帝国劇場で上演中のミュージカル『レ・ミゼラブル』を観に行ってきました。この日はスペシャルキャスト観劇ということで久しぶりのソワレになりました。
本当は5月に1本違うキャストを見るためにも入れようかと考えていたのですが…どうも今ひとつテンションが上がらず(汗)結局3回のみのレミゼ観劇になりました。4月に2回行って以来だったのでずいぶん間が空いてしまった…。
これで個人的に一区切りつけようかと思ってました。・・・といっても、ここ数年は短縮バージョンになってからは特に多くを観たわけではないんですけどね(苦笑)。
ちなみに、チラシのほうに大きく"さようなら、レ・ミゼラブル"なんて文字が躍っているので今期限りで日本ではレミゼが観られなくなってしまうのではという勘違いをされている方がいらっしゃるそうですが・・・作品そのものは今後も上演するということで。演出が変わるってだけでね。宣伝文句がちょっとオーバーな気が…(汗)。
ジョン・ケアード演出の『レ・ミゼラブル』は数多く観てきたし非常に愛着もあるので、それはそれで寂しい気持ちもあるのですが・・・個人的には新演出のほうにかなり期待を寄せていたりもします。
削ってしまった大切な歌詞をとにかく元に戻してほしい!!
レミゼに関してはもうこの一念です、ひたすら・・・(苦笑)。
で、この日でとりあえずレミゼからはしばらく離れるので・・・10周年記念公演の時に通い詰めてた頃のキャストさんが数多く出てる今公演で、あの頃を思い出しながら感動に浸れればという気持で劇場に行った私。
前回観た時には短縮版の割にはものすごく感動できてしまったので、今回はさらにその上を行くのではと自分の中でかなり期待値のハードルを上げていたんですよね。
それがマズかったのかも……。
蓋を開けてみれば、呆然とするほど、ストーリーに入り込めなかった(爆)。役者さんたちはそれぞれ大熱演だったし、さすがスペシャルキャスト!っていえるくらいのすごい芝居だったと思うんですが・・・素直にその感動が自分の中に全く入ってこなかった。
会場がカーテンコールで大盛り上がりしてオールスタンディングになっている中、私は一人だけ立てませんでした…。哀しいくらいに感動できなかったので…。なんかそのままずっと座ってるのも申し訳ないような気がして、カテコ1回目が終わった時点で居たたまれなくなって劇場を出てしまいました(涙)。
キャストの人たちはすごく良かったのに、こんな虚しい気持ちにさせられてしまうなんてショックだよなぁ。観劇前に自分の中でものすごい高い理想を作り上げてしまったのがいけなかったのかもしれない…(苦笑)。
"こうあってほしいのに"って漠然と思ってた個人的ツボみたいなのが外れちゃったからかなぁ…とか、スペシャルキャストで観る短縮版が初めてだったからものすごい違和感を感じたのかなぁ…とか…。色々自己分析はできるんですが本当のところは今もよく分かっていません(爆)。
それでもしっかりパンフレットを2冊も購入してしまった(笑)。まさに2冊にするとはねぇ…。東宝の戦略にまんまと乗せられてしまったようで悔しい気がする(笑)。
主なキャスト
バルジャン:今井清隆、ジャベール:鹿賀丈史、エポニーヌ:島田歌穂、ファンティーヌ:岩崎宏美、コゼット:神田沙也加、マリウス:石川禅、テナルディエ:斎藤晴彦、マダムテナルディエ:鳳蘭、アンジョルラス:岡幸二郎、司教:林アキラ、ガブローシュ:小宮明日翔 ほか
以下、キャスト中心のネタバレ感想です。
上のほうで散々ネガティブなことばかり書いてしまいましたが(爆)、それぞれのキャストだけを観ると本当にとても良かったんです。
特に初演組や10周年の時までその役を担当した役者さんたちは、やはり、新しい今のキャスティングの人たちに比べると役に重みがあるなと思いました。なんていうのかな…、キャラクターの中にそれまでに至る歴史が脈々と刻み込まれているっていうんでしょうか。演じてるっていうよりも、それぞれのキャラクターがその時代を"生きてる"ってものすごい実感できる。長く演じたからこそ出てくる深みというものをすごく感じました。
ただ、全員がかつてのキャストってわけではなかったので…そのあたりの歪みみたいなものはちょっと感じたかなぁ。歴史の差みたいな…。そのあたりの違和感は個人的にちょっと感じてしまったかも。
