劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』大阪公演 2021.11.01マチネ

主なキャスト別感想

中村倫也くん(安倍晴明役)

倫也くんの安倍晴明は絶対にハマるという確信がありましたが、その予想をはるかに超える完璧さでもう終始痺れっぱなしでした!!!

まずはその立ち姿の美しさ…。まるで本当に現世に降りてきたかのような神々しさすら感じさせる。常に冷静沈着なキャラでありながらも、たまに感情のコントロールが効かなくなって怒りっぽくなったりもするんですが…、この時の感情の緩急の付け方が非常に巧い!!まるで子供が起こってるかのようなちょっと幼い表情になったりして、でもそのあとすぐにシレッとごまかしたり…とにかく芝居のスイッチが自由自在に切り替わるんですよね。それが本当にすごいと思う。

さらにはセリフを語るときの凛とした張りのある声の美しさも素晴らしすぎる!!どこの席にいたとしてもキッチリと聞き取れる滑舌の良さに加えて、聴き心地もいい。さらにそのセリフにはちゃんと晴明の魂がしっかりこめられているので、言葉が生きているしその説得力もハンパない。”晴明”としての息遣いが見ているこちらにひしひしと伝わってくる。
これまで倫也くんの出演舞台は何本か見ていますが、本当にセリフへの感情のこめ方に無理がなくてしっかりその意思を感じられるのが素晴らしいと思います。特にクライマックスやラストの一言一言は大いに心揺さぶられました…!!

そして、計算され尽くした”美しい魅せ方”がこれまた最高!!晴明の衣装の裾の祓い方といい、剣を振るう時の型の形といい、マントの着こなし方といい・・・、どこをとってもまるで芸術品のように美しい。あんな倫也くんはテレビではあまりお目にかかれないと思うのでとても貴重です。

これで歌うシーンがあればもう完璧すぎたんですけど、それはさて置いても、想像以上に魅力的な”安倍晴明”で、心が十分すぎるほど満たされました。やっぱり舞台の上の倫也くん、最高だわ…!
私はブレイク前夜ちょっと前くらいに彼の芝居に魅了されそれ以来応援しているのですが、その時から「皆早く倫也くんの凄さに気づいてほしい」とずっと思ってきました。なので、こうして大きく注目されたことは個人的にとても嬉しい。今後も注目し応援していきたい俳優さんです。

吉岡里帆さん(タオフーリン役)

吉岡さんの舞台を観るのは『ナイスガイinニューヨーク』以来。あの時は初舞台でめちゃめちゃ頑張ってましたよね。新感線の舞台を観るのも5年ぶりですが、彼女の舞台を観るのもそれと同じブランクがあります。そうそう、ちょっと話それますが…今年放送された鈴木亮平くんが主演したドラマ「レンアイ漫画家」での吉岡さんのお芝居、めっちゃ可愛くて好きでした!あのドラマ大好きだったので、円盤化されてないことが本当にショックでたまらんとです…。

さて、吉岡さんが演じたタオフーリンは狐の妖。全身ピンクのモフモフした衣装とふわふわの耳がついてて化粧もかなり濃く、ぱっと見誰か分からないくらいのキャラだったのですが、これがとても似合っていて違和感ありませんでした。彼女の可愛らしさに寄せた感じになってたのも大きいかな。

台詞も、新感線の特有のテンションまで上げてすごく頑張っていたと思います。常に全力投球って感じだったかな。コメディシーンでは吉岡さんが持つ愛らしさがすごく生きてて思わずほっこりさせられてしまった。
殺陣もあり、相当な運動量を見事にこなしてたのもすごい。ただ、ちょっと周りに比べると動きが鈍そうだったかなと感じることはあったかも。ジャンプしてかわすときもちょっとドスって感じに見えちゃって、そこだけ残念だったかな。

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浅利陽介くん(尖渦雅役)

浅利くんを初めて観たのはミュージカル『レ・ミゼラブル』のガブローシュ役。あの時まだ少年だったけど、その頃から歌や芝居の表現力はずば抜けていたのを思い出します。今やお父さんにもなってすっかり大人に・・・。なんだか親戚のような気持になっちゃう(笑)。

最近はクセのある役柄も増えてきましたが、どちらかと言うとユルッとしたキャラやひ弱なキャラが多い印象のある浅利くん。そんな彼が今回珍しくめちゃめちゃ硬派な男くさい人物を演じていてすごく新鮮でした。逞しいひげを付けていることでさらに年上にも見えて…めっちゃ貫禄ありましたね。

