約4年半ぶりに海劇場に戻ってきた劇団四季の『オペラ座の怪人』を観に行ってきました。
…正直なところ、行くまでがなんだかとても怖いというか、緊張というか…そんな心持でした。海劇場でオペラ座の怪人を観るということは、すなわち、私にとっては
小林克人さんの思い出と正面から向き合うこと…。
これまで毎年小林さんのご命日に思い出を振り返ってきたわけですが、小林さんが立たれた最後の演目と同じ劇場に赴くということは切ないものがありました。どんな気持ちでこの舞台を観れるのか、とても不安だったんですけど…私と同じ想いの数少ない友人が一緒だったので少し気持ちが楽だったかな。
劇場に到着したのは開演する15分前だったのですが、入り口外には信じられないくらいの長蛇の列!開演するまでに全員中に入れるんだろうか!?って思うほどの盛況ぶりにまず驚きました。開幕してから約3週間経つわけですが、さすがに人気の演目。満員御礼も出るほどでした。
海劇場が満席状態なのを見るのは…「マンマミーア」千秋楽週に行った時以来だからあまり時が経ってないわけですが(苦笑)、この状態があとどのくらい続くのかっていうのが気になります(今からだと気が早いけど)。
劇場入りした時の私の手はもう緊張で冷たくなってた(汗)。なんだか鼓動も早くなってたし…あんな心持ちで楽でも初日でもないのに劇場入りしたのは初めてだったかも。心なしか客席に行くのもちょっと怖かったくらいです…。海劇場には過去に何度も通っているのに…不思議なものだなぁ、なんて。
ちなみに今回はパンフレット購入は見送りでキャストのところだけ見たのですが…ファントム役者が6人くらいいてビックリ!どのくらいの期間上演するのかは知りませんが、果たして海劇場にいる間に6人のファントムを見ることができるのだろうか?個人的には外部参加のお二人は見てみたいです。
劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』感想一覧
主なキャスト
オペラ座の怪人:高井治、クリスティーヌ・ダーエ:笠松はる、ラウル・シャニュイユ子爵:中井智彦、カルロッタ・ジュディチェルリ:河村彩、メグ・ジリー:松田未莉亜、マダム・ジリー:戸田愛子、ムッシュー・アンドレ:林和男、ムシュー・フィルマン:青木朗、ウバルド・ピアンジ:永井崇多宏、ムッシュー・レイエ:斎藤譲、ムッシュー・ルフェーブル:田代隆秀、ジョセフ・ブケー:平良交一
以下、ネタバレありの感想になりますが…、上記のようにものすごい感傷的な気持ちで観劇してしまったためにまともに本編を見た実感がありません。今回はあまり詳しい感想が書けないと思いますのでご了承ください。
海劇場に久しぶりに生のオーケストラが入りました。四季の演目で今生演奏使っているのはオペラ座とライオンくらいなのでしょうか。四季の演目ではここしばらくずっとテープ演奏物ばかりを観てきたので、生演奏の臨場感はいいなぁとシミジミ感じました。たまに音ズレしたりもあるんですけど(今回はクライマックスの一番いいところでちょっとね 苦笑)それすらも生の醍醐味とか思ってしまったくらい。
オケの指揮をしていた吉住さんという方はまだお若いお兄さんって感じ。カーテンコールのあとの演奏後にお顔を拝見したら、宮川一郎太さんに似ていました(笑)。
今回の座席はこれまで『オペラ座の怪人』を観てきた中で一番前方の良席。あんなに間近でオペラ座観たのは恐らく初めてじゃないかと。それだけにけっこう新たな発見があったりして楽しかったです。
ただ、この演目に限ってはあまり前方すぎるところだと見えないシーンがけっこうあるんですよね。特に1幕クライマックスあたり。ファントムが最上部に行けば見えないし、エンジェル像で歌うファントムもチョロッとしか表情が分からないので歌声だけ聞いてるって感じになる(苦笑)。
なので初めてだったりあまり回数を見ていない人には『オペラ座の怪人』は前方列はオススメできません。
ただ、あの、シャンデリアの迫力を体験するのはあの前方席じゃないと分からないかも。普段は"あぁ、上がった"とか"落ちてきた"とか客観的に見てたけど、前方だとそれがリアルに感じてちょっとドキドキしてしまいました(笑)。色々な楽しみ方のある『オペラ座の怪人』です。
と、こんな風に全体的なことは感じる余裕があったりしましたが…ストーリーとしてはこれまでの中で一番まともに観れなかったかもしれません。正直、どんな物語を見たのかという記憶があまりなかったりする…。ところどころキャストの皆さんの動きとかチェックする隙間はあったんですけど、『オペラ座の怪人』を観に行ったという実感がないんですよね…。
観る前までは自分がどんな気持ちにさせられてしまうのか想像がつかなかったんですけど…、思っていた以上に寂しさと苦しさと辛さと切なさが襲い掛かってきました…。プロローグのところからなんだか妙に動悸が始まったりと内心とても動揺していたわけですが、次のハンニバルがまず最初に私の胸の奥にグサリときました。
ハンニバルの稽古をフィルマンたちが視察にくるシーン、その瞬間、思ってしまったんです。
"あぁ、ホントにもう、小林克人さんはいないんだ"
って…。亡くなって4年がすぎて、自分のなかでもそれを受け止めてきたつもりでいたけれど、実は心のどこかでそれを認めたくない自分もいたんだということを痛感させられた瞬間だった。そう思ったら、もう、自然に感情がこみ上げてきてしまい涙があとからあとから溢れて…、シーン的にはなんら泣けるわけではないのに一人号泣状態に入ってしまった(涙)。なんか、まともに舞台の上が見れなかったです…。
