主なキャスト感想
エリザベート:愛希れいかさん
愛希さんは3年半前に見た時よりも存在感がパワーアップしていて本当に素晴らしかったです。
少女時代は無邪気で溌溂とした笑顔がとても可愛らしくてフランツが一目惚れしてしまうのも納得。結婚して理想と現実のギャップに直面してからは”何としても自分の思い描く人生を歩んでみせる”といった激しい感情が垣間見えるようになりどんどん我の強さが浮き彫りになっていくお芝居が面白かったです。1幕前半と1幕後半からクライマックスにかけてとの雰囲気がまるで違って見えたのもすごかったなぁ。キラキラと輝くような若さから暗い感情を抱え込んだ老齢期への移り変わりも見事。歌声も前回聞いた時よりもずっと力強く、♪私だけに♪の時の歌い上げの時の伸びもすごく進化してました。
トート閣下に対しては激しく拒絶の感情をぶつけながらも、心のどこかで身を委ねたいという思惑がチラホラ感じられる雰囲気だったかな。最後の最後でトートの愛を受け入れる場面の説得力がすごくありました。
トート:古川雄大くん
古川くんのトート、3年半前に見た時よりもこの世の者ではない”死神”感が強くて…その美しさにのっけから目が釘付けになってしまった。特に登場シーンの時の舞い降りた姿は”神、降臨”といった気高さみたいなものすら感じたし。ここ数年はテレビドラマにも多数出演する機会が増えたことでより一層存在感が上がったんじゃないかな。オーラがとにかくすごくて色々とビックリさせられっぱなしだった。
3年前はどちらかというとシシィ欲しさにグイグイ感情を出すみたいな雰囲気もあったけど、今回は冷酷さが際立っていてじわじわと彼女への愛を放出していくかのようだったかも。でも、時折感情をむき出しにしてまるで噛みつくような歌声を出してきたときはものすごくゾクッとさせられた。静の中に秘めた激しい感情って感じかなぁ。♪愛と死のロンド♪のシーンでふと古川トートの表情に注目したらシシィ恋しさからか一筋の涙が流れていてドキリとさせられたし。あれはなんかもう、堪らない気持ちになっちゃったよ。
歌声の安定度も以前よりさらに進化してて、ところどころ古川君独特な歌い方になってるシーンとかすごくカッコ良かった。脳天まで貫くような澄んだ力強い歌声が最高に心地よく、上山ルキーニとの歌バトルシーンなんかはめちゃめちゃ迫力ありました。
もうほんと、歌にしても芝居にしても…進化が著しくて何度も鳥肌立たちまくりですよ。テレビに進出したことがプラスに働いて表現力も濃厚になった気がするし、今後の活躍がますます楽しみ。
フランツ:佐藤隆紀くん
シュガーくんのフランツは若い頃からあまり自分の感情を表に出さずに内側でグッと耐え忍んでる皇帝といった印象が強かったです。ゾフィの言いなりになる時も「早まらずに見極めよう」と強引に自分を納得させている感じ。自分の感情を押し殺しながらも「国のためだから」と前に進まざるを得ない哀愁みたいなものもチラホラ…。
そんな彼がシシィに出会ってやっと「彼女と結婚したい」という自我を押し通すわけで。この時のシュガー皇帝の笑顔がなんとも言えず素直で可愛らしくてねぇ。彼の笑顔は観る者すべてに幸せを運ぶパワーがあると思うよ!
