ミュージカル『ローマの休日』を観るため、東京まで遠征してきました。
新型コロナ禍のあおりを一身に受けた形となってしまった舞台演劇界でしたが、ここ数か月はwithコロナということでエンタメ業界の動きも活発化してきました。でも動きの中心はやはり東京がメイン。行きたくてもやはり行けない…というジレンマをずっと抱えてここまできました。
が、今回の演目だけはどうしても観たい・・・!舞台中継も行われないようだし、いつ終わるかもわからないこの状況をずっと引きこもって見送ることにも精神的に耐えられなくなりまして(汗)。
ついに、思い切って観劇解禁することに決めました。劇場に足を向けるのは3月の大阪『ボディーガード』以来…、東京は2月の『ラブレターズ』以来となります。観劇生活を始めてから約23年ちょっと…ここまで長い間スパンが空いてしまったのは初めてかもしれない。
未だに感染者数が減らない東京へ行くことは正直緊張感ハンパなかったんですが(汗)、それ以上に久しぶりに劇場へ訪れることに気持ちの昂りを感じずにはいられませんでした。
あ~…帝劇だ…!!っていうか、劇場だ…!!なんかもう入口に着いただけで泣きそうになっちゃいました(汗)。
劇場入り口には消毒マットが敷かれており、チケットのもぎりまでの列はきっちりとソーシャルディスタンスが保たれるようになっていました。全部で4つの列ができるようになってたかな。
チケットは係の人に見せて自分で切り離すスタイルでした。観劇生活約28年…初めて自分でチケットの半券を切り離す体験をしましたw。
劇場のスペースというスペースにはこれでもかというほど消毒液が設置されています。
ひとつの机に2つずつ。私は開演前、休憩時間、終演後に消毒を行いました。
ちなみに手洗いも3回ずつ念入りにやりました。でも、なかには手を濡らした程度だけで出て行かれる方もいたりして…ちょっと複雑。特に東京は未だに感染者数が減っていないのですから、もう少し緊張感持った方がいいんじゃないかなと思いました。
座席が販売されたころはまだ人数規制がかかっていたこともあってか、基本的には1席置いての座席配置になってました。その後規制が緩められてから追加で詰めた形での販売も行っているようですが、前数列くらいだけで二ケタ列以降は全部1席飛びになっていたと思います。
私は20日が1階席後方、21日が2階席前方でしたが、特に2階席は空席が目立っていてちょっともったいないなという印象でした。まだ劇場に人がたくさん戻るには時間が必要なのかもしれません(私も今回けっこう勇気ふり絞っての遠征ですしね 汗)。
ちなみに、グッズの物販はパンフレットのみの販売。食べ物も最小限に抑えられていて、いつも混み合っていた売店コーナーは1つを除いてすべてクローズされていました。
パンフレット以外のグッズは、日比谷シャンテの3階かネットで購入できることになってます。個人的にはフライヤー(今回はダウンロードのみ)ビジュアルのクリアファイルも作ってほしかったなぁと…。
以下、かなりネタバレを含んだ感想になります。これから予定されてる方はご注意を。あと、久しぶりに劇場で観劇したので気持ちが昂りいつも以上に長文となってます(汗)。
2020.10.20ソワレ~21マチネ in 帝国劇場(東京・日比谷)
主なキャスト
- アン王女:土屋太鳳(20ソワレ)、朝夏まなと(21マチネ)
- ジョー・ブラッドレー:平方元基(20ソワレ)、加藤和樹(21マチネ)
- アーヴィング:太田基裕(20ソワレ)、藤森慎吾(21マチネ)
- ヴィアバーグ伯爵夫人:久野綾希子
- プロヴノ将軍:今拓哉
- マリオ・デラーニ:岡田亮輔
- ルイザ:小野妃香里
- 在イタリア大使:港幸樹
- ヘネシー支局長:松澤重雄
伯爵夫人役の久野さんは久しぶりに拝見したのですが、今回のキャラは威厳を保とうとしてもついつい抜けた部分が表に出てしまう可愛らしさで観ていてとても癒されました。アン王女に対する母性も温かくて素敵です。
将軍役の今さんも「強そう」という雰囲気はなくどちらかというとちょっと情けない系w。注射を見て気を失っちゃったり、机蹴飛ばして足を痛めてしまったりww。でもそんなところがものすごく可愛らしくて、伯爵夫人とセットで癒し系のキャラで楽しませていただきました。
美容師のマリオ役を演じてたのは岡田君だったのですが、20日に見た時には誰だか全くわからないくらいぶっ飛びキャラで、彼が演じてると知った時には驚きましたw。とにかくハイテンションなイタリア男でクセが強めで面白かった(笑)。
