ミュージカル『ミス・サイゴン』大阪公演 2022.09.10 マチネ

主なキャスト感想

東山義久くん(エンジニア役)

東山くんは最近はダンサーであると同時に俳優業にも力を入れてきているなという印象がありましたが、私の中ではやっぱり”初代トートダンサー”という記憶が鮮明に残っててダンスの人として見ることのほうが多かったんですよね。なので、彼がエンジニア役に決まったというときにはちょっと驚いてしまって。どんなエンジニア像になるのか想像できなくて逆にそれが大きな興味に繋がり今回のチケット確保の軸にしました。

東山エンジニアは登場したときからのように鋭く「生」への執着心に溢れギラギラした空気を纏っていました。ちょっとでも触れたらこちらが火傷するか怪我するかみたいな、容易には近づけないような危うさがある。柔らかい雰囲気は一切感じませんでしたね。
それから眼光の鋭さもすごく魅力的。エンジニアはアメリカ行きの夢を実現させるために「ドリームランド」を仕切っている時も店に来てるGIや従業員の女の子たちを利用して資金を増やすことに躍起になってるわけですが、東山くんは”目的のためなら手段を選ばず”的な野心に溢れた目をしてた。あんな他を圧倒するようなすごい表情を持ってるんだ、とちょっと見ていてゾクっとしてしまった。

一番グッとくるのは、キムに対する複雑な感情を抱く場面。エンジニアはキムの息子がアメリカ兵のクリスとの子供だと知ると「俺たちは兄妹だからな」と言って彼女たちを利用しアメリカ行きを目指します。最初は本当に手段としてしか考えてないんですよね。
ところが、バンコクでジョンと再会しクリスが来ていると知ったキムが喜びにあふれた姿を目の当たりにしたときにエンジニアの中でそれまでとは違った感情が生まれる。東山くんはこのシーンの時、キムのあまりにも真っ直ぐすぎる愛情に脅威を覚えるかのような表情をチラッと見せてたんです。あまり表には出していなかったけれど、明らかにあの瞬間に彼の気持ちにそれまでと違う変化が生まれたと感じました。その匙加減の芝居がとても繊細で良かったです。

そしてラストシーン、キムの最後の選択を目の当たりにして東山エンジニアは泣き崩れてた…。彼の中でキムは自分の野望に利用する存在ではなくなっていたのだと…あの姿を見て胸打たれ私も泣きました(涙)。自分でも知らないうちにキムやタムに対して身内のような情が湧いてしまったのではないかと感じたな。だから余計切なくてたまらなかったです。ずっとギラギラして人を蹴落とすようなキャラだった東山エンジニアが、最後の最後に人の感情に触れて泣き崩れたのは本当に胸震えるほど哀しかった(涙)。

そして東山君のエンジニアで一番楽しみにしていた♪アメリカンドリーム♪の場面。もう、予想していた以上でした!!ダンサーでもある東山君だから、絶対アメドリは素敵なはずだと確信はしていたんですが、もう本当にどこを切り取っても最高に素晴らしかったよ!!立ち姿の美しさ、ターンの正確さ、キレのあるダンス、挙げればキリがない。そのあまりのカッコよさに気が付いたらボロボロ涙があふれ落ちていたほどです。もしかしたら、これまでの中で一番美しいアメドリを見たかもしれない。
歌も芝居も本当に良かったし、東山エンジニアを選んでよかったと心底思いました。最後まで頑張って!!

