年明けの感想になってしまい申し訳ありません。本来は12月25日の『紫式部ものがたり』が06年ラスト観劇になるはずだったのですが、体調不良によりこの『MA』が06年ラスト観劇となりました。実は、この公演を観に行った日にノロ感染したっぽいんですよね(爆)。色々な意味で忘れられない観劇となりました(汗)。
今さらって感じもありますが、まだ全国公演展開中ですし・・・何か観劇の参考になればという想いも込めまして感想を記したいと思います。
たぶん、ものすごいネタバレな内容になってしまうような気がするのでご注意ください。ただ、この作品に関していえば、ある程度ネタバレを知っておいたうえで観たほうが楽しめるかも・・・!?
尚、キャストは12/11と同じです。マルグリットは新妻聖子ちゃんでした。笹本玲奈ちゃんは結局1回だけだったなぁ…。個人的には新妻ちゃんのほうが好きだったから結果的には良かったんですけどね。
以下、ネタバレ~な感想です。
初めて観劇した時は4回通えるか心配だったこの作品(爆)。でも、観れば観るほど味が出るというか・・・こちらが慣れてきて楽しむ余裕ができてきたので複数回行けたことは良かったと思います。
印象に残ったことを場面場面で挙げていきたいと思います。
<1幕>
プロローグ
影なって回るカリオストロですが、何度観ても祐一郎さんの動きでした(笑)。なんていうか、流れがカキ・コキって感じ。もう少し優雅に動いてほしかったような…。
もう無くすものもない~なぜ
『マリー・アントワネット』という題名の割には最初に本格的に登場してくるのがマルグリットなんですよね。ここから最初の違和感が始まるわけで・・・やっぱり『MA』が一番合ってるような気がしました。
マルグリットの惨めさが浮き彫りになってるシーンですが、私が一番気に入っているのは山路さんの軽妙な演技。実に自然でついつい目が行ってしまう・・・さすがだなぁと思いました。
ご覧王妃を~なぜケーキを食べない
ここでようやくマリーアントワネットの登場。場面もこれでもかってくらいの電飾を使ってて派手な演出になってました(笑)。涼風さんのアントワネットはとにかく超世間知らずな憎憎しいお姫様として描かれているので、最初に観た時は嫌悪感すら感じさせられました。でも、複数回見るとなんとなく哀れに見えてしまうんですよね、アントワネットが。
それにしても涼風さん、お若い!憎らしいんだけどなんだか可愛いんですよ(笑)。マルグリットにシャンパンかけた後の悪戯な笑顔とか。このあたり上手いなぁと思いました。
このシーンで一番好きだったのは曲ですね。「なぜケーキを食べない」の旋律などはけっこう頭に残ってて未だにぐるぐる回ってます(笑)。この曲があるから、このシーンは許せる部分があったのかも。
100万のキャンドル~流れ星のかなた
シャンパンを引っ掛けられたマルグリットが自分の惨めさを熱唱するシーン。新妻ちゃんの歌声がとにかく素晴らしかったです。寝転んだままであそこまで声出すってすごく大変なことだと思うし。
「流れ星のかなた」はこの芝居の重要なポイントになる曲。私はあまり好きではなかったんですけど、土居さんの澄んだ歌声がとても印象的でしたね。マルグリットとアニエスのデュエットはちょっとジーンと来ました。
完璧な王妃~不器用な王
ここでもとにかくワガママ三昧のアントワネット。これでもかってくらいやりたい放題なので、どうも最初からアントワネットに対するこちらの感情が悪いほうへ動いてしまうんですよね。まぁ、史実的にそうだったのかもしれないんですが、何故そういう風になってしまったのかという経緯がないので違和感に思えてしまうんですよ。そういった意味で、もっとアントワネットの背景を描いてほしかったなというのは最後まで感じました。
