東宝創立90周年記念作品『千と千尋の神隠し』博多公演 2022.05.26ソワレ

舞台『千と千尋の神隠し』を観に福岡・博多まで足を延ばしてきました。

この作品は上演することが決まった時から様々なメディアに取り上げられていて、チケット販売前からかなり大きな話題となっていました。それゆえ、チケット戦線も相当な激戦で確保するのにかなり骨が折れた人も多かったと思います。

実は私は東京公演を2回分(萌音ちゃんと環奈ちゃんの2バージョン)確保していて、3月頭にがっつり遠征する予定になっていたのです。予想していたよりも見やすい席をゲットできていたのでものすごくワクワクしていたのですが…、その前の月に手術と入院が入ってしまい退院してから日が浅い時期だったこともあり体力的に遠征が厳しく、泣く泣く両方手放さざるを得なくなりました。プラチナチケットだったのですが…こればかりはどうにもならず本当に無念でございました…。

が、こうなることも実はちょっと覚悟していた部分はあって…博多公演と名古屋公演の2カ所にもアプローチかけておりました(笑)。博多のほうは金額設定が他の地域より高いので迷ったのですが、それでも価値のある公演だと信じてエントリー。すると、運よく両方チケット確保できてしまった!
というわけで、まずは福岡の博多座まで行くことができたというわけです。こうして普通に観劇行ける体になってホントよかった…(汗)。

東京・大阪に続き博多も全席売り切れだったようで(当日券は若干あったようですが)、私が観劇した日も満員御礼の札が出ておりました。改めて、奇跡的に確保できたチケットに感謝。

福岡入りは今年の1月遠征以来ですが、博多座を訪れるのは今回が初めてでした。まさに大都市エリアの劇場最後の砦だったわけで、ついに足を踏み入れる日がやって来た!博多駅からのアクセスも便利だし中洲川端駅から直結しているのもありがたい。なにより、岡山から博多まで新幹線で意外と近いのもメリット(2時間弱くらい)。
博多座は歌舞伎公演も多く上演しているということもあり、ロビーにはお土産屋さん(主に食べ物系)が数多く並んでいました。歌舞伎座や新橋演舞場もこんな雰囲気だったな。次に行く御園座もたぶん同じかと。

一番の行列を作っていたのはやはり『千と千尋~』の関連グッズ売り場。余裕を持って開演の1時間前に到着したのですが…甘かった(汗)。すでにロビー階段上のほうまでの大行列ができていて購入するまでに20分以上かかりました(苦笑)。さらに無念だったのは、グッズの3分の1がすでに売り切れてしまっていたことです。

特に各劇場限定の「御当地ピンズ」は博多座初日から数日で完売してしまったらしい(汗)。後半に観劇予定だった私としてはもうどうにもできませなんだ…。チケットは完売してるわけだし、多くの人が求めているのは分かっていたと思うのでもう少し量産してほしかったなぁ…。ちなみに、名古屋御園座の観劇も中日あたりなので…おそらく限定ピンズは手に入らない気がする…。

ということで、今回はパンフレットとクリアファイル2種類だけゲットいたしました。

以下、ネタバレを含んだ感想になります。

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2022.05.26 ソワレ  in 博多座(福岡・博多)

キャスト

  • 千尋:上白石萌音
  • ハク:醍醐虎汰朗
  • カオナシ:辻本知彦
  • リン・千尋の母:妃海風
  • 釜爺:田口トモロヲ
  • 湯婆婆・銭婆:朴璐美
  • 兄役・千尋の父:大澄賢也
  • 父役:吉村直
  • 青蛙:おばたのお兄さん

メインキャストさんのほかに大勢のアンサンブルキャストさんが出演していたのですが、彼らなしにはこの舞台は成り立たなかったと思います。そのくらいすごいハードワークをこなされていて、正直びっくりしました。見事なコンビネーション、チームワークで本当に素晴らしかったです。

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あらすじ・概要

原作は宮崎駿さんの長編アニメ映画『千と千尋の神隠し』です。日本で初めて公開されたのは2001年7月。映画は大ヒットし当時の日本歴代興行収入の第一位を獲得(2020年にアニメ映画「鬼滅の刃」が記録更新)。また、ベルリン国際映画賞で金熊賞を獲得するなど海外でも非常に高い評価を受けています。

初めて舞台化されたのは2022年3月の帝国劇場。翻案・演出は『レ・ミゼラブル』の世界初演を手掛けたことでも有名な世界的演出家のジョン・ケアード(過去に日本初演作品として『ナイツテイル』の演出もされていました)。『千と千尋~』の舞台化は長年の夢だったそうで、スタジオジブリに挨拶に行った折には宮崎駿さんとも話が弾んで快くOKがもらえたらしい。