そのあとファントムとクリスティーヌのシーンになってから少し心が落ち着いていたのですが…次の支配人のオフィスでの「プリマ・ドンナ」のナンバーに入った時のことです。
フィルマンとアンドレがカルロッタをなだめにかかるあたり。なんか、走馬灯のように小林フィルマンの姿が脳裏をよぎってしまって…そうしたらもう、止め処もなく後から後から涙が溢れ出して号泣を越えて嗚咽状態になってしまった(涙)。とにかく哀しくて、切なくて、苦しくて・・・
ただただ泣きました・・・。
辛い観劇になるだろうなってどこかで覚悟はしていましたが、こんなに堪らない気持ちにさせられるとは…。そんな状況での観劇になったので、1幕はこの後も放心状態で終了…(汗)。
とりあえず気持ちを落ち着かせて2幕に臨んだわけですが、1幕で高ぶった寂寥感はそう簡単に癒えることはなく…マスカレードもなんだかボンヤリ眺めてしまい、フィルマンの姿を見るたびにどこかで小林さんの面影を追いかけている自分がいたりしてまともな観劇ができない状況になりました。
2幕の支配人のオフィスシーンでも涙がこみ上げ…そして墓場のシーン。ここは支配人は出てこないんですけど、何が切なかったかって…あの、クリスティーヌの歌う歌詞。
「もうその人に会えない、ここにはいない」
「もしかなうなら、もう一度お声を」
この言葉が、そのまま小林さんへの想いに重なってしまってまた号泣…(涙)。オペラ座の怪人でこの歌詞を聞くっていうことが、こんなに切なく辛いものだったとは…。
そしてグッタリしたような状況の中、オペラ座の怪人が終演してしまった…。2幕クライマックスの感動的なシーンもほとんど心の中に入ってこない状態だった気がする(爆)。とにかく、本編とはほとんど関係のないところで涙涙になってしまった今回の観劇。小林さんの死の現実と向き合う時間だったかもしれない。
この作品は大好きなので今後も観ていきたいのですが、そのためのステップとしての観劇になったのかなぁ。普通にストーリーとして堪能できるまでにまだ時間がかかるかもしれないけど、『オペラ座の怪人』とは今後も向かい合っていきたいと思っています。
キャストの感想を少々。
ファントム@高井治さん
久しぶりに高井ファントムを観たのですが、相変わらず素晴らしい歌声でした。ただ、この日2回目公演だったからかちょっと声の伸びが足りないかな、とか、ちょっと歌声に揺れがあるな…っていうような部分は感じました。少しお疲れ気味だったのでしょうか?それと気になったのが歌う時に舌をチョコチョコ出すことが多かったこと。こんな前方で高井さんを観たことがなかったのでいつもそうなのかもしれないのですが…気になっちゃって(汗)。マスクを取ったあとは普通に歌っていたのでもしかしたらマスクが原因なのかも?
全体的には高井ファントムは「静」のイメージが強い。静けさの中でひたすら孤独に耐えている感じ。その背中が切なかったりするのですが…個人的にはちょっと物足りないとも思ってしまうんですよね。クライマックスの「行け、行ってくれ、お願いだ」の悲痛な叫びはグッときましたけど。あの台詞回し、前回の海公演から変えていたのが印象的でした。
クリスティーヌ@笠松はるさん
初めて見るクリスティーヌでしたが、正統派な可憐で美しい印象。歌声も全く問題なくとても安定しているのがいいです。なんとなくちょっとおっとりした雰囲気もあって世間知らずなお嬢様みたいなところも。ただ、なんとなくもう一味ほしいかも…
ラウル@中井智彦さん
名古屋でラウルデビューしたという中井さん。以前は違う舞台で活躍されていたようですが余り記憶がなくて(汗)。この四季で大きくステップアップしたのではないでしょうか。中井ラウル、とっても素敵だった!!悲しみの観劇になっていたわけですが、中井ラウルのシーンはけっこう注目して魅入ってしまいました。
久しぶりにドンピシャなラウルが出てきた!って感じで嬉しかったですね。台詞回しも四季法に染まり過ぎてなくてとても自然に聞き取れるのがいいです。これまではファントム側に感情移入して観劇していましたが、今回はラウル側の視点で観劇していた自分がいた、みたいな。ちょっと動きが重々しいなって感じるところはあったけれど、回数を重ねればさらに素敵なラウルになるのではないかと思います。汗をかきながら一所懸命な中井@子爵様。これからも応援していきたい役者さんです。
カルロッタ@河村さんとピアンジ@永井さんも初観。お二人ともこれまで見てきたなかで若々しいなという印象が強かったです。フレッシュ感があっていいんですけど、もう少し存在感の重みもほしいかも。
松田@メグは可愛くてセリフも聞き取りやすいんですけどたまに音がズレているのが気になりました。戸田@マダムは以前も観たことがあるのですが、やっぱりちょっとなんだか威厳が足りないかもって思えてしまう。
林@アンドレと青木@フィルマンはベテランコンビですよね。でも、ゴメンナサイ…。ほとんど舞台上のお二人をまともに見ることができなかった…。どうしても重ねてしまって…辛くてねぇ…。
そういえば林@アンドレはバレエシーンの時に踊りながら退場っていうのをやらなくなったんですね。ちょっと残念。
それからソンダンぶりのブケー@平良さんはなかなか役にマッチしていてよかったです。可愛さと不気味さが同居したような感じだったかな。ブケーのあとのアンサンブルではどこにいるのかすぐに分かった(笑)。
次回は12月の予定です。今回かなり泣いたのでもう少し落ち着いて見れればなぁ…と思いますが、どうなるかはまだ分かりません。個人的には高井ファントムよりも佐野ファントムが好みなのでぜひきてほしいんですけど…、佐野さんは京都の予定があるみたいだから無理かなぁ。