シシィと結婚した後は彼女の我の強さに翻弄されて、精神的疲弊した表情に変わってしまう。扉の外で「今夜だけは一緒にいて癒してほしい」と泣きそうな顔で懇願するシーンなんかはもう見てるこちらの胸が痛むレベルで…。最後通告突きつけられた時は険しい表情を見せるもののそれを拒絶しようという意思も感じられない。皇帝としての立場とシシィを失うリスクとを天秤にかけて苦しそうに悩んでる表情はなんか居たたまれない気持ちにさせられてしまった。このあたりのお芝居、シュガーくんはすごく抑え気味にだったけど心の内側に色んな感情をため込んで苦しんでるような感じだったのでめちゃめちゃ切なかったです。
それに対して息子のルドルフに対しては徹底して厳格で容赦ない父親の顔を見せる。深みのある低い声で彼を恫喝するシーンは思わず見ているこちらがビクッと震えあがるほどの迫力で。シシィに対する情けない姿とは180度違った顔を見せてくるのでドキドキハラハラが止まりませんでしたw。
そしてなんと言っても大きな見せ場は後半の♪夜のボート♪と♪悪夢♪。シシィと最後に再会した時に「戻っておいで」と語り掛ける時の優しい温かな響きはもう聞いていて泣きたくなるレベル。あんなふうに請われたら私だったら戻りたいって思ってしまうんだけどw、シシィはそれにもなびかず我が道を行く宣言しちゃうからなぁ。想いが通じずに目にいっぱい涙をためて耐え忍んでる姿が切なくてたまらなかったよ…。
♪悪夢♪の時はなりふり構わずシシィの危機を救おうとトート閣下に挑みかかっていくフランツのシーンが大きな見どころ。泣きそうな顔で必死にルキーニの暴走を止めようとするも敵わず、声にはならない悲鳴みたいなものを上げながら舞台袖へと吸い込まれていく後ろ姿がとにかく哀れでした。
シュガーくんの魅力は何と言っても安定度抜群の歌唱力なわけですが、近年はそれに加えた重厚感あふれるお芝居も磨かれてきて本当に嬉しく思います。
ゾフィー:涼風真世さん
久しぶりに涼風さんのゾフィを見ましたが、こんなにコケティッシュな可愛さが滲み出るキャラだったっけ??と思うほどセリフ回しがコミカルで可愛くて。いつしか涼風ゾフィの登場を心待ちにしてる自分がいたほど魅了されてしまいました。シシィに対してものかなり厳しい対応はしてるんだけど、台詞の言い方がどれもすごくチャーミングだったんですよね。あれは憎めないよw!
”大人の社交場”事件の時はウキウキはしゃいだような雰囲気すらあって…めっちゃ楽しんでない!?って思ってしまったほどww。「大司教様は?(社交場通ってるの?)」と尋ねる時なんかは興味津々って雰囲気だったのも面白かったな(笑)。あんなグイグイ聞かれたら、大司教様たじろいじゃうわな、みたいなww。
そんなゾフィの最期のシーンは哀しかったなぁ。色んな手を尽くしてシシィに対抗してきたけど、彼女に勝ちきることができず、挙句には息子の気持ちまで離れてしまったわけで…。国を思ってやって来たことだったのにと失意のまま天に召される場面は哀愁がこもっていてとても切なかったです。
ルキーニ:上山竜治くん
上山君のルキーニは今回が初めまして。これまでどちらかというとアクの強い独特なセリフ回しや歌で狂言回しをするルキーニ役者さんを多く見てきましたが、上山君はそれに比べるとちょっと落ち着いた雰囲気。ねちっこい喋り方もしないし、言葉尻をクセ強めな感じで伸ばしたりといったこともほとんどなくてセリフの一つ一つがすごく聴き取りやすく、清々しさすら感じました。今までになかったタイプのルキーニかもしれない。
かといって大人しいといったわけではなく、目は常にギラギラと前を見据えていたしよく通るスコーンとした歌声もかなり攻撃的に攻めてた。真っ直ぐ突き抜けるような激しい炎を秘めた男って感じですごくカッコ良かったです。
ルドルフ:甲斐翔真くん
