朗読劇『ラヴ・レターズ-LOVE LETTERS-』2024年6月24日公演感想 / 飯田洋輔×伶美うらら

朗読劇『ラヴ・レターズ-LOVE LETTERS-』を観に渋谷のPARCO劇場へ行ってきました。

朗読劇の金字塔ともいうべき作品『LOVE LETTERS』。初演は1989年のニューヨークですが、日本ではその翌年の1990年に初演されました。当時はまだ珍しい存在だった朗読劇という存在を世に広めるきっかけになったとも言われています。

俳優のみならず、ミュージシャン、タレント、声優など様々なジャンルの人が参加するのが大きな魅力。30年以上にわたって多種多様な分野から多くの著名人が出演(初演から数年は30歳以上という年齢制限もあったらしい)。ほとんどが1日1回限りというスタンス公演なので、その瞬間しか見られないカップルの朗読を堪能できるレアさも人気のひとつかもしれません。
私は過去3回観劇。これまで見てきたカップルは、2009年の宅間孝行さん×大和田美帆さん2010年の片岡愛之助さん×朝海ひかるさん、そして2020年の加藤和樹くん×愛加あゆさんです。前回はコロナ禍突入の直前…というか、すでに中止公演が相次ぎ始めるタイミングだった(汗)。

そんなすごい作品に、私の一番の推しである飯田洋輔くんが出演するというニュースが飛び込んできたときは本当に驚いた。劇団四季時代にもストレートプレイに出た記憶がなかった洋輔くんが、独立して最初の一般興行作品に選んだのが朗読劇というのが全くの予想外(独立最初の作品はミュージカルだろうという思い込みがあったw)。
これはもう、這ってでも観に行くしかないでしょ!!!ということで、気合入れて抽選初日に申し込みし無事確保することができました。

今回も洋輔くん宛にかなり大きなファンからのお祝いスタンド花が飾られていてロビー入口が華やかでした。

以下、ネタバレを含んだ感想になります。まだ未見の方はご注意を…

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2024年6月24日公演 in パルコ劇場(東京・渋谷)

出演・演出・上演時間

出演者:飯田洋輔(アンディー)怜美うらら(メリッサ)

演出:藤田俊太郎

2幕モノで上演時間は休憩時間を含めて約2時間(120分)。今回は19時に開演して終焉したのが21時を過ぎたあたりだったので、10分弱くらい延びてたのかなといったところでした(読むカップルの空気感に委ねた作品なので終了時間は前後することが多いです)。

本編が始まると途中入場することはできません。また、よほどの緊急事態でない限り退出も許されていません。上演前には音を立てないよう注意が促されるほどピーンと張り詰めた静寂の中で出演者の生の声による朗読(マイクをつけていない)が展開されていきます。

あらすじと概要については2020年公演の記事を参照してください。

補足として少し。

日本公演初演から約30年間演出を担当されたのは故・青井陽治さん。旧パルコ劇場が解体のため閉館される直前まで一度も休むことなくこの作品に関わられましたが、閉館1年後の2017年に急逝されてしまいました。その遺志を引き継がれたのが、いまや引く手数多の演出家として花開いている藤田俊太郎さん。旧パルコが閉館中は別の劇場で上演されましたが、その頃から演出を担当され今に至ります。

『ラヴ・レターズ』原作者のA.R.ガーニーさん自身の指定により、本番前の合わせ稽古は1回のみと定められているとのこと。稽古前には青井さんが遺された演出ノートに沿って時代背景など長時間のレクチャーが行われているのだとか。ただ、読み方については基本的に初演当時から特に指定はなく演じる人の裁量に任されているそうです。
青井さんは亡くなる直前まで上演台本をより分かりやすく伝えるべく見直しを行ってこられたようで、2019年より最後に翻訳された新訳版が上演されています。

戯曲本は発売中ですが、現在売られているのは新訳ではないと思います(3版くらい改定されてるようですが)。

過去の『ラヴレターズ』感想はこちら

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公演感想

セットは一つのテーブルとそれを挟んだ二人が座る用の二つの椅子のみ。ただ今回は、パルコ劇場で6月30日まで上演されている『ウーマン・イン・ブラック』の休演日の合間を縫っての公演だったので、その固定セットを残したままの状態に。なので、初めて見た方は全部が『ラヴ・レターズ』のセットなのではと勘違いしてしまうこともあったかもしれない(汗)。
でもあのちょっとオドロオドロしい怪しい雰囲気がなんだか逆に新鮮だったし、『ラヴ・レターズ』の世界観がより際立って見えてきて面白かったです。