屋比久知奈さん(キム役)

屋比久さんはこれまで「レミゼ」のエポニーヌなどで何度か舞台を見ていますが、正直あまり強烈に印象に残るということはなかったんですよね(ごめんなさい 汗)。でも、今回のキム役はとても感動的だった。なんというか、これまでとは違うアプローチのお芝居や存在感があってすごく新鮮でしたね。

全体的に見て、屋比久キムは良い意味でカリスマ性がないなと感じました。これまでは松たか子さんやソニンさんや、新妻さん、笹本さんなどどちらかというと力強さと激しさが同居したような強烈な輝きを放つキムを観てきましたが、屋比久さんはそことは一線を画してる。
ごく普通の素朴で心細そうな一人の少女が、ある日突然戦争に巻き込まれ運命を翻弄されていってしまうという印象。それ故、なおさらベトナム戦争の悲劇が浮き彫りになって胸に迫ってくるような感覚がありました。ただただ不安で、それでも何とか必死で自分を奮い立たせ生きる意味を見出そうとしてる様が伝わってきて、見ているこちらが思わず手を差し伸べてあげたくなるような女の子だった。

そんな彼女が戦争で傷つき心が疲弊していた心優しきクリスという人物に出会う。屋比久キムはおそらくこの先一人では生きていけないかもしれないという雰囲気を強く感じていたので、彼女がクリスに身を任せ縋った気持ちがこれまで見てきた以上にとてもリアルに思えたな。
そして、クリスの優しさに触れて愛情を感じることによって彼女自身も少しずつ強く成長しているように見える。屋比久さんはそんなキムの心の成長過程をとても繊細に丁寧に演じていました。

3年後、一人息子を抱えながらも必死に生きているキムの場面。屋比久キムは息子のタムのことをとても愛情深い慈愛の目で見つめていてグッとくるものがあったんですが、同時にその瞳の先にはクリスという存在が常にいるんだなというのもとてもリアルに伝わってきました。屋比久キムはクリスに対する想いがとても深くて強い。
身を裂かれるような辛い別れを経験したからこそ、彼女はタムの母親という感覚よりも”クリスのたった一人の女性”という感覚のほうが大きかったのかもしれないなぁ…とも。

結婚を迫るトゥイに対してはかなりギリギリまで柔らかく説得していた印象。私はトゥイに関しては感情移入することが多いので、屋比久さんの「お願いだからわかってほしい」と最後まで説得を試みようとするお芝居はとても好感が持てました。
個人的に、ですが、キムには最初からトゥイに対してあまり強く拒絶してほしくないっていうのがあるんですよね(汗)。そういう意味では屋比久さんはかなり私の理想とする姿に近かったので嬉しかった。

エレンと対峙した時の屋比久キムはめちゃめちゃ泣けます。彼女にとっての生きるの支えの最後の砦があの瞬間にすべて崩れ落ちてしまったわけで…、もう本当に息が止まってしまうのではないかと本気で心配になるレベルの表情をしてた。やっぱり屋比久キムはタムを通してずっとクリスの存在を追い続けていたんだとあの瞬間に悟ったし…。
それ故、ラストの彼女の”選択”も哀しすぎるけど腑に落ちるものはあるかなと。母親として大切な子供を置いていく決断をすることに関しては色々な意見があるかもしれません。でもそれは、平和な世の中に私たちが生きているからこその疑問でもあって。屋比久キムは最初から最後までクリスなしでは生きられない女の子だったんだなと今回すごく心に迫るものがありました。

屋比久さん、歌もお芝居も本当にキムにピッタリでとても素晴らしかった。一番リアルなキムの姿を見れたかもしれない。

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海宝直人くん(クリス役)

海宝くんは『ミス・サイゴン』では2008年にアンサンブルとして出演しているのを観て以来(その時のレポはこちら)。今回は満を持してのクリス役ということでチケットが取れるか心配だったんですけど(汗)無事に何とか確保し見ることができてよかったです。どちらかというと爽やかで芯の強い青年の役が多かった海宝くんが、戦争に翻弄されて揺れに揺れる人間臭いクリスをどう演じるのかとても興味があった。

まず最初のドリームランドの場面、ジョンに無理やり連れてこられた感はありましたが、無気力なわけではなくて戦場に身を置いている存在であるが故のギラギラした雰囲気でテンションが高かったのが興味深かったです。「ビール驕れよ!!」の歌い方とかめっちゃ荒ぶってたしw。のっけからワイルドな海宝くんはとても新鮮でした。

