ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』19.02.25マチネ・ソワレ前楽

全体感想 2幕

2幕が始まる前にオーケストラによる音楽が客席が明るいなかで序章として鳴り響く♪アントラクト♪。ここの演出も『オペラ座~』と被りますね。

♪なぜ僕を愛する?♪ ~ ♪負ければ地獄♪

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クリスティーヌが自分に隠し事をしていると確信したラウルはますます荒んだ心に苛まれ、バーで一人酒に溺れてしまいます。ここの歌詞はけっこう切ないんですよねぇ。

ラウルは自分が不甲斐ないせいでクリスティーヌに負担をかけていることを自覚してるんだけど、それでも彼女が自分に愛想尽かさないことがよく分からなくて混乱してる。いっそのこと切り捨てられた方がラウルにとって楽なのかなぁ、とも思えてしまいますが、そうなったらそうなったでさらにラウル転落していきそうだしねぇ(汗)。

ラウルが『オペラ座~』時代の子爵様からだいぶ身を崩してしまっているのは、私としてはあまり不思議には思ってなくて。最初にも触れましたが、やっぱり常にどこかに「ファントム」の存在が付きまとってたと思うんですよね。で、きっと、クリスティーヌを愛しながらも心のどこかで彼女の想いを信じられなかったような気がします。
そういった小さな心のほつれが今に繋がっていて、さらに今回クリスが自分を裏切っていることが明白になってきていますから、ラウルには同情できる点が多いなと思うわけです。

ましてや、結婚式前日に・・・ねぇ・・・。そこまではこの時点では気づいてないけど、なんか色々と気の毒ですよ、ラブネバのラウルは(苦笑)。

その酔い潰れてる最中にメグがやってくるんですが、万里生くんラウルがメグの顔を「どうした?」みたいに覗き込んでるのが可愛かった。いっそこの二人がくっついちゃえばいいのにって何度も見ながら思ったよw。

だけど、このシーンでのメグの告白もすごい意味深なんですよね。毎日海で自分の体を洗い流している、というくだりは特に…。そこの事実はクライマックスで明らかになるんですが、かなり衝撃的に描かれていて切なかった(涙)。

メグが「一刻も早くフランスに帰って!」と忠告して立ち去ったあと、一人になったラウルの前にファントムが出現。バーテンダーと上手い具合にチェンジしているところが面白いです。

ここで二人は激しく対立するわけですが、どう見てもファントムの方が余裕がある。しかも、トップシークレットのはずの”あのこと”も匂わせてしまうところがなんとも残酷(苦笑)。ラウル立ち直れなくなるような秘密だからねぇ…。
最後にラウルの首を絞めつけるような行動を取るファントムですが、この場面は『オペラ座~』のクライマックスでラウルの首にロープを巻くシーンと重なるものがありました。が、あの時は本気で殺そうとしていたのに対し、今回は「クリスティーヌが歌ったら一人でこの地を立ち去れ」とけっこう優しくなってるw。こういうところも変わったなぁと思うところだったりしました。

が、石丸ファントムはラウルの締め上げ方がどこかソフトに感じられたのに対し、市村ファントムは本気の締め上げっぷりだったので両者で印象がだいぶ違うなぁと思いましたね。

 

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♪水着の美女♪ ~ ♪負ければ地獄(カルテット)♪

メグはこの♪水着の美女♪のショーに自分のすべてを賭けて望んでいました。練習の時も力が入っていたようだったしね(ちなみにこの時の男性陣の鳳ジリーに対する反応が「おお、こわっ」って感じだったのが笑えたww)

夢咲さんは本当にキュートでアニメキャラみたいな可愛さがありました。ちょっとコミカルなところもいいし、男性だったらあんなショー見せらたらみんなメロメロになるっしょ!というのが納得できる。たまに歌声が荒っぽく聞こえるのは気になりましたが、それ以外は非常に魅力的でした。

ところが、マダム・ジリーは「すごく良かったでしょ!彼も見ててくれたわよね!!」って興奮しながら帰ってきた娘に対して「あなたは本当によくやったけど、彼は見てもいなかった」って残酷な事実を言ってしまう。
個人的には、この場面はマダム・ジリー配慮がないよなぁって思っちゃいますね。そこは嘘でも「彼も見ていてくれたはずよ」みたいに励ましてあげればよかったのにと。でもそう言えなかったのは、マダム・ジリー自身もファントムへの承認欲求が娘と同じかそれ以上にあったからなんだろうなと。

ショックを受けて精神的に追い詰められる娘を、マダム・ジリーは自分自身の嫉妬心に襲われてフォローすることができなかった。この場面は、香寿さんのほうがファントムへの女としての感情というものが強いように思いました。鳳さんはひたすら「恩を仇で返しおってーーー!」みたいなテンションのイメージw。

その頃、ラウルは心を入れ替えてクリスティーヌと接していた。クリスティーヌもラウルがオペラ座で出会った頃に戻ったかのように思えてどこかホッとしている。ちょっと良い雰囲気になってるんだけど、「このまま家族ですぐにフランスへ戻ろう」という提案してくるラウルにクリスティーヌはまた混乱してしまうわけで…。