ちなみに『ウーマン・イン〜』は過去に上川隆也さんと斎藤晴彦さんバージョンで見たことがあるのですが、怖いながらもとても面白い作品で再演されるたびに行った思い出があります。ホラー嫌いの私が唯一受け入れられた舞台w。今回も行きたかったのですが、時間と財政が追いつかずやむなく断念してしまいました(汗)。

今回は洋輔くんの初めての朗読劇に集中すべく、約15年前に購入した原作の戯曲を事前にもう一度読み直してから劇場へ向かいました。大まかなところはなんとなく頭に入っていましたが、最後に見たのがもう4年前なので忘れてたシーンも多く(汗)、もう一度二人の書簡で綴られた物語を刷り込んでおいて正解でした。

これは、アンドリュー・メイクピース・ラッド三世(通称・アンディー)メリッサ・ガードナー(通称・メリッサ)による書簡、つまり手紙の文面でのみ綴られた約50年間の軌跡の物語。すべてがその時々に感じた二人の言葉(生声)だけで読み進められていきます。
ナレーション的な解説が一切ないので、見る側は感覚を研ぎ澄まし彼らの間に起こっている出来事や感情の起伏を感じ取っていく。演じる方も見る側もより強い集中力が求められるし、想像力が掻き立てられる作品だと思います。

戯曲本を開くと分かると思うのですが、二人が8歳児だったころから始まるということもあって文字がほとんど「ひらがな」なんですよね。”1937ねん4がつ19にち”といった感じで。ページが2−3ページ進んでいくとようやく覚えたてであろう漢字が文章に混じってくる。読み手の台本も同じだと思うのですが、改行とか殆なくびっしり文字が羅列してるページもたくさんあるのであれを感情込めて言葉を発していくというのは相当大変なことかと思います。

ちなみに、年月の切り替わりのタイミングは手紙で何度も登場するクリスマスカードのところだろうなと思ってて。二人の祖国のアメリカでは、クリスマスカードを送るというのは日本で言うところの年賀状のような意味合いがあるようです。年月が移りゆくにつれて、アンディーとメリッサの関係がどんどん変化していくことに。

青井陽治さんが翻訳した台本は子供の頃の手紙を”ひらがな”多めで書かれていますが、アメリカや他の国で上演される台本はどのように表記されているのか気になります。

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アンディーは裕福ではないけれども両親の愛情の下温かい家庭で育った素直な青年。かたやメリッサは快活で奔放な女性ですが、裕福な家庭に生まれながらも家庭の事情が複雑で精神状態が落ち着かないことが多い。
子供の頃のアンディーは自分とは正反対のメリッサに幼い恋心を抱くわけですが、彼にとってはすごく眩しい女の子に映っていて漠然と惹かれるものを感じ取ったんだろうなと思います。自分にはないものを持っているメリッサに初めて抱いた想いは恋、というより憧れのほうが強かったかもしれない。

アンディーはその後も何度もメリッサに手紙を送り真正面から彼女を想う気持ちを何度も綴りますが、メリッサは手紙を書くことが好きではなくて最初はそっけない言葉ばかりを送り続けます。でも、彼女の家庭の事情が悪い方向へ傾いていくにしたがって手紙の文面も変わってきて…。だけどアンディーの「愛」とメリッサの「愛」は言葉は同じだけど意味合いがどこかすれ違っているようにも感じられてすごく聞いていてヒリヒリするんですよね。

アンディーの文面はたまに学校の出来事だけを延々と語る独りよがり的な内容にもなるんだけど(笑)、それは彼女に自分のことをもっと知ってもらいたいし教えたいという欲求から来てるようにも感じられて。
でも、受け取ったメリッサとしてはアンディーに救いを求める気持ちのほうが強いからか、”今送ってほしい言葉はそれじゃないのに”といったもどかしさや苛立ちにも似た感情がこみ上げてしまう。

