ミュージカル『東京ラブストーリー』(空キャスト)大阪公演初日 2022.12.23 マチネ

ミュージカル『東京ラブストーリー』(空キャスト)を観に大阪まで遠征してきました。ちょうど大阪初日公演の観劇となりました。

翌日の観劇予定を含め、2022年最後の遠征です。今年はコロナ前並に遠征重ねたかもしれないw。良き作品にもたくさん出会えました。そのあたりの振り返りは年が明けた頃に改めて。

毎年クリスマスシーズンが近づいた頃に梅田芸術劇場施設内に巨大なクリスマスツリーが出現するのですが、今年も迫力がありました。その年によってツリーに違う装飾が施されているのがいいんですよね。

今回はちょっとシンプルな印象。クリスタルっぽい装飾の輝きがとてもきれいでした。その季節に合わせて舞台観劇ができたことは本当に幸運です。

柴門ふみさん原作の漫画『東京ラブストーリー』がミュージカル化されると最初に聞いたときは「え!??」って感じだったのですが(まさかあの作品がミュージカルになるとは想像もつかなかったので 汗)、かっきー出てるし廣瀬くんも久しぶりに見たいし・・・とキャストが魅力的だったのでチケット確保しました。ただ、個人的に興味を惹くキャストが出演しなければスルーしていたかもしれません。というのも、私は『東京ラブストーリー』を1度もまともに見たことがなかったので思い入れみたいなものがなかった(苦笑)。

今回ミュージカルで初めてこの作品に触れるに当たり、予習も何もせずまっさらな気持ちで劇場へ向かいました。ハリポタは原作の流れを知らないと混乱する危険性を感じましたが、東ラブは私のような原作を知らない(ドラマもほぼ見てない)人でも内容は理解できると思います。長い物語を短くまとめたものになっていると思うのですが、けっこう分かりやすくサクサクと頭の中にストーリーが入ってきたので良かった。
ただ、今後海外上演を視野に入れたものだとするならば・・・ちょいちょい手直しする必要はあるかもしれないなと感じました。

以下、ネタバレをけっこう含んだ感想になります。

スポンサーリンク

2022.12.23 マチネ in シアター・ドラマシティ(大阪・梅田)

概要とあらすじ

原作は柴門ふみさんが1988年からビッグコミックスピリッツで連載された漫画『東京ラブストーリー』です。

1991年にはフジテレビの夜9時台にドラマ化(織田裕二さん、鈴木保奈美さん共演)され大ヒット作品となりました。

鈴木保奈美 (出演), 織田裕二 (出演) 形式 Blu-ray

当時の”トレンディドラマ”全盛期に拍車をかけた形となり、月曜9時枠のドラマ=「月9(ゲツク)」のネーミングがついたのもこの作品がきっかけの一つになったとか。小田和正さんの主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」も空前の大ヒットとなり大きな話題を呼びました(現在でも小田さんの代表曲として紹介されることが多いですよね)。

2016年には本編の25年後の世界を描いた『東京ラブストーリー 〜After 25 years〜』がスピリッツと女性セブンで連載されたそうです(スピリッツで1回、セブンで7回)。2017年には単行本漫画が発売されたとのこと。
ちなみに、ミュージカルの劇中でリカが”女性セブン”を読むシーンが出てくるのですが、おそらくこの続編が描かれた週刊誌だからというのが絡んでるんじゃないかと思われます(それを悟るまでは、なんでそこで女性セブン!?と不思議で仕方なかったww)。

2020年にはフジテレビ制作でリメイクされた『東京〜』がFODとAmazonプライムで配信されました(現在も配信中)。翌年にはフジテレビでテレビ放送も果たしています。

伊藤健太郎 (出演), 石橋静河 (出演), 三木康一郎 (監督), 永田琴 (監督) 形式 Blu-ray

このドラマで三上役を清原翔くんが演じているのですが、このあと病気療養ということになってしまいました。翔くんは朝ドラで知ってからファンになった俳優さんなのですが、とても心配しています。一日も早く健康を取り戻してくれることを祈ってる・・・。

2022年11月にホリプロ制作で初のミュージカル化(地方公演も含め1月まで上演)。音楽を担当したジェイソン・ハウランドさんはミュージカル『生きる』も手掛けたそうです(この作品も未見…汗)。ブロードウェイで上演中の作品「パラダイススクエア」の音楽も手掛けていて、トニー賞のベストスコア賞にノミネートされているのだとか!

