主なキャスト別感想
花總まりさん(マリー・アントワネット)
花總さんはもう、生まれながらの「王妃様」的な気品が自然に備わっている感じでキラッキラしておりました。さらに王妃としての揺るぎないプライドも随所随所でしっかりと伝わってくる。「これは命令です!」のセリフが全く違和感なく聞こえるのがすごい。高貴な女性役がこんなにもハマりまくってしまう女優さんて殆どいないと思いますよ。威厳とオーラがハンパないです。
さらにすごいのは2幕後半で子供と引き離された時の嘆きのお芝居。まるで体が八つ裂きにされてしまうかのような悲痛な叫び声をあげていて、アントワネットの心の奥底からくる絶望感みたいなものが痛いほど伝わってきました。
かと思えばその後の「静」の芝居も素晴らしい。裁判で罵詈雑言を一身に浴びながらもあくまでも「王妃」としての威厳を保ち続けたその姿は誰よりも美しかった…。ホント、さすがの一言でした。
いくつになっても本当にお美しい…。私と同い年とは思えないほどの若さ!!花總さんの高貴な女性役はもうハマリっぷりがハンパないのですが、逆に庶民で普通の女性の役も見てみたいなぁと思いました。違う花總さんも見てみたいです。
昆夏美さん(マルグリット・アルノー)
昆ちゃんのマルグリットは腹の底から沸き起こる力強い歌声と、小さな体から目一杯の感情がほとばしる芝居がとても魅力的です。どん底の貧しい生活の中から必死に這い上がろうとするなか、贅沢三昧な生活をしているアントワネットに憎しみの感情を募らせていくマルグリットの激しさを大熱演していました。特に目力が本当にすごい!!あの眼力でグイグイと行かれたら、みんなそりゃついて行くわ!っていう説得力がありました。
そんなアントワネット憎しのパワーで突き進んでいたマルグリットが幽閉されるアントワネットと接しているうちに気持ちが揺らいでいくシーンはとても切なかった。憎しみのまま突き進みたいのに、同じ子守唄を知っていたアントワネットにどうしても心が動いてしまう皮肉。
そして裁判の中で罵声を浴びせられ続けるアントワネットを見てついに「彼女はただの母親なのよ」と悟った場面はとても印象的でした。その気持ちの動きをとても繊細に演じてて、最後にアントワネットに手を差し伸べるシーンに説得力があったと思います。
でもマルグリットに関して言えば、ラストシーンでのエベールに対する仕打ちはちょっと冷たすぎるなって思っちゃうんだよなぁw。アントワネット憎しの時にさんざん彼に迎合して協力しまくってましたからね。そりゃないぜって思っちゃう(笑)。
甲斐翔真くん(フェルセン伯爵)
甲斐くんは昨年『RENT』のロジャーで初めて見たのですが、ここ最近は大作への進出が続く期待の逸材です。一時期体調を崩した時にはとても心配したけど、またこうして元気な姿に会えて本当に良かった。
フェルセンはアントワネットが想いを寄せる恋人役なのでプレッシャーも大きかったと思いますが、実に真っ直ぐな好青年を熱演していたと思います。伯爵としての気品はまだまだなところはありましたが(その点では観れなかったけど万里生くんはピッタリだっただろうなと)、誠実で素直なお坊ちゃまといった雰囲気で好感が持てました。
アントワネットに対する愛情表現もとてもソフトで優しく温かい。その優しさゆえに外の世界を知っているフェルセンは彼女に考えを改めてもらおうとたびたび忠告するのですが、その必死さがもう健気でねぇ…。愛しているからこそ彼女の為を想って一所懸命説得にあたろうとする姿がなんだかとても泣けましたよ。しかもその想いがなかなか届かないところが切ない。
まだ20代前半とこれから大いに伸びしろのある甲斐くん。『RENT』の時よりも歌唱力も上がったように感じたし、素直でまっすぐなお芝居にも好感が持てます。今後も色々な役を経験していい俳優になってほしいです。ロミジュリも期待してるよ!
無事に大阪公演初日を迎えました。
ご来場くださった皆様、ありがとうございました☺️
僕の中では初の大阪、梅田芸術劇場での公演となりました✨
今日という日を迎えられて、とても嬉しいです。
残り5公演。悔いのないよう走り抜けます。次の公演は3/4(木)13:00〜です🇫🇷#マリーアントワネット#MA pic.twitter.com/h00b3UXjZk
— 甲斐翔真 (@kai_shouma) March 2, 2021
原田優一くん(ルイ16世)
前回公演で見たときよりもさらに温かみが増していた原田君のルイ。透き通るようで包み込むような歌声もとても魅力的で今回も癒されました。それに加えて、王としての威厳といったオーラも一段階アップしたように思います。ただの気弱なルイではなく、あくまでもフランス王ルイ16世としての誇りといった部分も芝居の中から感じ取ることが多くなりさらに魅力的な人物になっていました。
家族の前では本当に良き父親で子供たちに対する視線も実に温かい。幽閉されている時に歌われる♪もしも鍛冶屋なら♪は特に泣けます。禅さんのルイを見たときにウルウルっときた時のことを思い出しちゃったよ…。本当は鍛冶屋の職業に憧れていてそちらの道で生きていきたかったルイの心情が切々と歌われていてとても感動的でした。王という立場に自分は向いていないという想いをずっと抱えて生きてきたんだものなぁ。それでも一所懸命王であろうとした姿は胸を打ちました。それだけに連行され哀しい最期を遂げるシーンはとても辛かったです。
小野田龍之介くん(オルレアン公)
今回楽しみにしていたキャストの一人が小野田君のオルレアン。小野田君といえば抜群の歌唱力でどちらかというと正義側の若者を演じることが多かったのですが、今回は悪役的立場の役。いったいどんな雰囲気になるのか期待していました!