廻りの女の子とは明らかに違う雰囲気のキムがなぜか気になり、戸惑いながら彼女と一夜を過ごす場面。次の日の朝を迎えた時の海宝クリスはすごく大人っぽい哀愁が漂ってた。子役時代から知ってる役者さんなので、あまりにもその立ち姿が”大人の男性的”雰囲気だったことにちょっと驚いてしまった。もう”若手”の域からは脱したんだなとあの時ふと思えてなんだか嬉しくもありましたね(ストーリーと関係ない感想ですみませんw)。

クリスのソロ♪神よ、なぜ♪は彼の苦悩がひしひしと伝わる場面でもあるのですが、海宝くんの歌いっぷりが本当にドラマチックで鳥肌が立つほど感動しました。爽やかで聴き心地の良い美しい歌声の中に、クリスの心に抱えている深い闇のドラマがありったけ詰め込まれているようで…。あぁ、海宝くんのクリスを観れて良かったと心から思ったな。

キムから聞いた身の上話に衝撃を受けて一緒に暮らそうと提案する場面。あの話を聞いた時に海宝クリスの中でキムが自分と同じ孤独を纏った人なのかもしれないと共鳴したんだろうなと思いました。クラブに出るというキムに対して「ダメだ!」と止める時の表情が特に印象深い。キムがクリスに希望の光を見出していたように、クリスもキムに救いを感じたんだろうなということが手に取るように伝わってきました。
♪サン・アンド・ムーン♪の場面では二人はかなり密接しながら一気に愛を深めていくわけですが、海宝クリスは本当に凄く愛しそうに屋比久キムに接していて…なんだかそれ見ただけでもウルウルッときちゃったよ。暗く閉ざした心の傷がキムと触れ合う度にどんどん塞がっていって喜びにあふれていく表情がとても感動的です。

ジョンの演説を聞いた後にキムの消息を聞こうとする場面。エレンという新しい奥さんがいたものの、彼の心の中にはずっとキムの存在が引っ掛かって消えなかったことが伝わってきた。その生死の行方を知るのが怖いといった表情も見せてたな。それ故、キム生存の事実を知った時には泣き崩れそうになるくらい感情が溢れてた海宝クリス。その姿がとても痛々しかったです…。
自分の息子がいるという事実を聞いた時の「どうしよう」のフレーズ。クリスの凄い率直な気持ちを表す一言だけど、捉え方によっては見る者に反感を抱かせる難しい言葉でもあると思います。でも海宝くんは震えながら心の葛藤を滲ませてこのフレーズを歌ってた。そこにすごい人間臭さが垣間見えたような気がして、私は責める気持ちにはなれませんでした。こういう丁寧で繊細な表現が本当に素晴らしいと思う。

サイゴン陥落の場面。軍の混乱によってキムと離れ離れになってしまったクリスが泣きそうになりながら必死に歌う場面は涙が止まりませんでした(泣)。短い間だったけれどもキムと過ごした時間は彼の中では人生の中の特別で、何としても彼女と一緒にアメリカへ行くのだという切実な想いがこれでもかというほど胸に迫ってきて本当に切なかった…。
最後のヘリコプターに乗り込む寸前までキムの名前を呼び続けるクリス。海宝くん、体中の魂を全部放出するかのようなありったけの声で彼女の名前を叫び続けてて…もう、あまりにも悲痛すぎて思い出すだけでも涙が出ますよ(泣)。あの時の彼女を一緒に連れていくことができなかったという激しい罪悪感がずっとクリスの中で渦巻いて消えなかったんだろうなと思った。