ちなみに、原作漫画とテレビドラマ版はけっこうストーリーが変わっているらしい。私はどちらも知らないので比べようがないのですが(汗)ミュージカル化された事を機に比較して楽しむのもいいかもしれません。

ミュージカル版の簡単なあらすじは以下の通り。

2018年春。愛媛・今治に本社のある『しまなみタオル』の東京支社に異動になった永尾完治は、アフリカ育ちの天真爛漫な女性・赤名リカと共に新プロジェクトを任される。 ある日、既に上京していた地元の高校の同級生・三上健一に会いに行くと、完治が高校時代から想いを寄せる、関口さとみもやって来た。 昔話で盛り上がりつつも、予想外の再会に動揺する完治。そこに突然、リカが現れた。……この夜、恋が動き出す。

<公式HPより引用>

上演時間は約2時間30分です。内訳は、1幕70分(1時間10分)休憩20分2幕60分(1時間)

舞台作品はマチネだと13時台に開演するものが多いのですが、今回は14時の開演。観劇当日は雪の影響で新幹線に遅れが出ていたので14時スタートは正直ラッキーだったなと思いました(13時台だったらちょっとギリギリになりそうだった 汗)。

主なキャスト

永尾完治:柿澤勇人

赤名リカ:笹本玲奈

三上健一:廣瀬友祐

関口さとみ:夢咲ねね

長崎尚子:綺咲愛里

和賀夏樹:高島礼子

メインキャスト以外のアンサンブルさんたちもかなりの実力派揃い。特に伝説の旅人を演じた永野亮比己くんと伝説の王女役を演じた引間文佳さんは印象深いです。

引間さんは舞台が始まる前から10分おきくらいに一人で登場されてちょっとしたソロダンスを披露されるのですが、これがめちゃめちゃ美しい。始まる前の客席には寄せては返す波の音が聞こえているので、あのダンスは砂浜でのワンシーンではないかと思われます。特に砂をすくい上げてパァっと撒く仕草とか幻想的だったなぁ。
かつては新体操の日本代表に選出されたという経歴を持たれているということで、あのしなやかで美しいパフォーマンスも納得です。

その相手役ダンサーをつとめたのが永野くん。彼は劇団四季時代に『CATS』のミストフェリーズ役で多くの人を惹きつけたほどのダンス実力者。舞台本編が始まってからすぐに引間さん演じる王女と踊るのですが、実にしなやかでたくましく、かつ美しい・・・!特に形が全く崩れない回転ジャンプはかつてのミスト役を彷彿とさせるものでした。やっぱり永野くんのダンス、魅力に溢れてるよなぁというのを再確認。
それ以外にもちょいちょいアンサンブルで登場してきたのですが、2幕後半の商談・プレゼンシーンでは台詞もあり存在感が際立っていました(カンチの取引先社長役)。ダンス以外のお芝居してる永野くん、すごく新鮮だったしなんだか嬉しかった。

それから、安福毅さん照井裕隆くんも良い味出しまくってたなぁ。照井くんはあの笑顔が本当に素敵。もっとメインについてもいいとずっと思ってるんだけど・・・(サイゴンではクリス演じた経験あるし)。
安福さんはかなり目立つのでどこにいてもすぐに目で追ってしまいます。公園で絵を描いてるおじさんもほのぼのしてたし、町中で酔っ払って寝ちゃってるおじさんも面白かったw。尚子のお父さん役としても登場するのですが、ここでは保守的パパな雰囲気でドキリとさせられちゃった。それぞれの出番こそ少ないけど、きっちり演じ分けされていたのは流石だなぁと思いました。

あと、リカの元彼を演じてたのは上条駿くんかな?リカを裏切って他の女と飲みに来てたんだけど、それがバレちゃったあとのリアクションがなんだか可愛くて面白かった(「好きなんだぁ〜〜」とか叫んでたっけww)。

今回のアンサンブルさんはダンス力がすごく高い人が揃ってた印象です。作品中で何度か群舞のシーンが出てくるんですけど、けっこう難易度が高そうなのが多かった(1カ所、『リトルマーメイド』のアリエルっぽい動きを取り入れてるシーンもあってビックリ)。それを美しくキレのある動きで表現した皆さんに心からの拍手を送りたい!