ちなみに、共同翻案と演出補佐をされているのはジョンの奧さんの今井麻緒子さんです。『レ・ミゼラブル』でファンティーヌを演じたことがある女優さんでしたが、今は旦那様のサポートに徹していらっしゃるようですね。

今回の舞台化に当たっては超一流の海外スタッフも多く関わっているようです。舞台美術を担当したのは2012年と2014年のパラリンピックの聖火台デザインを手がけたこともあるジョン・ボウサー、パペットデザインを担当したのは劇団四季の『バケモノの子』や『ロボット・イン・ザ・ガーデン』にも関わっているトビー・オリエ。東宝さんの気合の入り方が波じゃないのが伝わってくる布陣だなと。

上演時間は約3時間5分。途中30分間の休憩があります。

簡単なあらすじは以下の通り。

少女・千尋が引っ越し先に向かう途中、トンネルから八百万の神々の世界へ迷い込むところから始まるこの物語。人間の世界に戻るために様々な出会いを経て、生きる力を呼び醒ましながら奮闘する千尋の姿が見どころです。

<公式HPより引用>

今回は”あらすじ”らしいものがHPにもパンフにも掲載されてないんですよね(汗)。もう少し付け加えると…

トンネルを抜けた先の謎の世界で両親を豚に変えられて困惑していた千尋は、ハクという少年に助けられて「油屋」という湯屋に連れてこられます。ハクに「ここにいるためには働かないといけない」と告げられた千尋は、何とか自分を鼓舞し湯婆婆と働くための契約を交わす。この時に千尋は名前の殆どを奪われ『千』と名付けられました。
人間である千尋は周囲の人からの冷たい視線を浴びますが、面倒見のいいリンやボイラーを担当する釜爺たちに支えられ少しずつ馴染んでいく。そんなある日、”カオナシ”を客人だと思い「油屋」に招生き入れてしまった千尋。そこから大きな事件へと発展していくことに。

ざっと追うとこんな内容かなと。私は映画を1度しか見ていないので(その後テレビ放送されているものも見たことはありますが、そんなに熱心には見てきませんでした 汗)、実はこの作品の奥深さみたいなものが今ひとつ理解できていなかったりします(苦笑)。

初めて観る人には、もしかしたらストーリーはわかりにくいかもしれません。できれば、映画を見てからのほうが楽しめるのかも…。ただ、舞台美術や生演奏の音楽、役者さんのお芝居など視覚だけでも十分刺激的でインパクトが強いのであまり深く考えながら観なくても十分堪能できるんじゃないかなと思いました。

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全体感想

上のほうでもちょこっと触れましたが、私は映画『千と千尋の神隠し』をまともには1回しか観たことがありません。というか、最初は行くつもりではなかったほどあまり興味を持っていませんでした(汗)。そんな私がなぜ行ったかというと…”夢にカオナシが出てきた”からww。
映画が公開されるや否や大きな話題となっていろんなメディアで『千と千尋~』を見る機会が増えてたんですよね。それもあっておそらく脳にあの”カオナシ”がインプットされて夢に出てきたんじゃないかと(笑)。「これはお告げかもしれん!」と思い立ちその週末にダンナと見に行ったのがその1回でしたw。

宮崎作品は『天空の城ラピュタ』にはドハマリして何度も見ているのですが、『千と千尋~』にはそれほど強い衝撃を受けていなくて。ストーリーの意味みたいなものがハッキリ見えてこなかったのも原因のひとつだったかも。
ただ、舞台化するとなるとこれは俄然興味が湧きまして。あの八百万の神々の世界をどのように舞台で表現するのかなどとても関心が高まりチケット確保に至りました。

全体を見て思ったことは…、いやぁ~~~~、ビックリした!!の一言。あそこまで忠実に『千と千尋~』の世界観を再現できるとは…本当に驚きました。この感覚はやはり映画をあらかじめ見て知っているからこそのものだと思います。なので、まだ映画未見で舞台がこれからという人はチェックしてからのほうがいいかもしれない。

一番衝撃的だったのは舞台セットのダイナミックさです。つい最近、四季の『バケモノ~』を観たときに”国産舞台でこれだけお金かけてるのはすごい”と思いましたが、それ以上でした(汗)。久しぶりにあんなすごい巨大セット見た。あれを東京・大阪・博多・北海道・名古屋と運ぶだけでも相当大変だと思う。

