主なキャスト感想
ハリー・ポッター:石丸幹二さん
石丸さんのハリーは本当に悩める一人の”父親”としての色が濃くてとても人間臭く魅力的です。最初に登場した時にはとても柔らかい雰囲気で、アルバスが自分の息子であることにプレッシャーで押しつぶされそうになってることにもあまり気が付いてない。このお気楽さ…というか、鈍感さが後々代償となって返ってきてしまうわけで、そのあたりの感情の流れの組み立て方もすごく上手いなぁと思いました。
息子とうまく関係を築けないことに苛立ち、言ってはいけない言葉をぶつけてしまうシーンは特に印象深い。あんな言い方されたら、アルバスがトラウマになるほど傷つく気持ちもよく分かる。自分の理想通りの親子関係が実現できないことに忸怩たる思いを抱いてしまっていたハリーの心の弱さを、石丸さんはとても繊細に演じていらっしゃいました。
「息子を愛するが故」といったベースがとてもしっかりしているので、そのあと次々に襲い掛かってくる心の試練に苦しみ涙する姿は見ているこちらにも痛みが伝わってきて本当に切なかった。でも、アルバスが冒険を通じて心の成長を遂げるのと同時にハリーも一緒に自分の心と向き合って成長してるんですよね。それを経てのあのラストの親子の会話だったので、ものすごくジーンときて涙が出てしまった。
最初から最後まで石丸さんの素晴らしいお芝居に魅了された今回のハリポタ観劇でした。来年の最終登板予定も発表されたので、それまでに何度かまた会いに行きたいと思います。
ハーマイオニー:早霧せいなさん / ロン:竪山隼太くん
早霧さんは宝塚の元男役を経験されているので、女性的な雰囲気の中にも男前なカッコよさも加味されていてとても美しく魅力的です。それでいて、ロンの前では「素」の部分が漏れちゃって彼の言動に翻弄されたりドギマギして恥ずかしがったり。このギャップがたまらなく可愛らしかった。
竪山くんのロンはこの作品の中では”笑い”の部分を担っていることが多いのですが、そのコメディセンスは抜群にうまいです。間の取り方も素晴らしく、会話がとても生き生きしている。ちょっとしたジョークもクドさがなくてカラリとしているので見ているこちらも思わずクスリと笑ってしまいます。そんなコミカルなお芝居の中にもハーマイオニーが大好きという気持ちの芯はとてもしっかり存在してる。彼女がロンに惹かれるのも納得だなと感じさせる素晴らしいお芝居でした。
ドラコ・マルフォイ:宮尾俊太郎 さん / ジニー:馬渕英里何さん
宮尾さんのドラコは本当に大好きなんですよ。登場するたびについつい目で追いかけてしまうほど魅力的。クールではぐれ狼的な存在を貫いていても、ふとした瞬間にちょっと力が抜けたようなチャーミングな仕草を入れてきたりしてめっちゃ萌えますw。立ち姿の美しさも相変わらずだし、魔法シーンの時の着地が”スーッぴたっ”と実に正確なのも最高。
でも何よりも素敵なのは、終始一貫して自分の”家族”を心から愛しているということが伝わってくるお芝居です。孤独の渦に呑み込まれてもがいていた自分を救ってくれた奥さんのことを切々とハリーに語るシーンは特に印象的で胸が熱くなってボロ泣きしてしまう。そんな彼女が遺してくれたたった一人の息子・スコーピウスを、心の底から愛し守ってやりたいと切望している想いも痛いほど伝わってきた。クライマックスで再会した息子を少し恥ずかしそうに片手で抱きしめる姿は本当に感動的です。まるでバレエのダンス見てるようだったよ!!また来年も宮尾さんのドラコに会いたいなぁ。
馬渕さんは前回公演の時に体調不良でお休みということだったので今回が初めてのジニーとなります。非常に男前なジニーでめっちゃカッコ良かったです。特にハリーとドラコが魔法で大喧嘩始めた時の諫め方が最高w。あんな恐ろしい形相で睨みつけられたら、そりゃ二人ともシュンとなっちゃうよねっていうのが納得でした。
アルバスとの親子関係に悩むハリーに対してもビシビシ男前な態度で接していましたが、そこには厳しさだけじゃなくて彼に対する愛情もすごく感じられます。悩む彼の前では強くあり続けようとしているかのようにも見えて…そんな馬渕ジニーがなんだか愛しくもありました。彼女のあの強さがハリーの心を救ったという一面も大きかったと思います。
アルバス:藤田悠くん / スコーピウス:門田宗大くん