スポンサーリンク

全体感想

私は『東ラブ』に関しては原作漫画もドラマ版もまともに見たことがないズブの素人状態だったので、今回の舞台も”何も知らない”まま観てまっさらな気持ちで作品と向き合おうと思っていました。ところが、ちょいちょいSNSに流れてくる感想をチラ見wしてみると…評判があまり芳しくなくて(汗)、観劇前は正直けっこう不安の方が大きかった。

で、実際に見終わった感想としては…、ツッコミどころもあったけど想像していたよりかは楽しめてる自分がいましたw。そう思えた要因は、空キャストの安定の演技力とポップで明るい曲調のナンバーが多かったことかなぁと。たぶんストプレだったらちょっと退屈してしまったかもしれないことを考えると(汗)かなり音楽に救われた作品だったかも。

特に覚えやすいビッグナンバーがあるわけではなかったのですが、メイン4人と長崎さん、和賀さんにちゃんと見せ場となるソロ曲が用意してあって。心の内側の想いを歌として表現したことによってキャラクターの心情が伝わりやすくなっていました。
で、このワクワクする青春の輝きを感じられる音楽にどこか聴き覚えがあるような…と思って後から調べてみたところ、この作品の作曲担当だったジェイソン・ハウランドさんは今年上演されたミュージカル『四月は君の嘘』の編曲をされている方だったことが判明!!それで腑に落ちましたよ。どうりで心が躍ったはずだ。ハウランドさんの音楽は私と相性がとても合うのかもしれません。

今回初めて知ったんですけど、『東京ラブストーリー』って愛媛の今治がかなりクローズアップされていたんですね。私は数年前まで四国(香川)に住んでいて愛媛にもちょいちょい訪れる機会があったので、”今治タオル”とか”しまなみ”とか”みきゃん”とか愛媛ワードが出てくるたびになんかテンションが上がってしまいました(笑)。
特に、カンチが過労で倒れ入院したさとみのお見舞いに「みかんジュース」を差し入れする場面は印象深かったなぁ。二人で口を合わせ「みきゃん!」って楽しそうに叫んでたシーンは一番シビれました(←キャラ好きにはたまらん瞬間www)。あ、”みきゃん”とは、愛媛県の公式ご当地キャラクターのことです。

可愛いんだよね、この子!

ストーリーは「恋愛」と「故郷」と「仕事」を軸に回っている感じでしたが、楽しい場面も多かったんだけど、なんだかどれも中途半端に描かれているような気がしてしまって終わったとにモヤっとが残ってしまったのは残念でした。
そもそも原作やドラマが放送されていた時代は日本がバブル景気でイケイケだったわけで、おそらくその空気感にフィットしたものだったと思うんですよね。今回の舞台で描かれた時代は平成が終わる年(2018年)で文明の利器など原作当時よりもかなり進化した世界で物語が動いていきましたが…、ベースが”昭和”の時代のものなのでそのあたりでなんとなく雰囲気にちぐはぐさというか、違和感みたいなものを覚えてしまったかなぁと。

たとえば、三上が女性56人と付き合ってきたというくだり。まぁ、今の時代にもこういうチャラ男的な男の子はいるかもしれないんだけど(笑)なんかノリに古さを感じてしまったんだよなぁ。イケメンで優秀なお医者さんという肩書に女の子たちがワンサワンサと寄ってくるって感じの展開だったけど、今のひっ迫した日本の経済状況のなかでこういうシーンを受け止めるのにはちょっと気持ちが追いつかない。2018年当時も日本はそんなに元気がある時代じゃなかったしね。