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ラウルとしては、ファントムと賭けで勝たないとクリスティーヌを手放さなければいけないことになってしまっているので必死に説得しようとするわけですが、この時のクリスの態度が非常に曖昧なんですよねぇ。私は見ながらいつも「ハッキリそれはできないって断れないのかなぁ」って思ってました(苦笑)。

けっこうラウルに思わせぶりな態度をクリスが取ってるので、ある意味残酷というか…。
万里生くんラウルは自分の想いを最大限伝えようと、2度彼女にキスをするんですよね(私が観た時小野田くんは1回でした)。それがなんとも美しくて切なくて…ちょっと泣けました。

このクリスとラウルの二人の世界のとき、後ろの鏡に殺気だったファントムが映し出されるんですが…これがまたけっこうインパクト強い。より恐ろしさを感じたのは、やっぱりサスペンス要素強めの市村ファントムでしたね。突き刺すようなオーラが鏡の中から発せられていてホント恐かった。

ラウルが立ち去ったあと、ファントムは再びクリスティーヌの前に立ちはだかり、呪文のように彼女を歌う気持ちへと高ぶらせるように歌う。

ここの歌のドラマチックさでは石丸さんがすごかったです。あんな朗々と力強い歌声で攻められたら、迷いも何も吹っ切れてしまうと思えたので。石丸さんの歌声の力強さがものすごく際立ってました。
市村さんは歌声のハリも素晴らしかったんですが、どちらかというと言葉の力強さを強く感じさせましたね。クリスの迷いを言葉の魔力で強引に打ち消す、みたいな。けっこう力技的な印象でした。

ファントムが消えて我に返ったクリスティーヌが再び歌うか歌わないかの迷路にハマりこんでいる頃、彼女に関わる人たちがそれぞれの想いを歌う♪負ければ地獄(カルテット)♪は圧巻です。
『オペラ座~』でも各々の気持ちが同時に歌われるシーンがいくつかありましたが、あの時は美しいと感じましたが、『ラブネバ~』のこのシーンは不穏でしかない。特にマダムジリーの「クリスティーヌは怖気づいて歌えないに決まってる」みたいな歌詞は恐かった(汗)。

 

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♪愛は死なず♪

タイトルロールにもなっている♪愛は死なず♪の独唱シーンは全てが圧巻です。

背景にはクジャクの羽を広げたかの模様が広がっていて、クリスティーヌの歌声が熱を帯びるにしたがってどんどん大きくなっていく。最終的には、クリスティーヌがクジャクの羽を大きく広げて開花するかのような光景が広がっていて視覚的にも度肝抜かされます。

クリスティーヌの歌い出しは、ギリギリまで歌うべきかといった迷いが見受けられるんですが・・・「どうするの!?」ってハラハラさせられる度合いが大きかったのは平原さんの方だったかも。最初はすごく怯えたような感じで、歌うのをやめちゃうかもみたいな雰囲気あったんですよね。
それに対してめぐさんは意を決して歌に入っていく感じだったと思います。歌い出した瞬間にはラウルへの申し訳なさみたいなものが消えてた気がする。

上手にラウル、下手にファントムがいてそれぞれクリスティーヌを見守っているのですが、クリスは歌いながらファントムには自分の想いが昂ぶっていることを伝えラウルには「この歌は私に必要なものだ」ということを説得しているかのように見えましたね。
この訴え方の差が顕著に見えたのは平原さんだったかな。特にラウルに対してはすごく申し訳ないって気持ちが歌声や表情に滲み出ていた。なので、耐え切れなくなって走り去ったラウルを見た時にすごく心を痛めた顔になるしちょっと追いかけていきそうにもなってた。
それでもファントムへの想いが歌うなかで募りに募っていくといった感じだったのが印象的。

それに対してめぐさんはラウルに対して訴える目線は送っているのですが、「この思いはもう止められない」といった自己陶酔の世界に入っている印象が強かったです。なので、ラウルが居たたまれなくなって立ち去った時もそこにほとんど気を留めず、ただ心のままに歌に没頭していってた。何かに憑りつかれているのでは!?と強く感じさせられたのがめぐさんでした。

なので、歌い終わった後に笑顔が多かった平原さんに対し、めぐさんは精根尽き果て泣きそうな表情のまま客席に挨拶をしてましたね。
二人のクリスティーヌ、本当に圧巻の歌声でめちゃめちゃ感動しました!!