幼馴染としてお互い特別に感じていながらも微妙に噛み合わない手紙の文面。

成長していくにつれて二人の環境も変わっていく。順調に充実した学生生活を送るアンディーに対し、メリッサは家庭の事情が悪化し精神的に追い詰められていく(特にカリフォルニアのくだりはめちゃめちゃ切ない)。普通の学校生活を送る彼には、彼女の複雑な胸中まで推し量ることが難しく…ついには理解しがたい行動を取ったメリッサを責める言葉を綴ってしまった。彼女はわかってくれない幼馴染にショックを受け手紙を無視し続ける。
最後はアンディーが「ごめんなさい」と折れる羽目にw。この行は可愛らしいんだけど、でも彼は結局メリッサの本当の深層心理にまでは踏み込もうとせず、ただ彼女への手紙を続けたいから謝ったのではないかと思えてしまうんだよなぁ。悪く言えば独りよがり。メリッサの救いを求める本当の声に耳を傾けることができなかったことがなんとももどかしい。

あるきっかけでもう一度手紙の遣り取りをする関係まで戻した二人は、ついに面と向かい合うことを決意する。紆余曲折ありながらもようやくじっくり時間を過ごせることになるわけですが…、結果的に想像していたような素晴らしいものにはならなかった。
その時のことがショックで再び手紙の世界へ戻ろうとするアンディーに対し、メリッサは「手紙があったから”うまく”いかなかった」と主張し必死に文字ではない彼との交流を求め続ける。

メリッサは特別な存在であるアンディーの温もりがほしかったけれど、アンディーは手紙でならメリッサとの特別な時間を築くことができると思っている節があって…。お互い大切なのにどんどん距離が開いていく二人の関係がとても切ないです。

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2幕に入ると衣装や髪型が変わり、二人が大人に成長したことが伺える。

海軍に入ったアンディーは様々な国を訪れるなかで日本で出会った芸者と恋に落ちることに。このくだりで登場する日本の描かれ方は、正直日本人の私達からすればあまり気分の良いものではないんですよね(苦笑)。ただ、戯曲が書かれた時代背景を思うと…欧米人が当時アジア人を下に見ていた歴史も垣間見えるわけで…そのあたりがちょっと複雑です。
日本人女性とかなり良い関係になったアンディーからの文面にドライに答えるメリッサでしたが、内心は穏やかではなかったのではないかと思います(汗)。あんなに手紙でメリッサ一筋みたいに書いてきた彼が他の女性に気を取られるとは、って感じてるように見えて仕方ない。自分の方しか向いてないと思っていた幼馴染が違う方向を見てしまうことへのモヤモヤ感はすごく気持わかる。

そんなメリッサは芸術家への道を歩み始め新しい人生に軌道修正を図る。小さい頃から手紙にたくさんイラストを添えてたようでしたから、彼女なりの道を見つけられたことを悟るこちらとしてはホッとした気持ちもよぎります。
さらに新しいパートナーとも出会い、子供にも恵まれてやっとメリッサにも安定した生活が訪れることに。日本人女性との紆余曲折を経たアンディーも素直に祝福する文面を送る。

だけど彼はメリッサの結婚式に立ち会うことだけはできなかったんだよね。やがてアンディーも新しいパートナーと出会うんだけど、その時もメリッサは結婚式の出席を拒んでいた。お互いに「結婚する相手ではない」と自覚しつつも、自分だけのものだと思っていたのにという複雑な胸中は拭えなくて。こういうところは息が合ってるのに、結局交わり切るところがないのがすごく”人間臭い”なと思います。

ただ、生活のレベルはアンディーのほうが安定していて…メリッサには次から次へと不幸な出来事がつきまとう。法曹界に進出したあと議員への道を歩み始め、家族の関係もそれなりに(途中問題は起こっていそうだったけど)うまくやってるアンディー。彼にはメリッサが度重なる不幸に直面して精神的に追い詰められていることに対し思いやることができなかった…。
メリッサは文面では強がっているものの、その内容はどんどんシビアになっていってて聞いているこちらとしてはいたたまれなくなってくる(涙)。時折アンディーは「何かあったのですか?」と気遣う文面を送るけれども、結局は自分の生活が充実していくことで彼女の本当の姿に目を向けることがないのがすごくもどかしいのです。支持者あての定型文的な手紙をメリッサに送ってしまうところとか、いつも「ヲイ!!!」とツッコミ入れまくっちゃうよ、私は(苦笑)。