禅さんのルイは最高でした!さすが上手いですよねぇ。歩き方とか話し方とか、今まであまり見たことがない禅さんの演技がとにかく新鮮でかわいかったです。どうしても妻の言い分を断れない気の弱いルイ、「あ~もう、しょうがないなぁ」っていう同情的な目で観てしまいました(笑)。
幻の黄金を求めて
カリオストロが歴史を操ろうとしているシーンだったようなのですが…なんかただ朗々と歌っているだけという印象しか残ってないんだよなぁ(苦笑)。曲はいいんですけど、どうもこの場面の意義がよくわからなかった。このあたりからカリオストロの存在意義が微妙~って思えてしまったんだよなぁ。
心の声~お望み叶えて
マルグリットを拾ったラパン夫人が生きることを説くシーン。私はこのシーンがけっこう好きでした。なんと言っても色気と迫力の歌声の北村さんが歌い上げているわけですからそれはもう、素晴らしかったですよ!未来への希望を感じさせる歌もすごく良かったし。
娼婦達とマルグリットが同化していく場面も楽しくてよかったな。ボロを次々と脱ぎ捨てていく演出などは上手いなぁと思いました。
もしも
登場人物たちが仮面をつけて現れるちょっと不気味なシーンなのですが(笑)、このものがたりを象徴するシーンになっていてなかなか印象深くてよかったと思います。「もしも~だったら」と言いながら歌うところがなんとも切ないですね。ナンバーも幻想的で好きでした。
ギロチン
マリーアントワネットには欠かせない「ギロチン」ではありますが、このシーンは実に地味でして・・・正直あまり見応えがなかったです(苦笑)。なんつうか・・・省いても良かったような気も(爆)。もう少し違った演出で盛り込んでも良かったんじゃないでしょうか。
オーストリア女~神は愛してくださる
ここではマルグリットを助けてくれたラパン夫人の処刑というのがひとつの鍵になっています。それにしてもマルグリット・・・ラパン夫人と久々に会うような感じだったけど、あれから娼婦宿にいたんじゃないの?このあたりの背景がなんだか曖昧なんですよね。
ラパン夫人の死をきっかけにマルグリットが民衆に立ち上がるよう促すナンバーはすごくカッコよくて好きでしたし、けっこうゾクゾクっときました。まぁ、「レミゼ」とちょっと被ってはいるんですけどね(苦笑)。この時の新妻ちゃんの歌声がとにかくすごい!よくぞあそこまで!!と何度観ても感動いたしました。
すべてはあなたに~そして諍い
ここでようやくアントワネット再登場。とにかく出てくるまでが長いんだよなぁ・・・タイトルロールなのに(苦笑)。ここではフェルゼン井上君とのデュエットが見せ場になっているんですが、何故この二人がこれだけ惹かれあっているかっていうのが描かれていないので最初のうちはかなり違和感を持って見てました。3回目くらいからはこちらも慣れてきているので(苦笑)お互いの気持ちを考えながら観る事ができたんですけど・・・背景で説明するっていうのも大切だと思うんですよね。
印象的だったのはフェルゼンが『気球が行ってしまいました』というシーン。二人の関係と今後の暗雲を予感させる場面で切なかったですね。井上君のフェルゼンはとにかくカッコよかったです。やはり王子なんだなぁと思ってしまったり(笑)。
私こそがふさわしい~七つの悪徳
オルレアンのソロがあるんですが、毎回見るたびに『ルキーニと被ってる・・・』と思えて仕方なかった(笑)。特に『キッチュ』みたいなナンバーなのでなおさらだったかも。高嶋兄のメイクもかなりコワイ…っつうか妖しくて笑えました。ルキーニが殺そうと思ってた相手がこのオルレアンだったわけですからそう考えても笑えますよね(笑)。
七つの悪徳で首飾り事件の真相が歌われれます。最初観た時は微妙って思えたんですが、何回か観るうちにこのナンバーが好きになっておりました(笑)。それから山路さんのボヤキもひとつの目玉。前回はものすごく短かったんですけど、今回は指揮者の塩田さんと長々ぼやきトーク繰り広げてました(笑)。「他の人のシーンでは張り切って棒振ってるのになんでオレの時は適当なんだ?」とツッコんでたりして、いや~楽しませていただきましたよ。たしかに、塩田さんのタクトはみているだけでも迫力があって楽しいんですよね(笑)。まるで歌ってますから。