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その様子を下手側から見守っていたファントムですが、歌い終わった時の反応が違っていたのも面白かったです。

石丸ファントムはクリスティーヌの歌を最後まで袖で聴いて終わった瞬間に拳を高く突き上げ勝ち誇ったようにして立ち去ってました
それに対し、市村ファントムはクリスティーヌの歌が終わる直前くらいに感極まったようにスッと立ち去るんですよね。最後まで聴き届けなかったのが逆に思いの深さを表していたような気がしました。

楽屋に戻ったクリスティーヌは歌の魔力に陶酔し、ファントムへの愛情を自覚。それを感じたファントムも歓喜の気持ちでいっぱいになって・・・とうとう、ついに、クリスティーヌと完全なる両想いを果たすことになるんです。苦しんだ10年が報われた瞬間ですよ、ほんと。ここのファントムとクリスのキスシーンはものすごく感動的だった。『オペラ座~』時代からずっとそうなってほしいと思ってたのでね、個人的に。

ただ、結果的に振り回されて捨てられた形になったラウルは気の毒だった。しかもこの場面で『オペラ座~』の「♪可愛いロッテ~」の旋律になるのがさらに拍車をかけて切ない。ラウルがクリスティーヌに恋心を打ち明けてるシーンでもあったからね。
それが10年後まさかの別れの曲になっちゃうとは、私も想ってなかったので悲しかったよ。

平原クリスはラウルの別れの手紙を読んで「申し訳ないことしてしまった」っていう罪悪感が表情に滲み出てたけど、濱田クリスはファントムへの愛の方が強くて「もう後戻りできない」みたいな突き放したような雰囲気があったのが印象的だった。

ラウルの悲劇はこれだけじゃなくて(苦笑)、グスタフの姿が見えなくなったとクリスが騒ぎ出す場面ではファントムから「あいつ、自分の子供でもないのに連れ去りやがったな!!」とあらぬ疑いをかけられてました(汗)。スケルチが「ラウルさまはお一人でした」ってちゃんと証明してくれてよかったよw。
でもこの場面、石丸ファントムがラウルに憎しみの言葉を吐くのがなんとも奇妙な感じもあってw。けっこう長い期間石丸さんのラウルを四季で見てきましたから、未だにそのイメージが私の中では生きてるのかなぁとも思ってしまいました。

 

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♪お願い、ミス・ジリー♪ ~ ♪そして最後に♪

グスタフを誘拐した犯人がラウルでないと分かると、次にはマダム・ジリーに疑いかけてくるファントムw。このあたりの常軌を逸したところがホントに彼の弱さでもあるんだよなぁと思いながら見てしまった。

マダム・ジリーはあらぬ疑いかけられて大憤慨するわけですが、ここは香寿ジリーさんのほうが気の毒だったなって思う気持ちが強かったかも。彼女はファントムに恋心に似た感情を持ってましたからねぇ…(苦笑)。
鳳ジリーさんは「私にこんな仕打ちして!!」と憤慨したままファントムに突っかかって倒しそうな勢いだったww。市村ファントム相手なら互角にやり合えるけど、石丸ファントム相手だったら勝てちゃったかもしれない…と思ったのはここだけの話ww。

そしてクライマックスへ突入するわけですが、将来再演もあると思うのであまり深くは触れないでおこうかなと(ほかのレポでは書いてあるかもしれないけど)

ただ、ものすごく泣けた。展開的には衝撃の連続なんだけど、ラストシーンのファントムは本当に見ていて涙が止まりませんでした(泣)。

簡単にそれぞれの印象だけ…。

石丸ファントムは、取り残された孤独の少年のようだった。今にも消えてなくなりそうな儚い雰囲気もあったし、とにかく愛しくて愛しくてたまらなくなりました、私は…。
でも、彼にとっては最後のシーンは再生の時でもあるのかなって石丸ファントムは見ていて思えましたね。特に、ラウルに目線を送った時の表情はものすごく印象的だった。これまで抱いていた敵意ではなく、彼の存在を受け入れた…みたいな。人間としての感情がそこにあったんです。そこからもう涙止まらなかったよ(涙)。グスタフやラウルとの関係もこれまでとは違うものに変わっていくのではないか、という希望を感じさせたのが石丸ファントムでした。

市村ファントムは、自分の身が八つ裂きにされているかのような悲鳴を上げているように見えて…その痛みが見ている者の心にこれでもかというほど突き刺さってきました…。あの芝居はなんというか…芝居を越えていたというか…運命共同体のような気持にさせられました、本当に。ファントムの痛みを共有してこみ上げてくる感情を抑えることができずに泣いた(涙)。
やっぱり、市村さんのなかにはファントムがずっと生き続けていたんだろうなってあの瞬間思いました。そうでなければあの感情表現はなかなかできないと思います。市村ファントムは再生するのかどうかのビジョンは見えてこなかった気がする…。それくらいダメージが深い。もしかしたらその後の人生を諦めてしまうのかもしれないといった悲壮感すら覚えたのが非常に印象的でした。

 

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後述

基本的にマチソワ観劇は体力的にも精神的にもハードなんですが、このラブネバ観劇に関してはそういった感覚には一度も襲われなかった。そのくらい、私自身がこの作品沼にどっぷりとハマりこんだんだろうなあと思います。

同じ役を演じても、こうも印象が違うとは!改めて舞台観劇の面白さを実感した一日でもありました。間違いなくラブネバは2019年の個人的ベスト5に入ってくる!そんな作品に出会えて幸せでした。

で、25日は前楽ということもあってカテコの挨拶もあったのですが、だいぶ長くなってしまったので(汗)次の記事で紹介したいと思います。

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