渦雅は真面目すぎる性格で要領が悪く、世渡り上手の仲間の検非違使にどんどん先を越されてしまう少し残念なキャラクター。でも、検非違使という仕事に常に誇りを持っていて、たとえ親しい間柄の人であっても道に外れた者は捕らえるという真摯な人物。この堅苦しさがもどかしくもあるわけですが、必死に頑張っている姿勢は常に伝わってきてなんだか応援したくなってしまう。晴明もそんな彼だからこそ頼りにしたし慕っていたんだろうなという説得力がありました。
ただの真面目な堅物というキャラに納めず、どこか少し抜けたような親しみやすさをにじませるお芝居が、やっぱり浅利くん絶妙で上手いなぁと思ったな。

滝星涼くん(虹川悪兵太役)

竜星くんの舞台を観るのはこれが初めて。パンフレットにも書いてありましたが、これまでどちらかと言うとおとなしい系の役柄が多かったこともあり、今回のような躍動感のある明るいならず者的なキャラはまさに念願だったそうです。たしかに、これまでにない底抜けに明るくてスコーンと突き抜けたようなおバカ的なキャラで彼を観たのは初めてだったのでとても新鮮でした。

とにかく楽しそうに舞台の上を駆け回っていた姿がとても印象的。スタイルもいいし、超派手な法被衣装もめちゃめちゃ似合ってた。「るろうに剣心」に出てくる原田左之助みたいなキャラに近いなと思うこともちょいちょい。

ただ一つ気になったのは、セリフがハッキリと聞こえてこないシーンが多かったことかなぁ。空が勿体ない。1階席や正面席にいたら聞こえてきたのかもしれないけど、上の方の端っこにいた私には聴き取りづらいと感じるところがいくつかありました。竜星くん、ちょっとハスキーで籠りっぽい声してるから難しいと思うけど、そのあたりもう少し改善したほうがいいかもと思いました。

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早乙女友貴くん(ランフーリン役)

タオフーリンの弟のランフーリンは水色のモフモフ衣装でこちらもめちゃめちゃ派手なのですが、さすが早乙女くん、見事に着こなしていて立ち姿も美しく「狐」としての違和感が全くありませんでした。

彼の魅力と言えば、やはりかつて大衆演劇で鍛えた身のこなしの美しさでしょう!特に殺陣のシーンの時の動きは見事でほんと惚れ惚れしました。空中でクルッと1回転してもしっかりと正面を向いて着地できるのが本当にすごい。

ランフーリンはどちらかというとヤンチャであまり物事を深く考えないキャラ。もう少し落ち着いたキャラを演じるのかなと予想していたので、これはちょっと意外でしたね。お姉ちゃんのことは大好きなんだけど、思慮が足りないからすぐに利風に憑りついたパイに心の隙間を突かれて洗脳されてしまう未熟さがある。でも、すごく素直な子で…まるで子供が色んなことを吸収するかのように「狐」サイドへ意識を変えてしまうシーンは可愛らしさもありました。

向井理くん(賀茂利風役)

向井くんの舞台を観るのは今回が初めてになります。新感線は前回公演で経験しているそうですね。
朝ドラや大河など多くの大きなドラマに次々と出演している向井くんですが、実は個人的に彼のお芝居は淡泊に見えてしまうことが多くて数年前まではあまり好きな役者ではありませんでした。が、昨年放送された大河ドラマ『麒麟がくる』での足利義輝役はとてもハマっていてそれまでの意識がちょっと変わったんですよね。あと、『バイプレイヤーズ』の”喋れ向井!!”も面白かった(笑)。

ということで、今回の舞台も今までとは違う向井くんに会えるのではと少し期待して行きました。
向井くんが演じた利風はかつては晴明の親友という重要な役柄だったのですが、思っていた以上にハマりまくっていて正直ちょっと驚いた!!これまでのなかで一番「向井くん、いいじゃん!!」と思ったかもしれない。これは、当て書きした部分もあったのでは!?と思えるほどイメージにピッタリときていて素晴らしかったですね。

倫也くんの晴明が完璧に美しかったわけですが、向井くんの利風も本当に美しくてまさに目の保養。表向きの顔の時の落ち着きっぷりは余裕が感じられて陰陽師としてのオーラもありました。ランフーリンに裏の顔を見せる時にはちょっと尖った一面を出してきて、タオフーリンとの関係を明かすときにはコメディチックな表情も。このあたりの緩急の付け方も魅力的で面白かった。

