シアタークリエで再々演された『宝塚BOYS』を観に行ってきました。当初はもう少し前に行く予定だったのですが別演目をねじ込んでしまったためにかなりズレこんでしまった。
チケットを再度取ったときは気がつかなかったんですけど…この日は前楽だったようで客席もかなり賑やかでした。私のすぐ近くには升毅さんとコング桑田さんが仲良くご観劇されていたし、他の方の目撃談によれば伊礼君や初演に出ていた須賀君もいたんだとか。
私はこの演目を初演と再演観てまして…両方のDVDやコミックスも購入しています。
それほど思い入れが強い作品です。恐らく長い観劇生活のなかでもストプレ部門で5本の指に入るくらい個人的に大好きな『宝塚BOYS』。再演の時には彼らに逢えなくなってしまう寂しさに耐えられず、名古屋の大千秋楽まで追いかけて観に行ったほどでした。
(その当時の暑苦しい私の感想はコチラ)。
そんな思い入れある『宝塚BOYS』が今回、池田さんと君原さん以外のキャストを総入れ替えして新たに再演されることになりました。正直、前のBOYSたちにかなり入れ込んでいたので総入れ替えというのがちょっと残念な気持ちになってしまったのですが…それでも、新生BOYSたちがこの作品の中でどう演じていくのかとても気になったので今回チケット入手いたしました。
ちなみに今公演でも本物のBOYSの皆さんが観劇されたそうですが、再演までいらっしゃっていた第4期生の酒井尚一さんは今年お亡くなりになってしまったとか…。非常に残念です…。ご存命のBOYSの皆さんがまだまだお元気で当時の思い出を伝えてくださいますように…。彼らの青春は決して風化してはいけない素敵な時間だったと思うので。
10.08.31マチネ in シアタークリエ
出演者
上原金蔵:浦井健治、竹内重雄:藤岡正明、星野丈治:東山義久、太田川剛:瀧川英次、山田浩二:黄川田将也、長谷川好弥:杉浦太陽、竹田幹夫:石井一彰、君原良枝:初風諄、池田和也:山路和弘
以下、ネタバレを含んだ感想になります。
全体感想
ストーリーは過去記事にかなーーり詳しく書いているので今回は軽めで。
戦時中人間魚雷と呼ばれた回天に所属していた上原は戦後意を決して小林一三に「宝塚に男子部を作りませんか」という手紙を書き送る。それが池田の目に留まり宝塚に男子部が結成されることになった。個性豊かな面々は始めこそ衝突していたものの徐々にお互いを知るに従い結束を深めていく。しかし彼らに対する世間の目や女子部の視線は冷たく、なかなかチャンスを与えられずにいたずらに時だけが過ぎていった。
そんなある日、男女合同公演の話が舞い込んできて一気にテンションを上げる面々。実現に向けて動き出したかに見えた合同公演企画だったが明るい知らせはいつまでたっても舞い込んでこなかった。そんな生活に耐え切れなくなったダンサーの星野はついに男子部を去ることを決意。さらに彼らを追い詰める哀しい宣告が…
と、だいたいこんな物語です。ドキュメントタッチのものではありませんが、随所に本物の男子部のエピソードが織り込まれています。それだけにとても切なくて泣けるのです。
キャストがほぼ一新されたということでちょこちょこと演出面で変わったかなと思う箇所がありましたが、基本的には初演と再演の空気をそのまま残しているといった印象でした。全体的に若返った分、以前よりも勢いみたいなものを感じましたね。部活動で懸命にもがいてるって風に見えたかも。そういった意味では初演や再演とは雰囲気がかなり違いました。
1幕は全体的に笑いの部分が多かったですね。特に面白かったのが女子部への手紙事件。男子部には女子部と交流してはいけないという固い掟があったのですが、ある日男子部の誰かが書いたと思われる手紙が発見されてしまう。しかし、誰も身に覚えがないので名乗り出ようとしない…みたいなエピソードが出てきます。その手紙の内容を池田が読み上げるシーンがあるんですが…
「舞台という大宇宙のど真ん中で二人で呼吸したい」
という一文を山路さん、けっこうハッキリと読んでました(しかも2回も 笑)。前回公演では「大宇宙の」あたりで読むのやめてましたけどね(←千秋楽ではけっこう長めに読んでたけど 笑)。「これ、読んでて恥ずかしい!」と一喝する池田のシーンは何度見ても笑えます。
あと、馬の脚レッスンのシーンも面白いですねぇ。お久しぶりの「あおちゃん」はやっぱり可愛いよ!それにしても「あおちゃん」の脚を演じてるのが黄川田くんと石井くんなので…異様に背が高い(笑)。
前回までは道産子風だった「あおちゃん」は今公演ではサラブレッドみたいになってました(笑)。それを脱ぎ捨てて倒れこむ山田ですが…フンドシをパタパタさせて涼んでてこれがまたさらに笑えた(笑)。黄川田くんのあんな姿はなかなか観れないぞ~。