甲斐くんはここ最近多くの舞台で活躍してて歌唱力も存在感も見るごとにアップしてる注目株の若手俳優さん。少し儚げな雰囲気がある彼にはこの役凄くハマるんじゃないかなと期待していたのですが、もう本当に大熱演でしたね。父親との関係に苦しみを抱えながらトート閣下とデュエットする♪闇が広がる(リプライズ)♪はまさに熱唱!必死に食らいつくように歌ってる感がルドルフの鬼気迫った雰囲気とリンクしていて臨場感たっぷりでした。あともう一息声が前に出てたらもっと良かったんだけどね。
トート閣下の口車に乗せられハンガリー国王になる夢を抱き革命に参加する場面では、けっこう激しいダンスがあるのですが…甲斐くんの顔面からは驚くほどの大量の汗がぼたぼた流れ落ちててビックリ!汗で前が見えなくなっちゃってる時もあるんじゃない!?とちょっと心配するレベルだったよ、あれは。
蟄居を命じられた時にシシィが戻ってきたときも汗が止まらなくて大変なことになってたな(汗)。そんな状態で必死に「ハプスブルク家を絶望から救ってほしい」と訴えてるので、めちゃめちゃ臨場感あるシーンになってました。
マイヤーリンクの場面では、死の気配から必死に逃げようとしながらもトート閣下と対面した時には恐怖心みたいな感情がスーッと消えていて。頭に銃口を向けた時の表情はどこか遠くを見つめているかのような静かな雰囲気になっていたのがとても印象的でした。
後述
カーテンコールは大いに盛り上がり3回目くらいにはスタンディングになったのですが、そこで愛希さんが「ちょっと挨拶があるので座ってくださってもいいですか」と遠慮気味に発言されてて。この日はイープラスの貸切公演だったこともあり、カテコの挨拶も楽しみのひとつだったんですよね。
愛希さんはまず客席に向かって感激してくれたことへの感謝を述べた後、「博多座公演がエリザベートの最終地となるので1回1回大切に演じて行きたいと思います」と抱負を語って大きな拍手を浴びていました。
続いて古川くんの挨拶。古川くんはこの回が博多座の初日だったからか気合十分な素晴らしいトートだったなぁ。落ち着いた口調で「博多座に来ることができて本当に幸せです」と感謝の気持ちを伝えた後に「この公演が最後までやりきることができるように、皆様応援お願いします」と実感のこもった声で挨拶。客席からはまたさらに大きな拍手が送られていました。ホント、今度こそ完走してほしいよ!!!
そして最後に「皆様には舞台全体を応援してほしいので、その時チケットをご購入いただくときには…」ということを言おうとした古川くん、「購入」の部分で口が絡まって思い切り噛みまくりww。すると愛希さんが「”あれ”を言いたくてそこにつなげようとしてたんだよね」みたいな優しいフォローを入れてきてくれて。
それに対して古川くんも「そうそう」みたいに頷いてたんだけど、めっちゃ恥ずかしそうに後ろ向いちゃったりしてて「この後のキメ台詞言わなきゃいけないって思ったらもうずっと緊張しちゃって」と”アレ”が出てくる前に告白(笑)。さっきまであんなに冷徹な美のトートを演じてた人とは思えないほどの可愛さでギャップ萌えしてしまったではないかっwww。
で、「今のはなかったことにして」ということでwwもう一度気を取り直して最初からww。
「チケットのご購入は、イープラス(手を十字にしたポーズのリアクションを客席と一緒に)で!!」
と何とか綺麗に〆て終わることができました(←途中で何言うのか忘れちゃうハプニングもあったけど 笑)。舞台上とは違ったフォローする優しい愛希さんと、テレテレになっちゃう可愛い古川くんを思いがけず目撃することができてめっちゃ嬉しかったです。
東京、名古屋、大阪公演の時には何度か公演が止まってしまった日がありましたが、最終地の博多では…今度こそ、全ての日程を完走することができますように(私もあと1回予定してるのでもうホント祈る気持ち…)!!カンパニーの皆様、身体に気を付けて頑張ってください!
のっけから長ったらしい文章になってしまったので次回はもう少し自制して短くまとめたいと思います(たぶん…w)。