以下、キャスト別の感想です。
まずはガブローシュの小宮明日翔くん。4月は2回とも加藤清史郎くんだったので、久しぶりに新しいガブに会うことができました。
いやぁ、上手いですねぇ!腐りきった世の中でも逞しく生き抜いていくような強さが全面に溢れててとても良かったです。声にもパンチがあるし、お芝居も上手い。この役は「可愛い」って感じてしまうとちょっと違うような気がするので…そういった意味では清史郎くんよりもガブローシュ役に合っている気がしました。
今後、いいミュージカル役者に成長してくれるのではないでしょうか。期待しています。
それから、林アキラさん。最近はスタッフに回ることが多いアキラさんですが、レミゼではずーーっと長いこと司教役を演じられてきた方。と、いうことでスペシャルキャスト要員として参加されています。
まさにさすがの貫禄!!これしか言葉が見つからない。存在しているだけで司教様なんですよ。あの短い出演時間の中であんなに濃い存在感を残せるとは…。私は97年から01年まで観てきたので、あの頃の事が蘇ってくるような想いでした。
ちなみに二役目のレーグルなどは今期のアンサンブルさんが演じてました。アキラさんのレーグルも観られるのか!?とかちょっと期待してたので宿屋シーンで違う役者さんが出てきた時はちょっと残念に思ったりしました(笑)。
バルジャン@今井清隆さん
これまで、今井さんのバルジャンですごく感動させられることが多かったので今回もこのキャスティングを選択したわけですが…どうしたわけか、以前のような感動が私の中に沸き起こってきませんでした…。今井さん自身が悪いとかそういうのではなく、なんていうか、漠然とですが・・・心にグッとくるものがなかったんですよ。なぜだろう?
全体的にはすごくオーソドックスと言いますか、スタンダードなバルジャンという印象。仮出獄中は荒々しく、コゼットには愛情をたっぷり注ぐ父親で。安心して観ていられるんですけど・・・ただそれだけ・・・だった・・・みたいな(汗)。数年前に見た時はとても感動したのにどうしてだろう。臨終のシーンとかも全然泣けなかったし…。
唯一ドキリとしたのがテナルディエ夫妻からコゼットを救おうとするシーンだったかな。♪企みがあるとか~♪と歌う夫妻に対して♪あとは、言うな♪と怒ってお金を多く渡すんですけど、その時に今井バルジャン、思いっきり乱暴に椅子を蹴飛ばしててビックリしました(汗)。あれじゃあ、預かられる身のコゼットもビビッちゃうじゃないか!みたいな。
それ以外は当たり障りなくって印象かなぁ。うーーーん、今井さんにこんな感想を持ってしまう自分が嫌だな(悩)。
ジャベール@鹿賀丈史さん
鹿賀さんは10周年記念公演の時にずっとバルジャンで観てきました。当時は山口祐一郎さんがバルデビューしたばかりのころで、そちらのほうにかなりの人気が集中していたのですが・・・実は、私は鹿賀バルジャンが一番好きだったりしました。どこか最後までダークな部分を抱えたバルジャンでファンテに♪神が遣わした人♪と言われ思わず目を背けてしまう芝居がとても印象的でした。
レミゼで鹿賀さんを観るのはそれ以来。しかも、ジャベール役は今回初見であります(前々回の時は見なかったので)。最初の頃は「鹿賀さんが自由すぎる」という評判を聞いていたのでちょっとドキドキだったのですが(笑)この日観た限りではかなり落ち着いているようでした。なんとなく自由っていう意味が想像できてしまいますけど(汗)。
いやぁ、独特の雰囲気を持ってます、やはり。今まで観てきたどのジャベールよりも心の中に暗くジメっ賭しているものを抱えているという印象。登場した時、バルジャンに仮出獄許可証を渡すシーンで長い間暗い目つきで睨みつけていたのがとても印象深かった。あのジャベールに目をつけられたら簡単には逃げられないだろうなぁと。精神的に追い込むまで追い詰めそうなそんな雰囲気を持ったジャベでした。
なので、自殺するシーンがものすごく腑に落ちましたね。あぁ、この人は、もう生きていられないなと。橋の上でしゃがみこみながら歌っている仕草にジャベールの絶望感が滲み出ていてゾクっとしました。
エポニーヌ@島田歌穂さん