それでも、議員の生活に追われていたアンディーにふと心の隙間が生まれる瞬間が手紙から読み取れる場面があります。このとき彼のなかにメリッサを求める想いが少しずつ高鳴っていくのを感じる。生活がボロボロだったメリッサはアンディーがようやく自分の方を向いてくれたことに救いの光を見て、必死に彼を求める。

心の隙間を埋めるためにメリッサを求めようとしていくアンディーと、生きる希望はアンディーしかいないと切羽詰まり追い詰められているメリッサ。

やっぱりどこかすれ違った気持ちのまま、それでも互いを求め合い禁断の逢瀬を重ねていく二人。

でもその時間はあまりにも短く、やがて悲劇へと舵を取ることになります。このラストに向かうくだりは何度見ても胸が痛くて涙が出ますよ…本当に。最後に向かうに従っての演出がさらに二人の気持ちを見る側の心に焼き付けていくようで。あの最後の数分だけの演出が本当に秀逸。青井さんの演出を藤田さんも見事に引き継がれていて、より深く心に刻まれました。

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飯田洋輔くんと伶美うららさん

メリッサを演じた伶美うららさん、どこかで名前を聞いたことがあると思ったら…2年前に見たミュージカル『るろうに剣心』(小池徹平くんが剣心、和樹くんが比古清十郎を演じたやつで2回見た)で駒形由美を演じていたセクスィーお姉さんだった!!現在は女優さんの他にモデルやアクセサリーのハンドメイドをされたりしているようですね。

1幕2幕ともにほっそりした体系にドレスがよくお似合いで、惚れ惚れする美しさに圧倒されました。

でも一番驚いたのが、朗読の上手さです。子供時代から大人の女性に至るまでのメリッサ像がものすごく色鮮やかに頭の中に浮かんできました。凛としたよく通る美しい声だけでなく、手紙を綴る瞬間瞬間のメリッサの微妙で複雑な心の内側が聴く者の胸にこれでもかというほど迫ってくる。
元気で明るい口調で読み進めていても、どこか心が満たされていなくて。やがてアンディーだけに救いを求めていく姿が本当に痛々しく切なく…。明るさの中に潜む孤独の表現が本当に見事でした。だからこそ、あの最後のメリッサには涙が止まらなかった。

伶美さん、素晴らしい朗読をありがとうございました。

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四季を退団してから初めての作品が、この相当難易度が高いと思われる朗読劇『ラヴ・レターズ』だった飯田洋輔くん。そのチョイスにとても驚いたけれど、これまで見られなかった役者としての洋輔くんに会えると楽しみにしていました。と、同時に…、正直心配する気持ちもありました。
四季ではミュージカルを主戦場としてきたし、短い練習時間と1度きりと定められた合同稽古という環境は劇団時代にそういう経験はしたことがなかったと思うので、突然この難易度の高い朗読劇はハードルが高すぎるのではないかという余計な心配がどうしても過ってしまいました(汗)。

舞台袖から登場したとき、伶美さんと一度顔を見合わせにっこりと見つめ合って椅子に座っていましたが…最初の第一声を発するまでのドキドキ感は見ているこちらにも痛いほど伝わってきて(汗)。もうその表情見てたら心の中で「頑張ってーーー」と思わずにはいられませんでした。あんなに緊張してる姿見たの、初めてだったかもしれない。

そんな洋輔くんのアンディー。1幕のサスペンダー姿がめっちゃ可愛くて萌えたw。
そして・・・すっごい優しかった!!!これまで3組のアンディーを見てきたけれど、そのなかでも特に優しくて温かくて可愛らしいアンディー。

深みのある声が本当に癒し系で。メリッサがどんなわがままを言ってきても、困惑しつつ柔らかく包みこんでいくような感覚が何度もあった。最初の方は洋輔くんアンディーが伶美さんメリッサの掌上で転がされてるみたいだなって感じたけど、徐々にそれとは違う光景が見えてきて。
結局のところ、メリッサは洋輔くんの温かいアンディーの懐に包まれていたんじゃないかなとさえ。それゆえ、あのラストシーンでの伶美さんメリッサの表情と”メッセージ”の説得力がさらに活きたんじゃないかなと思いました。

