ミュージカル『ジキル&ハイド』東京公演 2023.03.16マチネ

東京国際フォーラムCで上演されたミュージカル『ジキル&ハイド』を観に行ってきました。東京遠征最後の3演目となります。

前回公演されたのが2018年でしたから…、なんと5年近くも上演がなかったことになりますね。もっと短いスパンでやっていたような気がしていたのですが、そんなに時間が経ってしまっていたとはちょっとビックリです。

フォーラムCに訪れたのも本当に久しぶりで…このブログを振り返る限り最後に来たのが2013年ってことになってる(その後にも何かで来たような気はするんだけど覚えてない 汗)。

もはや地下にあるこの空間すら懐かしい…というか、忘れていたくらいww。

この劇場そのものは大きいのですがロビー構造が微妙なんですよね。特にお手洗い事情がちょっと(汗)。1階席ゾーンにあるお手洗いの数は座席数の割にかなりの少なさ。そこよりもエスカレーターで下ったところにあるお手洗いのほうが数は多いかもしれません。

今回はけっこうグッズが充実していて3日間の中で一番散財してしまったw。購入したのはパンフ、ポストカード、クリアファイル、そして売り出しが始まったばかりの舞台写真。大阪で購入することも考えたのですが、品切れするかもという事も考えて一気に欲しいものはゲットしてきましたw。

チケット戦線がかなり過酷だった2023年度のジキハイ。新しくキャスティングされたカッキーはぜひとも一度見ておかなければと必死になんとか1枚ゲットしたのがこの日だったわけですが(トークショー狙いっていうのもあったけどw)、1階席の最後列に近い場所からの観劇でオペラグラスは必須でございました。
でも、ライティングが明るくなると後ろの方からも裸眼で役者の表情が見える瞬間もあったので意外と見づらい等のストレスはなかったかも。舞台全体を広く見て把握できるという意味でもよかったです。

なお、先日過去に見たジキハイ感想をこちらのブログに移転させました。鹿賀さんverや初期の石丸さんverの簡単感想など気になる方がいらっしゃいましたら以下のリンクをクリックしてみてみてください。

これまでのジキル&ハイド感想はこちら↓

以下、かなりのネタバレを含んだ感想になります。

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2023.03.16 マチネ公演 in 東京国際フォーラムC(東京・有楽町)

※概要とあらすじについては2018年公演感想の記事を参照してください。

上演時間は約2時間55分になります。

内訳は、1幕が1時間25分(85分)、休憩25分2幕が1時間5分(65分)です。

主なキャスト

  • ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人
  • ルーシー・ハリス:笹本玲奈
  • エマ・カルー:Dream Ami
  • ジョン・アターソン:上川一哉
  • サイモン・ストライド:畠中洋
  • 執事プール:佐藤誓
  • ダンヴァース・カルー卿:栗原英雄

宮川浩川口竜也伊藤俊彦松之木天辺塩田朋子

麻田キョウヤ、岡施孜、上條駿、川島大典彩橋みゆ、真記子、町屋美咲、松永トモカ、三木麻衣子、玲実くれあ

スウィング:川口大地舩山智香子

写真付きのキャストボードがめっちゃカッコイイ!たしか『キングアーサー』の時もこんな感じだったな。名前だけのボードよりもワクワク感が募るし顔と名前が一致しやすいので、こういう試みはこれからも色んな演目でやってほしいです。

全体感想

何度見ても本当に心が湧き立つゾクゾクするミュージカルだなと改めて感じた今回のジキハイ。やっぱりフランク・ワイルドホーンさんの音楽が最高すぎるんですよね!あの重厚でドラマチックな楽曲の数々は見る者の心に物語に込められた想いを雄弁に語りかけてくる。

アンサンブルが中心になって歌う1幕の♪嘘の仮面♪と2幕の♪事件、事件♪は特に大好きなナンバー。民衆たちの剥き出しの感情がぐわーーっと迫ってくる感じがもう堪りません!皆さんの力強い歌声にも圧倒されるし、歌って踊る指揮者・シオタクターこと塩田さんの躍動感あふれる音楽の演出も最高!あぁ、ジキハイはこうでなきゃねー!とテンション上がりまくりました。

