M&Oplaysプロデュース『八犬伝』2013.03.26ソワレ

コクーンで上演中の『八犬伝』。幸運にも恵まれ、実は24日にも観劇してしまい…今回で4回目。

見るごとにサダヲさんの細かいアドリブが増えたりして本当に面白いです。キャストの皆さんの熱も上がっているし、テンポの良さや一体感も感じられる素敵なステージになっているのではないでしょうか。

初めてのソワレ観劇だったのですが、客席からの反応もかなり良かったと思います。以前見たときよりも笑い声が大きかったような気がするし。客席の反応が良い舞台に出会えると嬉しいものです。
この日は先行で奇跡的にかなりの前方席が取れた日でして。役者さんの息遣いが直に感じられてテンションも上がりました。それに、和太鼓の迫力がすごすぎる!!ドンっと鳴るたびに体全体にその振動が伝わり、まるで舞台の上に上がっているかのような感覚になったほど。さらにすごいのは、その和太鼓に負けないくらいの熱気と前に出るセリフで魅了してくれた役者さんたち。和太鼓に決して負けてないところがスゴイです。特にサダヲさんはずーっと喋りっぱなしの役柄なのにもかかわらず、アドリブ飛ばしたり貫禄の存在感。圧倒されました!

主なキャスト

犬塚信乃:阿部サダヲ、犬川荘助:瀬戸康史、犬坂毛野:中村倫也、犬江親兵衛:太賀、犬村大角:近藤公園、犬飼現八:尾上寛之、犬山道節:津田寛治、犬田小文吾:辰巳智秋、浜路:二階堂ふみ、網乾左母二郎・里見義実:増沢望、亀篠・雛衣・伏姫:内田滋、ゝ大法師(金碗大輔):田辺誠一 ほか

以下、ネタバレを含んだ感想です。

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東京公演も残すところあとわずか。この日は休演日明けということもあってか、役者さんたちのテンションも高くまとまりのある素晴らしい舞台でした。もうすぐ終わってしまうということで、前回以上にちょっと濃い目のネタバレ感想です。

冒頭、「血だらけだぁ」という信乃の叫びで始まる『八犬伝』。信乃の飼っている犬が亀篠の飼っていた猫に馬鹿にされたことに腹を立て噛み殺してしまうというちょっとホラーチックな展開で物語が始まります。一見おどろおどろしい展開にも拘らずそれが気にならないのは、登場人物たちのテンションの高いスコーンとした芝居があるからなんじゃないかなと思います。
信乃の犬が亀篠の猫を噛み殺す…これは後にゝ大法師から語られる伏姫エピソードと被ってますよね。伏姫の飼い犬である八房が伏姫のために敵方の首を噛みちぎって里見の主君のもとに走ってくるっていう…。冒頭で信乃の今後の運命を暗示させる展開に上手いなぁと頷いてしまいます。「血だらけ」っていうのも今後の信乃にまつわる予感を意味してますしね。信乃と荘助がお互いに義兄弟の契りを交わしてからタイトルまでの展開はまるで映像を意識したかのような演出で何度見てもゾクゾクするほどカッコいいです。映画というか…どちらかというとアニメっぽい感じかな。皆男前役者が多いのでなおさらそう思うのかも。

それにしても瀬戸くん、以前よりもかなり良くなりました!力が入りすぎてるんじゃないかなと思っていた部分もいい感じに抜けていてお芝居に余裕が出てきた感じ。近くで見ると目がキラッキラしててドキリとしてしまったw。

浜路が気の進まない縁談を無理やり亀篠夫婦に押し付けられそうになるシーン。その相手・簸上は演出を担当してる河原雅彦さんが演じてるんですが、実に楽しそうにやってます(笑)。冠の纓の部分で浜路の頭をペシペシたたき出していたのには笑いました。あれ、最初の頃にはなかったんですけどねw。
遠目から見ると、浜路はあまりこの時嫌がっているようには見えなかったのですが、近くで観たら浜路、けっこう辛そうな表情してました。ふみちゃん、なかなか頑張ってます。そのあと信乃に積極的に迫るのもなんだか鬼気迫った感じが出ていい感じ。でも、サダヲさんとふみちゃんとではかなり年の差が離れているにもかかわらず、こうして二人並んでもちゃんと恋人関係が成立しそうだと思えてしまうからすごい!近くで見てもサダヲさんはかなり若かった!!

