ブロードウェイミュージカル『RENT』25周年記念Farewellツアー来日公演 2022.05.18ソワレ

全体感想 -2幕-

♪Seasons of Love♪

2幕入って最初に歌われるナンバー(映画だと1幕最初になってますが)。『RENT』のテーマソングと言ってもいいほど有名。いつもここでウルウルっとくるのですが、今回来日キャストの皆さんは登場した時に一度全員で手を繋いで円陣を作っていたんですよ…!あれを見た時に、ブワワッと涙がこみ上げてきてしまって、そこからずっとボロ泣き状態になってしまった(涙)。皆の気持ちが一つになるのを感じたし、まさに魂のこもった素晴らしい歌いっぷりでした。

”52万5,600分、あなたは一年の時間をどのように計りますか?”

”愛で人生を計ろうじゃないか”

生きているその瞬間瞬間がどれほど貴重で大切なものなのかを改めて考えさせられる気持ちになります。本当に魂レベルで心揺さぶる名曲中の名曲。混沌とした今の時代に必要なことがたくさん詰まっている気がして、それを想うとさらに泣けてしまった。

このあと、締め出しを食らってしまったマークたちが仲間と結託して部屋に強引に帰還。その間にロジャーとミミはイチャイチャしているんだけど、日本語訳を見るとロジャーはカフェでの一件が気になって少し疑心暗鬼になっていることが分かりました。
ミミは過去に”追い出す側”にいるベニーと良い関係にあったと知っちゃったわけで、「彼女を信じたいんだけど」といった微妙な心の揺れが見え隠れするロジャー。二人の関係の綻びはもうここから始まっていたんだということに今回初めて気が付きました(汗)。

部屋に侵入した後、ロジャーとミミはベニーの存在がきっかけとなって激しく言い争ってしまう。そのベニーも「本当はおまえらと仲良くやりたいんだ」と歌っていて、仲間たちの間にもさざ波が生まれていく。このあたりのドラマが非常に刺激的だし、ロックな音楽も心揺さぶります。
それを鎮めてくれるエンジェルの存在はやはり偉大。派手派手な格好なんだけど、やっぱり彼は皆の天使なんだって改めて思った。

♪Take Me of Leave Me♪

モーリーンとジョアンが次のパフォーマンスについて作戦を練っている間に言い争いに発展してしまう場面。ここ、日本版だと二人の迫力が怪獣並みにすごくて圧倒されまくっちゃうんだけどw、今回来日版を見たらそこまで激しくなくてちょっと意外だなと思ってしまいました。本当はお互いにすごく愛しているのに、考え方の違いや嫉妬などの問題でついぶつかってしまう。
「こんなに好きなのに何で!?」とお互いのもどかしさをぶつけ合ってる印象で、迫力というよりも切なさを感じてしまった。歌い方の違いでずいぶん印象が変わるんだなと思いました。

その二人の言い争いを、少し離れた場所でロジャーとミミのカップル、エンジェルとコリンズのカップル、そしてポツンと一人でマークがじっと見守ってる。ここの演出は今も変わってない。明らかにエンジェルが衰弱してきていると感じるシーンでもありこれがホント哀しいんだよね…(涙)。

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♪Without You♪

ミミはロジャーと付き合いだしてもなかなか”クスリ”を止めることができない。彼女はロジャーの心の揺れを察していて不安から手を出してしまうのかもしれない…なんて思うと本当に辛いです。「あなたがいなければ」と歌いながらも苦しむ彼女の姿は涙なしには見れなかった…。

そしてその一方でエンジェルの体調が見る見るうちに悪化していく。横一列に並んでいた机が縦3つに分かれて、それぞれモーリーンとジョアン、エンジェルとコリンズ、ロジャーとミミといったようにカップルのエリアになっていた演出が興味深かった。

コリンズは苦しむエンジェルの背中を優しくさすってやったりして懸命に支え続けるんだけど、最後のほうは辛すぎて一瞬その場を離れてしまっていた。その気持ちが痛いほどわかるのでもう切なすぎて涙が止まりませんでしたよ(涙)。

♪Contact♪

この場面はかなり”性”を前面に出したものになっているので字面にはしにくいんですが、すごく「人間」を感じるシーンでもあるんですよね。日本語版だとちょっと私は直視できないところもあったりするんだけど(汗)、今回は思わず見入ってしまった。映像表現がないというのも大きいかもしれない。私はオリジナルの演出のほうが好きかな。

ここで印象深いのは、「生と死」が描かれているということ。激しくうごめく「生」のなかで、エンジェル一人がそこから弾かれるように別世界「死」に誘われていく。彼の最期のあがきのようなダンスは圧巻で息が止まりそうになる感覚になりました。

♪I’ll Cover You(リプライズ)♪

コリンズをはじめとする仲間たちがエンジェルを”送る”場面。ここはすべて、涙なしには見られない…。一人一人のエンジェルを大切に想う気持ちがこれでもかというほど迫ってきて号泣です(涙)。最後のコリンズの魂の鎮魂歌…、ここの旋律が1幕でエンジェルとラブラブだった時と同じなのがホント辛すぎ…。

そして一番泣いたのが、皆の”贈る言葉”を聴きながらエンジェルがシーツを纏いそっと後ろから退場していくシーン。天国へと旅立つエンジェルの姿はまさに”天からの遣い”のように神々しくて美しかった…。そのあまりにも凛とした姿は、思い出すだけでも泣けます。
新演出では最後に「在りし日」のエンジェルがそっと登場するんですが、オリジナルは彼を”神々しい存在”として旅立たせるイメージで終わらせるんだなと思いました。本当に涙が出るほど美しかった…。