個人的には♪事件、事件♪で新聞売りのパートを歌っている麻田キョウヤさんの圧倒的な歌唱力がめちゃめちゃ心震えます。ここのパートは以前阿部よしつぐくんなどスコーンと高音を出せる役者さんが演じてきていますが、キョウヤさんの迫力も半端ないです。

さらにバラード曲がめちゃめちゃ良いんですよねぇ。特にルーシーのナンバーがもう、これでもかというほど美しくて切なくて…。年月を経ていくにつれてルーシーのバラードナンバーは本当に心の奥底まで沁みてくるような気がする。今回の公演は今までの中で一番泣いたかもしれない。
1幕ラストで歌われる♪あんな人が♪と2幕後半で歌われる♪新しい生活♪は号泣ものです。生きるだけで精一杯、そのためにはどんなに理不尽な扱いを受けても必死に耐えてきた彼女がジキルによって心を救われたと感じ初めて大きな喜びに触れる時のナンバーで。ルーシーの心の底から湧き出てくる新たな感情がピュアで儚くてもう泣けて泣けて仕方なくて…。2幕は喜びの直後にくる地獄の展開を知ったうえで見るのでなおさら辛くて心が張り裂けそうになってしまった(涙)。

ジキハイの場面はどこを切り取っても魅力しかないと思っているのですが、そんな中でも少し厳選して面白かったシーンや泣けるシーンについて触れてみます。

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まず理事会シーン。人の善悪を薬によって分離させるといったジキルの驚愕の提案に国家権力の中にいる皆様がブーブー文句言いまくるわけですが、この時の皆さんのざわつきっぷりが国会のヤジみたいでリアルで面白かったですw。
で、個人的に注目したのが宮川浩さん演じるベイジングストーク大司教川口竜也さん演じるサベージ伯爵。前回公演もこのお二人で見たのですが、今回は以前ミュージカル『北斗の拳』を見ていたこともあって”リュウケンが二人並んでるっ!”といったちょっと邪道な目線で楽しんでしまいました(笑)。

 

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川口竜也さんがお稽古中にインスタに宮川さんとの写真アップしてくれてて、これ見ただけでめっちゃテンション上がった!

1幕クライマックスの見どころはハイドの暴走。薬で性格が分離したことでジキルとは別の人格であるハイドが理事会メンバーに恐ろしい復讐を開始する。全くの別人格でありながらも自分の心の底に押し込めていた憎しみや恨みの感情の塊として現れるのがハイドだというのが本当にショッキングで。表だけでは分からない人間の本質を抉ってくる感じが刺激的で、毎回ハイドを見るたびに自分自身を見つめ直してしまう。

で、この最初の毒牙にやられるのが宮川さんが演じる司教様。この場面の前にルーシーの♪あんなひとが♪のナンバーがドラマチックに歌われているのですが、その背景で労働者に扮したアンサンブルさんたちが着々と”準備”にかかってるw。新演出になって初めてこのシーンを見た時には”なにやってんだろう?”と思ったんですがww、直後の顛末を見てビビりまくったわけで。
ハイドはその後も着実に理事会メンバーを葬っていきますが(2幕の冒頭からテンポよく一人一人消されていきます 汗)、宮川司教様が一番派手にやられております。あれ、見るほうは迫力あるけど、違う意味でけっこう冷や冷やさせられるんですよね(汗)。やられる方は役者もスタッフもかなり神経使ってるだろうなぁと。宮川さん、本当に毎度毎度お疲れ様です(汗)。

ちなみに、ベイジングストーク大司教が悲惨な目に遭う直前に”どん底”の女の子に「スパイダーが紹介してくれた君は最高だった」みたいなセリフをニヤニヤしながら告げる場面があって。スパイダーは”どん底”の元締めみたいなことやってる凶暴なキャラなんですけど、これも宮川さんが演じているんですよww。「自分で自分に女の子紹介したんか!」と毎回心の中でツッコミを入れながら笑ってる私です(笑)。

