ミュージカル『スクルージ』2022.12.14ソワレ (特別カーテンコール有り)

主なキャスト感想

エベネザー・スクルージ:市村正親さん

初演からほぼ一人でスクルージ役を演じ続けている市村さん(1公演だけ違う役者さんが演じてますが)。何度見ても思うけど、この役だけは市村さんの体力と気力が続く限りライフワークとして続けていってほしいなと。年を重ねるごとにどんどん”エベネザー・スクルージ”にリアルに迫っているように見えて仕方ないです。

スクルージの前半から中盤は”町の嫌われ者”として描かれていますが、随所に市村さんらしいチャーミングなお芝居が挟まってきて客席の子供たちの笑い声もたくさん聞こえてきました。毎回同じルーティーンで演じられている着替えシーンも、一つ一つの行動が実に細かく繊細で。マフラーを掛けた時に腰をグキっとやっちゃう仕草とかはすごく可愛らしいんですよ。セリフが何もない場面をあそこまで魅力的に見せられる役者さんはそう多くない。
こういった細かいチャーミングな仕草を入れることで、見ているこちらも”スクルージはただの憎まれ人ではないのではないか”という気持ちが湧いてきます。ゆえに、ハリーやボブが彼を嫌いになれないというくだりに真実味を感じるんですよね。

あと驚くべきは歌声です。スクルージはけっこうキーの高い曲が多いのですが、市村さんはすごい張りのある声でしっかりドラマチックに歌い上げられている。年齢を重ねてもあの迫力が出せるというのは本当に凄いことだと思います。改めて、市村正親はすごい役者だと実感しました。まだまだお元気でスクルージ役を演じ続けていただきたいです!

ボブ・クラチット:武田真治さん

武田さんがミュージカルに進出してきたとき(エリザベート)からいくつか作品を観てきましたが、私はこのボブ役が特に大好きなんですよね。挑戦する前まではミュージカルに苦手意識があったというのが信じられないくらい、今では本当に素敵な舞台役者さんになられたと思う。

武田ボブはとにかく温かさに溢れてる。歌声もとてもソフトで聞いているだけでヒーリング効果というか、こちらが癒されていくのを感じるほど。さらに終始目線がとても優しいんですよ。どんなに生活が厳しい状況になっていたとしても、耐えず慈愛に満ちた穏やかな表情で…家族はそんなお父さんだったからこそ信頼しい愛してるんだろうなというのがストレートに伝わってきました。まさに理想の父親像といった感じ。
その慈愛は家族だけではなくスクルージにも向けられているっていうのがまた良いんですよね。どんなに冷たく接してきてもおべっか使いではなく本気で彼を信頼する表情を浮かべていたのがとても印象深かった。それゆえ、2幕のクライマックスで「あなたを信じます」と告げる言葉にものすごいリアリティを感じて思わず涙してしまう。今回も素晴らしいお芝居と歌をありがとうございました!

クラチット夫人 / 過去のクリスマスの精霊:愛原実花さん

愛原さんは今回も全く違うキャラクターを見事に演じ分けてくれていました。

過去の精霊役は慈愛に満ちた表情でスクルージをとても優しく、かつ、切なそうに見つめる眼差しがとても印象深かった。特にイザベルと若き日のスクルージを見つめている時の目が本当に哀しそうでねぇ…。あれだけでもう涙涙でしたよ…。過去の精霊はエベネザーと深い関わりのある人物だと知ったうえで見るとなおさら泣けます。
そしてもう一つの役がボブの奧さん、クラチット夫人。過去の精霊の雰囲気とはほぼ180度違った子だくさんのお母さんらしくパワフルでチャーミングで明るくてとても生命力にあふれた雰囲気が本当に最高に素敵でした。ちょっとカカァ天下的なところはあるけど、ちゃんと旦那様にも子供たちにもありったけの愛情を注いでいてとても魅力的です。高音での歌声がちょっと不安定かなと思ったところ以外は完璧でした。

ハリー / 若き日のスクルージ:相葉裕樹くん

ミュージカル『蜘蛛女のキス』を観てから一気に相葉くんのファンになったのですが(遅っっw)、今回この大好きな作品に彼が参加すると決まった時は本当に嬉しかったですね。見る前から”相葉くんにはこの世界観がハマるはず”という確信めいた気持ちすらあった。で、実際に見てみて…予想していた以上にハマってました。というか、ちょっと新しい風が吹いたかもとも感じたかな。

若き日のスクルージ役は最初に登場した時は内に籠りがちでオドオドした雰囲気。ダンスに誘われても「僕は無理」と消極的で皆が楽しく踊っている間も端っこで小さく手を叩きながら見ている青年でしたが、この時のビクビクした表情がめちゃめちゃ可愛らしくてキュンときてしまったww。
勇気を出してイザベルに愛を告白する♪しあわせ♪のナンバー、すごく丁寧に歌ってたなぁ。よく通る声色の中にイザベルへの溢れる想いがじわじわあふれ出しているような感情が感じられてとても感動的だった。