レミゼと言えば、島田歌穂・・・というくらいこの作品のイメージが強い歌穂さん。この人のエポニーヌはもう、なんと言いますか、達観しているというか・・・演じてるって感じがないんですよね。エポニーヌそのもの。彼女の持つ暗さ、儚さ、可愛らしさ、そういうものすべてが歌穂さんの全身から満ち溢れています。年齢を重ねても関係ないってくらい見事にエポニーヌでした。
圧巻なのはソロのオンマイオウンですが、コインを投げ捨てる時のタイミングだけがちょっと狂ったかな(汗)。以前はあのチャリーンって音がなかったですから、たしか・・・。それよりもさらに心に残ったのは恵みの雨のシーン。死に近づいていく時の芝居が、芝居とは思えないものすごいリアルなんですよ。最後は声がほとんど出なくなって息も絶え絶えになる、その中でも必死にマリウスに口づけをするわけで・・・とても感動的でした。あの表現はこの方にしかできないだろうなと思ってしまいましたね。
ファンティーヌ@岩崎宏美さん
岩崎さんも10周年記念公演の時に何度も観たファンティーヌでした。それ以来なのでとても懐かしい。声量はちょっと落ちたような気がしましたが・・・やっぱりファンティーヌそのものでした。彼女が辿ってきた哀しい歴史がそこに立っているだけでものすごく伝わってくる。工場から追い出された時の、あの、何ともいえない寂しそうな不安そうな顔が切なくてたまりませんでした。
そしてコゼットを思いながら死んでいくシーン・・・もう半分自分の魂がこの世から離れているかのようなあの儚さ!バルジャンに抱かれ眠りにつくシーンではホッとした笑顔を浮かべるファンテが多いのですが、岩崎ファンテは最後の最後まで不安を残して死んでいったような…そんな印象を受けました。
コゼット@神田沙也加さん
実は沙也加ちゃんのコゼットを観るのはこれが初めてだったりします。スペシャルキャストでのコゼットということですが、正直、もっとベテランの人がきたほうがバランスがいいんじゃないのかなと思ったり…(汗)。個人的には純名さんが聞きやすかったのでよかったなぁ、なんて。
でも、あのメンバーに囲まれながらもすごく頑張っていたと思います。ソロナンバーも思ったよりも歌えていたし、そんなに大きな違和感はありませんでした。彼女のコゼットはすごく甘え上手ですね。マリウスに対してもバルジャンに対しても信頼を持ってためらいなく飛び込んでいっているという印象。特に臨終のバルジャンに抱きつくシーンなんかはすごく可愛くてよかったと思います。
マリウス@石川禅さん
07年のスペシャルキャストウィークの時に観て以来なので、さほど懐かしい!といったような感動はなかったですね。それに四月にジャベールでも観てますし(笑)。いやはや、それにしても、また熱血アッチッチなマリウスだったなぁ~。マリウスの前のアンサンブルで出てきている時も目立たない位置にいながらもけっこうテンション高めだったように見えたし(工場シーンの泥棒のヒゲみたいになってるメイクに笑った 笑)。10周年の頃よりも確実に熱さがパワーアップしているというのを実感させられました。
とにかく終始テンションがやったら高いマリウスだったという印象ですね。コゼットと一目惚れするシーンでは勢い余ってそのまま走り抜けそうになっちゃって、慌てて手を引っ掛けて見つめあう場面にもっていったような気がしたぞ(笑)。さらには強盗団にコゼットが襲われそうになって助けるシーンでは、まるでもう恋人になったのか?と思えるような勢いでコゼットをガバッという抱きしめててビックリした(笑)。恋に狂った禅マリはエポニーヌの前でも彼女は目に入らず♪狂いそうさ~~♪も舞台袖に走りながら歌ってたよ(汗)。
さらにビックリしたのが、ABCカフェでの浮かれっぷり!遅刻してやってくるわけですが…登場する時は物思いにふけってるマリウスが多いのに(禅さんも昔はボーッとしながら来てたし)、禅マリは猛ダッシュしてカフェに駆け込んでくるんですよね。あんなすごい勢いでカフェに飛び込んでくるマリウス初めて見たかも(笑)。
しかも、そのあと仲間にコゼットのことを話そうと必死の形相(笑)。もう観ながら「禅マリ、少し落ち着け」とお茶を差し出したい気持ちになっちゃいましまたよ(汗)。さらに熱くなってるのがコゼットとの再会。♪君を困らせた~♪の時のヘタレっぷりが熱いのなんの(笑)。コゼットも戸惑うんじゃないかってくらいすごいテンションだ、禅マリ!