ファンタジーではなく現実世界が見えてしまうが故に、どうしても「今この景色を見せられてもねぇ」みたいな冷めた気持ちが沸き起こってきてしまった(苦笑)。

ただ、柿澤@カンチと廣瀬@三上が二人で会話する場面はめちゃめちゃ面白かったですw!二人の会話の空気感やテンポがすごく自然で、あれ?この会話ってもしやアドリブ!??って思ってしまうこともしばしば(笑)。たぶんいくつかは本当にその場その場の雰囲気や気分でセリフ以外のリアクションが飛びだしてたような気がするww。その様子を見て、かっきーとヒロくんって本当に信頼し合える良い友達同士なんだろうなって微笑ましく思ってました(プライベートな会話見てるような錯覚を起こしそうになることすらあったしww)。

東ラブに関してはズブの素人状態な私、ではありましたが、当時ドラマはかなり大きな話題になっていたこともあったので”結末がどうなるか”みたいなところだけはなんとなく知っていました。が、そこに至るまでの経過については知らなかったので「こんなことが起こっていたのか」と新鮮な驚きも多かったw。
特にカンチとリカの関係がどうくっついて離れることになったのかというくだりは今回ようやく把握w。あのリカがカンチにあっけらかんと告げた「カンチ、●×▼しよっ!!」っていうセリフもあんな状況で飛び出したんだなと納得(笑)。舞台版でそれを見た感想としては…”えらいアッサリ飛びだしたワードだったんだな”ってことだったけどww。

三上はさとみに他の女性とは違う魅力を感じて彼女と付き合うことを決め、さとみにずっと片想いしていたカンチはそこで一度撃沈してる。そんな彼にずっと片想いしていたリカがアプローチして(例のセリフもそこで飛び出すわけでw)二人は一歩進んだ関係に。
ところが、さとみが過労で入院したことをきっかけに4人の恋愛関係に暗雲が立ち込めてくる。ここの展開についてなんだけど…、私から見た三上くんの行動はちょっと酷すぎないか?と思ってしまった。さとみに心の安らぎを感じて愛を告白したはずなのに、実は同僚の医者でツン系女子の長崎さんに心惹かれてしまうなんて…。ということは、さとみは彼にとっていったい何だったんだろうと疑問ばかりが浮かんでしまう(汗)。舞台では描かれなかったけど、三上の家族はけっこう複雑らしく彼自身も屈折したものを持っているとのことなのですが(原作漫画には描かれてるらしい)…それにしてもなんだか腑に落ちないものが(汗汗)。

廣瀬君が演じた三上はすごく大人な雰囲気でカッコよくて素敵だっただけに、舞台での彼のバックボーン的なものが触れられていなかったのはとても残念です。せっかくあんな魅力的に演じてもなんだかモヤっとしたものが残ってしまう。この作品の中でもかなりのキーマン的存在なのだからもう少し人物を掘り下げて描いても良かったんじゃないかなぁと思わずにはいられなかったかも。

カンチはリカと付き合っていくうちに彼女の魅力にハマっていって居心地の良さを感じてる。ところが、その喜びを歌ってから後かなり早い段階でさとみの入院話になり、心があっさり揺らいでしまうという(苦笑)。リカはそんなカンチの気持ちを敏感に察して「彼は未だに初恋を忘れられていない」と傷ついてしまうわけで…。
カンチがリカへの想いを爽やかに歌い上げた直後くらいの変化だったので、私はどうしても彼の気持ちに感情移入しきれなかったかなぁ。かっきーのカンチは爽やかで可愛かったのでマイナスな感情で見たくなかったんだけど…、その仕打ちはちょっと酷くないか?と思えてならなかったよ。まぁリカも半ば強引にカンチを自分のものにした感は否めないんだけど(苦笑)…、でもたしかにカンチはリカに恋愛感情持ったように感じたので”そんなに簡単に初恋の人の存在って大きくなっちゃうものなのかな?”という目で見てしまった。

