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ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』東京公演 観劇感想 2026.05.25,28マチネ

ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』東京公演を観に明治座へ行ってきました。帝劇が解体工事中のため東宝主催ものが明治座で公演される機会が増えましたね。ちなみに前回明治座を訪れたのは同じく井上芳雄くん主演のストプレ「大地の子」でした。

明治座前には今回も役者の幟が劇場前にはためく光景が圧巻。そのうちメイン4人の幟タオルが発売されていましたが、私が最初に劇場に訪れた25日には三浦くんと唯くんのものが完売御礼状態になってました。どうやら明治座公演中は入荷できなかったらしく、受注生産で後日発送ということになったようです。二人とも本当に大人気!
唯くんは劇団退団してまだ時が浅いにも関わらず、すでにファンがたくさんついたんだなぁと感慨深かったです。

ロビーは愛媛物産コーナーが大人気で長蛇の列。四国に住んでいた頃愛媛にも何度か行っていたのでなんだか懐かしい。25日は購入見送りましたが、28日はついつい懐かしさのあまりいくつか購入してしまいましたw。

みきゃんグッズもいくつかあって可愛かった〜。

さて『アイ・ラブ・坊っちゃん』について、音楽座初期の作品ながら”日本ミュージカルの到達点”と謳われたほどの名作です。私は生でこの作品を見たことがないのですが、20年以上前にNHKで放送されていたものを視聴し当時録画もしていたので、久しぶりに引っ張り出して”復習”しましたww。画質は悪かったのですが、本当によくできた作品だなぁと感動。キャストもめっちゃ豪華なんですよね。その件については感想で触れたいと思います。

ストーリーの流れは、漱石のいる現実世界と彼が執筆する小説「坊っちゃん」のキャラクターが同時進行で描かれていく感じ。全体のテンポも良いし初めて観る方にも分かりやすい作品だと思います。
唯一、知っていたほうがよりストーリーにハマるんじゃないかと思うのは・・・、”夏目漱石と正岡子規は親友だった”という背景でしょうか。これを知っているとクライマックスかなりグッとくるのではないかと。

以下、ネタバレを含んだ感想になります。ご注意ください。

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上演概要

作詞・作曲・脚本・演出

  • 演出:G2
  • 作曲/編曲:船山基紀(音楽座オリジナルP)
  • 脚本:横山由和(音楽座オリジナルP)
  • 音楽監督/編曲:YUHKI
  • 音楽監督補/声楽指導:林アキラ

過去の上演

  • 初演:1992年(音楽座)
  • 再演以降:1994年(音楽座)、2000年(音楽座)、2007年(音楽座ミュージカル/Rカンパニー)2011年(音楽座ミュージカル/Rカンパニー)

1994年再演時に「第一回読売演劇大賞優秀作品賞」「優秀女優賞」を受賞しています。

ちなみに、音楽座は1996年に一度解散し2004年に再結成されています。日本独自のミュージカル制作にこだわり続けた貴重な劇団。解散前の音楽座には現在第一線で活躍されている実力派役者の濱田めぐみさん吉野圭吾さん畠中洋さん土居裕子さんらが在籍していました。改めてすごい劇団だと思います。

上演時間

  • 第一幕:75分(1時間15分)
  • 休憩:25分
  • 第二幕:80分(1時間20分)
  • 合計:約180分(3時間)※通常カーテンコール込み

公式あらすじ

1906 年、39 歳の夏目漱石は教師を辞め、小説家として独立したいと願っていたが、家族を養う安定した生活のためにふんぎりがつかず、鬱々と日々を暮らしている。
妻の鏡子や幼い娘にイライラをぶつける毎日。妻の鏡子は漱石の癇癪をものともせず、明るく日々を送っているかのように見えたが、実際は心通じ合えぬ夫に言い知れぬ寂しさを深めていた。

ある日漱石は、訪ねてきた高浜虚子に新しい小説のプランを話す。タイトルは「坊っちゃん」。

江戸っ子で曲がったことが大嫌いな坊っちゃんは心に闇を抱えた漱石とは正反対のキャラクターだったが、漱石はいつしか坊っちゃんに自らを、結核で亡くなった親友の正岡子規を山嵐に重ね、自分では叶えられなかった冒険物語に筆と心を躍らせ、執筆に没頭する。