なんというセレモニー
一幕のクライマックスとなるシーン。まず好きだったのは禅さんの「お言葉」のところ。「あ、そう・・・」「ふぅーん」「・・・ね」「・・・いっぱぁい・・」などなど、その一言一言がとにかく可愛くて受けてしまいました(笑)。こんな王様だったら何でも許せちゃうかもしれないなぁなんて。
そんな中で首飾り事件が勃発。とにかく林ロアンのハイテンションぶりが見ものでした(笑)。なんか回を重ねるごとに上げ上げになっていらっしゃったようで・・・見ているだけで笑えましたよ(笑)。
印象的だったのはやっぱりラストのマルグリットがアントワネットに赤い旗(?)を投げつけるところだったかな。今後を予感させる象徴的なシーンだったと思います。ナンバーもよかったですしね。
<2幕>
正義の鐘よ
首飾り裁判のシーンですね。民衆の怒りが伝わってくる躍動感あるナンバーで好きでした。アントワネットラブだったはずの林ロアンがコロっと態度を変えてしまうところがなんとも軽率で笑えましたけどね(笑)。マルグリットの「無罪放免よ!」という台詞も力強くて印象的でした。
三部会のパレード~流れ星のかなた
高熱にうなされたアントワネットの長男ジョセフが苦しい息の中街の様子を見て歌うシーン。私はあまり子役の子が歌うシーンは今まで好きじゃなかったんですけど(苦笑)この作品のナンバーは好きでした。なんていうか、旋律が良かったし歌ってる子も上手かったですしね。「♪ダン・ダダダーン」っていうのが今でも頭の中に残ってます(笑)。
ジョセフが亡くなったあと、アントワネットは「流れ星のかなた」を歌います。これはマルグリットがいつも口ずさんでいた歌・・・ここでちょっとした謎が出てくるんですね。印象的だったのは禅さんがジョセフの死を涙を流しながら嘆き悲しんでいたこと。禅さんの涙はいつも心打たれるものがあります・・・。
運命の年~金が決め手
ますます激化する市民達の王族への怒り。でもマルグリットの声だけでは民衆は動かず、オルレアンが「金」を引き合いに出すと一斉に蜂起してしまう。人間の欲の深さを突いたシーンだったと思います。でもあまり印象には残ってないかな(苦笑)
愛したことだけが~なにかが間違っている
アントワネットがフェルゼンへ手紙を書きながら今までのことを悔やむシーン。この時のナンバーがものすごく良かった!アントワネットの悲しみが切々と伝わってきてとても感動的でした。まぁ、今までのことを考えると自業自得なんですけど(苦笑)。
そして女達が王たちを連行する為に乗り込んでくるんですが、その直前のアントワネットとルイの会話も印象的でした。「王がいるところが私の居場所」という言葉が凛としてて良かったです。
それにしても高嶋兄の女装・・・なんとも迫力あって恐かったよ(苦笑)。
パリ情報
次のシーンのつなぎといった場面だとは思うんですが・・・個人的には好きじゃなかったなぁ。正直、無駄なシーンだと思えて仕方なかった(苦笑)。今までの流れを途切れさせるような感じで・・・もう少しなにかなかったんですかねぇ。
恐怖政治
ついにジャコバン党の登場。福井さん演じるロベスピエールがエライ存在感を放っておりました。マルグリットが「同情なんてするものですか」と怒りに満ちた声で歌うシーンも印象的でした。
ヴァレンヌへの逃走
幽閉されていた王一家がフェルゼンの手引きで逃げるシーン。その逃げる馬車が・・・ちんまい模型(爆)。なんか緊迫感がないんだよなぁ、こういう小道具って。観るたびに『ローマの休日』初演を思い出してしまったのは私だけだろうか(笑)。その馬車をコメディ色たっぷりで止めるカリオストロ・・・。えーと、ここは笑うシーンでしょうかね。でも「逃げ切れたはずだ」というナンバーはけっこう頭に残ってて好きでした。