で、恋愛に傷ついたリカとさとみはそれぞれ恋人の元から去る決断をする。これがまぁ、えらい明るくサッパリした場面になっててちょっとビックリしましたw。女性は断ち切る時はスパっと…みたいな話はよく聞くけど、私だったらあんなにサクサク出ていく準備なんかできんわ、と思わずにはいられなかった(笑)。
特にさとみさん、切り替えが早っww。三上が自分以外の女性に心惹かれていることを悟ってしまったが故に家を出る決断をする…ってところは”そりゃそうなるよね”って思えるんですが、しばらくしてから東京タワーの上で彼に再会した時に別れの言葉を告げる場面はもうほぼ踏ん切りがついてるような雰囲気だったのでちょっとビビった。この作品で一番強いのは彼女なのかもしれん。

このあとちょいちょいいろんなエピソードが挟まってくるわけですが、個人的にはカンチが仕事に前のめりになって奮闘…みたいな展開がちょっとこの作品の色と合わないような気がして違和感が残りました。それまでけっこう5人の恋愛模様がもつれ合ってるみたいな雰囲気だっただけに…、”なんでこの局面で営業頑張るカンチ”というエピソードが濃く描かれてるのかよく分からなかった(苦笑)。なんか、物語のバランスが悪いように感じちゃったんだよなぁ・・・。
しかも、カンチの心を込めたプレゼンっていうのが、”それって仕事の最終局面で出すにはあまりにもオーソドックスすぎないか?”とも…。そもそも交渉を進めていくなかでもうその話は出てきて上手くいかなかったんじゃないの?とイジワルな想いがどうしても浮かんできてしまい、せっかくのかっきーの熱唱もあまり響いてきませんでした(プレゼン通った直後のかっきーカンチがホテルにあった今治タオルで思わず涙拭っちゃったリアクションは面白すぎたけどww)。

そしてあれよあれよという間にカンチと三上はそれぞれのパートナーを決めちゃってる。はやっwww!!っていうか、二人が「本当の気持ちを認めろよ」と言い合う場面が唐突に入ってきてそういう流れになった印象が強くてなんだかモヤッと感が募ってしまった。彼らにとってのさとみとリカってどういう存在だったん!?と問いただしたい気持ちが湧きおこっちゃったよ(苦笑)。

さらにビックリしたのが、三上が長崎さんの○○に乱入するシーン。今の時代にその場面ストレートにやっちゃうんだ(苦笑)と。まぁ、原作やドラマにも登場する場面だっただろうから出したんだとは思うんだけど、今の時代にはそぐわないというか…時代錯誤というか(汗)。バブルの時代やトレンディドラマ全盛期の頃はああいったシーンを目にすることも多かったけど、今の時代はなんだか嫌な気持ちだけが残っちゃったかなぁ、私は。真っ先に「三上、裁判起こされても知らんぞ!?」という気持ちが浮かんできて、置いてけぼりのお相手さんにめっちゃ同情しちゃったよ(苦笑)。
っていうか、あの段階に至るまでにもっと二人で話してできることあっただろう!!とツッコミ入れずにはいられなかったw。個人的には、映画『卒業』は今あまり見たい作品じゃない(苦笑)。

クライマックスではカンチとリカが彼の故郷である今治で語り合う場面があるんですが…、そもそもこの作品の中における「故郷」ってどんな影響をもたらしていたんだろうなと思ってしまう。”今治タオル”とかやたら愛媛の今治がセリフの中に出てきたけど、ワードだけが踊っていてストーリーの中にそれが生きてなかったような気がしてなりません。リカが”アフリカのジンバブエ出身”っていう設定も上手く生かし切れてなかったと思うし。
台詞の中でカンチがさとみを選んだ理由を「リカは”東京”で、さとみは故郷”今治”のような存在だったから」みたいなのがあったのですが、この舞台の中ではカンチとリカの関係の描かれ方がちょっと雑に感じられてしまったのでなんだか腑に落ちないものが大きかったですね。っていうか、リカが気の毒だろう!?みたいな。相性の問題と言えばそれまでだけど…、なんかリカがぞんざいに扱われたような気がしてモヤモヤしてしまった。

