劇団四季ミュージカル『ウィキッド』を観に四季劇場・秋まで行ってきました。
約1か月ぶりの『ウィキッド』。今回は抽選販売で奇跡的に確保できた1回分での観劇になります(自力確保したものが来月あと1回)。早いものでこの作品で2023年納めとなりました。
ちなみに、このチケットを確保した時はまだ山口県在住で遠征を予定したため2日間連続で観る予定を組んでいたのですが、それも今回でたぶんラスト。この約10年間、特に関東圏での作品は交通費や時間の都合で連ちゃん予定を組んでの観劇計画を立ててきましたが(苦笑)、来年からはその苦労からも解放されそうです。ちなみに関西遠征は来年1月でひとまずピリオド。生活環境変化に伴い、遠征観劇回数はほとんどなくなるかもしれません。それはそれでちょっと寂しいんですが…。
前回『ウィキッド』観に来た時はロビーが大混雑しグッズ売り場もすごい行列だったので今回もちょっと覚悟していたのですが(グッズはもう欲しいやつは買い尽くしたんですけどw)、行ってみたらかなり余裕がある感じでビックリ。グッズの売り場前もほとんど並んでいる人はおらず(汗)、たしか前売り段階でチケット完売しているんだよな??と不思議な気持ちになってしまいました。
で、客席に入ってみたらその理由がなんとなくわかりまして。1階席半分から後ろと2階席(こちらは見えなかったのでどのくらいかは分かりませんが)に学生の団体さんがズラリ。それでチケットが早い段階で完売してしまっていたのかと納得しました。
四季の客席で団体さんを見かけることは多いんですが…、個人的には”団体の日”と”一般の日”と分けてほしいなともちょっと感じてしまいます。団体さんは本当に見たくて来てるというより学校の課外学習で来てる意味合いのほうが強いので、どうしても退屈してしまい集中力が切れちゃう人が出てくるんですよね。そうなるとけっこう私語がコソコソ響いてきたりする。そうでない団体さんも多いんですが、残念ながら今回は私の近いところからそういう声が聞こえてきてしまって…。こればかりは運なのかもしれないけど、団体さんが多い日は貸切みたいな形にしてほしいと思いました。
以下、かなりのネタバレを含んだ感想になります。
2023年11月7日ソワレ公演 in 四季劇場・秋(東京・浜松町)
主なキャスト
- グリンダ: 中山理沙
- エルファバ:小林美沙希
- ネッサローズ:守山ちひろ
- マダム・モリブル:秋本みな子
- フィエロ:富永雄翔
- ボック: 緒方隆成
- ディラモンド教授:田辺容
- オズの魔法使い: 鈴木涼太
【男性アンサンブル】
川畑和寛、権頭雄太朗、熊川剣一、佐野隼平、森健心、岸佳宏、今村綱利、奥村響、長友 デビッド洋輔
【女性アンサンブル】
渡辺夕紀、古木瞳、新宮有香子、高木千晶、柏谷巴絵、光井さや、榊山玲子、小島光葉、結城湊海
メインキャストはマダム・モリブル役の秋本さん以外は前回と変わらずのメンバーでしたが、アンサンブルキャストさんは男女とも約7割が初めましてな顔ぶれでした。長友くんは『オペラ座の怪人』大阪公演で複数回見てきたので、今回久しぶりに舞台で観れて嬉しかったです。
※概要とあらすじについては2023年11月7日観劇レポートを参照してください。
上演時間は約180分(3時間)。
1幕90分(1時間30分)、休憩20分、2幕70分(1時間10分)となっています。
全体感想・主なキャスト感想
1幕
オープニングでドラゴン時計がワッサワッサ動き出すのを見ると毎度のことながらワクワクしますね。あれ人力でスタッフさんが動かしてるんですけど、けっこう重いのではないかと気になってしまう。下手側にスタンバイしてる人が縄引いてるのでね。本当に毎公演お疲れ様です。
グッドニュース
ここで歌われる”グッドニュース”というのは西の悪い魔女が死んだという事なんですが…、何度かこの作品を見て知ったうえでこのフレーズを聞くとものすごく切ない気持ちにさせられます。その様子を上から見ているグリンダの表情は哀しみともどかしさをグッと耐えてるように見えてこれがまた切ないんですよね。「誰にも愛されぬまま、一人消えていくの。それがあの子の哀しき定め」って彼女自身が歌うっていうのが、結末を知ったうえで観るとほんと辛い。
前回も中山グリンダで観たのですが、その時と印象が違っていて良い意味ですごく驚きました。セリフ回しがスムーズになってる!!以前は四季独特の発声法がキツイなと思ってしまったんですが、今回それが気になるということが殆どありませんでした。
『ウィキッド』は初演の頃から四季発声法が忠実すぎる役者さんがチラホラ見受けられ、作品自体はとても良いのにもったいないと感じることが多かったのでこういった変化はとても嬉しいです。
魔法使いと私
小林エルファバは相変わらずとても生き生きとしていて見ていて気持ちが良い。モリブル先生に初めて褒めてもらい、ついに自分を受け入れてくれる人に出会えたといった喜びが歌の中からひしひしと伝わってきました。跳ねあがる気持ちを抑えきれず、溌溂と歌う小林さんの姿に思わず胸が熱くなってしまう。特に最後の「私の夢」と歌い上げる時の声の伸びと表情が最高に良い!