アンディーって、字面だけ読んでるとけっこう”ひどい”男に思えちゃうんですよね。特に女性側からすると(苦笑)。彼はメリッサをとても大切な存在だと認識はしていたけれど、結局は自分を守ることに徹してしまったみたいなところがあって。
だけど、洋輔くんが読むと…なんかそういうアンディーの弱さも聞いていて腹立たしく感じることがあまりなかったんですよね。無神経的なシーンもあるんだけど、あの優しい温かい声で演じられるとなぜかフラフラっと許せてしまう感情が芽生えるというかw。飾らない自然体な読みっぷりがそういう感情に導いたのかもしれません。

途中、「弟に見せたいと思います」みたいな文面がいくつか序盤に登場するのですが・・・あれを聞いて達郎くんの姿が脳裏に浮かんでしまったのは私だけでしょうか(笑)。洋輔くんから「弟」ってワードが出ると芝居とはいえ、どうしても達郎くんが過って仕方ないw。
もうひとつ、メリッサに腹を立てて「地獄ヘ行け!!」と思わず叫んでしまう場面は『オペラ座の怪人』のファントムが浮かんでしまってww。まだまだあの余韻から抜け出せないようです、私は(笑)。

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このように、ファンとして盲目的に「めっちゃ良かった」と言い切りたいところではあるのですが、ただ、どうしてもやっぱり・・・すべてが絶賛というわけにはいかなかったかな。心を鬼にして、正直に感じたことも少し述べたいと思います。だけど、ほんと大好きだからこそのっていうのは変わらないので、それだけはあしからず。

これまでとは全く違う環境での公演だったはずなので、洋輔くん的にも手探りで必死だったのではないかなと推測されます。一人で相当台本を読み込んだんじゃないかなと。

そのことが影響したのかは定かではありませんが、なんとなく、声に少し疲れを感じてしまったんですよね。ちょっと掠れ気味かなと思う部分もあったし(途中で1回水飲んでた)、何と言っても淀みなく最後まで朗読できなかったことが残念だったなと。伶美さんが感情表現豊かにスラスラとほとんど閊えることなく(1度だけだった)読み切っただけに、なおさら”粗”の部分が気になってしまったというのは否めません。途中で私、手に汗握って「頑張ってーーー」と心の中で念じまくってしまったんでw。

それから、1幕の少年から青年への変化の部分はもう少し緩急混ぜて読んだほうが面白かったかもしれない。途中でテンションが上って「ひゅーー!」とか言っちゃうところはめっちゃ可愛くて良かったので、もう少しそこに寄せてもらっても良かったかもしれないな…なんて。
実年齢に近い2幕はアンディーの雰囲気がリアルに伝わってくる読みっぷりでハマってたので、なおさら1幕の感情の起伏をもう少し表に出してもらいたかったなとは思いました。

でも、読み進めていく中でメリッサの文面に思わず動いた感情が表情ににじみ出る瞬間が増えていったのはすごく良かったです。大きくではなく、ちょっと眉をひそめたり唇を噛み締めたり。特に洋輔くんは感情が動くと唇を噛んで堪えるようなお芝居がこれまでも結構あったので、そんな姿を見れたことはすごく嬉しかったです。

そしてラストシーン。あの場面はこれまで見てきたアンディーを演じた役者さんたちはかなり涙を流していたのですが、洋輔くんのアンディーは最後の瞬間まで「静」だった。だけど、声は微妙に震え気味で…メリッサへの想いが溢れ出そうになるのを必死になって抑えてる感情がじわじわ伝わってきて…。あの表現をするアンディーは初めて見たのでとても新鮮でした。あれは、洋輔くんだからこそ成立した最後のアンディーの姿だったんじゃないかと思います。

今回はちょっと残念に思うところも正直あったんだけど、でも、それも含めて洋輔くんだと思うし、何よりこの難しいハードルに果敢に挑んだことは本当に素晴らしいと思います。これまで気付けなかったお芝居のいろんな引き出しも見つかったかもしれないし、そういう意味でも今回の『ラヴ・レターズ』出演はものすごく尊い挑戦だったのではと。

2幕の衣装で首に巻いていたスカーフが「虎柄」に見えたのは私の目の錯覚でしょうか(笑)。

これからも劇団時代にはできなかったやりたいこと、どんどんチャレンジしてほしいです。そして、外の世界での演劇で経験を重ねたうえで、いつかもう一度『ラヴ・レターズ』に挑んでほしい。私はもう、ファンとして信じて応援していくだけです。

最後に、『ラヴ・レターズ』のメリッサの言葉を借りてひとこと。

ありがとう、飯田洋輔くん。

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