ミュージカル『ファントム』 2010.11.17マチネ

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Without Your Music

気を失って眠り続けるクリスティーヌにすがるように近づいていく大沢ファントムの動きがなんとも切なく哀しく見えます。まるで自分の宝物を大切にしまいこんでる少年のようなんですよ…。「傷つき泣き疲れた子供のよう」と自分を表現して歌うフレーズ聞いてると泣けてきます…(涙)。

大沢さん、このナンバーにいつも若干苦心しているように思えるのですが、この日は以前よりもかなり安定していました。ちょっと不安定でもファントムの孤独感がヒシヒシと伝わってくるので泣けるんですよね。

そこへキャリエールが現れてクリスティーンを帰すように説得するのですが、それに対するファントムの荒れっぷりがまたすごいんですよ。

先ほどまでの孤独な少年のような様子とは違い、相手を威嚇しまくるかのような鬼気迫る表情を見せる。すごいよなぁ、大沢さんの芝居。「ファントムから人間になるんだ」っていうセリフがとてつもなく重い…。クリスティーンだけに人生の全てを捧げるファントムが切なくてたまりません(涙)。キャリエールを追い出す時もなんだかちょっと苦しそうに見えるからなお切ないです…。クリスティーンを通して必死に光を求めて歌うシーンも胸が苦しくなりますね(涙)。ここの音程も今日はよかったように思う。

その後、ファントムはクリスティーンを追い込んだカルロッタに復讐するんですが…ここの残虐性が凄まじいものがあります。白手袋をはめている時の大沢ファントムの静かな表情が逆にゾクっとしましたよ。そして狂ったように何度もカルロッタにナイフを振るう…あれは衝撃的ですね。大沢さんの演じ方が実にリアルなんです。

ちなみにナイフを取り出すとき、大沢さんちょっと探してたかも(笑)

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My True Love

カルロッタを惨殺した悪魔のような顔を見せていたファントムが、次のシーンにはクリスティーンととても穏やかな表情をして地下を散策している。この落差が激しくて衝撃的です。表情が全く違いますからね。破綻しているファントムの心の闇が見えてきますよ。ここの大沢さんの演じ分けもすごいと思う。

想像の世界でクリスティーンを森に案内するとき、まるで小学生低学年の少年のように無邪気で純粋。目には見えない森を愛する人と共に歩く喜びで弾けんばかりの笑顔を見せているんですが…逆にそれが哀しく見えるんですよ(涙)。ずっとこんな世界を夢見ているんだなと思うと泣けてくる…。

そんな彼に、クリスティーンは素顔を見せてほしいと残酷な願いをする。その願いを聞いた瞬間に血の気が引いていくように笑顔が真顔になっていく大沢さんの表情がこれまた切ない(涙)。で、このナンバーのときの杏クリスティーンですが…前回よりかは聞ける歌になってました(苦笑)。とりあえず、腹立たしいとは思わなかったからよかった…。すごく綺麗な素晴らしいナンバーですからね、ここは本当に丁寧に歌ってほしいのですよ。

My Mother Bore Me

クリスティーンの必死の頼みを聞き入れたファントムは仮面を外すのですが、現実を目の当たりにしたクリスティーンは逃げ出してしまう。この時の杏クリスティーンの恐怖におののいた表情はとても良かったと思います。リアリティがあった。それだけに、ファントムの…エリックの哀しみが痛くて痛くて…。仮面をポトリと落としたあの後姿が脳裏に焼きついて離れないくらい見ているこちらも苦しい。

そして、まるで幼児のような声で慟哭する大沢エリックに…ボロ泣き(涙)。ここからもうずっと涙が止まらなくなっちゃって…。本当に哀しいんですよ、大沢エリックが…。そして母親との記憶を遡るように彼自身も年齢が戻っていく。これまでとは違った少年のような幼い歌声が涙を誘います。大沢さん、すごいよなぁ、本当に。体育座りして母との記憶を辿ろうとしている姿なんて思い出すだけでも泣けますよ(涙)。

そして次第にクリスティーンへの溢れんばかりの想いを吐露するように歌い上げていく。最後に「アイラヴユー」と何度も言い、クリスティーンだけだと叫ばんばかりの絶唱(声の伸びもハンパ無くすごかった)に見ているこちらは号泣ですよ(涙)。大沢さんももう涙でいっぱいの顔になって半分嗚咽しそうになりながら必死に歌い上げてるし…本当に激しく心揺さぶられるナンバーでした(涙)。

