苦笑)。特に大きな動きもなく、脇でチェが見守ってるくらいしかないのでドラマがほとんどないんですよ。
せめて2番止まりくらいが妥当じゃないかと、ずっと思ってはいるんですよねぇ。まぁ、シングルキャストになってるキャラではあるのですが。
そういえばこの日、チェの「飛躍に向かって」のナンバーの時にダンサーさんの一人がバランスを崩して思い切り尻もちついてしまうハプニングがありました。
見ていてちょっと体の軸が斜めになりすぎてるな…と思った瞬間にステーンと(汗)。でもそのすぐ後に何知れぬ顔で立ち上がって普通に踊り切っていたので、まるで転んだのが演出だったかのように思えたほど。やっぱりプロの舞台役者はすごいなぁと思いました。
全国ツアーも後半に入ってきましたね。最後まで怪我のないようにやり切ってほしいです。
キャスト別感想
江畑晶慧さん(エビータ)
江畑さんを舞台で見るのはとても久しぶり。いつ以来か思い出せないくらい(汗)。以前は少しふっくらした印象がありましたが、今回のエビータ役で見たらものすごいスリムで美人さんになっててちょっと驚きました。
江畑さんは韓国の女優さんですが、日本語がとてもお上手でセリフ調になっても全く違和感を感じさせないところがすごいと思います。今回のエビータも歌の合間に少しセリフ調の言葉が入ったりすることがありますが、とても自然な日本語発声でさすがだなぁとあらためて。
前回は谷原さんでしたが、それに比べると江畑さんはギラギラした野心だけではない、女性らしい柔らかさみたいな部分が節々に感じられたのが印象的でした。歌も深みがあってエバの心の揺れの部分など繊細に表現されていたと思います。
ロックな歌いっぷりはやはりさすが!「ニューアルゼンチーナ」のシーンは特にゾクゾクさせられました。やっぱ江畑さんの伸びのある迫力の歌声、好きだなぁ。
芝清道さん(チェ)
芝さんのチェを観たのは何年ぶりだろうか!10年以上は経っている気がする(汗)。それゆえに、久々に舞台の上の芝チェを見たときにはただただ「懐かしい!」という感情がこみ上げてきました。
以前見たときにはすごく勢いのある印象が強かったのですが、今回時を経て芝チェを見たら・・・少し丸くなって落ち着いたなと。エビータに対して批判や皮肉をぶつけてはいるけれども以前のように圧倒するような感覚はなかった気がします。
でもその代わり、どっしりとした存在感と安定感はさすがだなと。それに、エビータに対して後半に行くにしたがって「彼女への同情や思いやり」に似た感情がにじみ出ていたのも以前は感じられなかったところなのでなんだかすごく新鮮でした。
特に、クライマックスでエバがラジオ放送終了後に倒れそうになったのを支えた場面はとても印象深かったです。妹を見守る兄のような感じだった。
歌の勢いは少し衰えたかなぁとも。でも、ロックなシーンは勢いがあって歌い方も少し自由な感じだったのがよかったです。
北澤裕輔さん(ペロン)
北澤さんのペロンは本当に何を考えているのか心の内側がなかなか読みづらいのが特徴的w。ああいった少し厳しい表情で感情を表に見せようとしない北澤さんはこれまであまり見たことがなかったのでとても新鮮です。
それゆえに「エリートのゲーム」で最後のイスに音楽が鳴り終わる前にフライングで少しオネエっぽく座っちゃう場面は面白さが増しますね。この日も会場けっこう受けてました(笑)。
日浦眞矩さん(マガルディ)
日浦さんのマガルディはどこかチャーミングで憎めない魅力があると思います。登場した時にエバにウィンクしてたのも今回初めて見たけどなんだか可愛かったw。
歌はとても上手いですよね。マガルディのちょっとねちっこいしつこい歌い方も完璧だし。上手なのにチェから「ひどい歌だ」と評されてしまうのも納得って感じで面白いです。
2幕からはアンサンブルで参戦。エバの演説する下で彼女の名前を叫びながらハンカチ振ってる姿を見つけたときはなんかちょっと嬉しかったw。
平木萌子さん(ミストレス)
ミストレスの場面は個人的にはちょっと退屈してしまうところではあるのですが(汗)、平木さんの歌声は透明感があって素敵だなと思います。
後述
岡山公演のカーテンコールもけっこう盛り上がって、最後はスタンディングになってブラボーの声も飛んでました。大都市以外でこうして大型ミュージカルが見れる機会は本当に貴重。劇団四季にはその点はとても感謝してます。
これであと、キャストが前もって分かっていればなぁ・・・(言っても詮無いことだけど 苦笑)。
今回の公演もとてもよかったんだけど、やっぱり、推しの役者さんがいてこそっていうのは正直あるので・・・。残すはあと地元香川公演。その時には何とか戻ってきてほしい・・・(祈)。