カンチが最後にリカのメッセージを見つける場面も…もう少しドラマチックにしてもいいんじゃないかなって思ったかなぁ。すごいアッサリした雰囲気で、カンチがリカにもう後腐れ無しみたいな描かれ方に見えてちょっと混乱(苦笑)。
最後のシーンでは新しい恋人と幸せそうなカンチと三上が中央に並んで幕。私はてっきりそこに何らかの形でリカの姿も現れると期待していたのですが…影も形もなかった(汗)。”え!??リカは出てこないの!??”とビビッて終わった気がしなかったのは私だけでしょうか(苦笑)。

・・・と、まぁ、結局ツッコミどころ多めの感想になっちゃいましたが(汗)、それでも”全くダメ”というのとはまた違ってて。ただ脚本や演出的には海外に出すにはちょっと難しいのでは。もう少しどっしりした焦点を据えた物語構成に変えてからまた上演チャレンジしてほしいかなと思いました。

スポンサーリンク

主なキャスト感想

永尾完治:柿澤勇人くん

これまで色々な柿澤くんの舞台を観てきましたが、こんなにも柔らかい雰囲気の役柄で見たのはもしかしたら初めてだったかもしれません。都会への転勤に馴染めず、そんな時に出会った野生児的なリカに翻弄されてオロオロしたり、ビビりまくったりと可愛い姿が満載でしたw。最初は頼りない雰囲気だったカンチが出会いと別れを経験していく中で少しずつ心の成長を遂げていく過程のお芝居も魅力的。ストーリー構成はちょっと違和感あるところが多かったのですが、彼の丁寧で繊細かつ癒し系ともいえるべき可愛さを感じさせるお芝居がそれを緩和していたかもしれません。こんなフワッとした雰囲気も新鮮でいいなぁと思いました。

ハリのあるスコーンとした歌声は相変わらずとても魅力的で、特にリカへの想いを歌い上げるナンバーはとても素晴らしかった。なんだか聴いているこちらまでがハッピーな気持ちになったよ。このあたりの歌の表現力もどんどん進化してて嬉しかった。
大河出演をきっかけに映像の仕事も増えてくるかもしれないけど、舞台にも積極的にどんどん出てほしいです。

赤名リカ:笹本玲奈さん

玲奈ちゃんはここ数年意志の強い大人の女性役で観ることが多かったので、本能で動くような溌溂とした女の子役はとても新鮮でした。
リカはアフリカで生活したことがあるという設定なので、行動そのものは野生児的で自分の気持ちをどんどん相手にぶつけていくような積極性のある女性なのですが、これを演じるのって一歩間違えればすごいウザい子みたいに見えかねない難しさがあったと思います。でも、玲奈ちゃんはグイグイとカンチに迫っていきながらも絶妙な匙加減で抑えるとこは抑えていたので何のストレスもなく見ることができたんですよね。このあたりの演じ方はさすがだなと。たぶんこの舞台の中で一番感情移入できたのは玲奈ちゃんリカだった気がします。カンチが一時期彼女の引力に惹きこまれたのも納得できました。

歌の表現力も素晴らしく、特にカンチの自分への気持ちに自信が持てず一人孤独に歌う場面は彼女の切なる想いがとてもストレートに伝わってきてグッとくるものがありましたね。

三上健一:廣瀬友祐くん

廣瀬くんの三上はとにかく本当にめちゃめちゃカッコよかった!!動きの一つ一つから色気というか男性ホルモンがダダ洩れしまくり(笑)。あれは世の女性たちが吸い寄せられてくるのも納得です。これまで見てきた廣瀬くん出演舞台の中でも3本の指に入るほど素敵でした。
でもかっきーカンチとの会話の場面ではものすごくリラックスしててめっちゃ楽しそうw。「56人の女がいたんだぜ」と艶っぽくダンスしながら歌うナンバーがあったのですが、その直後にかっきーカンチと向き合った時に「なぜか息が上がってるぞ!?」とツッコミ入れられて「なんでかなぁ」なんてボヤきながら水飲んで息整えてた姿なんか可愛くて萌えちゃったよ(笑)。あの表情や雰囲気は気心知れた柿澤くんとだったから出せたんじゃないかなと思います。

