『宝塚BOYS』 08.08.27マチネ・28ソワレ感想

シアタークリエで上演している『宝塚BOYS』を観に行ってきました。

 

昨年の初演で大感動してしまった舞台で絶対再演してほしいと思っていたのですが、まさかこんなに早く実現してくれるとは・・・!キャストの入れ替えは3人ほどあったのですが、あの時の感動はまったく色褪せることなく、むしろそれ以上にパワーアップして戻ってきてくれました。
なお、初演の感想についてはこのブログにも書いてますので興味がありましたら「こちら」を読んでみてください。

 

27日マチネが前売り段階で確保していたチケット。前から6列目のほぼ中央という絶好のポジションでして、役者さん達の表情がとてもよく見えたし気持ちがわかりすぎるほど伝わってきてボロ泣き(涙)。
観劇はこの日のみだったはずなのですが・・・あまりに感動が大きかったので涙目のまま勢いで"ワンモアチケット"割引を活用してしまった(笑)。リピートする人はチケット安く売ってくれるというありがたいシステムです。ちなみになぜ翌日のソワレを選んだかと言えば・・・特別カーテンコールがあったからでして。
連チャンでどうかなとは思っていたんですが・・・2度目も結果的に大号泣。1回目よりはかなり後方だったものの右隣が壁・左隣が空席でして・・・なんか前回よりもこの芝居の世界に入り込んで観ちゃったんですよね。心置きなく泣ける環境って感じで。もう2幕中盤あたりからクライマックスにかけては涙を抑えようにもどうにもこうにも抑えがきかなくて最後にはタオル口に当てたまま状態でした(汗)。

 

カーテンコールの最初のほうでも涙目状態だったんですが、2度目の観劇では特別カーテンコールが行われたのでなんとかここで現実復帰(笑)。この特別カーテンコールでは『宝塚BOYS』の舞台写真にそれぞれ一人ずつ役者さんがサインしたものを9名限定でプレゼントするという抽選会が行われました。

司会はBOYS本編でもリーダー役だった花禄さんですが、さすが喋りの達人。「我々はとても疲れています!」としょっぱなで笑いを誘い抽選中も色々盛り上げてくれました。比較的お元気な山内さんとの掛け合いも楽しく、抽選には予想通り当たりませんでしたが(苦笑)とても楽しい時間を過ごせました。面白かったのは「9名限定」と言ったときに山内さんがすかさず「少なっっ!」とツッコミ入れたところ。いやホントですよ~、少ないよねぇ(笑)。我々の気持ちを代弁してくれてありがとう(笑)。あと、トップバッターの山路さんが「本当におれのサインでいいんだろうか」とオロオロしてたのも可愛くて笑えました(笑)。

裏話としては劇中で長谷川を演じる瀬川くんが転ぶシーンがあるんですけど、そこでなんと2度も脱臼してるんだとか。そのシーンから先もけっこうあるのに・・・それでも芝居続ける瀬川くんすごいな。そんなわけで彼は今「脱臼王子」と呼ばれているようです(笑)。
あと花禄さんの抽選のときのリアクションも面白かったなぁ。一番最後の抽選だったので花録さんが煽ったところ、最前列のおばちゃんが欲しいアピールしてたようなんですよ。その方に対して「分かりましたっ!」と気合い入れてくじを引いて番号を観た瞬間「おおお!」とあたかもその人の座席番号当てたかのような表情になり実は全然違う番号だったみたいなやりとりが笑えました。外れてもそれだけ花録さんに構ってもらえれば本望だったんじゃないだろうか(笑)。こういうお客さんを乗せるのがやっぱり巧い人だなぁと思いました。

 

以下、ネタバレを含んだ感想になります。ご注意ください。

 

スポンサーリンク

08.08.26マチネ・27ソワレ in シアタークリエ

 

出演者
竹内重雄:葛山信吾、星野丈治:吉野圭吾、上原金蔵:柳家花緑、太田川剛:山内圭哉、長谷川好弥:瀬川亮、竹田幹夫:森本亮治、山田浩二:猪野学、君原良枝:初風諄、池田和也:山路和弘