やがて漱石は登場人物たちに周囲の人間を重ね自らの闇に向き合い、時に飲み込まれそうになる漱石の筆は坊っちゃんに教え子の反抗や学校組織による理不尽な人事といった数々の試練を与えるが、坊っちゃんと山嵐はそれらを必死に乗り越えながら漱石を励まし続けるのだった。

なぜ生きるのか。苦しみ続ける漱石は、果たして「坊っちゃん」を書き上げることができるのか―。

公式HPより抜粋>

公演スケジュール

  • 東京公演(明治座)
    公演期間:2026年5月1日(金)〜5月31日(日)
  • 北海道公演(札幌文化芸術劇場 hitaru)
    公演期間:2026年6月7日(日)〜6月14日(日)
  • 大阪公演(SkyシアターMBS)
    公演期間:2026年6月22日(月)〜6月28日(日)
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キャスト(配役)

  • 夏目漱石: 井上芳雄
  • 坊っちゃん:三浦宏規
  • 山嵐/正岡子規/サンチョ・パンサ:小林唯
  • 登世/雪江/マドンナ/女学生: 彩みちる
  • 赤シャツ:松尾貴史
  • 清:春風ひとみ
  • 鏡子:土居裕子
  • 少年:鈴木弥人
  • 筆子:内夢華(25日)植木紗菜(28日)

<アンサンブル>

  • 校長/父:林アキラ
  • 野だいこ/宿屋:山野靖博
  • 高浜虚子/学生:大音智海
  • うらなり/蕎麦屋:小原悠輝
  • 女中/生徒:小熊綸
  • ドン・キホーテ/兄:今村洋一
  • 萩野夫人/芸者:藤咲みどり
  • 小鈴/事務方:三浦優水香
  • 船頭/駅員:長谷川暢

伊藤かの子管谷孝介中野太一般若愛実山根海音蘆川晶祥

<スウィング>

早川一矢

観劇感想/キャスト感想

本編感想

ここ最近チケット代値上がりが実生活にも響いてきたため積極的にチケット取りに参戦しに行かなくなりましたが(汗)、この作品は前にも触れたとおり音楽座時代の映像を見てとても感動したのでどうしても見に行きたくて確保させていただきました。本来は1回限りの予定だったのですが、席運がちょっと悪くて(汗)…もう一度しっかり見たいと思いリピーターチケットでプラス購入してしまいました(←特典も欲しかったしw)。

メインキャスト各2種類のなかから1枚だけ舞台写真選べて、私は唯くんの山嵐をゲット!1度行って2度美味しい体験してしまったw。

改めて、映像ではなく初めて生の『アイ・ラブ・坊っちゃん』を見て…本当にいい作品だったなぁと実感。夏目漱石が小説『坊っちゃん』を書いた11日間を描いて、漱石の日常と小説「坊っちゃん」の世界がうまく絡み合い同時に話が進んでいくスタイルを取っています。時折小説の人物が現実世界の人物と折り重なっていく展開が出てきますが、それは漱石が潜在意識の中で当て書きしているという説得感もあったりして混同することもありませんでした。
「坊っちゃん」という作品の中で躍動するキャラクターたちに漱石自身が現実世界で為せなかった”理想”を託したようにも感じられたりして、この物語は結局彼の心の旅の物語でもあるのではないかなと。

1990年代にこれだけの爽快かつ繊細な作品を世に出した音楽座はやはりすごい劇団だと思います。

何より、この作品を見終わった後はなんだか無性に夏目漱石の「坊っちゃん」を読んでみたくなりますよ!学生時代の頃は教科書に載っていたりしてあまり乗り気じゃないまま読んだ記憶がありますがw、あの時代にこのミュージカルを見ていれば、もっと楽しく読めたのになぁと思わずにはいられませんでした。