最後にハイドの餌食になる川口さん演じるサベージ伯爵、新演出になってからかなり残忍なやり方でやられてしまうわけですが…、鹿賀さんがジキハイやってた時代は心臓発作みたいな感じだったんですよね。「何もしないのに死んだ」っていう皮肉たっぷりの鹿賀ハイドのセリフが面白かったんですけど、これが無くなっちゃったのは未だにちょっと残念だなという気持ちがあります。

2幕でジキルが自分の中に住み着いた悪の化身であるハイドと激しい鬩ぎ合いを展開する♪対決♪はその熱量の迫力に毎回圧倒されてしまうのですが、今回は特に2つの人格の対立というよりも1人の人間の激しい葛藤といった側面を強く感じました。ジキルとハイドは全くの他人のようにみえて、実はどちらも彼自身が持っている感情なんですよね。どちらも本物
ジキルは自分の中に巣くっていた”悪”の存在を必死に抑え込んで抹殺しようともがくけれど、人間はだれしも気づかないだけで気持ちのどこかにそれを抱えているわけで…。ハイドは”悪”の存在ではあるのだけれど、その節々には哀しみも宿っているような気がしてどこか切なさすら感じさせる。人間は本当に一筋縄ではいかない厄介な感情を同居させた生き物なのだということを今回の舞台を見て思いました。

ラストシーンの結婚式の時、ジキルの中から再びハイドが覚醒してしまいますがクッキリと2つの性格に分かれているようにも見えなくて。あと一息で二つの人格が融合するのではないかとすら感じました。でも、結局そのためには残酷な手段を使わなければならなかったわけで…。
だけど、全てが終わった時のジキルは安堵感に包まれたようなとても穏やかな表情をしてた。きっとハイドもその結末を望んでいたのではないだろうか。それが哀しいラストの中の救いでもあったような気がします。

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キャスト別感想

ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人くん

今公演を以てジキハイを卒業する石丸さんに代わって役を引き継ぐことになった柿澤くん。これまでどちらかというと大人年齢のキャストさんで見てきたのでカッキーになったと知った時は少し驚いたけど、楽しみだなという期待感の方が大きかった。

カッキーのジキル博士は生真面目で融通が利かないタイプの青年なんだけど、どこかちょっと爽やかな青臭さがありました。アターソンからどん底に誘われる時も表向きは断ってるんだけど、実のところはちょっと行ってみたいと思うような節があったんじゃないかなって感じさせるような”普通”の若者らしさもあったのが面白かったw。

ルーシーに対してはとてもフラットだし紳士でとても優しい。ひとつ感情が動けば彼女のことを女性として見てしまうんじゃないかなという危うさがあったので、ハイドに変わった後彼女への異常な執着心を見せていくお芝居に説得力がありました。
エマに対してはジキルの時に穏やかな愛情を向けていましたが、どちらかというと彼女の包容力や懐の深さといったところに甘えているような雰囲気を感じたかも。そこで得られる安心感を愛情だと思ってるのかな、みたいな。”女性”として魅力を感じたのはエマよりもルーシーだったんじゃないかと思えるお芝居だったような気がします。

面白かったのは初めての実験で薬を飲んだ後の反応。最初の感想が「塩味」というのは台本通りなのですが、ここの「しょっぱーーっ!!」って言い方がカッキーめちゃめちゃ可愛くてツボww。さらに”恍惚感あり”のところではウヒヒヒと笑いながら机の上のライトにチュッチュ連発してキスしまくり(笑)。その直後の「行動に異常なし」というセリフの面白さが激増しでございましたw。こういうユーモアあるお芝居、カッキーらしさがあって好きです。

以前ミュージカル『フランケンシュタイン』で全く違う2つのキャラを演じた経験があるカッキーなだけあり、ジキルとハイドの演じ分けは実に見事でした。特にハイドに変身した時の狂気と色気が半端ない!!どちらかというとちょっと尖ったところに魅力を感じるカッキー。その強みがいかんなく発揮されていたんじゃないかなと。ギラギラした目力とか本当に最高でした。