 

ストーリーの舞台は戦後間もない頃。上原の書いた宝塚宛の一通の手紙が引き金となり宝塚男子部が結成されます。しかし、彼らに待ち受けていたのは華やかなステージではなく苦悩の連続だった。宝塚に男子部があったことを知ったのは去年の初演が上演されたとき。戦後間もなくから数年しか続かなかった宝塚男子部の実話がこの舞台で描かれています。
昨年観たのよりも変わったなと思ったのがキャラクター一人一人の個性がよりシッカリしていたことですね。これは新しくキャスティングされた3人の起用が非常に大きいと思いました。そのためか、ストーリー全体にもメリハリが効いていてより分かりやすい舞台になっていたんじゃないでしょうか。笑えるシーンではしっかり笑わせて、泣けるシーンではしっかりとその世界観を描いている。初演の舞台も大好きだったけど、再演の舞台はさらに好きになったような気がします。

 

場面別感想

出会い

まず冒頭で戦争の轟音と共に登場するのですが、このシーンがより色濃く描かれていて思わずウルっときてしまいました…。特に戦闘機を見送るときの表情が戦友たちを見送っているような眼差しで、戦争中の上原の無念の気持ちみたいなものが伝わってきて泣けます(涙)。
そして宝塚稽古場に男子部営業担当の池田と上原の仲間となる一期生たちが集まります。この作品がなぜ泣けるのかと言えば、彼らの辿ってきた背景があまりにも過酷で重いからなんですよね。上原は人間魚雷・回天所属で多くの仲間を見送っている。竹内は満州から命からがら戻ってきているし、長谷川は絶望的な戦いを強いられていた南方・フィリピンからの帰還兵であることがここで判明します。みんな戦争の辛く過酷な体験を経て自分たちの生きる意味を探しに宝塚男子部に集まってきた人ばかり。それを想うだけでも泣けます。

いよいよレッスンが開始されるのですが、当時のみんなの心はバラバラ。特に自称特攻あがりの山田と男子部唯一のスカウト要員・星野のつばぜり合いがかなり笑えます!やたら反抗心燃やしてる山田を無視し続ける星野の図がかなり面白くてここは爆笑ですね(笑)。特に山田を演じている猪野さんの動きがあまりにも可愛くてウケます。バレエレッスンのBOYSも一人一人の動きが非常に面白い。星野はプロなので動きも美しいのですが、太田川、長谷川はやけに重々しいし竹内もしまいには回ったふりで胡麻化しちゃってる(笑)。そんななか「おおっ」と思うのが上原。バレエの動きになってます。さすがバレエダンサーを兄に持つ花録さんだなぁと今年も感激。ちなみに山田は星野に対抗して優雅に振舞おうとしているのですがなぜかキメポーズが和風(笑)。猪野さんの表情が絶妙です!

そんなこんなで仲間の連携はバラバラながらも、戦争を生き抜いた彼らは宝塚の舞台に立てることを夢見て必死に稽古を続けています。失った青春を取り戻したいと・・・。

 

衝突

レッスンを重ねていく中で次第に心通わせていくBOYS。ところが、星野と他のメンバーとの間にはまだ壁があります。一人レベルが違う星野としては彼らのことがこの時点では鬱陶しい存在ではあるのですが、心のどこかでその輪に入りたいとも思ってるんですよね。初演の時はあまりそんな風に感じられなかったのでこれは新たな発見でした。ただ、寮の世話をしてくれるオバちゃん…君原さんのことはとても慕っている。まるで自分の母親のように君原に甘える星野がとても印象的です。