G2さん演出は久しぶりに見たのですが、見せ方が巧いですよね。ストーリーの中で回り舞台をうまく使うやり方とかはG2さんらしいなと思ったり。役者さんたちも伸び伸びと躍動していて、作品の勢いと爽やかで熱い風を肌で感じました。
ただ劇場の幅が横に長かったので端っこの席からだとセットの裏側しか見えなくなる…みたいな弊害もちょいちょいあったかも(苦笑)。そういった意味ではもうひとサイズ小さい劇場のほうがこの作品はしっくり来たのかもしれません。

楽曲数はけっこう多くて、リプライズも含め全部で30曲以上あったかと思います。個人的に大好きなのは、坊ちゃん登場シーンの♪アイ・アム・ア・坊っちゃん♪。映像で見たときからすごく頭に残っていて、今回生で聞けたのがとてもうれしくてめっちゃテンション上がりました!!アレンジは当時よりも爽やか路線となった印象でしたが、楽曲の力強さと爽やかさはそのままに。見ていてホントワクワクしたし、今でも頭の中を「ワッツ・ユア・ネーム~~」の旋律が頭を巡っていたりしますw。
ちなみにこのシーンの一番最後のセリフ「まだない!」の演出、音楽座の頃とG2さん版ではけっこう印象が変わりましたね。映像で見たときは「あ、そういえば・・・」みたいなトボけた面白みがあったけど、2026年版は開き直ってドヤ顔って感じwww。どちらも好きです。

他にも個人的に好きなナンバーがたくさん散りばめられているこの作品。ポップスあり、バラードあり、どれも本当に聴き心地が良いしドラマに惹きこまれる名曲揃い。印象的なシーンと楽曲をいくつか挙げてみます。

♪序曲♪

『アイ・ラブ・坊っちゃん』に登場するキャラクター全員が、夏目漱石を執筆の場へと導きその世界に運び置くといった演出が斬新で面白かったです。ここで登場する唯くんはなぜか「山嵐」ではなくて「サンチョ」姿だったのが笑ったww。初登場がそのキャラなんだと(笑)。

このあと漱石が妻である鏡子の頭を見て衝撃の一言を告げるわけですが、のっけからそのセリフ!?と初めて見た人はちょっと驚くかもしれませんね(苦笑)。オリジナルもそこから始まるのですが、冒頭であれはある意味すごいなと。現代で実際にあんなこと突然言われたら●●ハラと言われかねない(汗)。
でも、鏡子さんのメンタルはもう長年の彼との結婚生活で頑丈になってるのでサラリとかわしてくるのが面白い。漱石はけっこうズケズケ鏡子にツッコミ入れて文句垂れてるのですが、傷つきはするものの引きずらない。その強さが痛快で”鏡子さん、好き!!”ってなりますね。

♪しあわせの日々♪

坊ちゃんと清による温かくもじんわりする名曲。坊ちゃんに全信頼を寄せる想いの強さに胸が熱くなります。漱石は”清”というキャラクターに自分が理想とする女性像を載せて描いている節があるわけですが(悲恋に終わった登勢への恋心)、物語が進んでいくにつれて違う対象が見えてくるドラマも見どころの一つだったりします。

♪TAKE IT EASY♪

坊ちゃんが松山の学校の先生として赴任し、同僚の数学教師、通称”山嵐”に案内されるまま町に繰り出すシーンで流れるナンバー。坊ちゃんは最初山嵐を面倒な人物として見ていますが、豪快で裏表がない彼と街を歩くうちに楽しくなってきちゃってw、いつの間にかいいコンビみたいになってるのが楽しい。

それにしても、「坊っちゃん」に登場する先生たちは漫画的なキャラの人ばかりで本当にクセ強いんですよねww。だけどみんな生き生きしてる。

♪通じない心♪

執筆中の漱石のイライラに屈することなくマイペースに接していく妻の鏡子さんが面白い。深夜のお蕎麦騒動とかは何度見ても笑ってしまいます(天ぷら乗せちゃったとかねww)。
二人はお互いに分かり合えないともどかしい気持ちを歌うのですが、ちょっとコミカルでギスギスしないのが良い。なんやかんや文句があっても「わかり合いたい」という本音がどこかで透けて見えてくる。特に漱石。このあたりの匙加減が実に面白かった。