ルイザの小野さんはほぼイタリア語のセリフでまくしたてるキャラでかなり強烈な印象w。イタリアのおばちゃんを熱演していらっしゃいました。
イタリア大使の港さんと支局長役の松澤さんはベテランの味を発揮されていて作品を引き締める存在感がありました。
ちなみに、アンサンブルの平野亙さんは唯一の初演・再演経験者だそうです!!あの当時のキャストさんが今回も参加していると知るとなんだかとても嬉しい。
あらすじと概要
オードリー・ヘップバーン主演の不朽の名作映画『ローマの休日』(日本では1954年公開)が初めて舞台化・ミュージカル化されたのは1998年。制作したのはなんと、日本でした。
作曲を担当したのは映像音楽制作が中心だった大島ミチルさん、そして作詞を担当したのは女優の斉藤由貴さんということもあり、当時かなり大きな話題を呼びました。
アン王女は大地真央さん、ジョー・ブラッドレーは山口祐一郎さん、というビッグネームで98年の青山劇場(その後ツアー公演)、2000年の帝劇で上演(帝劇は凱旋)。その後も再演しないかなとは思っていたのですが音沙汰がなく…、まさか復活するのに20年もかかるとは当時思っていませんでした(苦笑)。
98年の初演当初は私も観劇にハマりたての頃で、ミュージカル『回転木馬』でファンになった宮川浩さん(今も好きです)の作品を熱心に観に通っていました。そんな宮川さんが『ローマの休日』にアーヴィング役で出演ということもあり、初演も再演も複数回見ています。
※初演・再演の感想(初演の感想ページは他の作品感想との合間全部で4つありますw)
簡単なあらすじは以下の通り。
ヨーロッパのとある国の王室の一員であるアン王女は、諸国歴訪の旅に出ていた。連日の公式行事や数々の祝宴、会合への出席と多忙な日々が続いていた。数か国を歴訪し、初夏のローマを訪れた。
その夜も王女歓迎の舞踏会が催されている。ローマっ子達のお祭りは夜を徹して続いていた。心が浮き立つような音楽と人々の歓声。王女とはいえ内実は遊びたい盛りのうら若き女の子。束縛から解き放たれたいという欲求を抑えようもなく、王女は大使館をそっと抜け出た。しかし、この自由な時間も束の間、王女は寝室で医師から処方された薬の効き目のために夜の街頭で眠り込んでしまう。
そこへ通りかかったのが新聞記者のジョー・ブラッドレー。彼はローマ訪問中のアン王女とは知らずに助け起こすが、目覚めない彼女を放っておくこともできず、やむを得ず自分の下宿に連れ帰る。
<公式HPより抜粋>
今回久しぶりのミュージカル『ローマの休日』ということで、初演と再演のパンフレットを掘り出して並べてみました。
初演と再演の頃はパンフレットが今よりもかなり大きいのがお分かりいただけるでしょうか(笑)。当時は大きいし重いしで持って帰るのに非常に苦労した思い出がww(パンフが巨大だったのは舞台作品の宣伝のためだったと聞いていますが)。
全体感想
久しぶりの再演ということで、内容やナンバーもほとんど忘れてしまっているかもしれない(ちなみに私は未だに映画を見たことがない 汗)と思ったのですが、いざ始まってみるとスーっと当時に戻るような感覚があって色々と蘇ってきました。初演当時かなり通ったこともあり、その頃のDNAみたいなものが私の中に埋め込まれているのかなとすら思ったくらい。そんな自分にちょっと嬉しくなったりもしました。
初演・再演の頃もけっこうウルっとしながら見ていたと思うのですが、今回久しぶりにブラッシュアップされた『ローマの休日』を見て…2日間とも予想外に号泣してしまいました(涙)。全体的にシンプルで伝えたいテーマがはっきり見える感じ。
昨今では主流になってきているヨーロッパミュージカルのように壮大なドラマチックさがあるわけではない作品なので人によっては物足りなさを感じるかもしれないのですが・・・、私にはものすごく沁みたんですよね。
素朴で柔らかく心地の良い音楽、そして斉藤由貴さんのまっすぐで分かりやすいストーレトな歌詞が温かくとても感動的だった。当時はそこまで感じていなかったのですが、観劇を重ねた今見るからこそ、色んな意味で心に響きやすかったのかもしれません。
ちなみに、山口祐一郎さんも心配していた芝居のなかでのソーシャルディスタンスがどうなっていたかですが…、私が見た限りではほぼ通常通りの距離感だったと思います。ボディタッチもちょいちょい出てきますし、役者同士も思っていた以上に近かったのでドラマ的違和感はありませんでした。