2幕はちょっと落ち着いてたかな。1幕で電池使いすぎた?みたいな(禅さんに限ってそんなことはないと思うけど)。その代わり、バルジャンへの接し方やコゼットへの接し方がとても優しくて包み込むような雰囲気だったのがとても印象的だった。特にラストシーンで手紙を読むコゼットをしっかり支えていたのが感動的でした。
で、カーテンコールになったらとたんにまた超ハイテンションになってる禅さん!花が投げ入れられたあとに出てくくる時はいの一番に舞台中央に駆け込んできてものすごい勢いで花束拾い集めてましたよ(笑)。これには沙耶加ちゃんも笑っちゃってて。どうしたんだ、禅さん!?何かいいことでもあったのだろうか!?ほとんど感情が動かされなかった今回のレミゼ観劇でしたが、禅さんにだけは色々と楽しませてもらいました。
とにかく今年の禅さんのマリウスはこんな調子でものすごいハイテンションでございました。
テナルディエ@斉藤晴彦さん
いやぁ、懐かしいわ~、斉藤テナルディエ!この方も10周年記念公演以来。あの時から全然雰囲気も衰えも感じさせませんね。いま、けっこう新しいテナルディエがたくさん配役されていますが、一番この作品の中における"テナルディエ"っていうものを表現しているのはやっぱり斉藤さんではないかなと思ってしまいました。
ちょっとコミカルな一面を見せながらも、実は本心ではすごく黒い部分を抱えてて…コミカルと悪との融合が絶妙でした。
マダムテナルディエ@鳳蘭さん
初演のキャストだったという鳳さん。一度観てみたいなと思っていたので、今回のスペシャルキャストで会えることを楽しみにしていました。
ハスキーで大迫力の歌声、そしてあの存在感!チビコゼットに対するイジメは今まで見てきたどのテナルディエ夫人よりも怖かったです(笑)。あの迫力で怒鳴られたらそりゃ縮み上がっちゃうよねぇっていうのがものすごく納得。チビコゼの気持ちになって思わず観てしまったくらい(汗)。♪行かないと優しくしないよ♪っていう歌詞がありますが・・・この人はコゼが水汲みに行ったとしても優しくしないだろうなと(笑)。
逆に面白かったのが結婚式のシーン。マリウスから金を巻き上げて食器を盗もうとするのですが、その盗み方が絶妙(笑)。一番効率的にゴッソリくすねてるなと思いました(笑)。岡給仕の呆気にとられた表情とともに楽しめました。
アンジョルラス@岡幸二郎さん
岡さんのアンジョルラスも私が初めて見た97年当時から大人気でしたよね。でも実は私は人情味があって優しいアンジョルラスだった森田浩貴さんのほうが好きだったので・・・あまり岡アンジョは回数を観なかった。
久しぶりに今回岡さんのアンジョルラスを見たわけですが…凜とした歌声とたしかなリーダーシップ力というか、オーラがあって素晴らしかったと思います。岡さんの歌はいつでも安心して聞いていられるのがいい。赤いテーブルクロスを掴んで高らかに歌い上げるシーンは、ここ最近の中では岡さんが一番だったと思います。
ただ、バリケードの中でのグランテールとのやり取りがちょっとアッサリなんですよね。短縮になっていろいろシーンが削られてしまったので二人のシーンの時間があまりないのですが…それでも、死に向かう寸前にグランテールと目を合わせてほしかった気がします。あの最後の目を合わせるところで二人の意思がビンビンに伝わってきて私は泣いてきてたので…。
こんな風に、キャストだけを観ると私はものすごく充実した観劇をしたことになっているように思えるのですが(汗)、それでも自分の中にはあまり残らない公演でもあったりしました…。残ってるのは禅さんのハイテンションっぷりくらいかな(笑)。
自分の気持と噛みあわなかった残念な観劇になってしまいましたが、とりあえずレミゼはこれで一区切りです。次の新しいレミゼに期待したいと思います。