♪天ぷら先生♪

学校の授業に臨もうとする坊ちゃん先生ですが、生徒たちから山嵐と町に繰り出したことをネタにされて馬鹿にされてしまう。全く先生として見られてなくて”天ぷら先生”と馬鹿にされるんですが(町で蕎麦に天ぷら乗せて食べてたことを揶揄される。これは漱石の夜中の蕎麦事件が影響したと思われますなww)、坊ちゃんは全く負けてなくて。この時のガーーーっと生徒たちにイキリ立ってる坊ちゃんがめっちゃ可愛かった。

このナンバーも独特のリズムがあってけっこう頭に残ると思います。

このシーンを書き終わった後に漱石は眠りにつこうとします。それと同時に”坊っちゃん”も小説の世界で床に就く。すると二人は布団の中の違和感で飛び起きる。坊ちゃんの布団の中には”バッタ(実はイナゴ)”が、漱石の布団の中には”万年筆(漱石はバッタだと思い込んでる)”が。
坊ちゃんは生徒たちを呼び出し悪戯に対して怒り心頭でしたが、漱石は鏡子と娘の筆子を叩き起こし癇癪をぶつけてしまいます。
このシーン、音楽座時代の映像を見ると漱石が筆子を平手打ちしながら怒りをぶつけているので(この当時は成人した役者さんが筆子を演じてた)どうするのかとちょっと気になってはいました、コンプラ的に(汗)。で、結果的には上手い落としどころを作ったなといった感じ。さすがにあの当時と同じ演出はできないだろうなと。今回筆子は子役さんが演じてますしね。

♪水底の歌(群読)♪

鏡子のふとした一言(本人は全く悪気なし)によって漱石が心の闇に迷い込んでしまうシーンがあります。神経質で臆病で繊細な心の持ち主の夏目漱石。ある一つの事件を思い出したことがきっかけでどんどん自分を追い込んで、自ら生み出した悪意に飲み込まれて溺れる寸前まで行ってしまう。
そんな彼を無我夢中で救い出したのは・・・。ここの展開がめっちゃ胸アツで大好きでした。

そしてそこからさらに重要人物が漱石の前に現れる(♪負けない心♪)。漱石が「坊っちゃん」を執筆する物語の中で自然と”山嵐”に重ねて書いた人物、正岡子規。野球が大好きだった親友。朦朧とする意識の中で彼に背中を押された漱石が再び執筆活動へ向き合っていく姿がとても感動的でした。

♪何があっても(鏡子・女中)♪

イライラが止まらず癇癪を爆発させてしまう漱石は鏡子に辛く当たり散らしながら仕事へ出かける。女中は鏡子の気持ちを慮り心配しますが、鏡子は「それでも私はあの人の傍にいたい」と深い漱石への想いを歌う。傍から見れば普通の人だったら”離縁”を考えてもおかしくない関係だとも思えますが、鏡子さんは腹が立っても泣きたくなっても「漱石の傍にいたい」という気持ちだけは揺るがないんですよね。その想いの深さに胸打たれるバラードナンバーでもあります。

高浜虚子と話をしたことがヒントとなり再び創作意欲に目覚めていく漱石。「坊っちゃん」のなかで赤シャツと野だいこが坊ちゃんを連れ出しボートに乗るシーンを書き上げていく。この時の船頭さんの動きが最高に面白いので必見(笑)。

その後も順調に筆が進んでいくものの、途中で鏡子が用事を言いにやってきてたびたび中断。このシーンは漱石が執筆している現実世界と同時進行で「坊っちゃん」のワンシーンが展開されているので度々リンクしてくるのが面白い。筆が止まるたびに「坊っちゃん」のシーンがストップしちゃって、しまいにはイライラ爆発の漱石に紙ぐしゃぐしゃにされちゃって皆が・・・みたいな漫画ちっく演出も(音楽座時代にも同じシーンあります)。
ここは本当にコメディで、見ているこちらも思わず吹き出してしまうほど面白かった。

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やがて物語の中に”マドンナ”が登場しさらにストーリーが動いていきます。