ラストシーンのお芝居もめちゃめちゃグッときたなぁ。すべての苦しみから解放されたが故のあの表情に思わず涙が溢れました。

ただ、全体的に見るとまだちょっと物足りないかも…と思う部分もあって。あと一歩、見る者に訴えかける力強さが欲しい。歌はめちゃめちゃ頑張ってて♪時がきた♪もテレビや記者発表の時よりも格段進化してるんだけど、まだ少し歌いきるだけで精一杯といったところもあったように感じたかな。
でも、回数を重ねていくうちにもっともっと存在感を増していくはずといった期待感はめちゃめちゃ高まりました。カッキージキハイはこれで今公演は最後になってしまいましたが、次回再演されたときに再会するのがとても楽しみです。

ルーシー・ハリス:笹本玲奈さん

玲奈ちゃんは前回の2018年公演からルーシー役を演じていますが、あの時はまだそれまでエマだった彼女のことが頭に残っていて今ひとつ受け入れられなかったところがあったんですよね。でも、今回はもう…めちゃめちゃ感動しました!玲奈ちゃんのルーシーがとにかく切なくて切なくて…彼女が登場した場面はほとんど泣いたかもしれない。

「どん底」のショーでのパフォーマンスの色っぽさがめっちゃ進化してて女性の私でもドキドキしてしまうレベル。ジキルはよくあれを冷静な目で見ていられたなと思ってしまったほどww。ショーの後にジキルを誘惑しようとするも諦めるルーシーの場面は、色っぽいんだけど存在そのものから哀しみのオーラがこれでもかというほど出ていて抱きしめてあげたくなってしまうくらい儚い。あのシーンだけで、これまで彼女がいかに”どん底”の人生を歩んできたのかを察してしまった。ここの表現力が素晴らしくてすごい感情移入してしまう。

唯一優しく接してくれたジキル博士を慕って、それがやがて愛へと変わっていくお芝居もすごく繊細で歌の表現力も見事。♪あんな人が♪♪その目に♪での彼に対する愛に悦びを感じそこから希望を見出していくかのような表情なんかもう、思い出すだけでも泣けます(涙)。なんて純粋なんだろうって…玲奈ちゃんルーシーがひたすらにジキルへの想いを歌に込めながらありったけの笑顔を浮かべていくたびに涙が止まりませんでした。

ハイドに対しては恐怖に怯えまくっているのですが、心のどこかで自分でも気づかない”ハイドの中にいるジキル”の存在を感じているのかもしれないと思う瞬間が何度かありました。特に♪罪な遊戯♪はとてもスリリングで色香の漂う場面ですが、玲奈ちゃんルーシーは怯えながらも訳が分からないうちに彼を受け入れていくような雰囲気だったんですよね。そこがすごく印象深かった。

そしてなんといっても一番泣けたのが♪新しい生活♪。ジキルへの感謝の気持ちと、新しく人生をやり直せるかもしれないといった希望の喜びとがこれでもかというほど伝わってきて…その直後に起こる展開を知っていながら見たこともあり大号泣してしまった。あの無邪気で無垢な玲奈ちゃんルーシーの笑顔、本当に最高に沁みました。

エマ・カルー:Dream Amiさん

Dream Amiさんは2020年まで活躍していたE-girlsのメンバーだった子ですよね。2015年に発表された「Dance Dance Dance」がすごい好きでよく聴いていました。ただ、Amiさん個人としての歌をちゃんと聞いたことがなかったし、ミュージカルで歌う彼女のことは全く予想がつかなかったので今回の舞台で見れるのを楽しみにしていました。

いやぁ~~~、まず一番びっくりしたのが歌の上手さです!!E-girlsの時のイメージとは違ってジキルの婚約者”エマ”としての柔らかく優しく温かい雰囲気の歌声が本当に心地よく、第一声を聴いた時にちょっと鳥肌きました。ここまでハマるとは思わなかったので本当に嬉しい驚きです。声量もあるし、音程に不安を感じるところも一つもなかった。

神経質で不安定なジキルを献身的に優しく見つめているといった雰囲気のエマのお芝居もとても素敵。可愛らしい外見とは違い、たとえどんなジキルでも彼を心から愛しているといった芯の強さがあったのもすごく良かったです。
まだ舞台経験が浅いようですが、堂々とした演じっぷりが素晴らしい。これを機にどんどん舞台にもチャレンジしてほしいです。