ここにはもう一つのドラマがあって・・・山田が実は不遇な家庭育ちで特攻隊の出撃を待ちながら戦後を迎えたということが話題に上ります。この話を始めた時の長谷川の"大衆演劇"スタイル話術が面白いんですよ。しまいにはツッコミ入れられてシュンとしてしまうところが可愛い(←瀬川くんが演じるとなおさら・・・笑)。しかし、その話を聞いた星野は「闇市の愚連隊がこんな場所にいるのはふさわしくない」と言い出し場の空気が一気に悪くなる。そこで一番星野に食って掛かったのが意外にも竹内でした。いつもは場の空気に流されるようなタイプの竹内が「美しいものは美しいと思いたい!みんな戦争で辛い想いをしてきた」と反論するシーンはとても印象的でした。

 

最初のチャンス

そんなある日、池田が「いい知らせと悪い知らせ」を持ってやってきます。彼が入ってきた時レッスン中だったBOYSは整列して並ぶんですが・・・星野・上原・竹内・太田川・長谷川・山田の順番。これって成績順らしいです(笑)。長谷川と山田が無理して前のほうに並ぼうとしていたのを太田川が引きずり戻したのがかなり笑えました。
で、「いい知らせ」というのが宝塚大劇場出演決定のニュース。ところがみんなが喜んだのもつかの間、選ばれたのは上原と長谷川。自分が当然選ばれると信じていた星野は大ショックでますます拗ねてしまいます。この奇跡の選出にかなりのハイテンションで狂喜乱舞している長谷川くんと、あまりの嬉しさに喜びが顔に出てしまいそれを必死に抑えようとしている上原さんが可愛くて仕方がなかった(笑)。

しかしそのすぐ後に告げられた「悪い知らせ」が厳禁とされていた宝塚女子部との接触を図った者がいるという知らせ。女子部と少しでも接触した者は即刻クビという宣告を初めに受けていたのでその場にいる全員が顔面蒼白に。証拠は名前のない恋文。その文面が誰が考え付くんだこんな文章?っていう恥ずかしい内容で・・・「これ読んでいてとっても恥ずかしい!」と激怒する池田さんのキレ具合がめちゃくちゃ笑えます。目をつぶって正直に手を挙げれば許すと言う池田でしたが誰も挙手しようとしません。このとき太田川が無理やり長谷川の手を上げさせようとして誤って自分の手を挙げてしまうんですが、その時の言訳が「こいつ(長谷川)の汗で滑って」っていうものでここも爆笑(笑)。たしかに長谷川役の瀬川くん、素晴らしい肉体に汗がたくさん吹き出しておりました(笑)。

正直に名乗り出ないなら大劇場の話はなかったことにするということになり、慌てた上原はリーダーとして今夜一睡もしないので正直に名乗り出てほしいと懇願。皆が疑心暗鬼になりチームワークが乱れそうになった時、さらに悪いことに星野が皆を挑発します。その流れから星野の過去の生い立ちが明らかに・・・。その話を聞いた時、今までずっと星野に反発していた山田の気持ちが変わります。このシーンがすごくよかった。それにつられるようにみんなの星野に対する気持ちも変化していくんですよね。なんだかんだ文句言ってても皆すごく優しくて泣けてきます。そんな場の空気を変えるために竹内が「モン・パリ」の合唱を促します。辛く苦しい時でも歌を歌えば乗り越えられる。彼らの無邪気さが可愛くてまた泣けるんだよな・・・。

 

山田の過去

手紙事件のさなか、新入部員の竹田がやってきます。皆が手紙の件で疑心暗鬼になっている時の入部だったとは・・・なんともお気の毒なことだ(笑)。でもさっそくみんなの輪に溶け込んでる竹田に次々と情報が。特に星野に関して太田川が「ここには妖怪がおるからな」と吹き込んでるのには笑えます。
竹田を囲んで和やかな時間を過ごしていますが、手紙の件を名乗り出るまで一睡もしないと宣言した上原はそんな雰囲気に逆ギレ(笑)。さらに一睡もしない上原の態度に星野も逆ギレと大変な事態に(笑)。