信乃と浜路の間に割り込んでくる左母二郎。めちゃめちゃ憎たらしい浪人なんですけど、何度見ても増沢さんが演じるとカッコよく思えてしまう!!なんていうか、男の色気がスゴイ(笑)。それにやっぱりどことなく雰囲気が上川隆也さんに似てるような…。
道節が炎の櫓に入っていくシーンは短いんですがものすごい迫力です!津田さんの鬼気迫る表情にググッと惹きつけられるっ!なんだか本当にこの人の祈祷で世の中変わりそうって思えてしまうところがスゴイです(笑)。

その後、左母二郎にさらわれた浜路を助けにやってくる道節さんですが、ここで兄妹の関係を語ってしまうんですよね。以前見た『八犬伝』ではけっこう後半になって明かされていたので最初に観たときはビックリしました(もう慣れましたがw)。そこへ事情を知らない荘助が道節を村雨を盗んだ敵だと勘違いして斬りかかります。この時の瀬戸くんの動きがめちゃめちゃ迫力あってカッコいいです!!どんなに殴られても蹴られても、必死に信乃のために村雨を取り戻そうとする姿はイジらしい。斬りかかっている荘助の顔は目がギラギラしていて迫力あります。瀬戸くんは見た目が可愛らしいのですが、戦闘モードに入ると完全にギラギラ男子になりますね。動きもいいし見応え充分です。

その後、道節の肩から玉が出てきて二人は仲間だと確信。ありえない話ながらなぜか目が離せない展開。荘助は信乃に村雨を届ける前に村に戻りますが、そこで亀篠たちが暗殺される現場に遭遇してしまいます。亀篠は最期まで往生際の悪い悪女でしたが、内田さんがこれを怪演!ほんっとに分かりやすい悪女で拍手ものww。荘助は亀篠からヒドイ仕打ちを受けそうになったにもかかわらず、「育ててくれた恩がある」と簸上を斬り殺して追われる身になってしまう。義の男だよねぇ、荘助!その真っ直ぐさが瀬戸くんの表情からものすごく伝わってきました。

信乃は足利家に秘刀・村雨を献上しようとしますが、左母二郎にすり替えられたことを知らなかったがゆえに偽物を献上してしまい命に危機に。逃げる過程でしゃちほこまで昇ってしまうわけですが、この時のサダヲさんのお芝居が可愛くて面白いんですよねぇ。「しゃちほこ気持ちいー、誰かに教えたいー」とか(笑)。誰も真似できませんから、それwww。
信乃を捕らえるために屋根の上にやらされたのが現八。尾上くん、引き笑いが定着しておりましたww。ここの二人の殺陣シーンは和太鼓の叩き合いも含めて本当に大好き!何度見ても仲のいい兄弟ゲンカにしか見えない(笑)。二人の芝居のアドリブというか、間というか、とにかく息ピッタリでめちゃくちゃ面白い。

毛野が客席から登場してくるシーン、倫也くんを近くで見ましたが…女装メイクに違和感全くなし!きれいだし可愛い。相変わらず声の出し方とか立ち居振る舞いとか本当に魅力的です。艶っぽい!!ちなみに毛野に迫ってる村人たちの中に左母二郎役を終えた増沢さんも混じってて笑ってしまったw。
だんご屋での信乃と現八のやり取りも可愛くて好きだなぁ。現八に呼び捨てにされて思わずピンタしてしまう信乃は何度見ても笑えますww。

角太郎(のちの大角)と信乃のシーンも好きですねぇ。父親や妻のことですっかり影を背負ってしまった彼に必死に語りかけようとしてる信乃がなんだか可愛らしい。それにしてもこんなによくしゃべる信乃は初めて見たw。それに違和感がないから不思議です。で…寡黙ながらも剣の腕が全く落ちていない角太郎くんが…カッコいい!!!信乃と木の棒で打ち合いするシーンでの身のこなしっぷりが華麗で惚れ惚れしてしまう。公園さんに惚れてしまいそうになる(笑)。