ジョン・アターソン:上川一哉くん

劇団四季を退団してからまだ1年ちょっとくらいの上川君。退団後にミュージカル『北斗の拳』で見て以来2回目が今回のジキハイだったわけですが…彼がこんなにもグランドミュージカルにドンピシャでハマる存在感を発揮していたことに驚きました。四季時代に「恋におちたシェイクスピア」(当時の観劇レポはこちら)のときに自然なセリフ回しやお芝居をしているのを見た時から期待した役者さんではあったのですが、外部の舞台でさらにその演技力に輝きを増したかのようです。

上川君のアターソンはとにかく陽気で友達想い。カッキーとは年齢も近いという事もあって、ジキルと二人でいる場面は普段の自然な気の合う親友・悪友同士みたいな雰囲気で見ていてめちゃめちゃホッコリさせられました。2つの性格を演じ分けて必死であろうカッキーのお芝居をやりやすくしているかのような懐の大きさも感じたかな。相手役さんに安心感を与えるというか、そんな大らかさが見ていてものすごい好印象でした。

ジキルに対してだけでなく彼の敵役ともいえるストライドに対してもすごく柔らかく接していたのも良かったなぁ。特に嫉妬が過ぎて暴走しそうなストライドを「まぁまぁ」と事あるごとにササッと制していた姿が可愛くて萌えw。結婚式の時の対応とか最高だった。
そんな風に周りを笑顔と明るさで包み込むような上川アターソン、近くにこんな友達がいたらどんなに楽しいだろうなと感じさせてくるキャラ作りが素敵。

その反面、殺人事件が起こったことを知った時やジキルのもう一つの顔と知らないままハイドと向き合う時には驚くほど鋭い射るような眼光を放っている。その表情に何度もドキリとさせられましたし、歌声にも張りと鋭さが感じられて本当に魅了されました。明るく優しい時とのギャップがすごいです。
ラストシーンの苦悩のお芝居も本当に良かった。最後の最後に親友の本当の苦しみに触れてしまったがためのあの行動だったのかなぁ…とも思えて、その時の心情を想うと胸が詰まって仕方ありませんでした。

期待以上のアターソンを演じてくれた上川君、今後の活躍も本当に楽しみです。

サイモン・ストライド:畠中洋さん

石丸さんと同じく2012年公演の時からサイモン役を演じ続けている畠中さん。最初決まった時はアターソンのほうが合ってるんじゃないかなと思わなくもなかったのですが(というか、畠中アターソンを見たかった)、ジキルに対する嫉妬の激しさからどんどん悪辣さを際立たせていく畠中サイモンが本当に素晴らしく魅了され続けてきました。

今回も最初の理事会のところから、ジキルに対するあしらい方が上から目線なうえに徹底排除してやる、みたいな悪意が滲み出まくっててすごいw。特にあのバカにした笑い方とか憎たらしすぎて最高です(笑)。
そんなサイモンがどうしようもない敗北感を味わってしまうのがジキルとエマの婚約。エマへのどうしようもない片想いが二人の幸せそうな姿を見るたびにどんどん募っていってお酒におぼれてしまうわけですが、この時の酔っぱらいっぷりがめちゃめちゃリアルでスリリング。いつ牙をむいて暴走してもおかしくないといった狂気がすごいです。と同時に、サイモンの人間的な器の小ささも巧みに表現されててドラマに良いスパイスを与え続けている印象も強かった。

サイモン役以外にもちょいちょいアンサンブル出演されていて、「どん底」シーンでの後ろの方のはっちゃけっぷりは思わずそちらに目がいってしまうほど面白かった(笑)。

畠中さんを探す楽しみもこの作品の醍醐味のひとつ。

美しく透き通るような爽やかな歌声を持ちながら、サイモンのような嫌味で人を蔑んだような悪党の役もすんなりハマってしまう畠中さん、本当に凄い役者さんだなぁと思います。でも、カッキーのジキルとは年齢的なギャップというかそういうのもちょっと感じてしまったかも(汗)。石丸ジキルのほうが見ていてすんなりくるような気も…。もしかしたら畠中さんも今回でジキハイ卒業になっちゃうかなぁ…。