大嫌い!
グリンダとエルファバがそれぞれ親に向けて出す手紙の文面から始まるこのナンバー。似たような内容なのに、書き方の個性が全く違うのが面白くも可愛らしい。特にグリンダが同室のエルファバについてタラタラ文句を書き連ねるのに対して、エルファバがグリンダのことをたった一言「おばか」で片づけるのが好き(笑)。
ここから二人がお互いを嫌悪し合ってバチバチになって歌う流れになるんだけど、このナンバーがめちゃめちゃポップでノリが良くて耳に残るんですよね。『ウィキッド』観終わった後に何故かずっと私の中で流れてるのがまさにこの曲なんですよ(1幕ラストよりも長く残ってる)。エルファバが孤立していく流れになるシーンではあるんだけど、なんだか終始明るいんですよね。大好きなナンバーのひとつでもあります。
ディラモンド先生の授業の場面も印象深いです。田辺さんは「オペラ座の怪人」で憎々しいブケーを演じてたのと同じ人とは思えないくらい優しくて温かいんですよね。グリンダのトンチンカンな回答もやんわり受け止めてくれてるしw。それでいて、自分のこれからの運命を予感してるからかどこかちょっと悲しげな雰囲気も纏ってるのが印象深い。授業後半に生徒を追い出すときも苛立ちより哀しみの方が強い感じになってるのが切ないです。
エルファバと二人になった時のご飯タイムはホッとできるシーン。リアルにエルファバからもらった”半分のご飯”食べてる姿がなんとも言えず可愛らしいディラモンド先生。毎回思うんだけど…実際どんな味がしてるんだろう(笑)。
人生を踊り明かせ
フィエロの登場シーンは初演の頃から楽しみにしてるひとつでなんですが、富永フィエロもめっちゃ萌えるんですよねw。あのグラサンかけて寝そべってる姿がまさに私が抱いてる”フィエロ”のイメージにピッタリで心の中で「キター!」って歓喜してしまう(笑)。
前回観た時から富永君のフィエロに好印象を持っていましたが、どこかちょっと動きだったりセリフ回しだったりが固いかなと思った事もありました。でも今回見たら良い具合に力が抜けてダンスも余裕があるように思えたしセリフの一言一言に熱がこもるようになっていてとても良かった。もともとダンスが得意な俳優さんだったこともあって、フィエロとしての動きに惹きつけられるものがありますね。
あと、歌い方にちょっとクセをつけてるのも私個人としてはとても好きで。表面的にはお気楽御曹司を装ってるって雰囲気が感じられるのが良い。
もうひとつこの場面で印象深いのがボックとネッサ。グリンダがフィエロと距離を縮めるためにわざと仕組んで二人をくっつけようとするわけですが、あの時の中山グリンダはけっこう悪い顔してて面白いw。でも、ネッサのことを考えると切なくもあるんですよね。あの時グリンダがあんな提案をしなければ…というのがどうしても過ってしまう。
それからパーティでの二人の会話も切ない…。ボックがあの時正直に自分の想いをネッサに打ち明けていたらその後の結果はもう少し違うものになっていたのではと思わずにはいられないんだよなぁ。「君は素敵な人」という彼の言葉に感動して舞い上がって喜んでしまうネッサが哀れで、このシーンはいつも胸がギュッとなる(涙)。
グリンダがネッサを気遣ったと思い彼女に感謝し望みが叶うよう取り計らうエルファバ。この勘違いから二人の関係が徐々に変化していくストーリーが個人的にとても好きです。エルファバに恥をかかせるつもりだったのが、彼女に対する罪悪感が募ってしまい勇気を出して声をかけるグリンダ。妙なダンスを二人で踊り心の距離を縮めていくシーンは面白くも感動的です。
そして、周りにどう思われようと自分を貫こうとするエルファバの姿から目が離せなくなるフィエロも印象深い。富永フィエロはチャラ男を装いながらもどこかちょっと影を感じるところがあるので、エルファバに惹かれていく気持ちがとてもリアルに伝わってきます。
ポピュラー
ダンスパーティを経て心を開き合える関係になったグリンダとエルファバ。ここでグリンダがまだ約束どころか告白すらしてないフィエロとの”将来”を「自分だけの秘密」と嬉々としてエルファバに打ち明けるのがなんともおバカで可愛らしくて笑ってしまいます。中山グリンダ、動きの自由度が増していて台詞回しも前回よりずっと面白い!