泣けるシーンはやっぱり山田の告白。彼がなぜ今まで嘘をついてきたのか、その真実が語られるんですが…そこには深い深い戦争の傷跡がある。最初はみんな笑いながら聞いていて、山田も笑いながらはぐらかしているのですが真実が見えてきたときに彼はもう笑えなくなってるし皆も言葉を失う。彼が抱えてきたものを想ったらあの話は誰も笑えない。初演と再演でボロ泣きしてしまったシーンでしたが、今回の公演でもやっぱり涙がこぼれました…。
それから、いくら時間が経っても報われないことに苛立ちを隠せなくなったBOYSたちが池田を責めるシーンもグッとくるものがあります。そんな彼らに君原が池田の本当の過去を話した時、今までと違った池田の顔が見えてくる。BOYSたちも辛いけど、彼らのために動いている池田も辛い想いをしている。みんな苦しい中で懸命にもがいて光を見出そうとしているんだと実感できるシーンで思わず胸が熱くなります(涙)。彼らを温かなまなざしで見守る君原さんがさらに涙に拍車をかけます…。初風さんの包み込むような笑顔が本当に素敵。
2幕の男女共同公演企画が持ち上がった時のエピソードも泣けます。テンションあげてワーワーやってる時は笑えるんですけど(エッフェル塔や噴水などをみたてた道具を配置していく時のテンションがものすごくて面白かった 笑)、君原さんを相手にレッスンするときの彼らは希望に燃えてキラキラと輝いていて…それだけでもなんだかこみ上げてくるんですよ(涙)。この台本には君原の彼らへの想いがたくさん詰まっている。自分たちは孤独じゃいと感じたBOYSたちが彼女への感謝を込めて共に踊るシーンもグッときます…。
そして星野が出て行く決意をしていくシーンからのくだりは今回も涙涙の連続。あんなに希望に燃えていた彼らが絶望感に苛まれていく姿を見るのは本当に辛い。竹田の父親の戦死通知が届くところも号泣…。彼はいつもどこかで父親の生還を信じ続けていたので遅くに届いた通知に号泣するシーンは胸が痛くて涙が止まりません。
結核で入院していた太田川が抜け出して宝塚の稽古場にやってきたシーンもボロ泣き。「もっと真面目にやっていればよかった」というセリフが胸を突きます。いつもお茶らけてた太田川は戦争中に片肺がないことで徴兵されず自分は役に立たない人間だとどこかで責め続けていた面があるだけになおさら切ない…。
探しにきたBOYSたちと合流したところで、池田が「おーい、子供達」と弱々しく笑いながら入ってくる。この時の山路さんの寂しそうな顔を見るだけでも号泣…。今回キャストが若くなったこともあり「子供達」と言うセリフがやけにしっくりきていただけになおさらグッとくるものがありました。そして告げられる男子部の解散。泣きながら池田にすがる竹内、そんな彼を必死に諭す上原、涙しながら立ち尽くすほかのBOYSたち…涙無しには見られません(涙)。ここまで必死にわずかな光を求めて「誰かが見ていてくれている」と言い聞かせながら舞台に立つことを夢見てきた彼らの努力を想うと切なくて切なくて涙が止まらないのです(涙)。
そして最後に皆で肩を寄せ合いながら「すみれの花咲く頃」を熱唱するのですが…ここも大号泣(涙)。特に舞台隅で一人号泣する太田川や居たたまれなくなってその場を去ろうとした池田をメンバーが必死に抱き寄せて輪に加えるシーンは思い出すだけでも涙が溢れて仕方ないですよ(涙)。
そして男子部による彼らの夢で描いていたレビューが出てくるわけですが…始まる直前まで大階段をジーッと舞台中央で見つめていた池田の後姿に涙が止まりませんでした(涙)。レビューには出てきませんが彼もBOYSの一員なんですよね…。
初演と再演では最初からボロ泣きしながらこのシーンを見ていたんですが、今回は最初のほうはけっこう落ち着いて手拍子しながら見れました。ミュージカル畑の役者さんが今回多く出演していたのでなんかすごくサマになってるんですよね。前回まではミュージカル経験者が吉野さんくらいだったので必死に皆が踊ってるという印象でそれを観ただけでウルウル泣けるものを感じていたわけですが、今回はけっこう皆普通にこなしてる。芝居畑やテレビの多い役者さんもスタイルがいいので見栄えがいい。かなり華やかなシーンに見えました。
でも、やっぱりソロダンスは泣けたなぁ…。皆一人一人の名前を本名と芸名で紹介していくのでなおさら感極まってしまう(涙)。羽根しょってシャンシャン持って笑顔で踊っていた皆がラスト、現実に立ち返ったように涙しながら舞台袖へ走り去っていく…。どんなにかこうして舞台に立ちたかったかと思うと切なくてたまりませんでした。
そしてラストシーン、それぞれの出発。皆が集まってワイワイと稽古場から去っていくのですが、前回まではアメちゃんが配られていたと思うんですけど今回は太田川特性の梅干が配られてました(笑)。星野はこれが苦手だったらしいのですが笑いながら口に含んでました。
