東宝創立90周年記念作品『千と千尋の神隠し』博多公演 2022.05.26ソワレ

主なキャスト感想

上白石萌音ちゃん(千尋役)

萌音ちゃんはイメージにピッタリだなと思ってみる前からとても楽しみにしていたのですが、想像していた以上に”千尋”で本当にびっくりしました。映画を観たことがある人はみんなあの再現率の高いお芝居に衝撃を受けたのではないでしょうか。
朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で少女に近い年齢を演じていた萌音ちゃん。千尋はそこからまたさらに若い役だったわけですが、全く違和感がなかった。

声も、動きも、表情も、細部に渡って本当に”千尋”だったのです。特に走り方が素晴らしい!!映画と同じ動き!!映像からキャラクターが飛びだしてきたかのような錯覚すら覚えました。それだけではなく、感情のお芝居も実に繊細。優しいハクの前で気持ちが緩み号泣してしまう場面は千尋の孤独だった気持ちがひしひしと伝わってきて、気が付いたら私も一緒にボロボロ涙をこぼしていた。
また、1幕ラストで皆に認められて満面の笑顔で踊るシーン。あの嬉しそうな感極まった顔見たら…見てるこちらも「よかったねぇ!」って気持ちが湧いてきてウルウルきてしまう。

対峙するキャラクターによって、瞬時に表情や気持ちを細かく変化させていた萌音ちゃんの千尋。どこをとっても本当にもう、素晴らしいという言葉しか出てこない。しかも私が観劇した日はマチソワの2公演目だったということで…どこにあんな体力が!??と驚かされました。だけど、あのセットの中に生きられるのは楽しいんだろうなとも思った。最初から最後まで生き生きとした瑞々しくピュアで愛しい千尋でした。

醍醐虎汰朗くん(ハク役)

醍醐くんは今回初めて観たんだけど、ハク役がとてもよく似合っててかなりの美少年でした。印象的だったのは、魔法を使う時の手さばき。動きの一つ一つが実に丁寧で流れるようで美しい。あれは惹きつけられますね。

千尋に対して優しかったり冷たかったりすることのある不安定なハク。急に冷たくなった時のお芝居がゾクっとするほど他人行儀。あれは千尋も戸惑うよね。そこからの、「よく頑張ったね」という優しい柔らかい表情。あの落差は千尋には刺激的だっただろうなとw。醍醐くんのハクはそんな感じでミステリアスな印象が強くてなかなか面白かったです。

辻本知彦さん(カオナシ役)

辻本さんはかつてシルクドソレイユの一員として活躍されたこともあるダンサーさんなのでお名前だけは知っていましたが、生で拝見するのは今回が初めてです。

カオナシは終始お面姿で素顔が出ない難しい役どころだったと思いますが、映画で見た時のイメージのまんまな動きを見事に再現されていました。あの独特な微妙に揺れながら浮いているように進む感じ、あの動きはダンサーならではの身体能力があってこそ。実に素晴らしかったです。
ちなみに、時々カオナシ発する「あ…」という”言葉”の場面。途中でエコーとかが入ってくるのでやたら色っぽく聞こえてちょっと赤面しそうになってしまったのはここだけの話(笑)。

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妃海風さん(リン/千尋の母役)

妃海さんはとてもよく通る素敵な声がとても印象的でした。映画のリンの雰囲気とすごく重なるところも多くて、千尋にとっての男前な姐さんっぷりがめっちゃカッコよかった。あのリンさんがいたからこそ千尋は知らない世界でも頑張れたんだよなという説得力があったと思います。

お母さん役は打って変わってクールな感じ。映画では声を沢口靖子さんが演じていましたが、その雰囲気とすごく重なるものがありましたね。旦那さんの行動に呆れつつも、結局はそれに乗せられてしまって我が道を行くキャラが最高でしたw。

田口トモロヲさん(釜爺役)

釜爺は蜘蛛を模したキャラなのでどう表現するのかと思ったら、アンサンブルさんたちが何本もの手を担当していました。つまり、田口さんとの共同作業的な部分が大きく…あれは息を合わせなければ成立しない。お稽古本当に大変だったと思います。本当に見事なコンビネーションで長く伸びる手で引き出し開けたりと楽しませてもらいました。

釜爺も千尋を優しく見守るキャラの一人。豪傑そうなんだけどどこか柔らかくて茶目っ気のある雰囲気で親近感が沸きました。ナレーションの時のトモロヲさんの声とまるで違うの、ほんとすごいよなぁ。