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♪Goodbye,Love♪

エンジェルを失った後、ミミとロジャーの関係はどんどん悪化していく。マークはミミから逃げようとするロジャーを必死に説得して思いとどまらせようとしますが、そんな彼にロジャーは憤りをぶつけてしまう。

J.T. ウッドさんのマークはあまり感情を表に出さずいつも冷静に俯瞰的な目で仲間たちと向き合っている印象が強かった。そんな彼がロジャーの「そしてお前だけ生き残る」という言葉にものすごい哀しそうな傷ついた表情を見せたんですよね。あれは見ていてものすごく切なかった。
マークは自分だけがHIVと関係のない世界に生きていることにどこか疎外感を持っていたと思うんですが、仲間と一緒にいたくてその気持ちを押し殺しながら彼らと向き合い続けてきたところがあったんじゃないかと。その図星をロジャーに突かれたのはキツいはずです。ここはマークに感情移入しちゃうんだよなぁ。

ロジャーはますます衰弱していくミミの姿を見ることに精神的に耐えきれなくなってる。マークと言い争いになりながら、ロジャーも必死に逃げようとしてるように見えた。その姿がとても切ないんだけど、もっと悲しいのはその現場をミミが目撃してしまうこと。「私が死ぬところを見たくないんだね」と悲しげな弱々しい表情で歌う姿は涙なしには見られない…。

♪What You Own♪

ミミの元から逃げたロジャーでしたが、彼の心の中から彼女の存在を追い出すことはできなかった。一方のマークは迷いながらもテレビに自分が撮影した映像を売ることにしてしまったものの、それが本当にやりたかったことじゃないことに苦悩している。そんな二人が、心に浮かぶ大切な人を想いながら前を向こうとしていくこのナンバー。ロジャーはミミを、マークはエンジェルを見ているんですよね。

新演出だと舞台中央にぐるぐる回転する鉄骨のセットを持ってきてそこでロジャーとマークが歌う感じになっていますが、オリジナルでは平面の舞台の上でマークとロジャーが交差するように歌うというシンプルな感じの演出。個人的にはその方が二人の心情がよりリアルに伝わってきて良いなと思いました。

♪Finale♪

季節はクリスマス。再び一緒に暮らし始めたマークとロジャー。そこへ久しぶりにコリンズが帰ってきて楽しい時間を過ごす。1年の間に様々な経験をした3人。ロジャーは新しい曲を完成させ、マークはテレビ局をやめて自分が撮りたい映像だけを作る。愛する人を亡くしたコリンズも力強く前を向いて生きていた。

でも、ミミは瀕死の状態で発見されてモーリーンとジョアンに抱えられながら運び込まれてくる。皆が前を向いて生きようとするなかで、ミミだけはその波に乗ることができなかったという悲劇…。一人孤独にどんな想いで命を繋いでいたのかと思うと居たたまれなくて涙が出てしまいます…。

そんな彼女にロジャーは必死に語り掛け完成したばかりの楽曲♪Your Eyes♪を歌う。ミミを想いながら作った愛の楽曲で、これがまた泣けて仕方ない…。

この後の展開はもう、実際に舞台で見て感じてほしいです。

私はあのラストシーンを見た時、大きな”希望”の光を見た想いがしました。あぁ、『RENT』って色々と辛く苦しい展開も多いけれども、それらもひっくるめて”愛と希望”がいっぱい詰まった物語だったんだなって。全員が舞台の上に集合して笑顔を見せるラストシーンはもう大号泣で…心が魂レベルで震えまくってしまいました。

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後述

カーテンコールはスタンディングで大いに盛り上がりました。私も立って最大級の拍手を贈りましたよっ!!声が出せなくて作品を盛り上げられないシーンもあったけど、あの初日の客席にいた多くの皆さんは来日カンパニーの素晴らしいパフォーマンスに心が震えたと思います。その気持ちが少しでも伝わってほしいなと、感謝の気持ちを込めて手を叩き続けました。

演奏メンバーの皆さんも、いつまでも止まない拍手の音に本当に嬉しそうにされていました。生バンドのカッコいい音楽、本当に最高でした!!

みんな客電がついた後も拍手を続けていたんだけど、規制退場の案内の音声がかかって名残惜し気に収まっていきました(汗)。海外のカンパニーはカーテンコールに出るのはどんなに拍手が続いても基本的に1回のみというのがスタンダードだそうですね。日本だと何度も出てきてくれるから客席も張り切って拍手続けるみたいなところあるんだけどw、これも文化かなと思ってしまいました。

マーク役のJ.T. ウッドさんと、ロジャー役のコールマン・カミングスさん、ジョアン役のレイラ・ガースクさんほか9名のカンパニーは5月24日の朝の情報番組にも出演し素晴らしい歌声を披露してくれました。J.T.ウッドさんの素顔がめちゃめちゃ可愛らしい方でちょっと萌えたw。

まだまだ海外からの日本への入国は厳しい制限が多く容易には来日できない環境だったと思います。そんななか、2度の中止を乗り越えて諦めずに日本公演を実現してくださったカンパニー・関係者の皆様、本当にありがとうございました。本場ブロードウェイの、オリジナルで見られる最後の『RENT』を目の当たりにすることができたことは本当に貴重な体験でした。もし近くに住んでたらもう1回は観に行きたかった…!!

「No other path, No other way」

「No day but Today」

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