もしも鍛冶屋なら~流れ星のかなた
禅さんの最大の見せ場でもある「もしも鍛冶屋なら」。ここは毎回毎回ジーンと来ました。温かい歌声なのでなおさら自分のおかれた立場を嘆くルイの気持ちが伝わってきて・・・とにかく切なかったです。こういうナンバーはやっぱり禅さん上手いですよね。
そしてアントワネットが歌う「流れ星のかなた」にはっと気づくマルグリット。何故この歌を知っているのか?という謎かけがここで出てくるんですが、はっきりとした回答は最後まで出さないままなんですよ。だから何となく気持ち悪い(苦笑)。ただ、今までの流れから見て、実はマルグリットとアントワネットは姉妹かそれに近い関係だったというのは察することができるんですけどね。それを象徴するシーンはこの先もなかったので、正直あまりこの設定は必要なかったのではと思いました。
我らは兄弟~みんな狂っている
民衆達が首を突き刺したまま客席の通路から登場するのでなんとも異様な雰囲気に包まれます。こういう演出はけっこういいかもしれませんね。怪しい雰囲気すごくでてましたから。
そんななか、フェルゼンはマルグリットからアントワネットの手紙の内容を知らされて愕然となります。ラブレターではなく国家反逆の内容のものだったことに衝撃を受けたフェルゼンが絶望の声を上げるんですが、なんだかこの時の井上君の唸り声が違和感あってしょうがなかったんだよなぁ(苦笑)。なんか音が耳障りというか・・・。でもそのあとのナンバーは絶望感が漂っていてよかったんですけどね。
そしてルイがついに処刑されてしまうんですが・・・禅さん登場せず、舞台上の巨大ギロチンが落ちてくるだけ・・・。なんか物足りなかった(涙)。
すべてはあなたに~王子を引き離せ
マルグリットの手引きでフェルゼンはアントワネットに極秘で会いに来ます。この時の二人の熱いキスシーンはなんだか鬼気迫るものがあってとても印象的でした。
アントワネットの髪は真白く変わってしまい昔の面影がひとつもないし、王子とは引き離されてしまうし、哀しいシーンが続きます。王子を引き離された後の「私を殺して!」という叫びが特に印象的でしたね。涼風さんの迫力の演技にただただ釘付けでした。
その首をはねろ
焦燥感漂うアントワネットが最後の気力を振り絞って裁判台に立っている姿はなんとも気高くて目を見張るものがありました。そんなアントワネットの姿にマルグリットは気持ちが揺れて嘘の証言をしてしまう。けっきょくマルグリットはアントワネットを憎みきれなかったというのがなんとも皮肉です。
それにしても、有罪の決め手となったものがあまりにもずさんな内容だったんですね・・・。
その時がきた~自由
処刑の決まったアントワネットがギロチンに向う途中倒れてしまい、マルグリットは思わず手を差し伸べます。このシーンは非常に美しかった。マルグリットの手を取った涼風アントワネットの笑顔がとにかく印象的でした。あの緊迫した状況の中、こういう表情ができるなんて…ただただ涼風さんの演技力に拍手です。実際のアントワネットも処刑直前まで毅然とした態度だったということですから、なんだかその当時の目撃者になったような気持ちでしたね。
ギロチンが落ちた後、民衆達は口々に「自由」を歌います。その時に上から赤い紙ふぶきを投げるんですけど、これがまたなんとも幻想的で心打つものがありました。ラストの不協和音もすごく心に残ってます。
と、まぁ、ここまでネタバレオンパレードできたわけですが(汗)、色々違和感はあるものの観てよかったなとは思います。再演もやっぱり行くかもナ。でも最後まで納得できなかったのはカーテンコール。最後に挨拶するのはやっぱり涼風さんでしょう~~。と今でも思ってます。