ただ、キスシーンのところだけはジョーが手を添える感じで実際に唇を合わせているように見せていたのでそこはかなり演出的に慎重になったかなと。
以下、初演再演当時のパンフやCDを改めて聞いて思い出した相違点などを絡めて振り返りたいと思います。
冒頭の王女謁見のシーンは当時と比べてかなり短くすっきりした印象があります。ナンバーも新曲に変わっていて登場人物たちの心情が重ね合わさる美しいハーモニーになっていました。特に「早く終わらないかな、早く踊りたい」というくだりの王女の歌が私はお気に入り。この時の太鳳ちゃんも朝夏さんもすごく可愛く歌っていてめっちゃ萌えました。
舞踏会の後の伯爵夫人のソロナンバーも今回から新たに加わった新曲です。王女に対する夫人の愛情が沁みわたる素敵なナンバーでした。
精神安定剤を打たれたあと、一人きりになったアン王女が脱出するくだりは変わってなかったと思います。っていうか、♪自由♪のナンバーが聞こえてきた瞬間に自分の中のテンションギアが上がったのを感じました。CDを聞かなくなって久しいし、ナンバーもほぼ忘れていると思っていたのですが…あの旋律が流れてきた瞬間に20年前の記憶が一気に蘇ってきたんですよね。久しぶりにあの軽やかで楽しいナンバーが見れて本当に嬉しかった。
♪それが人生♪のシーンはジョーとブラッドレーたちの活気あふれる歌いっぷりが見所です。ここは20年前とほぼ同じ。ソファに寝転んでたジョーが「もう帰る」といって起き上がりローマから去る宣言をするくだりとか、めちゃめちゃ懐かしかった。
ここで変わったなと思ったのは、アーヴィングの服装。20年前は囚人服みたいなシャツ着てましたからねww。
アン王女とジョーが初めて出会うシーンの見どころは、二人の掛け合わないやり取り。王女は精神安定剤打たれて頭がボンヤリしている状態なので夢見心地なのですが、出てくる言葉は命令調で(笑)。彼女の正体をこの時点では全く知らないジョーはなぜ上から目線の言葉が彼女から出てくるか分からないで戸惑っちゃうんですよね。
太鳳ちゃんも朝夏さんもすごくキュートに演じてましたが、面白さはやはりコメディセンス抜群だった大地真央さんバージョンのほうが上だったかなぁ。とにかく「間」が絶妙でいつも笑いが起こってた印象があります。それに比べると今回はサラっと流すような感じで演じられていてちょっと寂しかったかな。
ジョーの部屋に連れて行かれたアン王女が、彼のパジャマに感激して寝込んでしまうシーン。初演のパンフを見て思い出しましたが、あの頃はセットが2段になっていて1階が大使館、2階がジョーの部屋だったんですよね。同時進行で両方の騒動を見せているという演出でした。
2020年版はジョーの部屋でのやり取りのみを見せていたので、ここでの大使館での騒動を歌った「ら・ら・るぅ~♪」のシーンがカットされることに。王女が消えたと大使館がざわつくシーンは伯爵夫人、将軍、大使の3人だけで話し合う普通の場面となりました。こっちの方がすっきりして分かりやすい印象でしたね。
ジョーがアン王女の正体を知ってテンションを挙げる場面はほぼ初演再演と変わりなかったと思います。ここでの二人の会話がとても可愛らしくて好きなんですよねぇ。正体を知られているとは気づかないアン王女の慌てっぷりがツボw。
一番面白いのは、部屋を出ていこうとするときにじっとドアの前で王女が立ち尽くしてるシーンかな。つまり、自分で扉を開けた経験がないからジョーが何とかしてくれるのをひたすら待ってるっていうww。それにハタと気づいたジョーが慌てて扉を開けるんですが、ここは何度見ても面白くて好きです。
その後、アン王女が一人で町に繰り出すシーンとなりますが、初演再演とで一番変化したのはアンサンブルさんたちが「イタリア人」として演じていたことです。つまり、みなさんほぼイタリア語のセリフだったんですよね。これはビックリしました。
演出的には、観客にもアン王女の気持ちになってもらおうっていう試みがあったのかなと思いましたが・・・うーーーん、個人的にはそこはやはり日本語セリフでお願いしたかったかもしれない。アンサンブルの皆さん、すごくイタリア語頑張っててほんと感心したんですが、何を言っているのか分からない状態のシーンも多く物語に集中しきれないんですよね。前にもそんな演出舞台を観たことがあるけど…言葉はやはり理解できるものでお願いしたいかも。
