ありがとう、神田沙也加さん

本当はこちらのブログは舞台の感想に特化した内容を書くものとしているのですが、演劇界にあまりにも大きすぎるショックな出来事が起こってしまい、私自身も気持ちの持って行き場を失うような状況となったのでここに気持ちを書かせていただくことにしました。書かないとどうにも気持ちが前に進まないので、ここに記すことをお許しください。

特別ファンということではなかったけれど、何度も舞台で、映像で、声で接してきたことで勝手に親近感のようなものを感じていました。特に、彼女の舞台をいくつか実際に観てきたということは私にとってはとても大きなことで…、哀しくて仕方がありません。

神田沙也加さん

彼女の舞台は2006年の「紫式部ものがたり」から数えて約7本観てきました。最初の頃は少し違和感を感じることも多かったけど、近年ではしっかりとした存在感や透き通る素直な歌声、繊細なお芝居など魅了されてしまうような素晴らしい女優さんに成長したなと嬉しく思っていました。

いつかの舞台感想でわたしは”舞台の世界が彼女を欲しているように思った”と書いていますが、本当にそう思える女優さんだったんです。その生い立ちから様々な苦しい出来事や悔しい出来事などたくさんあったと思うけど、並々ならぬ努力を重ね、確固たる自分の居場所を獲得したすごい精神力の人だと思って好感を抱いてきました。

『アナと雪の女王』のアナの吹き替えは絶品だった。四季が上演権を持っていなければ、実写版でも沙也加さんにアナを演じてほしいと感じたほどです。ここからさらに舞台女優としても深みを増していったように思えたほど。

一番記憶に残っているのは、菊田一夫賞を受賞した『キューティブロンド』のエル役。沙也加さんにとっても思い入れが深い役だったはず。一緒に共演したワンちゃんのブルーザーを自分の飼い犬としてとても可愛がっていたくらいだもの…。
初演の時に香川の高松で公演を観たとき、カテコでオールスタンディングになった光景を涙ぐんだように感極まりながら眺めていたあの姿が今でも目に焼き付いていてはなれません。もっともっと、エルを演じてほしかったよ…!!エルは沙也加さんにしかできないと思えるくらいのハマり役だった。

舞台デビューして日が浅かった頃の「ウーマンインホワイト」のローラ役も、今だからこその彼女で観てみたかった。「ダンスオブヴァンパイア」のサラ役も本当に可愛くて最高だったし、また会えると信じて疑わなかった。「1789」のオランプも可愛さの中に力強さもあって見応えがあった。
もっともっと見たい役、見てみたい役、たくさんあったよ…。「銀河鉄道999」のメーテル役もあの宣材写真を見て新たな魅力を楽しめるのではないかと期待していた。

最後に沙也加さんを見るのがFNS歌謡祭のイライザを歌唱する姿になるなんて、夢にも思わなかった。

『マイ・フェア・レディ』は公演中。来年までツアーが入っていた。そんな最中に突然その命が途切れてしまったこと、本当に信じられなくて受け止められない。責任感も強かったはずだし、役に対する思い入れも並々ならぬものがあったはず…。何より、一緒に切磋琢磨してきた大切なカンパニーの仲間たちがいたじゃない…。

沙也加さんの本当の心の内は、きっと彼女にしか分からない。思い詰めることもあったかもしれない。だけど、私は、自らの意思で終わらせたのではないと思いたい。突然現れたあの世からの使者にフッと身を委ねてしまったのかな…。トート閣下に愛されてしまったのか、蜘蛛女がキスをしにやってきたのか…。彼女にしか見えない景色があったのかもしれない。

でも、連れて行かないでほしかったよ…。まだこの世で彼女の前に広がる新しい世界がたくさんあったはず。これからますます輝きを増す素敵な女優さん、アーティスト、エンターテイナーになるはずだった人。連れて行かないでほしかった…。

演劇界の仲間たちも、みんな、ショックを受けて気持ちの持って行き所を失っている。沙也加さんが突然消えてしまったことで、共演した役者さんや関係者の皆さんが打ちのめされているのを見るのも辛い…。そして何より、ご両親のお気持ちを考えると、居たたまれない。

もう、会えないんだね…。まだ受け止められないし信じられない想いが強い。だけどこれは事実。

せめて、もう一つの世界では沙也加さんが安らかであることを祈りたいです。この世でやりたいことも希望もまだたくさんあったと思いたいけど…、旅立った先にも彼女が輝ける居場所があると信じたい。

ありがとう、神田沙也加さん

ありがとう・・・

舞台の仲間たちを、エンターテイメント界の仲間たちを、あなたが愛した人々、あなたを愛した人々を、大切なご両親を、どうかどうか、優しく見守り続けてくださいね。

祈。

 

error: Content is protected !!