マドンナはもともとは教師仲間の”うらなり”の許嫁でしたが、様々な悲劇が重なり赤シャツに横取りされそうになっているという展開がある。うらなりは気弱で思っていることを口に出せないウジウジしたキャラなのですが、どこか愛らしさがあって。それだけに赤シャツの姑息さが際立ち、見てるほうは「アイツめ~~」となってしまうww。このあたりも本当に漫画っぽくて面白い。
この作品を見ていると、小説「坊っちゃん」ってこんな楽しかったっけ!?と思わされてしまいますw。

この執筆シーンと同時進行で、マドンナにそっくりな漱石の家に姪の雪江が訪ねてくる(漱石が思わず小説の世界の”マドンナ”と重ねてオドオドしてしまうのが可愛いw)。雪江は自らの結婚について悩んでいるわけで、小説はそれをネタにしたのかなと想像できます(劇中のフィクションではありますが、構成的にとても良くできた流れだと思う)。

♪坊っちゃんへの手紙♪

マドンナ騒動が始まったと同時に坊ちゃんのもとに清から長文の手紙が届く。それに少し苦笑いしながらも、遠くからずっと自分のことを心配し気遣い焦がれてくれる清の想いに触れて心を熱くする坊ちゃんにグッときました。あんな一途な手紙読んだら、清のもとに帰りたくなっちゃうよなぁ。

♪風を見て♪

その頃、マドンナの在り方について考えを巡らせていた漱石(その直前のマドンナとのやり取りはめっちゃ笑えますww)。それと同時に坊ちゃんも物思いにふける。この二人の感情が”歌”としてリンクするシーンはとても感動的ですし旋律も美しい。
漱石は「明日が見えない」と歌うけど坊ちゃんは「明日は見えるさ」と真逆のことを歌う。いつの間にか漱石は劇中の主人公に自らを投影させていったのかなとも感じます。現実世界で叶わないことを小説世界の”坊ちゃん”に託すといったような心持だったのかな、なんて。

♪アイ・ラブ・坊っちゃん♪

心の迷路に迷い込んだ漱石の耳に、あの世にいるはずの登勢の声が聞こえてくる。もっと自由に生きてほしいという彼女の声に包まれ、少しずつ安らぎを覚えていく。そしてそこにはいつのまにか正岡子規の姿もあった。漱石は心の中の大切な存在をよりどころにして再び前を向こうとします。彼が描き出した「坊っちゃん」の世界のキャラクターたちにも見守られ、「冒険を続けるぞ」という明るい子規の言葉にも背中を押され…。
このシーンは音楽の壮大さもあって何度見ても心がジーンと熱くなります(涙)。タイトルロールでもあり名曲!!

一度は仲たがいして険悪な関係だった坊ちゃんと山嵐が、うらなりの件で意気投合し再びコンビを組んでノリノリに歌うシーンは躍動感にあふれていて楽しいです(♪君は!♪)。

赤シャツたちの策略(マドンナから遠ざけようとした)によって、うらなりは遠くの学校に転任させられることになってしまう。山嵐が「こんなところを脱出できるなんて君は幸運だ」と豪快に祝辞を贈るシーンはなんだかスカッとします。この宴会の席で、赤シャツの贔屓の存在でもある芸者の小鈴が現れるのですが、このシーンで披露される三味線と小唄が実にお見事(♪ちゃんちき♪)!!芸者役の皆さん、素晴らしかった。

♪しあわせの時♪

「坊っちゃん」の宴会シーンを書いた漱石は、木曜会という宴会に参加して酔いつぶれてしまいます。鏡子が母親のように漱石に掛け物をしたとき、彼女は思いがけない言葉を聞く。酔いつぶれて意識が混濁した中での言葉ではありましたが、だからこそそこに真実味があって…。このシーンはとてもグッときます。
鏡子は長年モヤモヤ抱えてきた不安が一気にあの言葉で吹き飛んだかのように、漱石への尽きせぬ想いを歌う。凛としながらも夫への深い愛情がこもっていて泣けました。

「坊っちゃん」では物語が佳境に。赤シャツや野だいこの計略にハマった坊ちゃんと山嵐は警察のお世話になる羽目となり、学校での立場が危うくなる。生徒たちとの絆がようやく結ばれてきた坊ちゃんは、「やめないで」と口々に訴える彼らに何も言葉が出ない(♪坊ちゃん先生♪)。