♪カット♪のシーンはマリオのテンションが20年前よりもずっと高くなっているうえにセリフではカタコト日本語みたいになってるのでww1日目はただただビックリしてしまった。でも歌になるとちゃんと日本語歌詞になってくれるのでほっと一安心。
明るく弾けるようなナンバーがとても素敵で大好きな場面でもあります。そして、ショートカットになったアン王女がとにかく可愛いのですっ!!太鳳ちゃんも朝夏さんも本当にお似合いでした。
ローマのスペイン階段でアン王女とジョーが再会(ジョーはずっと後付けてたんですけどねw)する場面は帝劇の舞台を目いっぱい使った階段のセットが素晴らしい。二人のほかにもアンサンブルさんたちが数人いることでより臨場感が出ていたと思います。
二人で歌う♪ローマの休日♪のナンバーが流れた時、自然と心の中で私も一緒に歌っていました。音楽が聞こえてきただけでまざまざとあのシーンが蘇ってきてほんと懐かしかった。旋律や歌詞も自然と溢れ出てくる感覚に嬉しくなってしまいました。
2幕は冒頭のアントラクト(始まりを知らせる音楽)がなくなり、新たに伯爵夫人のソロナンバー♪女が黒をまとう時♪が追加されていました。久野さんがとてもチャーミングに演じていらしてとても可愛らしかった。大使が引き連れてきた黒集団も超目立つと思ったけどw、伯爵夫人の黒づくめは違う意味でみんなの目を惹くなぁと(笑)。
このシーンの最後に大使から「ここは私の部屋なのですが」とツッコミを入れられて「恥ずかしい」と顔を覆ってしまう伯爵夫人が特にかわいくてツボでした。
ロッカズカフェでアン王女とジョーが最初にする会話もホノボノしたなかにコミカルさもにじんでいるのでお気に入りです。ここからしばらくのシーンはほぼ初演再演と変わらない感じだったかな。
個人的には王女がシャンパンを注文した時のジョーの反応が面白くて好き!特に和樹くんはボーイさんに向かって高速首振りしながら「無いって言って」アピールしてて思わず吹き出しちゃったよ(笑)。
アーヴィングが合流した時のジョーの慌てっぷりも面白いんですよねぇ。彼女の前では正体を知っていることを悟られたくないのでジョーは実力行使に出まくりアーヴィングはさんざんな目に遭う。今回も珈琲ぶっかけられたり椅子ひっくり返されたりのシーンがしっかり出てきました。
あんだけやられてるのに、ジョーからこっそり真実を聞くとケロっとしちゃうのがまた面白いところ(彼女の前で打ち付けた側と反対の頭を押さえちゃうところとかww)です。
♪ローマ最新観光案内♪のナンバーは今聴いても本当にワクワクした気持ちで観ることができました。楽しそうな3人の姿が本当に印象的。こういう場面が後々の切なさにつながるんですよねぇ。
そして最大の見どころでもあるアンとジョーのスクーター散策場面。再演でもアンサンブルさんたちの合間を縫って軽快に走り回っていましたが、初演の時に出てきたミニチュアの観光名所は無くなってました(笑)。でも、盆が回転するなかで運転するのって結構大変だと思います。それをスマートな顔で演じてるわけですから、やっぱり役者さんはすごい。ちなみに警察に止められる原因となったのは初演と再演は「右折禁止」になっていましたが、2020年は「進入禁止」となってましたw。
警察に事情聴取された後の場面、初演ではスクーターに乗った二人が空中に浮いた演出になっていたのですが、2020年版は舞台中央より少し後ろに巨大な山のような台を設置してその上に固定したスクーターを置いて前方だけ動かせる感じになってました。後ろには町を疾走する景色の映像が流れているので、視覚的にもとてもダイナミックで見ごたえがありましたね。スクーターに乗っている二人の笑顔も素敵すぎて、見ていて自然にウルウルきてしまった。
あと、ナンバーも変わりましたね。初演と再演の♪時間よ止まれ♪から曲調も歌詞も一新されました。2020年版は音楽に壮大さが加わりポップなんだけど心にじわじわと感動が広がっていくような素敵なナンバーに生まれ変わっていたと思います。
市場に突っ込んだあと町の人たちが文句言いまくるシーンがありますが、アンサンブルさんたちはこれをすべてイタリア語で表現。それをジョーとアーヴィングがかわるがわるに同時通訳する演出となってました。この声の当て方がめっちゃ面白かったw。それにしても、ほんと、アンサンブルさんたちは日本語セリフと同時にとイタリア語セリフもを覚えなきゃいけなかったからほんと大変だったと思いますよ(汗)。