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執事プール:佐藤誓さん

佐藤さんのプールはこれまで見てきたなかで一番体格がしっかりした執事さんだなという印象です。今まではどちらかというとヒョロッとしたおじいちゃん的なキャラだったのですが、佐藤プールはちょっとどっしりとしたおじ様みたいな。

プールとしての出番は多くないですが、しっかりとジキルを補佐し守るといった勤勉な実直さが伝わってきて、”この人が付いていれば大丈夫ではないか”と思わせるような頼もしさも感じました。

ダンヴァース・カルー卿:栗原英雄さん

今回の公演で栗原さんがダンヴァース卿を演じると知った時に「絶対合う!」といった確信めいた気持ちが湧いたんですよね。雰囲気的にもめっちゃハマるんじゃないかという予感がプンプンしてました。
最初登場してきたばかりの見た目の印象は、ケンタッキーのカーネルおじさんとチャップリンを合わせたような可愛さがあるなとw。思わず心の中で”可愛いっ”と叫んでしまった。でもその姿とは裏腹に、心の中ではどこか打算的で策略家といった一面も垣間見せる演技を感じたのがとても印象深かったです。昨年の大河で演じた大江広元のキャラがたまにチラチラ顔を出してくるって感じだったかな。

ダンヴァース卿は国家権力の中にいながら、唯一ジキル博士に対しソフトに接してくれる人物。今回も理事会で針のむしろになっているジキルをなんとかフォローしようという姿勢をみせていたわけですが、今まで見てきたダンヴァース卿に比べるとちょっと引いているような印象が強かった。
他のメンバーたちとは明らかに態度は違うんだけど、かといってジキルをなんとか支えなければみたいな必死さもない。あまりに非現実的なジキルの提案に、ダンヴァース卿としても本心では苦い思いを抱いていたんだろうなというのを感じました。それ故、採決の時の「棄権します」というセリフがリアルに聞こえてきてドキリとさせられます。

娘のエマに対しては心から愛しているといった温かい想いがダダ洩れていて本当に優しく柔らかい笑みをたたえているのですが、婚約者のジキルを目の前にすると心の中に言いようのない不安が広がっていくような印象。エマの将来を心配する父の気持ちがジンワリ沁みるナンバー♪別れ♪がなお一層切なく聞こえたなぁ…。
もしもエマの婚約者がジキルでなかったら、ダンヴァース卿はサイモンたちのような態度を取らないまでも公然と批判していたのかもしれないと感じさせる栗さんのお芝居がとてもスリリングで面白かったです。

後述

カーテンコールは非常に盛り上がりました。役者の挨拶が一通り終わった後の塩タクターによる最後の演奏が行われている時になぜか観客の視線が後ろの方に集中していて、どうしたんだろう?とそちらの方を見てみると…ちょっと大きな背中が去っていく姿が見えて。なんと、ジキハイを描いたフランク・ワイルドホーンさんがいらっしゃっていたのです!暗くてお姿ほとんど見えなかったんですが、一瞬見えた後ろ姿だけでなんかもう興奮してしまった。
ちなみに、ワイルドホーンさんの奥様は元宝塚トップスターの和央ようかさん(現在はTAKAKOさんとして活躍されてるとか)です。現在はNYを拠点にされているとか。

それからこれは後から知ったのですが、この回に『太平洋序曲』出演者のウエンツくんと廣瀬くんや、加藤和樹くんといったミュージカル界のスターたちも観劇しに来ていたらしい。全然気づかなかった(そもそも満員御礼なので人が多すぎてわからないw)。これはカッキー、いやがうえにも気合入りまくるよね!今回の激熱な舞台にはこういった友情の応援の力が大きく作用していたのかもしれないなと思いました。

次回は大阪の石丸さんジキハイ大千穐楽です。ずっと魅了され続けてきた石丸ジキハイを最後までしっかり見届けたいと思います。

この日の公演後にアフタートークショーがありました。今回は軽くメモったので次の記事で紹介します。

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