そのまま星野も皆の輪に残ることになったのですが、そこで竹田の生い立ちを聞きます。母親は空襲で死に、父親は戦地に赴いたままいまだに行方不明・・・。その苛酷な運命に一同も気が沈んでしまう。そこで山田と出会った話に入ろうとすると、部屋にこもっていた山田が突然出てきて必死に口止め。それを見て「お前かなりな山田の秘密握ってるやろ」と悪魔のささやきを入れる太田川が笑えます(笑)。
なんやかんやで場が大騒ぎになったところに池田が一升瓶を持って訪問。手紙は男子部が書いたものではなく女子部の誰かが嫌がらせで書いたことが判明し、疑ったことを詫びるのですが・・・このときの最初の謝り方が照れ隠しなのか本当に誤ってるように見えないところがなんとも愛らしい(笑)。しかし、そこまでして自分たちが嫌われていると知った男子部メンバーたちはさらに暗い気持ちになってしまいます。そんな気持ちを紛らわせるように山田の持ってきた酒を飲む一同ですが、上原と長谷川にとってはさらに落ち込む知らせが。彼らが任されるのは「馬の脚」。前足と後足のみで顔が出ないという屈辱的な役柄。これを聞いた時の長谷川が「それ、どこかの外人の名前ですか?」とツッコミ入れるのが可愛かったけど、でも、なんだか切ないよなぁ。

池田が帰った後、酒でなんとか気持ちを盛り返した彼ら。その勢いからか星野もいつの間にか彼らの輪に溶け込んでいます。初演を見た時よりも星野が彼らに溶け込むまでの時間が短くなったような気がしました。で、お酒の勢いもあってか、竹田は山田の生い立ちを話してしまいます。ヤクザな家に生まれたというのは嘘で実は日舞の家の息子であること、特攻隊に行って生き残ったのは兄のほうで戦後は愚連隊の使いっ走りだったこと。初めは皆笑いながら山田の嘘を聞いていましたが、そのあとの告白で誰も笑えなくなってしまう。

「特攻に行った兄が廃人のように戻ってきて母親は気がおかしくなってしまった。心細くて自分がどう生きていいかわからない。虚勢を張って生きなければどうやって生きていいのかわからない」

この山田の告白は涙なしには聞けないですよ(涙)。山田が戦争で受けた心の傷を想うと切なくて切なくて涙がボロボロ零れてしまった。そんな自分を奮い立たせようと皆で歌を歌うのですが、それを聞いた竹田は自分の父親を思い出して飛び出してしまう。皆それぞれ、戦争で受けた傷に苦しんでいました・・・。でも、皮肉にもこの事件がもとで男子部はみんな心が一つになるんですよね。

 

焦り

上原と長谷川が「馬の足」をやってからさらに月日がたち、今度は長谷川が山田と竹田に「馬の足」指導をしているんですが、ここのやりとりが非常に面白い。馬の「あおちゃん」やってる山田と竹田の動きがとにかく可愛いんですよ。ダメ出しする長谷川に蹴りいれたり終いにはやりたい放題(ちなみにこのシーンで瀬川くんは2度脱臼しているんだとか)。それにしても長谷川役の瀬川くんの横に馬の「あおちゃん」がいる図は・・・NHK朝ドラ「ファイト」を思い出しちゃうよなぁ。瀬川くんと馬とはあのドラマ以来切っても切れない間柄になってるのかも(笑)。

そこへ池田に「このままでは飼い殺しだ」と珍しく激昂している竹内がやってきます。研修期間の2年はとっくに過ぎているのに一向に宝塚大劇場への出演どころか顔を出す舞台にも立たせてもらえない。いくら努力してもいっこうに光が見えてこない状況に誰もが焦りを募らせていました。挙句には雑誌に「男子部は必要ない」というような記事まで載せられて彼らの気持ちはさらに追い詰められていた。そんな彼らに池田は「自分たちで選んだ道ではなかったのか!」と一喝。誰かが必ずその努力を見ている。途中であきらめたら後悔する・・・と、まるで息子に父親が激励するかのように彼らを鼓舞する池田の姿に思わず涙がこぼれますす(涙)。男子部メンバーの誰よりも辛い想いをしていたのはもしかしたら池田かもしれない・・・。