このシーンもグッとくるのですが、個人的にはそこに至るまでのもう一つ坊ちゃんと生徒たちとの和解に結び付くエピソードが欲しかったなとも思います。

結局、坊ちゃんは離職を免れたものの山嵐は辞表提出を迫られ学校を去る決断を取らざるを得なくなる。忸怩たる思いの坊ちゃんでしたが、案外サバサバして辞表を提出した山嵐に救われる。それどころか彼はそのすぐ後に赤シャツへの復讐のため坊ちゃんを巻き込んである計画を立てます。そんな潔い山嵐はカッコいい。

♪風を見て♪

夜な夜な赤シャツの不利な証拠をつかむため夜の町を張り込みする山嵐と坊ちゃん。そのさなか、山嵐は初めて坊ちゃんに自らの過去を打ち明けました。このエピソードを見て気づかされるのは、漱石が山嵐の中に親友だった”正岡子規”の姿を投影させているということです。漱石の子規に対する感情が筆に乗って表れているようでウルッとしてしまった(涙)。
教師を辞めた後の身の振り方について語る山嵐と想いを重ねるようにして歌う坊ちゃん、そして執筆者の夏目漱石。三重唱が本当に涙が出るほど美しかった。

やがて二人は赤シャツの決定的な弱点の現場を押さえ、野だいこも巻き込んだ大乱闘へと発展。
しかし漱石はその場面を書きながら自らの罪悪感に雁字搦めとなってしまう。「投げ飛ばされなければならないのは、僕かもしれない」と呆然とする漱石が哀しい…。この後の山嵐の行動がまた鮮烈です。

「坊っちゃん」の世界観に囚われた漱石はそのなかで山嵐の中に親友の姿を見る。漱石が彼の前で本音を打ち明けるシーンは胸が震えた(涙)。おそらく、天に旅立った親友に一度も言えなかった言葉だったのではないだろうか。
それに対する親友・正岡子規の言葉にもまた涙涙…!!彼はきっと漱石が自分に感じていた複雑な心境をずっと知っていたのかもしれない。それを受け止めたうえでも”親友”であり続けた子規の懐の深さみたいなものも見えてきて、思わずボロ泣きしてしまった…。

やがて、「坊っちゃん」の世界のキャラクターたちはそれぞれの場所へと帰っていく。坊ちゃんもまた松山の学校を去り新たな道へと進み始める。そんななか、漱石は「私はどこへ帰ればいいのか」と途方に暮れてしまう。

「坊っちゃん」のラストシーンを執筆しながら、漱石はある一つの考えにたどり着く。その時、妻の鏡子が百合の花を生けたと声をかける。漱石は初めて穏やかな笑顔で「きれいだ」と告げるんですよね。それは同時に、彼が本当の自分の居場所を見つけた瞬間でもあってとても感動的。

♪アイ・ラブ・坊っちゃん(リプライズ)♪

ようやく漱石は自分にとって一番大切な存在に気が付き、妻と共に同じ方向を向いて歌を重ねていきます。このシーンを見ると、漱石が「坊っちゃん」のなかで清に託した存在が浮かび上がってくる気がするのです。実のところ、この小説は漱石が妻にあてたラブレターでもあったのではないだろうかと。

このリプライズナンバーは東宝版から新たに加えられた1曲だそうですが、漱石と鏡子の関係がより深く感じられてとても良かったと思います。そして、彼の大切な存在は漱石の中に確かに息づいているし彼を勇気づけ続けたんだろうなと。

ラストシーンは、令和の時代ならではの演出でした。

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主なキャスト別感想

夏目漱石: 井上芳雄くん

この作品では漱石が歌うシーンは数曲のみ(メインも1曲くらい)ですが、緩急つけたお芝居にめちゃめちゃ惹きこまれました。映像で見た近藤正臣さんの漱石の印象がまだ残っていたので、芳雄くんはまだ若いかなぁなんて思ったりもしていたのですが、これはこれで全然あり。新しい夏目漱石に出会えた。神経質で癇癪持ちなんだけど、芳雄くんならではのちょっとコミカルで可愛らしい側面(ツッコミが冴えてるしねww)が役柄の中に反映されてて惹きこまれますし、感情移入がすごくしやすかった。
このところストプレでも頑張っている芳雄くんだからこそ、歌の少ない役でも見事に見る人の心を掴んだお芝居だったなと心の中で大拍手でしたよ。