角太郎の父親、一角はめちゃめちゃオドロオドロしい。物の怪に取り憑かれてる設定ではあるんですが「やや子が食いたいーーー」と迫ってくる場面はホラーそのもの!演じてる横山さんがかなり大柄な方なので迫力もすごかったです。角太郎の妻・雛衣は気の毒な人でしたよね。まさか玉を飲み込んで妊婦のような姿になってしまったなんて彼も思わなかっただろうし…。この健気な妻を亀篠を演じていた内田さんがイジらしく演じているのがスゴイです!真逆の人物を見事に表現してます。

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2幕では簸上暗殺の容疑と村雨窃盗の容疑で処刑されそうになっている荘助を信乃たちが助けに入ります。サダヲさんの登場の仕方がカッコいいし面白い!処刑しようとする役人を小バカにするシーンは何度見ても笑えますw。

小文吾の屋敷での出来事は色々と深いですよね。荘助が切り傷から破傷風で苦しむ信乃のために親兵衛の言っていた「男女の血を五合ずつ合わせてかければ治る」という言葉を信じて浜路を手にかけてしまうシーンとか衝撃的です。荘助は自分の身も傷つけますが、自分は助かってしまう。このことは物語の最後まで浜路の兄である道節の心の傷として残るので切ないです。血まみれの姿で復活した信乃が荘助と浜路を見て驚愕するシーンは冒頭の「血まみれだ」と被っていますよね。

それともう一つ考えてしまうのが、親兵衛の「神から選ばれた人が生き残るんだ」という無邪気な一言。浜路は選ばれず荘助は選ばれた。浜路が今後別の形で蘇ることを考えるとこれもなんだか複雑な感じです。毛野がこの言葉に鋭く反応しているのが気になりました。彼はこのタイミングで何を想ったんだろうと…。

小文吾と親兵衛も仲間だと分かり、ゝ大法師が八犬士のいきさつを説明するシーンはこれまで見てきた『八犬伝』でも出てくるのですが、そのあとの自己紹介の場面は今回のが一番面白いかも。これがまた漫画チックでめちゃくちゃカッコいいんですよ。ゝ大法師も加わって皆の表情がすごく生き生きしてる。法師を演じる田辺さんが可愛らしい動きしてるし(笑)。
この時までは皆すごく良い表情して。里見を守るという大義名分のためにまっしぐらに進むもんだと思ってました。たとえ命を失っても彼らは最期まで一心同体の仲間だと…。

それが…。

ここから先はかなりのネタバレになるので東京楽を見終るまで書かないでおこうと思います。が、本当に切ないです…。最初に観たときのショックとはまた違った切なさが押し寄せてくる感じだった。
もしも時代が平和であったならば、彼らはあのような道を辿ることもなかったんだろうなと。信乃目線で描かれているので「善」と「悪」に分かれた見方になっていますが、私はどちらの思想も「悪」ではないと思いました。戦で傷ついた心とどう向き合うのか…。その向き合い方が違っただけ。実際にそれと同じ傷を負わなければその人の本当の心は分からないのかもしれません。それを痛切に感じてしまって、なんだか涙が止まらなかった。金碗大輔も、毛野も、彼らの背負ってきた背景を想うと責める気持ちにはなれないのです。ただただ哀しいなって…

ラストシーン、信乃は「物が語ってくれたらいいな」と話します。「大義名分」なんてものは夢幻に過ぎない。そんな言葉に踊らされずに、自分の目で見える"物"の語ろうとする言葉に耳を傾けて生きたいと。それが信乃の選んだ道。この言葉も深く胸に響いて泣けました。

そうそう、カーテンコールの時に改めて瀬戸くんを近くで見たんですが…肌荒れがかなり進んでてビックリしました。今回の舞台、いろいろ悩んで精神的にもキツイものがあるのかな…とか思ってしまった。でも確実に成長してるし最後までこの調子で頑張ってほしいです。

次の観劇はいよいよ東京千穐楽。どんな熱い舞台が展開されるのか楽しみです。でも終わってしまうのが哀しいな…。

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