朴璐美さん(湯婆婆/銭婆役)

朴さんは昨年ミュージカル『オクトーバースカイ』で初めて拝見したのですが、肝っ玉母ちゃんっぷりと圧倒的な歌唱力が本当に素晴らしくてめちゃめちゃ感動したんですよね。今回の湯婆婆・銭婆役もとても楽しみにしていました。

いやぁ…、ほんっと最高でした!!本家の夏木マリさんが映画で演じたあの迫力そのまま。それにも全然負けていなかったと思います。傍若無人に振舞う時の荒々しさ、千尋を怒鳴りつける時の震えあがるような圧力、それなのに坊に対しては甘々で猫なで声。この切り替えの芝居がもう本当にお見事としか言いようがありません。朴さんは声優さんでもありますから、その技をいかんなくこの役に生かされていましたよね。

それに対して銭婆は最初に登場した時は圧力を感じさせるような雰囲気だったんだけど、どこかチャーミングで。明らかに違う人物だなというのが分かった。そして千尋に対してのあの母性溢れる優しさ…。本当に湯婆婆を演じていた人なのかと思うほどの変わりっぷり。素晴らしい二役の演じ分け。
これからもどんどん舞台で活躍していただきたい。

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おばたのお兄さん(青蛙役)

あのアニメに出てきた蛙さんをどう表現するのかと思ったら、まさかのパペットで最初はビックリしました。等身大ではないキャラなので、常に中腰状態で動くときも蛙飛び状態。あれはめちゃめちゃ体力つけないとできないと思います。それだけでも感動してしまった。

カオナシに呑み込まれた後は、その”声”も担当。さすがモノマネを得意とする芸人さんだけあって、アニメの雰囲気とほぼ同じものを再現。っていうか、映画版の青蛙さんと声がほぼ同じだったのもすごかった。映画で声を担当された我集院達也さんのもとへも修行に行かれていたようで、その時の動画も面白いですw。

兄役と千尋の父を担当した大澄賢也さん、私個人としては千尋のお父さん役がすごく印象深かったです。映画の雰囲気とすごく重なって見えました。兄役はどのキャラかよく分かってなかったので(汗)次回確認したいと思います。

父役の吉村直さんは意地の悪い番頭さんをユーモラスに演じられていて面白かった。対応する相手によって態度を変えちゃうところとか、ああいう人って今の時代にもいるよね~みたいな感じで見ちゃったよw。

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後述

私が観劇した回は湯婆婆と銭婆を演じた朴璐美さんの博多千穐楽だったようで、カテコでの挨拶がありました。萌音ちゃんが一生懸命朴さんに「どうぞどうぞ前に!」って笑顔でアピールしてて、湯婆婆姿の朴さんがそれに恐縮しまくってる構図がめっちゃ可愛くて萌えましたw。

最初の一言が「カツラを脱いだ方がいいのか迷うんですけど、このままで」だったので舞台のみんなも客席も大爆笑ww。朴さん、面白い方だ(笑)。「大好きなカンパニーのみんなのおかげで今の私はここにいます」と感慨深そうな表情で語っていた姿が印象的。さらに、ある”事情”で一時期離脱しなければならなくなった橋本環奈ちゃんへの気遣いの言葉もありました。環奈ちゃんはなんとか博多千穐楽に間に合って元気に復活したようなので本当によかったです。

最後に湯婆婆として「湯屋一同、心を込めて!!」と大迫力の発生を見せた朴さん、あのすごい舞台を演じてきて皿にあの声が出るのは本当にさすがとしか言いようがなかった。最後の最後は朴さんとして「これから先なんとか完走したいので応援よろしくお願いします」と〆ていらっしゃいました。本当にお疲れ様でした!

カテコ、メインもアンサンブルも本当に良い雰囲気で仲がよさそうだったな。カオナシ役の辻本さんはカテコでようやく素顔を出せていましたが、めっちゃ笑顔でハク役の醍醐くんとイチャイチャ遊んでたの可愛かった(笑)。

博多は5月28日に千穐楽を無事に迎えたとのことです。お疲れ様でした。また、作品が菊田一夫演劇大賞に輝いたとのこと、おめでとうございます!!

今回の『千と千尋~』、舞台表現の無限の可能性を改めて見た気がします。幸運なことに私はあと1回名古屋公演を見ることができます。次は環奈ちゃんの千尋の予定。とても楽しみです。

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