で、その直後に時が経って変わってしまった青年スクルージの場面になるのですが、声色がとても厳しく冷たい響きになっててビックリしました。イザベルに愛を告白した時の雰囲気とまるで違う。あぁ、お金に囚われ続けるうちにエベネザーは変わってしまったんだなというのが一目で伝わってきました。これはけっこう見ていてゾクっときましたね。演じ分けが見事だった。

演じ分けと言えば、もう一つの役のハリーがこれまた屈託のない純粋な青年っぷりで本当に愛しかったです。パーティーに誘っても見向きもしてくれないスクルージに対してもすごく一生懸命で、その後に明かされる「僕は叔父さんのことが本当に好きなんだ」という言葉により真実味を感じさせてくれました。個人的には♪牧師さんの猫♪で失敗しちゃったときの「もう一度やろうよ~!」とおねだりしてたハリーが可愛すぎてめっちゃツボりましたw。

今回は市村さんと相葉くんが共演してる姿を見れたのも嬉しかったです。次回公演があった時にもまた同じ役で出演してほしいな。

トム・ジェンキンス:神田恭兵

長く畠中洋さんが演じていたこの役を神田くんが素敵に引き継いでくれたこと、本当に嬉しかったです。神田くんは『ミスサイゴン』のトゥイが本当に素晴らしかったですからね。あの時は不幸な結末で終わってしまう役だったけど、今回は幸せになる役として観れることに密かに喜びを感じていました。

1幕のトムはスクルージに翻弄されっぱなしになるのですが、個人的には借金返済期間について「1週間」「7日で!」とやり取りする場面がお気に入り。「7日…(結局)1週間じゃないかーー!!」と悶絶する神田トムが最高に面白かったww。
2幕はビッグナンバーの♪サンキュー・ベリーマッチ♪があるのですが、実に堂々とした歌いっぷりで感動!神田トムはちょっと気性が荒めで町の人たちを煽りまくるシーンはけっこうな迫力あり。スクルージのこれまでの仕打ちを心底恨んでる気持ちがダダ洩れてたのが実に良かったです。そこからのラストのあの”驚き”から”感動”に移っていく雰囲気に持ち込みますからねぇ。いやぁ、とても見応えありました。何より幸せそうな神田くんが見れたことが嬉しかったよ!

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イザベル / ヘレン:実咲凜音さん

前回公演から参加の実咲さん、本当に可愛らしい方で観ていてとてもホッコリします。
過去のエベネザーが愛したイザベル役は心を閉ざしがちな彼を優しくゆっくりとほぐしていく様子がとても印象的。柔らかく包み込むようなあの笑顔にエベネザーは心を赦していったんだなというのが納得です。でも時間が経つにつれて二人の距離が離れて行っちゃうわけで…。エベネザーの元を去る時の哀しげな目がとても切なかったな。
ハリーの奧さんのヘレン役はあまり前面に出過ぎず控えめな印象。目立たなくてもそっと後ろからハリーのことを支える優しさと愛情が素敵でした。

ジェイコブ・マーレイ:安崎求さん

安崎さんのマーレイはところどころでチャーミングな一面を垣間見せてきてくれるので毎回楽しく拝見させていただいてます。マーレイは過去の行いが原因で重い鎖に縛られてしまっているど、スクルージの前に現れる彼はそんなアクドイ商人だったようには思えないんですよね。現に、かつての相棒を心配して降臨してくれてるわけだし。自分と同じ過ちを犯してほしくないと、偏屈なスクルージに必死に忠告する姿はとても胸を打ちます。今回はそこの芝居が以前よりも濃くなったような気がして思わずグッときてしまいました。

そういえば、今年はハーティさん役はナシでマーレイのみのご出演でしたね。あの化粧を落としたりするのも大変そうだったからw、今回はその点では安崎さん的に良かったのかも?マーレイ1役になったことで、よりお芝居にも深みが加わったような印象があったし、今後もそのスタイルで行くのかもしれませんね。フライングも”高所恐怖症”というのが信じられないくらいスムーズでカッコ良かったです!まだまだ飛び続けていただきたい!!

現在のクリスマスの精霊:今井清隆さん

豪快で朗らかな現在の精霊役がとっても魅力的な今井さんを見ると、本当に元気が出るし一緒に歌いたくなってしまいます。本当にあんな精霊が自分のところに降りてきてくれたらいいのにとすら思っちゃう。頑なに心を閉ざしていたスクルージが気を許してしまうのも納得です。

印象的なのは、コミカルでシニカルな言葉を投げかけながらもそこに彼なりの優しさや温かさが滲み出ていること。口ではけっこう辛辣なツッコミをしてるのですが、言葉の端々にはスクルージにもっと豊かな人生を送ってほしいという願いや思いやりが込められている。今井さんの迫力と深みのある歌声にもそれが感じられて何度も胸打たれました。
スクルージと別れる間際に告げる「人の一生は短い。ある日突然お前はもうこの世にはいない」というセリフがズドンと心に響いてきたのも今井さんが演じられたコソだったかなぁと。まるで本当に天から遣わされた伝道師のようでした。