舞台中央のを惜しみなく活用して「油屋」の裏も表も見せていく演出が本当に凄い。あの映画で見た通りの建物が目の前に出現していた(たしか、愛媛の道後温泉がモデルになってるんですよね)。暖簾をくぐった先だったり、部屋を抜けた先のボイラーだったり、はたまた千尋やリンたちの女中さん用のお部屋だったり。場面転換することなく回転させることでシーンごとの部屋などが見えるようになっていた構造は見ていて本当にワクワクしました。

湯婆婆の部屋も巧いことセッティングされていて、坊の部屋への導線も映画で見たまんま。湯婆婆が溺愛する坊のベッドにダイブするシーンとかも映画と同じように再現されていて思わず「おおっ」と心の中で唸ってしまいましたw。

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プロジェクションマッピング的な映像演出はどちらかというと少なかったなという印象。冒頭部分とクライマックスの電車、ラストシーンくらいかな。でもまたこの映像がとても美しくて…。見事に『千と千尋~』の不思議で柔らかな世界観を表現していたんですよね。

印象深かったのはオープニングでタイトルが出た後の場面。『千と千尋の神隠し』のタイトル文字の『千』だけが最後に残って、それがまるで陰陽師の式神のようにふわふわと舞っていったと思ったら舞台中央で”鳥居”として形作られていたのです。千尋は両親とその鳥居をくぐって不思議の世界に迷い込むんですが、そのシーンへと繋がるとても印象的な映像で本当に美しかった。

それから、この作品の中で象徴的な電車の場面。ここも背景に映像が使われていたのですが色遣いがとても柔らかで、なんだか自然と心が癒されて涙が溢れてきてしまった。千尋がカオナシや坊ネズミ、ハエドリと一緒に銭婆の元へ電車で向かうのですが、あの何とも言えないゆっくりとした静かな時間とすごいマッチしていたんですよ。まるで一枚の絵画のようだった。まさに舞台ならではの美しい光景。

そして、『千と千尋~』の舞台の世界観を表現するのに欠かせなかったパペット。私はあまりパペットを使った演出が好きではないので、観る前はそこだけが不安要素でした。どうしても動かしている役者さんのほうに神経が向いて物語の世界に入って行きづらい感覚があるんですよね(汗)。

今回の舞台では、パペットがなければ成立しなかったと思えるほど出てきます。演出のジョンはあえて最新テクノロジーではなく日本伝統の歌舞伎の手法でもある”黒子”的なアナログで表現したかったとのこと。正直なところ、全て受け入れられたかと言えばちょっと違和感はありました。

たとえば、釜爺のボイラー室に出てくるススワタリ。黒くてトゲトゲしたチビっこいキャラクターで、アニメでは癒し的な存在でした。あれはさすがに舞台で演じるのは無理だろうと思っていたのですが、ちゃんと出てきましたw。アンサンブルさんたちが屈んで長い針金棒についたススワタリを上下に揺らしながら操っている。あれは相当な体力がいると思う!!
ただ…すごく動きとかも可愛いし表情もアニメのまんまだったんだけど、どうしても動かしてる人の方に目が行ってしまってストーリーの世界に入り込めなかったというのはありました。

それから、坊と湯バードが銭婆の魔法の力で”ネズミ””トリ”に変えられてしまった場面。キャラはアニメに出てくるのとほぼ同じ姿かたちでめっちゃ可愛らしい。銭婆の部屋で糸を紡ぐ動きとか映画のまんまですごいとも思いました。
ただ、この2キャラもアンサンブルさんが屈みながら細かな動きを操っていて…どうしてもそちらに意識が向いてしまう。キャラに目を向けようと思っても、動かしてる人が気になっちゃうんですよね(汗)。あれは大変そうだ…とかいう目で見ちゃうし。

でも、そのほかのパペットシーンは不思議とほとんど違和感がなかったです。それどころか圧倒されまくりました。
特に湯婆婆の顔が巨大化するのはすごい迫力!!たしか『バケモノ~』の時にもバラバラのパーツが重なり合って一つの形を作るっていうシーンがあったなと思い出しました(担当したのは同じ方ですしね)。