そんな楽しいシーンで終わるんですけど…笑いながらもやっぱり涙は止まらなかったな…。宝塚の舞台に立たせてあげたかったって心から思えるから。
と、新しくなった『宝塚BOYS』でも感動の涙を流すことができました。が…、なんだかちょっと物足りないという気持ちも正直あります。若返ったということではなくて…戦後の香りがあまり感じられなかったというのがあったからかなぁ。セリフには戦争の傷跡を思わせるようなエピソードが語られているんですけど、今回のBOYSからはそこにあまり重みを感じなかったんですよね。
この作品で泣けるのは「夢が叶わなかった」という悲劇性だけではなく、戦争で辛く哀しい体験をした彼らの想いがずっと最後まで息づいていることだと思うんです。BOYSたちは皆戦争で心に深い傷を負っているにもかかわらず明るく前向きに頑張ろうとしていた。だからラストの「亡くなった戦友に胸を張って報告したい」というセリフがものすごく重く心に響いてくる。今回はこのセリフがあまり届いてこなかったんですよね…。夢破れたことへの悲しみが強調されてしまっている感じで…。
そういった点では、やはり個人的には初演・再演のメンバーのほうが心から感動できたかも。
キャスト感想
今回の主役は竹内ではなくて上原。その上原を演じた浦井君、情けない顔とかも可愛くて必死に頑張ってたのは伝わってきたんだけど、正直、浦井君は上原キャラがあまり合わないんじゃないかなぁと感じてしまいました。どちらかというと竹内のほうがハマる気がする。
竹内は藤岡君が熱く熱演。初演と再演の葛山さんよりもかなり熱い男といった印象でした。歌声も迫力あってよかったです。が、藤岡くんの上原で見たかった気がする…。
踊れる星野は今回D☆Dの東山君。彼は『写楽』でけっこういい芝居をしていたので期待していたのですが、今回もなかなか良かったです。演技の点では初演再演の吉野さんよりも個人的に好みかも。ただダンスのしなやかさは吉野さんのほうがよかったかも。
ムードメーカーの太田川は瀧川さん。今回初めて見る役者さんでしたが軽妙な芝居が抜群で楽しませてもらいました。めがね君姿も似合ってたし(笑)クライマックスで涙するシーンはかなりぐっときました。
元気者の長谷川は杉浦太陽君。彼は朝ドラにも出演していたり情報番組レギュラーもあったりとかなり忙しい身だったと思うのですが、すごく頑張ってて予想していたよりもかなり上手く演じていたと思います。
山田を演じたのは意外にも黄川田くん。彼が山田になるとは思いませんでした。背が高いんですねぇ~、ビックリ。猪野さんの演じた山田よりもスマートでカッコよく、睨みを利かせる表情とかもコミカルでとても面白かったです。ただ声の性質からかちょっとセリフが聞き取りづらいことが多かったのが残念。それともう少し崩して演じてほしかったなぁというのもあります。
山田と同じ愚連隊にいて進入部員として入ってくる竹田には石井くん。ミュージカル以外での彼の芝居は初めて見たのですが、全力で演じてるのがすごく分かったしとても良かったと思います。でもちょっと物足りないなと思うこともありましたけどね…。
君原を演じたのは初演から参加している初風さん。今回も本当に素晴らしい温かいお母さんっぷり!君原さんが出てくるシーンはどれもグッときてしまって泣けますよ。男子部メンバーが若返ったということで、接し方も前回まで以上に「お母さん」的で…。特に男子部を去ろうとした星野の肩から背中をさすりながら涙するシーンはコチラも号泣してしまいました(涙)。
池田を演じたのは同じく初演から参加している山路さん。コミカルシーンとシリアスシーンの演じ分けがメリハリ利いてて本当に素晴らしいです!面白かったのは手紙事件を謝罪に来たときに「先祖伝来の」という風呂敷を撮りに戻ったシーン。これについて誰かにツッコミ入れてほしいという魂胆が見え見え(笑)。今回は桶狭間とか横穴式住居とか竪穴式住居とか…まぁ、やたら古いご先祖になってました(笑)。その反面、報われない状況に苛立つ男子部に喝を入れるシーンは涙が溢れましたよ…。一人一人に必死になって「誰かが必ず見てくれている!」と力説する池田の想いが痛いほど伝わってきて涙せずにはいられませんでした。
男女共同公演が決まって盛り上がるメンバーを遠くから優しい笑顔で見守っていたりするシーンもあったし…以前にも増して「父親」的な面が強く出てるなぁと思いました。それだけに、クライマックスで解散を告げるシーンは池田の心の痛みが辛くて辛くて…号泣でした(涙)。
全体的に若いBOYSを初演から参加しているベテランの山路さんと初風さんが支えているといった舞台だったと思います。色々と比べて感じることはありましたが、やっぱり素晴らしい作品でした。DVDも予約しちゃったし(笑)。また近い将来再演してほしいです。