ミュージカル『ジキル&ハイド』2007.04.27ソワレ

『ジキル&ハイド』日生劇場今期二度目レポになります。この日がついにMy楽… 初演からずっと観てきた作品なのでやはり感慨深いものがありました。BW版も韓国版も観てなかったので、ジキハイといえばもう鹿賀&マルシアが全てだったんですよねぇ。もう観に行くごとにレベルが上がってて本当に素晴らしい舞台だったと思います。

思い入れがあったためか、この日はけっこうウルウル度が高くてたぶん今まで観劇したなかで一番涙流したかも…。あまり涙する作品では無いと思っていたのですが、今回改めて「こんなに泣ける作品なんだ」って言うのを実感できたような気がします。
カーテンコールも非常に熱い雰囲気でしたよ~。会場もスタンディングで埋め尽くされてたし(私も立ちましたっ!)役者さんたちも胸いっぱいといったような表情をされていたのがとても印象的でした。

以下、キャストを中心に超ネタバレ感想です。

 

『ジキル&ハイド』の大きな魅力のひとつが音楽だと思うのですが、いつもは冒頭の「嘘の仮面」やルーシーの「連れてきて」、ジキル博士の「時が来た」、2幕冒頭の「事件、事件」といった激しい曲が印象深かったのですが、この最終公演ではジキルとエマのラブバラードやエマの「あれは夢」といった比較的落ち着いた楽曲にグッと来るものがありました。たぶん、何度か観劇しているうちに視点も変わってきたのかもしれません。

大好きなシーンはやっぱりルーシーとエマが歌う「その目に」。これはもう、何度観ても胸が熱くなります。違う立場ながらも同じ人を想い歌うふたりの姿は本当に感動的でした。その二人の間で苦悶の表情を浮かべながら奥に消えていくジキルがまた切ないんですよ~。泣きましたねぇ、ここは。

でも、この日はもっとグッと来るシーンがありまして…それが「罪な遊戯」だったんです。これは私でもすごく意外。ハイドがルーシーを弄ぶとても色っぽく妖しい場面なのでいつもはそれだけでドキドキしちゃってたんですけど、今回はなんだか二人の圧倒的な歌声に完全に呑まれちゃって、座席の背もたれに押し付けられ照るような感覚に陥ってしまいました。それほど緊迫感のあるすごいシーンだった!ハイドとルーシーのもどかしさがその歌に叩きつけられているような感じ。個人的にはすごく忘れがたい場面になりました。

そしてラストシーン。ここのジキル・ハイド・エマ・アターソンの心情がものすごく痛々しい…。特にハイド。ジキルを制圧して世界を自分のものにと考えていたハイドがエマの慈悲のような心に触れて彼の中で何かが変わるんですね。「自由にしてくれ」というハイドの台詞はなんだか彼の悲痛な叫びにも聞こえてとても切ない。自分を撃とうとしないアターソンをたきつけるためにわざとエマの首を絞めにいくという行動もなんだかハイドらしくてそれがかえって哀しいのです。
最後、エマの腕の中でジキルとハイドは同一化して眠りにつく…。「自由になったのよ」と最後に歌うエマの姿が神々しくてボロボロ涙が流れてしまいました。

うーん、やっぱり『ジキル&ハイド』のラストは深い!!改めてそれを感じたのでした。本当に素晴らしかったです。

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以下、キャストについて。

鹿賀丈史さん

前にも書いたけど、本当に初演の頃と比べてどんどん練られたキャラクターをみせてくれて…その集大成となる最終公演ではとてもいいものをみせてくださいました。東京楽が近くて興奮されていたのか、この日は薬の粉を試験管に巧く入れられなかったり(笑)オケの音よりも早くに歌いこんでしまったり(笑)といったハプニングはありましたが、それもこの役に対する思いいれの深さなんだろうなぁという感じで観てました。
ジキルとハイドにたくさんの愛情を注いで演じてこられた鹿賀さん、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました!

マルシアさん

前にトークショーで「過去の経歴まで自分で考えて作りこんだ」と言ってましたが、あの可愛いルーシーはそうして出来上がったものだったんだなぁと… なんだかそれだけで感動でした。マルシアのルーシーも初演に比べると色々変化があってとてもよかったです。微妙だった日本語も、今回はなんとなくアンニュイな日本語に聞こえて逆に丁度いいかもって思えてしまったくらい(笑)。
彼女の魂の歌声、本当に素晴らしかった!このミュージカルが出発点で色々舞台に挑戦しているマルシアの今後を応援して行きたいと思います。

鈴木蘭々さん

前回の影の薄いエマに比べたら、本当に数段良くなったと思う!歌声は確かにまだ舞台慣れしていないような感じですが、この再演での彼女のエマは気品に溢れてて鹿賀さんと並んでも見劣りしないくらい堂々としているように映りました。それにエマのもつ慈悲深さといった面がいい具合に力が抜けた感じで演じられてて…特にラストシーンは本当に感動的でした。次も蘭々ちゃんのエマで観たかったなぁ~。何度も演じればもっともっと良くなっていくと思うんだけど…。封印してしまうのは本当に勿体ない。

戸井勝海さん

とにかく戸井さんのアターソンはカッコよかった!トークショーでも言ってましたが、初演からずっと観てきて「アターソンを次にやるのは自分しかない!」と思ってきただけのことはあります(笑)。今回が初参加とは思えないほどの余裕ある演技はさすがです。「どん底」バーでジキルにお遊び感覚で会話している姿とか厭らしさが無くてなんだか可愛いし(マルシアはここの会話が劇中よく聞こえていたらしく笑いそうになることがたびたびだったらしい 笑)。彼のアターソンももう一度観たかったなぁ!

宮川浩さん

嫌味で威圧的なストライドを熱演されてましたよね~!前回よりもさらに迫力があって本当に良かったです。特に「嘘の仮面」「事件、事件」といった群集ナンバーのなかでひと際その声が目立って響いていたのはさすがだと思います。
ただ、ひとつだけ気になっていたことがありまして…。それがラスト。ハイドに抹殺されるところなんですが、スティックを突き刺されて”フラフラ…バタっ”と絶命してしまうシーン。この動きがなんだかロボットっぽいというか自然でなかったというか…。特に絶命するときの演技がなんだか大袈裟でコメディっぽく見えちゃうんですよね(苦笑)。それだけが前回から実はずーーっと気になってまして。このあたりは禅さんがとても巧かったんですよね。

初演から参加しているダンヴァース卿の浜畑さん執事の丸山さん公爵夫人の荒井さん大司教の大須賀さん新聞売りの阿部くん・・・本当に皆さん素晴らしかったです!6年間楽しませてくれて本当にありがとうございました!
できれば禅さんや林さんにもこの舞台にいて欲しかったな…。

これでしばらく封印されてしまう『ジキル&ハイド』ですが、しばらく充電してまた新たな顔ぶれでいつか復活して欲しいと思っています。考えてみたら、封印するのにはちょうどいいタイミングだったかもしれませんね。

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