昨年東京で世界初演された『MA』。何度か通ううちに作品への情も湧きはしたのですが…凱旋公演は特にいいかなと思ってチケットも購入しませんでした(苦笑)。
が、新キャストの今さんと綜馬さんがどんな感じなのか気になるのと博多公演からずいぶん印象が変わったという噂を耳にしたのもあって…ちょうどA席を安価で譲ってくださる方と出会い観に行ってきました。
ロビーは上記写真のように出演者の色紙(MAを演じての感想)が飾られていたりしてけっこう華やか。でも、何故かあまり混雑した印象が無くて、余裕で一人一人の色紙を写メしまくってしまいました(笑)。印象に残った色紙は石川禅さんの「無我」と山路さんの「貴方のボーマルシェ」だったかな。涼風さんのアントワネットに寄せる想いもなんだか切なくてよかったです。色紙の一番人気はやっぱり祐一郎さんでした。
で、劇場入りして舞台の幕が上がる直前に客席を見渡してみると…私の座っていた1階A席付近はなんと
がら空き!!
今回の衝撃が一番大きかったのはこのことでしょうか(苦笑)。S席や2階席の様子は分かりませんでしたが…正直あんな座席の空いた帝劇を見たのは初めてだったので本当にビックリしました。なんていうか…役者さんは複雑だろうなぁ…。東京凱旋公演なんて昨年の幕が開く前から決まってましたけど、正直これは誤算だったんじゃなかろうか。
まぁ、私も今回安くチケットが手に入らなければ観に来る可能性が極めて低かったわけで…(爆)、そう考えると客はやっぱり正直だったかなと。こういう光景を見るとつくづく東京の観劇客は厳しいなぁと思ってしまったのでした。NACSさんたちが怯えてるのも判る気がする(苦笑)。
一番心配なのはこのあとドイツで決まっている「MA」公演…。この作品、果たして向こうの人に受け入れられるんだろうか…。
主なキャスト
マリー・アントワネット:涼風真世、マルグリット・アルノー:新妻聖子、アニエス・デュシャン:土居裕子、アクセル・フェルセン: 今拓哉 、ルイ16世:石川禅、ボーマルシェ:山路和弘、オルレアン公:鈴木綜馬、カリオストロ:山口祐一郎 ほか
以下、ネタバレ感想になりますが、やはり少し辛口(毒多し)になるかも。
まずよかった点を挙げときます。それはキャスト。昨年よりも役作りが細かくなっていて一人一人のキャラクター心情が伝わりやすくなっていたように思います。
特に主演のアントワネットとマルグリット。前半の二人の微妙な心情の変化が前より分かりやすくなっていました。ワガママ放題のアントワネットでも実は心の中にいつも寂しさと虚しさを抱えている、マルグリットの絶望から怒りへの変化・・・このあたりが一番印象的でした。
禅さん演じるルイもますますのダメっぷりが可愛らしく印象的でした。とにかく演じ方がとても巧い!無邪気で政治に無関心、だけど憎めないんですよねぇ。いつもルイには感情移入させられてしまうのです。まぁ、あんな国王だったら国が滅んでしまうというのも分かりますけどね(苦笑)。
新キャストの今さんと綜馬さん、このお二人もとてもよかったです!
井上君からフェルゼンを引き継いだ今さん、初めはあまりにも井上くんとイメージが違うので心配だったんですが・・・どうしてどうして!これはピッタリじゃないですかっっ!あんなに今さんがフェルゼンにハマる役だとは思いませんでした(笑)。もう大人のフェロモン全開でとにかく涼風アントワネットとの釣り合いがドンピシャです!
井上君のフェルゼンもカッコよくて素敵だったけど、やっぱり今さんを観ちゃうとこちらのほうがお似合いって思えて仕方なかったですね。
それから高嶋さんからオルレアンを引き継いだ綜馬さん、怪演です(笑)!
最初のメイクなんか運動会の饅頭競争で白粉んなかに顔突っ込んだときのような感じ(どんな顔や 爆)で思わず噴出しちゃいましたよ~。そのあとも、まぁ、水を得た魚のように妖しさ爆発のハイテンションで責めまくり。観劇前に「綜馬さんがすごい」っていうの聞いてましたけど、噂に違わぬ弾けっぷりで楽しませてもらいました。
でも、初期の頃はもっとすごかったとか!?観たかったような観なくてよかったような…(苦笑)。
と、キャストはとてもよかったし曲もやっぱり好きなものが多かったと実感できたのですが・・・もう一度観てみたいという気持ちにはなれませんでした。去年4回目観た時は「感動」できたんですが、手直しして分かりやすくしたというこの凱旋を見てあの時と同じ気持ちにはなれなかったんですよねぇ・・・。むしろ、一番最初に観たときの違和感が戻ってしまったような感じ(苦笑)。
たしかに歌詞がところどころ以前よりも分かりやすい言葉になっていたんですが、どうもストーリーがうまくこちらの中に入ってこないんですよね…。なんだろう、この違和感。特に1幕中盤、ギロチンの説明が出てくるところとマルグリットが怒りの感情を顕にするあのあたり。ここは前から思っていたんですが・・・クドイ(毒)!!
ギヨタン博士のシーンってこの芝居の中であんなに重要ですかね?たしかに民衆を処刑するものが最後には王と王妃にのしかかってくるという意味では欠かせないと思うのですが、あんなに長く時間をとる意味が分かりません。どうしてもあのシーンを入れるというのであれば、もっと動きのあるものにしてほしい。非常に退屈してしまうし、なんだか舞台全体の流れを止めてしまっているような感じでイヤなんですよ。
怒りのマルグリットをアニエスが説得しようとするシーン。ここもすごく長く感じました。正直、ものすごくクドイ(毒)。ものすごいモタモタした感じに見えてしまってせっかくの新妻ちゃんや土居さんの熱演も還って疎ましくさえ思えてしまうんです。なんていうか、見てて疲労感が襲ってくるんですよねぇ・・・あそこ。もう少し何とか「魅せる」演出できないもんでしょうか。
そしてカリオストロ。今回もその存在意味が分からなかった(爆)。祐一郎さんの歌はすばらしいと思うけれども、彼のいる必然性がこの舞台の中で伝わってこないんですよ(毒)。狂言回しの山路さんのボーマルシェをもっとフルに動かしたほうがこの舞台は締まると思うんですよね。
しかも、何故か今回、ルイが処刑されると語られた後にカリオストロの新曲が入ってる(苦笑)。なぜそこでカリオストロの新曲??ただでさえ存在がアヤフヤなのにあのシーンでカリオストロが歌い上げる意味が分かりません(毒)。あの場面は禅さんのルイに歌ってもらったほうがいいと思ってしまうのは私だけでしょうか…。あのときのルイの心境を歌って欲しいなぁ。
※祐一郎さんに他意はありません。お気を悪くされた方、ごめんなさい。
と、まぁ、こんなふうに毒のあるような感想が浮かんでしまったわけで…「また観たい」という気持ちにはなれなかったわけです。ラストシーンでアントワネットが処刑されたあと民衆が赤い紙ふぶきをバーっと投げるのはすごく好きなんですけどね…。
日本での再演は…やはりもう一度練り直してからにしてほしいかも。
ドイツ、大丈夫かいな、本当に…(苦笑)。