坊っちゃん:三浦宏規くん

映像で見た音楽座版の畠中洋さんによる坊ちゃんがすごい小説のイメージと合致していたので、それとはタイプが違う三浦くんはどう見えるのか楽しみにしていました。東宝版の三浦坊ちゃん、全然あり!!もう全編通してキラッキラ眩しい爽やかさ満載で最後まで魅了されっぱなしでした。熱血っぷりは畠中さんのほうが濃かったけど、東宝版は三浦くんの真っすぐで豪快な明るさがハマりまくってたと思います。
それに、ダンスシーンが見応え充分!!特に登場シーンは要注目です。下駄をはいてのあのハイジャンプとピタッと決まる決めポーズ、素晴らしい!!!元バレエダンサーですからね。体幹がしっかりしていてどんな動きも神経が行き届いていて最高でした。

山嵐/正岡子規/サンチョ・パンサ:小林唯くん

この作品の中で大きなキーマンの一人でもある山嵐(正岡子規)を演じた唯くん、やっぱり歌もお芝居も巧いです。凛としてどこまでも突き抜けるようなまっすぐな歌声には、山嵐や子規の坊ちゃん(漱石)への感情が満ち溢れていた。セリフの一つ一つの説得力も半端ないです。ことあるごとに私の心に刺さりまくってきた。見る人の心にしっかりと的確に届くお芝居が唯くん本当に素晴らしいと思う。特に子規が漱石に投げかける言葉に何度泣かされたか…。
ダンスもキレキレで見ていてワクワクします。ダンス巧者の三浦くんと一緒でも全く違和感ないの、本当にすごいと思う。

”サンチョ”も可愛くて最高だったよ!!

今回の舞台を見て、改めて唯くんの今後の大きな可能性を感じとても嬉しかったです。まだまだ伸びしろたくさんあるし、たくさんの舞台に呼ばれる役者さんになると思う。

登世/雪江/マドンナ/女学生: 彩みちるさん

彩さんは宝塚を卒業されたばかりということですが、とてもきれいな方でよく通る声もとても印象的でした。複数の役柄を演じ分けていらっしゃいましたが、やはりマドンナが最高でしたね。特に小説の中で初めて”セリフ”をしゃべったときのギャップシーンは最高に面白かった(笑)。

赤シャツ:松尾貴史さん

赤シャツは「坊っちゃん」に登場する中では”悪役”に位置する人物ですが、松尾さんが演じられると単なる悪ではなくて、どことなく可笑し味を漂わせたちょっと憎めないキャラクターとして見えてきたのがとても面白かったです。坊ちゃんたちの壁になる存在ではあるんだけど、柔らかさもあったりコミカルさもにじませたりと、なんだか見ていて飽きない。このあたりの匙加減のお芝居がとても魅力的でさすがだなと思いました。

清:春風ひとみさん

まず驚いたのがメイク!春風さんってこんなにお年を召した女優さんだっけ!?と最初見たとき衝撃が走りました(汗)。それくらい”清”というキャラクターが激ハマリしてましたねぇ。登場している時間は多くないのですが(というか、数えるほどしかない)すごく印象に残る。坊ちゃんに向けた無償の愛、優しく温かいまなざしに何度も心を掴まれました。特に2幕最後の清登場シーンはめっちゃ泣けます(涙)。

鏡子:土居裕子さん

土居さんの何がすごいって…、音楽座で初演された時と同じ”鏡子”役を違和感なく演じられることですよ。1995年に放送された映像の当時から比べれば少しお年を召した感は否めませんでしたが、それ以上に「漱石の妻」としての佇まいが本当に素晴らしすぎてねぇ。歌声も全く衰えず時にコミカルに、時に力強く、時に深い愛情をこめて…どこを取っても”鏡子”としてそこにあり続ける存在感はさすがです。
芳雄くんとは年齢がかなり離れていますが、劇中ではそれを感じさせないパワフルさで。音楽座の映像の時の近藤さん演じる漱石はとにかく神経質でピリピリしていたので、どちらかといえば少し引いたなかで愛情を滲ませた感じでした。が、今回の芳雄くん演じる漱石は神経質なんだけどどこかコミカルで隙のある雰囲気だったからかあの当時よりも強気に出るキャラクター像といった印象が強くて面白かったです。