さとみとの恋愛と長崎さんとの恋愛の場面はそれぞれ違った雰囲気が出ていて、三上の複雑な心中がっ手に取るように伝わってきました(それに共感できるかはまた別の話ですがw)。さとみといるときは穏やかなのに、長崎さんといるときは落ち着かない・・・みたいなね。あぁ、これは彼の気持ち的には長崎さんの方に強く惹かれちゃってるんだなぁという説得力があったと思います。ラストシーン、めっちゃ幸せそうな表情してたしね。

関口さとみ:夢咲ねねさん

ねねさんが演じたさとみは、”女性らしさ”をかなり強調したキャラクターだなと思いました。かつて宝塚の女役トップとして活躍された経験があったからこそあの色が出せたのかなと(私はヅカ観に行ったことないんですが 汗)。一言でいえば、”男性が思わず構ってあげたくなるような女性”って感じでしょうか。
今でいうところの”あざと可愛い女子”といった雰囲気で、同性からはもしかしたらちょっと敬遠されちゃうかもしれない危険性もw。でも、それを計算づくでやってるわけではなく”天然”で醸し出しているところがさとみの凄いところだよなぁと思ったかな。結局この物語の中で一番得をしたのもさとみだったような気がしたしw。

それにしても、ねねさんの歌声はハッキリしていてとても聴きやすく心地よかったなぁ。これまで見てきた役はちょっと歌が不安定かもと感じることもあったのですが、今回はすごく安定してよかったと思います。

長崎尚子:綺咲愛里さん

今回が初めましての女優さんだったんですけど、かつては宝塚の娘役を演じられた経験があるそうですね。どうりでツンツンしたなかにも清楚な女性らしさが垣間見えていたはずです。とても奇麗な方だった。
三上に対しての予想外の自分の気持ちに戸惑い、拒絶しながらも引き寄せられてしまうといった苦しみに翻弄されるお芝居は特に印象深かったです。長崎産がもうちょっと早く自分の気持ちを受け入れられていたらなぁ…と見てるこちらは思っちゃうんですけどねw。

和賀夏樹:高島礼子さん

舞台で拝見するのは今回が初めて。和賀は原作やドラマでは”男性”キャラクターとして描かれているようですが、舞台では”女性”として描かれています。おそらく、リカとの関係を舞台で描く余裕がなかったからかなとも思うのですが(汗)、高島さんはそれはそれはカッコよくて素敵で、理想の上司そのものでした。あんなふうに社員を思いやってくれる上司がいたら仕事もはかどるだろうなぁ…なんて感じてしまったくらい魅力的。
セリフ劇の場面でのみの登場かなと思っていたらしっかりとソロナンバーもあって。決してお上手、といった感じではありませんでしたが、とても丁寧に歌っている感じが伝わってきたのは好印象でした。

後述

今回の舞台はキャストが「空」と「海」の2チームに分かれていました。「空」は比較的大人年齢の役者さんで、「海」は若さ溢れるキラキラした役者さんといったところでしょうか。本当は両バージョン見て見たかったのですが、時間の関係もあり「空」のみということで。おそらく、「海」バージョンは「空」とは全く違う雰囲気だったのではないかなと思うので、両方見比べてみる楽しみはある作品だと思います。

もしも再演ということが実現するとしたら、ストーリー展開をもう少し手直しして軸がハッキリ見えるようなドラマにしてほしいなと思います。日本発のミュージカルはまだなかなか育っていきませんが…どうにか頑張ってほしい。

なお、今回の大阪初日公演の終演後には柿澤勇人くんと廣瀬友祐くんによるアフタートークショーが行われました。劇場に着いてからそのことに気が付いて”ラッキー”と思ってしまったw。かなりディープで楽しい話が聞けたので、次の記事で紹介したいと思います。

error: Content is protected !!