フェジウィッグ/未来のクリスマスの精霊:阿部裕さん

私は阿部さんのフェジウィッグのおやじさん大好きなんですよね。登場した時からのあの温かみと可愛さはもう何物にも代えがたい。心を閉ざしがちだった過去のエベネザーが戸惑いながらもその優しさに信頼を寄せるのも納得です。特に「ぶんちゃ、ぶんちゃ♪」ってリズム刻むシーンはめっちゃ萌える!!ほんっとに可愛い!!
ジョリーグッド役はちょっと胡散臭い雰囲気もあるんだけどw、おおらかでクリスマスの時期にお金を集めて少しでも多くの人を救いたいという気持ちが滲み出てるのが好き。スクルージとのやり取りの変化も面白いです。

で、未来のクリスマスの精霊役…、あれって阿部さんだったのか!!過去のパンフ見たらちゃんと役名書いてあったのに見逃してた(汗)。今回ようやく気づけて良かったww。

フェジウィッグ夫人:今陽子さん

夫人としての出番は少ないのですが、チャキチャキして陽気で可愛い雰囲気がとても素敵。あの明るさに過去のエベネザーも大いに救われていたところはあっただろうなと想像できます。それに、ダンナさんである阿部フェジウィッグとの夫婦愛も最高に素敵!二人の愛情が見ているこちらにも伝わってきて幸せな気持ちになりました。
町の売り子さんの役は一転してスクルージのケチさにプリプリと怒りを募らせてるおばちゃんで。頭に来てるんだけどギリギリのところで耐えてる感が見てて面白かったですねw。

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後述(特別カーテンコールレポ)

本編が終了して一通りのカーテンコールが終わった後、武田真治さんが代表して挨拶をしてくれました。その中で、数人に話を聞くことになって。

「僕の独断で」と最初に武田さんが選んだのは今井清隆さん「本当に精霊のような人」と突然指名されたキーヨさんはめちゃめちゃ動揺しまくってて「これって本当に突然くるんだね」と目をキョロキョロさせてて思わず笑ってしまいましたw。相変わらずシャイな方で愛しさがアップしちゃったよ。そんな今井さん、最初は「何を話していいか」と混乱気味でしたが、「この作品を皆様に届けられるのが本当に嬉しいし、演じることができる僕たちもとても嬉しい」と語られていたのがとても印象的でした。『スクルージ』を見るたびに、観劇する側も幸せな気持ちになるけど演者の皆さんも同じ気持ちになっているんじゃないかなと思っていたので、その通りだったのだと分かって私も嬉しかったです。

もう一人武田さんが指名したのが愛原実花さん。実はこの公演日がお誕生日にあたっていたということで客席からも舞台上からも祝福の拍手が沸き起こっていました。ちょっと恐縮しながらも「一日一日大切に演じていきたい」と意気込みを語られていた愛原さんがとても可愛らしかったです。

このあとクリスマスソングメドレーがキャスト全員で披露されました。「きよしこの夜」から「ジングルベル」だったかな。本当に素晴らしい歌声で…ところどころ涙が溢れてきてしまった。この作品を観た後にこの歌を聴いたらなんだか幸せが倍増したような気持ちになりましたよ。

そしてもう一つのお楽しみだった写真撮影会へ。実は私この日、最前列に座っておりまして(座席に着いた時にビックリした 汗)前に遮るものがないという絶好のポジションでございました。が、相変わらず撮影技術が未熟でして…時間もそんなになかったこともありあまり良いものが撮れませんでした(汗汗)。いくつか比較的よく撮れたかも?的なものをアップします(転載は固くお断りします)

神田くんや安崎さんはけっこう目の前だったのでパチパチ撮影したんですが、よく撮れてるのが2枚くらいしかなかった(苦笑)。でも、ちょこっと目が合った的なものもあって嬉しかったです。あと、相葉くんのハートマーク作ってた姿もめっちゃ可愛くて萌えました(もっといっぱい撮りたかった 汗)。

最後に市村さんからご挨拶。「スクルージは本当に良い作品なのでまた体を鍛えて次回からも大切に演じていきたい」と頼もしいお言葉が。最後に「皆様にとって来年が素晴らしい年になりますように」という〆の言葉で幕となりました。とっても素敵な特別カテコ、ありがとうございました!!

クリスマスの時期に必ず見たい作品『スクルージ』。本当に本当に心がジンと温まる、人にやさしくしようと思える素敵な素晴らしい作品なので、これからも定期的に上演を重ねてほしいです。キャストの皆さん、ずっと元気で健康でまたこの舞台に帰ってきてください!!

できれば地方ツアーもそろそろ考えてほしいかなぁ…(クリスマス後でも見たいし)。

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