戻ってきたクリスティーンはキャリエールにエリックの顔を見て逃げ出したことを告白しますが、この時のキャリエールの「無責任な優しさは残酷なものだ」というセリフが心に響きますね…。傷つけるつもりは無かったけれども結果的に激しくエリックを傷つけてしまったクリスティーンの浅はかさ…。この時の杏ちゃんの嘆きっぷりの芝居もよかった。

さらにカルロッタの遺体が発見される悲劇が…。「自分は芸術には疎いけれどカルロッタの歌を聞くと幸せな気持ちになれたんだ」と告白するショレーさんのセリフがまた泣けます(涙)。舞台袖に下がる時も歯を食いしばって涙を堪えている石橋ショレーさんに泣けました(涙)。

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You Are My Own

警官から追い立てられるエリックはついに銃弾を体に受け、キャリエールと共に地下へ。この時上手舞台袖の柱に大沢さんのマントの裾がちょっと引っかかってしまったようですが、さりげなく篠井さんが取り払っていました。

水をまともに飲むこともできないほど傷つき弱ったエリックを目の当たりにして、自らの罪を自覚する篠井キャリエールの姿がとても印象的だった。そこから何かの箍が外れたようにエリックをこれまで暗闇に閉じ込め続けたことを謝罪するキャリエールの姿が痛々しい。彼もとても苦しんで痛んだということが篠井さんの芝居からヒシヒシと伝わってきます。

そしてついに、エリックの前で「父だ」と名乗り出る。もうここのくだりからまた号泣ですよ(涙)。父だと聞いた瞬間の大沢ファントムのなんと幸せそうな嬉しそうな笑顔…。あれを見たらもう涙があとからあとから溢れて止まらなくなった(涙)。

「息子よ」と必死に呼びかける父に「分からないはずがないだろう、ずっと言ってくれるのを待っていた」と歌う息子…。この時の大沢エリックは本当の自分自身になれたような芝居をするんですよね。一番"自分"の本心に近い人間になってるように見えた。子供のように父の腕の中で甘える大沢エリックが切なくて切なくて…それを包み込むように抱きしめている篠井キャリエールも切なくて切なくて…ボロ泣き(涙)。ナンバーの旋律も非常に美しくて泣けるんです…。

そこへクリスティーンがフィリップと共に戻ってくる。再び鬼の形相になるエリックがまた哀しい…。フィリップを撃ち殺そうとする大沢エリックに「やめて」と杏クリスティーンは言うんですが、この日は今までよりも必死に叫んでて良かったです。クリスティーンの声でエリックはフィリップへの引き金を引くことができないんですけど…この時の大沢さんの表情が…あまりにも苦しそうで哀しくて哀しくて涙止まりませんでしたよ(涙)。

さらにクリスティーンと逃げる途中で傷つくエリック…。この時の杏クリスティーンの必死の抵抗も以前より良くなってた。そしてロープアクションですが…ここはアクションよりもキャリエールに涙ながらに訴える大沢エリックに涙涙です…。「母さんのところへ行きたいんだ、父さん!!」このセリフですよ。もう号泣(涙)。泣き叫ぶように最後の力を振り絞って「父さん」と呼びかける大沢エリックの姿に涙がホントに止まらなかった…。

そしてエリックは愛する人に囲まれて最期の時を迎えるのですが、最後にクリスティーンがエリックの仮面を取って愛しそうに顔をなでるシーンがあります。この時仮面をはがす時、杏クリスティーンは手がガタガタ震えてたんですよね。そこがすごく良かったです。歌はちょっと相変わらずだったけど(苦笑)あの震える手は感動しました。
光の中で、とても幸せそうな笑顔で息を引き取るエリックなんですが…大沢さんの表情がとってもきれいで…それ故になんだか哀しくもありで…やっぱり最後までボロ泣きする私なのでした…。

最後に大沢さんについて。

今回の再演でもこちらが望む以上のお芝居を魅せてくれて本当に感動させられました。大沢ファントムは直球ど真ん中で私の心を大きくく揺さぶるんですよ。哀しくて愛しくてたまらないエリックを作り上げてくれて本当に感謝。歌もすごく頑張ってた。声の伸びが明らかに初演とは違います。それにしっかりと感情と動きが歌に乗っているし、進化してましたよ。この舞台にものすごく賭けてたんだっていうのが伝わります。

東京で見るのはこれが最後。来月、本当の千秋楽を大阪まで観に行きます。その時にまた大沢さんについても語ろうかなと。東京楽の観劇がより良いものになって本当によかったです!大阪公演も期待しています。

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