それに対してエルファバはネッサが誕生した経緯についてを「抱えてきた秘密」として話します。これを聞いたグリンダがキョトンとしながら「それはあなたにとって秘密かもしれないけど真実じゃないわね」って真顔で告げるシーンが個人的にとてもグッと来るところなんですよね。ずっと妹の体のことで罪悪感に苦しんできたエルファバは、あのグリンダの言葉にどれだけ心が救われたかと思うとなんだか泣けてきてしまう。
この流れでエルファバ美人化計画とばかりにウキウキノリノリで歌い出すグリンダが面白かわいい。特に「ラーラー♪」のくだりのところでぎこちないジャンプしてる姿がマンガチックで笑っちゃうんですよねw。本人は至って真面目にやってるっていうのが更に面白みを増してると思います。
色々とレクチャーを受ける小林エルファバ、戸惑いながらも必死に中山グリンダについていこうとしてるのが良い。「キラキラ〜〜」のところなんか懸命に真似してて面白いんだけど、自分のことを受け入れてくれたグリンダへの感謝の気持もこもってるように思えてすごくホッコリしてしまいます。
でもグリンダ的にはまだまだ自分のほうがエルファバより可愛くてみんなのヒロインって信じてる節が強いんですよねw。この時点ではエルファバを本当の友達とはまだ認識してない感じ。
ちなみにこのシーンで個人的に一番ツボなのは、グリンダがエルファバに「ゴージャスドレス」を着せる魔法をかけようと必死になるところ(笑)。キラキラ少女キャラのはずのグリンダがめっちゃガサツな本性を覗かせてしまうのがなんとも言えず面白くて好きですww。
エルファバは授業の前にグリンダからのレクチャーを復習してるのですが、それを怪訝な顔でフィエロが見てて。「君はそのままが良いのに」ってちょっと淋しげな表情をしながら告げる富永フィエロにグッときてしまう。この時点で彼の気持ちはグリンダよりもエルファバの方に傾いてるんじゃないかなって感じる場面でもありますね。自分が惹かれつつある彼女のままでいてほしいっていうフィエロの願望が見え隠れしてるのが切ない。
私じゃない
ディラモンド先生が追放されてしまった後、ライオンの子供が実験台にされそうになることに憤りを覚えるエルファバ。彼女の感情の爆発でその場にいたほとんどの人が魔法に翻弄される中で、フィエロだけは何の影響も受けなかった。それはたぶん、エルファバと無意識の内に共鳴するものがあったからじゃないかなと思うんですよね…。出会いは最悪な二人だったけど、本質的には気持ちが通い合っていて。そういう関係性って素敵だなと思いながら見てしまう。
「僕と会うとなぜいつもトラブルを起こすんだ」とエルファバに抗議してはいるものの、翻弄されながらも心の何処かではそれを望んでるようにも見える。
そしてエルファバも表向きは楽しくお気楽なお坊ちゃんを装ってるフィエロの本当の気持ちを見抜いている。「だってあなたは全然幸せそうに見えないから」という言葉をかけられた時、富永フィエロは動揺したように一瞬言葉を失いエルファバから離れようとしてしまう。あのときは驚いて逃げたくなったのかもしれないけど、実のところは本当の自分を見つけてくれたことが嬉しかったんじゃないかなって思うんですよね。
そんな二人が急速に惹かれ合っていくのはごく自然な流れで…。でもそれを表に出せず別れてしまって…。このあたりの一筋縄ではいかない感じの関係性がとても切なくて好きです。
エルファバと別れたフィエロは再びグリンダと楽しい時間を一緒に過ごしてて。グリンダの気持ちを傷つけないように富永フィエロは優しい笑顔を浮かべているけど、彼女の目が離れた隙に自分から離れたエルファバのことがどうしても頭から離れないといった表情になる。さり気なく振り返ったときの切ない表情がぐっときたよ、富永くん。
その一方でエルファバは「フィエロにはグリンダというちゃんとした恋人がいる」と自分に言い聞かせてる。でも「その目の中に私はいない」という寂しい本音を滲ませてるのが切ない。グリンダのことも思いやってるから、エルフィとしての立場はホント苦しいだろうなって思うよ。
このナンバー、2幕に違うバージョンとして出てくるんですよね。グリンダとエルファバの関係性においてとても重要な一曲。
エメラルドシティー