そんな池田の様子を見ていた君原さんが「ここだけの秘密」として彼の過去を話します。池田は本当は演出希望だったけれども夢破れて今の地位に甘んじていることを聞いた男子部メンバー。かつて抱いた夢が破れた池田の過去を知って今まで抱いていた嫌悪感のようなものが消えていきます。夢破れた経験がある池田だから男子部の気持ちも痛いほど分かっていたんだと思います。そのことをメンバーたちが知ってくれたことはとてもよかった。

 

男女合同公演企画

それからさらに時間が経っても彼らの立場は一向に良くならず、星野は「このままここにいてはいけないんじゃないのか!?」と苛立ちを隠せない。そんな時に竹田が密かに付き合っている女子部のメンバーから「男女合同公演の企画が出ているらしい」という情報を持ってきて一同とたんにテンションが上がります。が、情報の元が自分たちをよく思っていない女子部からということもありにわかには信じられない星野。さらに竹田が付き合っている子が実は長谷川の想い人だったことも発覚(笑)。喜びどころか微妙なテンションに。長谷川くんが振られた理由と言うのが「厭らしい目で見るから」ってことらしいのですが・・・たしかにテンション高い長谷川君だから誤解されちゃったのかもねぇ(苦笑)。

ところが、男女合同の話は本当に進んでいて池田が準備稿の台本を持ってきます。それを食いつくように見つめている男子部メンバーたちが面白くて可愛い。まさに飢えた獣状態で食い入るように台本を読み込んでいくと、そこには彼らの芸名が掲載されていました。一度は非難された彼らの芸名ですが、池田はちゃんと覚えていて載せてくれたんですね・・・。しかし、そこに掲載されている太田川の名前を見て複雑な心境になってしまう。皆と一緒に頑張ってきた太田川でしたが、結核を発病して入院してしまった。実は太田川には肺が一つしかなかったために徴兵を免れていたという過去がありました。国のために役に立てなかったと悔やんでいた太田川はこの宝塚男子部でひと花咲かせようとしていたんですね・・・。彼のためにも頑張ろうとさっそく稽古に入るメンバーたちですが、これがまた面白かった!

長谷川のシーンには女性との絡みもあるということで長谷川の相手役に竹内が立候補するのですが・・・この竹内の女性の仕草が爆笑もので!さらに監督している星野ののノリノリ加減もかなり笑えます(笑)。ちなみに他のみんなは動物役してます(笑)。これでは練習にならないと君原さんを女性役に抜擢。「おばちゃんも昔は少女だった」という星野ですが・・・その時示した背丈は10センチくらいじゃなかったか!?その星野が示したミニ君原さんを上原が手のひらに載せている仕草がまた可愛くて面白かったです(笑)。このあたりの連携はさすがですねぇ。で、実際に君原さんを交えて稽古するんですが、あまりにも演技慣れしているのでみんなびっくり。実は君原さんも昔宝塚の女優だったことが判明します。宝塚大劇場が完成する直前、体を壊して退団。君原さんも夢破れた一人でした・・・。そんな彼女とともに生き生きと芝居をする彼らを見ていたらまた涙が出ちゃいました(涙)。

 

限界

ところが台本の第2稿が上がってきたのを最後に男女合同の話はパッタリなくなってしまう。何百回も読んだ台本のヨレ具合がなんだか悲しい…。そんな状況についに星野が我慢しきれなくなり男子部を抜けると言い出しました。必死に止めようとする長谷川たちですが、「夢は見るものではなく掴むものなんだよ!」と言い放つ星野の言葉に誰も反論できない。この場所でこのメンバーで共に夢を見たいと思っていた星野の気持ちはみんな察していたと思うんですよ。彼らの心はもはや限界までたどりついてしまってたんですね・・・。

待てども暮らせども状況は悪くなる一方でどうにもならない。あまりにも悲しすぎる結末・・・。でも、去っていこうとする星野に「ここで生きていたんでしょ!そのことを自分の宝物にしないと!」と涙ながらに声をかける君原さんの言葉が胸に突き刺さります。彼らのやってきたことは一つも無駄じゃなかったことを誰よりもわかっていた君原さん。今まで歩んできたことを誰よも認めてくれる君原さんのこの言葉は涙なしには聞けません・・・。