土居さん、春風さんよりも年が上だそうで…信じられない!!役者って本当にすごい。

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アンサンブルの皆さんもそれぞれけっこう大きな役が与えられていて、それぞれに見せ場があったのがとても良かったです。

林アキラさんはここ最近裏方が多かったですが(今回もスタッフとしても名を連ねてます)久しぶりにお元気そうな姿が見れて嬉しかった。

山野くんの野だいこは、まるで「ドラえもん」でいうところのスネ夫のような印象で(笑)。徹底した赤シャツの腰ぎんちゃくっぷりが笑えました。メインでもいいんじゃないかな。

大音くんの高浜虚子はニヒルな笑顔がカッコいい。表情に自信がみなぎっている感じで存在感もありました。ちょいちょい漱石に”きっかけ”を与える役柄を見事熱演。

個人的に、小原くん演じるうらなりが、めっちゃハマり役だと思って終始釘付けでした。しょぼんとした姿も可愛いし、言いたいことを言いかけても結局言えない意気地のなさも愛らしかった。

小鈴を演じた三浦さんの堂々とした三味線っぷりが最高にかっこよかったですね!

サバサバとした女中さんを演じた小熊さんの姐さんっぽさにも惚れました。

他にキャストの皆さんも見応えたっぷりで素晴らしかったです。レミゼでリトコゼを演じてた夢華ちゃんはずいぶん大人っぽくなっていてびっくりしました。今後が楽しみです。

ちなみに、1995年ころにNHKで放送された時の『アイ・ラブ・坊っちゃん』メインキャストもここに挙げておきます。

夏目漱石:近藤正臣、夏目鏡子/登世:土居裕子、坊っちゃん:畠中洋、山嵐/正岡子規:清水博司、清:福島桂子、高浜虚子:菊池正之、校長/父:徳川龍峰、赤シャツ/兄:新木啓介、野だいこ:飯山弘章、マドンナ/雪江:渋谷玲子、萩野夫人:小安展子、小使い:神保幸由、うらなり:吉野圭吾

当時、畠中洋さんは坊ちゃん役と夏目漱石役のWキャストだったかと思います。映像で見た坊ちゃん役がドンピシャ激ハマりしてて最高すぎたのですが、漱石役もきっと素晴らしかったんだろうなと思います。ちなみに、清を演じた福島桂子さんは畠中さんの奥様ですね。息子さんの佑くんは現在声優として最前線で活躍されています。
個人的にもう一人胸アツなのは吉野圭吾さんのうらなり!オドオドした姿が可愛らしいんですが、倒れるシーンはすごくきれいな形でアクションされててさすがだなぁと思ってしまう。

それから、アンサンブル中に田中廣臣さんもいらっしゃったんですよね…。音楽座から劇団四季へ行かれてメインとして活躍され私も大好きだった役者さんでしたが、2018年に若くして世を去られてしまいました(涙)。

音楽座の初期は鏡子と登勢を土居さんが演じられてましたが、その後違う役者が演じるようになったようですね。あと違いとしては、「猫」キャラが出てこなくなったことかな。これは夏目漱石の「吾輩は猫である」を意識してのものだったのですが、今回は漱石が野球少年に「吾輩は猫を知っているか?」と尋ねるシーンのみでした(知らないと答えられて逆切れしてたの笑ったww)。

後述

カーテンコールは5回くらいあったかな。28日は客席の熱気もかなり上がっていてキャストさんたちのテンションも高かったです(芳雄くんが何度も「フゥーー!!」ってシャウトしてたw)。

東京の後、いくつかの都市をツアーする今公演。温かくておかしくて最後ホロッとする素敵な作品なので、多くの人に愛されてほしいなと思います。無事完走できますように。

また近い将来再演で会える日を楽しみに。

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