警察署長さんは初めは尋問しようとするけど、ジョーが咄嗟にアンと結婚すると嘘をついたのを信じてしまい喜んで二人を解放してしまいます。ホントはダメなことなのに、なんだかすごく明るくて大らかで…そんなところがイタリアっぽいなぁと思えるシーン。初演と再演では署長さんのソロがあったんですが、今回は無くなってしまいちょっと残念(北川潤さんのオペラ歌唱の迫力が懐かしい)。
「真実の口」と「祈りの壁」の場面はほぼ変わりなしです。このシーンからジョーとアン王女の距離感がじわじわと接近していく感じがたまらなく良いんですよねぇ。「祈りの壁」の前で♪もしも♪を歌うアン王女のシーンは彼女の切なる願いが胸に響いてとても感動的でした。
船上パーティで個人的にツボなのはアン王女とマリオが踊るシーン。踊り終わった後にマリオは思わせぶりに彼女に迫るかのようなそぶりを見せるのでアン王女は思わず怯んでしまうのですが、実は彼は彼女の前髪をセットし直したかっただけなんですよね(笑)。この、ちょっとした間のあとにクシを取り出して髪の毛を整えるマリオの流れがめっちゃ好きですww。
あと、ノリノリの音楽が流れてきたときに後ろのバーカウンターに向いていたジョーがお尻フリフリしながら踊ってる姿も可愛くてツボでしたww。
ギターで黒の尾行人の頭をアン王女が叩いてしまう場面、初演ではジョーとマリオがロープのようなもので抑えつけたうえでバーンとやっちゃう演出でしたが、今回は自然な乱闘騒ぎの流れのなかでバーンって感じに変更されてました。まぁ、初演再演のはちょっとやられる側が可哀そうに見えちゃいますから(苦笑)今回のようなシンプルな演出になってよかったですw。
その後一気に距離が縮まったアンとジョーのラブシーンですが、初演再演に比べると少しおとなしくなった印象だったかもしれません。っていうか、初演再演が本当に情熱的だったのでねw。特にキスシーンの時間がかなり長くて当時は密かに秒数数えたりもしてたくらいだし(笑)。メロドラマ的な熱さがあのときはあったなぁと改めて思いました。
2020年版の二人のラブシーンはコロナ禍の影響もあってかキスシーンの情熱度は下がりましたがw、そのぶん、二人の間に流れる切ない時間というものが胸に迫ってきて見ていて涙が自然に溢れました。さらに二人がアパートを出るときに流れるアコーディオンの音色がホントに良くて…切なさ倍増でボロ泣きしてしまった(涙)。
アンが大使館に戻った後に王女としての自覚と覚悟を胸に決めるころ、ジョーは彼女への想いから編集長にネタはガセだったと嘘をついてしまう。アーヴィングは最初はそのことに怒りながらも最後に彼の想いを悟り写真を置いて去っていくんですよね。この、写真を見つめるジョーの表情がとても好き。初演ではけっこう長くその時のジョーの表情にスポットライトが当たっていましたが、再演からそれが短くなり…2020年ではほんの一瞬くらいの時間になってしまったのが個人的には残念。
記者会見の場面で初演再演と演出が変わったなと思ったのが、アン王女が記者一人一人に挨拶をするシーンです。初演と再演では両脇の列を崩さないままでアン王女が近づく感じになっていましたが、2020年では記者たちが2列から1列に整列し挨拶を受ける形になっていました。
「素的な仲間たち」ジョーブラッドレー会の時に、山口祐一郎さんが「あのシーンで向かい合わないでやるのは難しそうだよね」みたいに心配していた場面でもあるのですが、真正面ではなかったもののほぼ皆と向かい合う形で演出されていて違和感ありませんでした。
ラストシーンの♪ローマの休日♪リプライズを見たとき、初演と再演では「もう二人が会うことはないんだろうな」と感じる部分が大きくてとても切なくなったのですが、2020年版の今回を見た後は「何らかの手段で連絡を取ることもあり得るな」って思えたんですよね。つまり、これが永遠の別れというのではなく、いつかまた巡り逢うことができるかもしれないといった希望を感じたんです。20年を経て時代がかなり進化している今だからこその感じ方だったのかもしれません。
それゆえ、最後にジョーが一人になる場面も切なかったけど、どこか明るく爽やかなラストに思えて清々しい気持ちになりました。
初演再演から20年を経た『ローマの休日』ではありましたが、ところどころブラッシュアップされているものの古さを感じない爽やかで新しい素敵な作品になっていたと思います。
主要キャスト感想は次のページにて。