最後の晴明との対決シーンの時にはまるで「宝塚」の衣装のようなすごい姿での登場となるのですが、これもまた見応えあったなぁ。特に、狐の本性を丸出しにしたときの表情は鬼気迫るものも感じた。これまでの向井くんのイメージとはかなり違う攻めた芝居が印象深い。
そんな中で見せた、一瞬のラストの表情。フッと憑き物が取れたようなあの瞬間はちょっと衝撃受けましたね。ここでその表情を作れるのか!と感動して胸打たれるものがありました。

全体的に本当にとてもよかったです。たまに『麒麟~』の足利義輝に重なるような雰囲気もあったし、大河ファンとしても十分堪能させてもらいました。今後の進化にも期待したいです。

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元方院を演じた高田聖子さん、久しぶりに見ましたけどオーラのある存在感をひしひしと感じさせる素晴らしい熱演でした。ところどころ可愛いアドリブも出してきたのも面白かった(おデブになったシーンのところでは、「11月、おせちどうしよう」みたいな生活感あふれるコメントも出てきて笑ったww)。あのカツラと衣装は相当な体力を使ったと思いますが、涼しい顔で演じられていたのでさすがだなと思いました。

道満を演じた千葉哲也さん、神出鬼没なつかみどころのないオッサンキャラでしたが、いざという時にドーンと構えた安心感を感じさせるお芝居はさすがの一言です。渋いながらもちょっと我儘で、実はモフモフ好きと言った可愛い一面もあり見ていて飽きることがない人物を、場面場面で上手く演じ分けてくださっていました。肩に乗った妖人形ちゃんもめっちゃ可愛かったです。あの姿が似合ってしまうのもまたすごいw。

近頼を演じた粟根まことさん、登場した時はどちらかと言うと晴明の側に立った頼れる人物だったので「あれ、意外な配役だな」と思っちゃいましたw。が、やはり後半に入ってくると徐々に本当の顔が出てきて、やっぱり粟根さんはこうこなくては!と内心喜んでしまった(笑)。こういったクセのある人物を演じると、本当にこの方はピカイチと言っていいほど上手いですよね。めっちゃハマってました。でも逆に、すごく良い人っていう役もちょっと見てみたくなったかもw。

ちなみに、粟根さんの役の対極にいたのが右近さんだなと思いました。このあたりのキャラの比較ができるのもこの作品の面白さの一つだったかもしれません。

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後述

カーテンコールも盛り上がり、4回目くらいの時には主演の倫也くんが会場の大拍手を”いいとも”形式で納めるといった一幕があって可愛らしかったw。彼は役から離れるとアンニュイな一面が垣間見えるのでそういったところも魅力ですよね。

11月に入ったということで、何か一言と倫也くんに促されていたのが浅利陽介くん。突然振られて動揺を隠せない様子でしたがw、「しっかりお金貯めよう」と11月の目標を宣言(笑)。客席からはその意外性に大きな笑い声が沸き起こっていましたが、「これ大事なことだよね??」みたいに周囲に聞いて回ってた浅利くんが可愛くて萌えました(笑)。

そのあと、段八を演じた吉田メタルさんの方へ行った倫也くん。なんとこの日はメタルさんのお誕生日だったとのこと!!おめでとうございます!!会場も一気にお祝いムードとなり大きな拍手が沸き起こったので、メタルさんが何かコメントしていたのですが聴き取ることができませんでした(汗)。でもなんだか照れながらも嬉しそうにされてて、倫也くんの気遣いも嬉しかったんじゃないかなと思いました。

最後まで大盛り上がりだった『狐晴明九尾狩』。叶うならばもう一度見たかったほど面白かったです。チケット代も高いしそんなに遠征もしていられないからなぁと、せめて購入した戯曲を読んで思い返そうと思っていたところ、11月23日にディレイビューイングが決定というニュースが!!

岡山県でも上映してくれる映画館がある!今のところ予定は入っていないので、なんとか観に行きたいです。

これがあるということは、円盤化も大いに期待しちゃいますね。今から発売日が楽しみw。あまりにも倫也くんがハマり役だと感じたので、シリーズ化してほしいくらいです。色々な展開ができそうだし、これ実現したら本当に嬉しいな。

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