 

残酷な結末

さらに悪いことに、竹田の元に父親が終戦の年に中国で戦死していたという遅すぎる通知が届いてしまいます。復員兵の中に父親の姿が必ずあるとずっと信じ続けていた竹田でしたが、その願いはあまりにも無残に散ってしまいました(涙)。耐え切れず一人部屋にこもって号泣する竹田に涙・・・。「竹田の親父を殺したのは誰だ!」とまるで自分のことのように嘆く山田の優しさにも涙・・・。

そんな空気の中、上原が太田川が病院から抜け出したと告げにやってきます。きっと彼がいるのは宝塚のけいこ場だ・・・みんながそう悟って出て行ったあと、ひっそりと竹田は部屋から出てきます。そしてそのままモノローグに入るのですが・・・「運がいいとか悪いとかそんな言葉は聞きたくありません。ただ、懸命に生きていたのです」という言葉が胸に突き刺さりさらに涙が出ます(涙)。戦後の混乱期を少しでも明るく照らしたくて彼らはここまで懸命に生きてきたんですよね・・・。そう思うと胸が締め付けられたように苦しくて涙が止まらなかった。

 

解散

稽古場に駆けつけてみると案の定病院を抜け出した太田川がいました。「夢の続きが見たかったんや」この言葉が涙を誘います・・・。彼も皆と戦ってきた宝塚男子部の戦友の一人。それなのに一人だけ病院の一室に閉じ込められていることがどれだけ辛かったか。

全員集まっている夜のけいこ場に事情を聴きつけた池田もやってきます。その時の「おーい、子供たち」という悲しそうな声がとても切ない・・・。男子部と月日を重ねていくうちに池田は彼らを本当の息子のように想っていったんですよね。しかし、そんな彼らに池田は最も残酷な宣告を告げなければならなかった・・・「解散が決まった」と・・・。予測はしながらもその日が来ないでほしいとずっと願っていた男子部のメンバーにとってあまりにも悲しすぎる宣告に涙・・・。諦めきれない竹内が「小林一三に会わせてほしい」と血を吐くような想いで池田に詰め寄るシーンでさらに涙・・・。「力不足だったのかな」と泣き崩れるメンバーに「ここが女の園宝塚だっただけだ」と絞り出すように言葉を出す池田に涙涙涙・・・。もうこのクライマックスは号泣の嵐ですよ(涙)。

そんな空気の中、竹内は絞り出すように歌を歌い始めます。皆が辛い時苦しい時、いつも率先して歌を歌いだしていたのは竹内でした。皆その歌に乗って絆を深めていった。ここでも「おお宝塚」を熱唱する男子部メンバーたち。それを見るのが辛くて一人立ち去ろうとする池田を一丸となってその輪に加える彼らの姿に涙が止まりませんでした(涙)。池田も男子部メンバーの大切な一人だったんですね・・・。

 

レビューから別れへ

涙の解散式から場面は華やかな宝塚大劇場シーンに移ります。彼らが夢見てやまなかったきらびやかな世界が想像の世界で実現するんです。燕尾服を着て華やかに歌い踊る男子部メンバー。ここは笑顔で拍手するシーンだと思うんですが・・・前のシーンがあったんで私はなかなか涙を止めることが出来ない。メンバーみんなの動きがどことなくぎこちなくて面白かったりもするんですが、ソロのダンスシーンあたりからはまたさらに涙があふれて仕方なくなっちゃうんですよね。

一番泣けるのが君原さんがドレス姿で出てきてそのあと男子部メンバーが羽つきで出てくるシーン。宝塚のショーそのものみたいな感じで登場するんですが、かえってその姿が切なくて泣けてくる。どんなにかこの舞台をみんな夢見ていたんだろう・・・その想いが膨らめば膨らむほど涙なくしては見れません。そしてラスト、すべてのショーが終わった後の皆の哀しそうな表情でまた号泣(涙)。特に最後まで残っていた上原の無念の表情には涙が止まりませんでした・・・。