一人残されたエルファバのもとにモリブル先生が「オズ陛下に会える時が来た」という朗報を持ってくる。そのことに感無量の表情で喜ぶ小林エルフィを秋本モリブル先生はとても嬉しそうに見つめるんですよね。その視線はどこか温かみすら感じられて…この時点ではエルファバのことを大切な生徒といった目線で見ているんじゃないかなと感じました。八重沢さんのモリブルがとにかく威圧的で怖かっただけに、秋本さんのモリブルをみるとなんかちょっとホッとしてしまうw。
エメラルドシティーへ旅立つ時、遅れながらも慌てて駅に駆けつけるフィエロ。グリンダの姿を見つけると、彼女を傷つけないように気遣いながらエスコートしてあげるのが彼の優しいところ。だけど心のなかでエルファバの存在が大きくなってるのは明らかで…。エルファバとフィエロはまともに言葉を交わせないくらいぎこちなかったけれど、エルファバが横から会話に割り込んでこなければ自然と結びついちゃうんじゃないかと思えるような不思議な引力が感じられる。グリンダはそれを肌で感じてたから必死におじゃま虫してたんだろうねw。
餞別のお花だけ手渡してフィエロは逃げるように一人で帰ってしまった。グリンダとしては、彼が自分に関心を持ってくれなかったとガックリきちゃうのも無理ないよなぁ(苦笑)。
フィエロとうまく関係を築けないことで落ち込んでしまったグリンダを見たエルファバは、一緒にエメラルドシティーへ行ってオズ陛下に会いに行こうと提案。喜んでそれについていくグリンダだったけど、実のところはエルファバもグリンダと一緒に行きたいと願っていたフシがあったんじゃないかなと思いました。
一面が緑色で華やかな世界のエメラルドシティー。二人を歓迎してくれるような町の人達の活気が見ていてワクワクします。デッカい3体の人形がボヨンボヨンと出てきたりと、ここはショー的にも見応え満点で楽しい。
そしてオズ陛下と対面。涼太さんの陛下、胡散臭さを漂わせながらもやっぱりあの爽やかな笑顔を見ると気持ちが持っていかれそうになるw。ロマンスグレーの涼太さんオズ陛下、すごく素敵なんですよねぇ、ほんとに。
オズ陛下は「この国みんなのパパになることが夢なんだ」と語りエルファバとグリンダは心を高ぶらせていく。ところが、モリブル先生がオズ陛下の報道官として現れたあたりから雲行きがちょっと怪しくなっていって…。オズ陛下の召使の猿・チステリーが空を飛べるようになる魔法をかけられるかと試されたエルファバは、モリブルすら理解に時がかかった本をいとも簡単に読んで呪文を唱えチステリーたちに羽根を授けることに成功する。でも、苦しむチステリーの姿を見た時にエルファバは「この呪文は危険な言葉だったのでは」と大きく動揺。さらにオズ陛下の裏の顔を知ってしまったことで思わずその場から飛び出してしまった。彼女が抱いていたオズ陛下への尊いイメージが音を立てて崩れた瞬間だったよなぁ…。
自由を求めて
オズ陛下の下から逃げ去ったことでエルファバの立場が最悪のものへと変わっていってしまう。どんどん状況が悪くなる中で、グリンダは必死に「謝っちゃいなさいよ!」と説得するも、間違ったことは言っていないと聞く耳を持たないエルファバ。
敵に追い詰められた状況下で、エルファバはグリンダに「一緒に行こう」と声をかける。この時点では、エルファバとグリンダがタッグを組んでオズ陛下やモリブル報道官の企みを一緒に壊していくべく戦うんじゃないかって雰囲気になるんですよね。見てるこちらも、そういう関係になることを望んでしまう。
でも、グリンダには強がっていながらも体が震え不安な表情を浮かべているエルファバについていく勇気が持てなかった…。ここのくだりがすごい人間的だなぁと思ってしまう。「一緒にいてくれないの!?」って問いかけるエルフィの悲痛な声がなんとも切ない。結局グリンダは「あなたならやれる」と励ますことしかできなかった…。
グリンダに危機が迫った時、エルファバは魔法の力を最大限に発揮し「私はここよ!!」と叫ぶ。ここからのエルファバのシーンは圧巻に次ぐ圧巻で…、彼女の壮絶な覚悟がすべてを吐き出すかのような激しい歌声の中にこれでもかというほど詰まっている。あの姿は本当に心が震えまくるし胸をギュッと掴まれた感覚になって自然と涙がボロボロ溢れてしまいます。『ウィキッド」最大の見所の一つのナンバー。この日も客電がついたあとの客席のどよめきが凄かったです。あれは語らずにはいられないよね。この瞬間の興奮を味わいたくてチケット戦線頑張るっていう人も少なからずいるんじゃないでしょうか。
ちょい長くなったので(汗)、2幕感想は次のページにて。