最初の発表ではアルバス役は福田くんだったのですが、変更となり初めましての藤田くんで観る運びとなりました。藤田くんのアルバスは、最初に登場してきたときはあまり覇気がなくてちょっとスネてるような陰のある青年に見えました。でも、スコーピウスと出会った時に彼の中にちょっとした光が差したような表情が見えるようになってきて、そこからどんどんと”自分自身”を表に解放していくような雰囲気に。このあたりの気持ちの変遷がとても分かりやすかった。アルバスはスコーピウスの存在があったからこそ、迷いながらも前に進むことができているんだなということがすごくリアルに伝わってきました。
父親との関係に苦悩する姿は現代の若者にも通じるような感じで。本心では父親と素直に語り合いたいのに、口を開けば意見が食い違ったり気持ちの相互理解に辿り着かなかったりで…そのもどかしさから殻に閉じこもる仕草を見せていたのもすごく印象深かったな。でも、冒険を通して出会った人たちの”人を想う気持ち”に触れていくうちに彼の心もほぐれていくわけで。そこにアルバスの心の成長が見られたのはすごく感動的でした。
門田くんのスコーピウスはもう本当に愛しい!!の一言です。アルバスと出会う前は皆からの冷たい視線を感じて寂しい目をしながらも一生懸命それを気にしないふりしてて…そのイジらしさがたまらなく切なかった。そんな彼の元に、何のフィルターもなく真っ直ぐに向き合ってくれるアルバスが現れて…その時の門田スコーピウスの嬉しそうな顔ったらなかったよ。もうあの表情見ただけで愛しくて抱きしめてあげたくなるような母性を感じてしまったw。
スコーピウスは自分に纏わる出生の黒い噂やハリーと父親との暗い関係のことも承知しているんだけど、そのことで捻くれることなく必死に前を向いてこれまで生きてきたんだろうなと。だからこそ、アルバスという心を赦せる親友ができたことは何よりも嬉しかったんだろうなとすごく腑に落ちました。
そんな彼が一度だけアルバスと大喧嘩をしてしまう場面はもう胸が痛くて仕方なかったです。足手まといだと告げられた直後の「可哀そうに」とアルバスに言葉を返した時の門田スコーピウスの表情があまりにも哀しすぎて涙が出た(泣)。スコーピウスは表面上では出生のことを気にしないようなそぶりをしてきたけど、実はずっとずっとその噂話に心を痛めていたわけで…。「君は僕の苦しみを考えたことはないのか」的な言葉をぶつけるシーンは彼の心の痛みがこれでもかというほど伝わってきて辛すぎて涙なしには見れなかった。門田くんは、こういった繊細な心の内を芝居に反映させるのがすごく上手いなと思います。
そんな時期を経て再びアルバスと絆を深めていくスコーピウスの姿も感動的でしたが、もうひとつ、お父さんであるドラコに対する信頼や愛情も随所随所に伝わってきたのが本当に良かったです。父親の過去のせいで黒い噂がたてられてしまっていたけど、彼はそれを恨むことなく、まっすぐに愛情を注いでくれた想いに応えてるんですよね。その優しさや温かさが本当に素敵で…。ドラコとスコーピウスの親子関係の魅力をさらに盛り上げてくれるお芝居にとても感動しました。
後述
今回の観劇はものすごい近い席からの観劇だったので(2番目のグレード席)、魔法シーンの時の火力の熱や列車シーンの時の風圧などを直に感じるなど非常に貴重な体験をすることができました。オペラグラスを使わなくても表情が分かるくらい近い距離からの役者さんたちの表情や息遣いを観れたことも今回の感動の大きな要因だったかもしれません。もうあんな良席で見られることはないかもしれないなぁ。
ただ近すぎて見えない演出というのもあるので(汗)、個人的には舞台ハリポタのベスト席は中央列あたりかなぁと思います。
まだまだコロナ禍の影響が舞台に響くことも多く、ハリポタもけっこう長期間のお休みに入ってしまったりということがありました。長丁場ですから体調管理もかなり大変だと思いますが、皆さんどうぞ健康だけには気を付けて頑張って繋いでいただきたいです。
次のハリポタ観劇は向井くんで1月の予定。その先はまだ入れていないのですが、金銭的に余裕ができたらまたチケット購入したいところです。この愛の物語は何度も見たいと思えるほどクセになる!
<2022年8月初ハリポタ感想はこちら>
最後に、もう一人のマクゴナガル先生役の榊原郁恵さんについて。哀しい出来事があってからのしばしの休演ということになってしまいました。私も本当に大きなショックを受けたのですが、ご家族であれば衝撃と哀しみはそれ以上のはず。どうか心に無理をなさらず、ゆっくりとお仕事復帰していただきたいです。また元気な姿で再会できる日を静かに待ちたいと思います。