そして皆それぞれの道を歩むために宝塚のけいこ場を後にします。ここは初演ではものすごく泣けるシーンになっていたのですが、再演ではけっこうあっさりと爽やかに描かれていましたね。ショーでかなり泣かされてたので私的にはこれでもよかったかも(苦笑)。宝塚に立てなかった無念は皆それぞれ同じだけれども、去り際の彼らの表情には次を見据えた明るい表情がありました。一番最後に出ていく上原が深々と稽古場に礼をするのですが、その姿に今まで彼らが積み重ねていたものは決して無駄ではなかった、いつかきっと美しい思い出になると思わずにはいられませんでした。

 

キャストについて

最後にキャストについて少し。初めにも書いたように、初演よりもそれぞれのキャラクター像がしっかりしていてとても見やすくなってました。竹内役の葛山さん、前回よりもメリハリの効いた演技で優しさと激しさの芝居がとてもよかった。

上原役の花録さん、得意のピアノを今回も披露してくれたしバレエの立ち姿もきれいでしたが、それ以上に芝居が濃くなっててとても感動的でした。

山田役の猪野さん、前回も面白かったんですが、今回は太田川とのキャラクターの違いがハッキリ出ていたのでさらにそれが際立ってましたね。バレエレッスンで足がつったりする小ネタも最高ですし、勇んでいながらも実はとても優しかったりする山田の心の内がとてもよく出ていて泣かせていただきました。ふんどし姿も可愛かった(笑)。

星野役の吉野さん、初演よりもかなり男子部に寄った感じになってましたね。本当は男子部にものすごく愛着があるという星野の複雑な心境がとてもよく伝わってきました。ダンスはさすが群を抜いていて、そのおかげで他のメンバーの動きがさらに面白く見えました。

新メンバーの太田川役の山内さん、独特の世界観があって舞台に勢いがついてました。今回の舞台がメリハリついたと思えたのは山内さんの加入が大きかったと思います。少し行き過ぎかなと思える小ネタもありましたが(笑)十分楽しませてもらいました。ただ、結核患者にはちょっと見えなかったかも(汗)。それにしても髪の毛のある山内さん…新鮮でした(笑)。

同じく新メンバーの長谷川役の瀬川くん。いつか見てみたいと思っていた瀬川くんの舞台をついに見ることができてまずそれがすごく嬉しかったです。見かけによらずものすごくいい肉体してるんでびっくり。さすが元ラガーマンだと思ってしまった。それに舞台の瀬川くんの演技はとてもダイナミックで新鮮です。長谷川のキャラクターが以前にもまして濃く感じられました。

もう一人の新メンバー竹田役の森本くん。彼の舞台を見るのは2度目なのですが、こういう末っ子キャラが合ってるかもしれませんね。ものすごく楽しそうに演じていたのがとても印象的でした。ラストのモノローク゛では涙ながらに語っていて思わずウルウルさせられました。

池田役の山路さん。初演よりもさらに「父性」が強くなっているように感じられました。手紙事件で疑ったことを詫びるシーンは可愛くて面白かったけど、日にちがたつにつれて男子部のメンバーにどんどん傾倒していく芝居がとても感動的でした。ラスト、歌うみんなの輪の中に入って目を潤ませている姿にはこちらも号泣でしたよ。

君原役の初風さん。こちらも初演以上に「母性」を感じさせるお芝居でとても感動しました。男子部や池田のことを誰よりも理解して応援していた君原さんの優しさが痛いほど伝わってきてかなり泣けます。ショーのときのドレスも歌声もとても素敵でした。

 

昨年もDVD購入しちゃったんですが、また今年もDVD購入しちゃいました(笑)。それほど素晴らしかった再演!うーーん、名古屋の大千秋楽に行きたくなってしまったよ~。絶対にまた上演してほしい作品です。

error: Content is protected !!