個人的に好きだったのは、オクサレ様が千尋の案内で風呂に入ったことで”河の神”に昇華する場面。ドロドロのお化けみたいだったオクサレ様に湯が大量に注がれると(湯はスモークで表現)仙人様みたいな小さなお顔が突然現れるw。そして、満足したように劇場の客席をシューーーッと一周しながら舞台奥へと飛び去って行く演出が!これが実に美しく見事で、なんだかわからないけど涙が溢れてしまいました。なんかすごく神々しいものを見たという気持ちがこみ上げてきたんですよ。
そのあと、千尋が湯婆婆に褒められて抱きしめられ、皆でワイワイ言いながらダンスを踊る。これまで苦労が多かった千尋の笑顔が眩しくて純粋でさらに泣けてしまった。1幕クライマックスのこの一連のシーンは本当に素晴らしかったです。

一番感動的だったのは、やはりハクの場面でしょう。後半、ハクは龍の姿になるのですが(白竜)これがもう本当にアニメのままだった。特に、傷つきながらボイラー室でバタバタと暴れる姿の再現率がハンパない。これ、全部アンサンブルさんが操っていましたからね。龍のパーツを一つ一つ数人で動かすのですが、このチームワークが実に見事。パペットが大きめに作られているのであまり後ろも気にならなかったし、あれは本当に「ハクだ!」って思えた。あの動きを習得するまでもそうと大変だったんじゃないかな。
ハクが龍の姿から人の姿に変わるシーンの演出も見事。千尋がニガダンゴを無理やり口の中に押し込んだ後、暴れまわった龍がバラバラになって後ろからハクの姿が転がってくる、みたいな。本当にあの子が龍だったんだっていう説得力がありました。

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カオナシが巨大化する演出もすごい迫力がありました。「油屋」に侵入したカオナシが従業員たちを次々に呑み込んでどんどん大きくなり、凶暴化していく。この巨大さをカオナシの黒い部分に数人のアンサンブルさんが固まってうごめくことで表現。さらにはあの映画でも不気味だった巨大マウスも不気味に生き生きと動かしてたw。従業員が呑み込まれていくシーンはまるでブラックホールに吸い込まれていくかのような迫力があって面白かった(場面的にはスリリングですが)。

そんなカオナシが千尋からニガダンゴを与えられて苦しみながら飲み込んだ人々を吐き出していくシーンも見事に再現。黒い幕の中で固まっていたアンサンブルさんもワラワラといなくなって、またもとのカオナシの姿へと戻っていく。
面白かったのは、水の中を仰向けで進みながらカオナシが千尋たちを追いかけてくる場面。映画でも非常にユーモラスに描かれていたのですが、舞台でも面白かったw。青蛙さんを吐き出すタイミングも映画のままだったww(舞台版の青蛙さんはそこそこ大きいので吐き出すの大変だったんじゃ…とか思っちゃったww)。

銭婆の家から千尋が帰る場面も非常に感動的でした。龍の姿で迎えに来てくれたハクと一緒に空を飛ぶシーンの表現が素晴らしい。ワイヤーアクションとかではなく、アンサンブルさんが千尋たちを高く持ち上げる形で表現していたのに驚きましたね。すごくアナログ的なんだけど、あの場面は飛ぶということよりも千尋とハクが心を通わせることがメインだと思っているので舞台中央で二人が密に語り合うことでその心情がより深く伝わってくる気がしました。
ハクが本当の名前を思い出した瞬間は思わず涙がこぼれたものなぁ…。映画では泣けなかったけど、舞台で見て始めて泣いた。人の姿に戻ったハクと千尋がおでこを合わせて涙ぐむ再現シーンもとても美しかったです。

そしてラストシーンも非常に印象的。元の世界に戻った千尋は、最初に登場した時よりもしっかりと地に足がついているように見えます。そして、両親の呼ぶ声に応えて舞台袖へと走り去っていく。ここから約30秒くらい舞台の上には誰もいなくて美しい演奏の音楽だけが優しく響いている。ほとんどの舞台はラストシーンに誰かしら居るパターンが多いので、あの演出は非常に斬新だなと思った。まるで物語の余韻を語っているかのようだったな。

ちなみに、この作品は”ミュージカル”ではなくてほぼ”ストレートプレイ”です。2-3曲歌が登場するシーンもありますが、ミュージカルというよりは音楽劇的な感じ。歌えるキャストが多く揃っているのに少し勿体ないとも思いましたが、この舞台はストプレでよかったのだと私は思いました。
で、すごいと思ったのが…、ミュージカルではないのにもかかわらず音楽が生演奏だったことです!映画の音楽がほぼそのまま同じようなタイミングで流れてくるんですけど、生の音楽として聴こえてくるのでよりシーンに臨場感が生まれていたような気がします。本当に贅沢な作品でした。

キャスト感想は次のページにて。