いや~~、めちゃめちゃ良かったですよ!少し線の細いイメージが以前はあったのですが、今回はそれもなく物語の核となる”悪”を実に堂々と演じていました。表情もすごく魅力的です。特に人の輪から離れた後に見せる片方の口角を上げて「ニヤリ」とする悪魔の笑みが最高にセクスィーーー!!!あの冷酷なニヤリ顔にやられる人も多いのでは(笑)。
そして言わずもがな、歌は最高でした。元々歌はすごい上手いなと思っていたのですが、今回はその実力がさらに倍行かされてる感じ。特に♪私こそがふさわしい♪や♪世論を支配しろ♪といったロックなソロナンバーは最高にカッコよかった!!聞いててゾクゾクさせられました。これは小野田君の新たなハマリ役ではないでしょうか。次も見てみたいです。
川口竜也さん(エベール)
もう一人楽しみにしていたのが川口さんのエベールです。川口さんといえばレミゼのジャベールが思い浮かぶしそのキャラも大好きなのですが、さらに心撃ち抜かれたのはノートルダムのフロロー役を見たときです。その後の川口さんの舞台も積極的に見ていこうと思っていたのですが、新型コロナのせいで予定していた公演がすべて中止に(汗)。今回ようやくお会いすることができて嬉しかった!
マルグリットに近づくべく登場した時から「あ!」と目が釘付けに(笑)。長髪ウェーブの髪型が予想以上にハマっていたのも驚きましたww。迫力の深みのある歌声も健在でカッコイイのですが、セリフのシーンでも言葉にすごい力があって、マルグリットがエベールのエセニュース作りに取り込まれて行ってしまうのも納得できてしまうほどでした。
最初はどん底の暮らしをしている人々に迎合して協力しているといった一面が見えていたエベールですが、周りが盛り上がってきてオルレアンの行動も活発になって来るとどんどん黒い感情が育っていくんですよね。マルグリットの言葉に耳を貸さない洗濯婦たちに金をばら撒いてる時の悪人顔なんかは特に印象的でした。
前半戦ではマルグリットとかなりイイ感じの関係にも見えたのでそのまま良好な関係になってほしいとまで思っちゃったんだけどw、後半はもう悪魔に魅入られたような暴走っぷりだったので最後に彼女にしてやられてしまうという…ね(汗)。でも色んな表情が見れてとても面白かった。
駒田一さん・彩吹真央さん(レオナール・ローズ)
駒田さんと彩吹さんのコンビは今回も息ピッタリ。見所はやはり前半の♪王妃は最先端♪のシーンですよね。二人がアントワネットのために次々と新しいドレスやカツラを紹介していくのですが、そのテンポが実にいい。
しかも、今では考えられないようなデザインwwが続々と出てくるので場面的にもすごく楽しめます。あの中だったら…船のついたカツラが斬新で好きかも。当時の貴族はあんな格好ばかりしてたのかと思うとホントすごいなぁと思ってしまう。ドレスもさりながら、カツラの重さなんか尋常じゃなかっただろうにw。
彩乃かなみさん(ランバル侯爵夫人)
ランバル夫人はアントワネットの唯一の友達と呼べる女性だったそうで、今回の舞台でも常にアントワネットの傍に仕えている存在です。彩乃さんはとても優しい微笑みを常に浮かべていて見ているだけでも癒されました。そんな彼女がいたからこそアントワネットは宮廷で息をすることができていたのかもしれないという説得力もあります。
そんな彼女が2幕後半で悲惨な運命をたどってしまうシーンは本当にショッキングでした…。あの時外に出なければ…、もしかしたら命永らえる可能性もあったかもしれないのにと心が痛むシーンです。彩乃さんの温かい優しい演技があったからこそ哀しい場面でした。
後述
大阪初日ということで、客席がスタンディングオベーションに包まれているなか花總さんから一言ご挨拶がありました。そのなかで
「東京公演を無事に完走できたうえで、皆で揃ってまた大阪公演の初日を迎えられたことが本当に嬉しくて」
と感無量の表情で語られていたのがとても印象的でした。東京公演の時にも感慨深いものは多かったと思いますが、さらにそこから大阪公演の初日を迎えることができるということはまた違った感動があったのだろうなと思い、見ているこちらも胸が熱くなりました。「毎公演魂込めてキャスト一同一生懸命演じます」と最後に語っていた言葉がとても力強かったです。
カーテンコールでは花總さんのほかのキャストも本当に感慨深そうな表情をされてましたね。特に川口さんは客席に向かって何度も手を合わせて胸いっぱいな表情をされててグッとくるものがありました。
新型コロナ禍のなか、こうして大阪公演まで来てくれたことは本当に感謝です!!どうか最後まで無事に大千穐楽をカンパニー全員で迎えられますように。
※2018年公演のDVD発売中
余談ですが…、今回大阪遠征するにあたって乗った新幹線が「ハローキティ新幹線」でした!こだま号で一日に博多ー新大阪間を1往復だけしているレアもの。ちょうどマチネの時間に合いそうだったので乗ってみました。コロナの影響もあってか、1両だけあるキティ一色の自由席はガラガラで写真撮り放題でしたw。
観劇前に癒されました~。6月まではほぼ毎日走っているようです。