キムと会ったというエレンにキムとの経緯を正直に語る場面は、本当に海宝くん、すごかったです。すごい、なんて言葉一つでは片づけられないほど…なんというか…、衝撃だったな。あれはもう、魂の悲鳴ですよ…。
撤退の混乱でキムをアメリカへ一緒に連れていくという約束を果たすことができなかった。その時の大きな後悔と深い心の傷。ずっとその気持ちに苦しみ続けていたクリスはエレンという存在に出会った時にそこに縋りたいという気持ちが湧いてきて止められなかったのかもしれない。苦しみから逃げたんですよね、きっと…。キムがクリス一筋に思い続け苦しんでいるなかで彼は苦しみから逃げて人生をリセットしようとしていた。

この流れを考えると、クリスってなんて酷い奴って感じるところもあるんだけど…、海宝くんのクリスを観たらそれだけでは片づけられないよなぁって思えて仕方なかった。狂ったように泣き叫びながらベトナムでの出来事を語る姿は涙無くしては見れなかったよ…。クリスの心の弱さがすごく人間的で、彼が経験したことの心の傷がいかに深く救いようのないものだったのかが見えたような気がしました。
もしもそれと同じ立場に立たされたら、果たして人は誰でも同じ人を想い続けることができるのだろうかとかいろんな事考えたかな。そう考えると、キムは本当に強い人だったんだとも思えるし。でも彼女はクリスという存在に自分の全てを託して生き残ってきたんだろうなとも…。とても複雑な心境になってしまった。

最後、キムの”選択”を目の当たりにする場面。彼女が顔を近づけていっても、海宝クリスはそこに積極的に唇を合わそうとしていなかったのがとても印象深かったです。彼にとってキムはとてもかけがえのない存在だけれども、あの瞬間は何が起こっているのか頭で理解することができずただ混乱していて彼女と向き合うことができなかったんだろうな…と。クリスのリアルな心の動揺が見て取れた気がしてなおさら泣けました(涙)。

海宝くん、一時期体調崩したというニュースを知った時には心配したけれど素晴らしい歌声とお芝居は健在どころかさらに進化していました。クリスを演じることで役者としてまた一つ大きな階段を上ったんだなと思えてとても嬉しかったです。

上野哲也くん(ジョン役)

上野君は前回公演の時にクリスで見ていたのですが、今回のジョン役を見てこちらの方がハマってるかもしれないなと思いました。力強い歌声と骨太で逞しい男性的な見た目がジョンにすごく合っていたなぁと。

ドリームランドの時のハイテンションっぷりがすごくて海宝クリスを翻弄しまくりw。戦争に身を置いていることで気持ちの高ぶりが普通じゃなくて、今その刹那を思い切り楽しんでやろうという気持ちも垣間見えた気がしました。
ジジにはとてもひどい仕打ちをするジョンですが、前回公演で見た理生くんに比べたら上野君のほうが扱いはちょっとソフトかなとも。クリスに対しては戦争中はまさに悪友って感じでしたね。

2幕に入って気持ちを入れ替えたジョンが登場する場面。♪ブイドイ♪は一言一言とても丁寧に歌っている印象でとても感動的でした。特に「こんな私でも」というフレーズのところに力を入れて歌っていて、あれを聞いた時にジョンが戦後に体験した出来事がサーッと浮かんできたような気がしました。
これまでその心変わりについてどうしても謎だとずっと思って来たんですけど、上野ジョンの歌を聞いて初めて「そうだったのか」と腑に落ちるものがあったのが個人的に大きな収穫でした。

エレンとクリスの夫婦に想いを寄せつつも、クリスを3年経っても強く思い続けているキムに会って複雑な気持ちが揺れ動くさまもすごく繊細に演じ歌っていたと思います。

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西川大貴くん(トゥイ役)

トゥイ役に関しては、私の中では狂ったように通い続けた泉見くんの印象が未だに強烈に残っているので、新しくキャスティングされた西川くんは果たしてどう見えるのか少し不安なところはありました。が、あの頃よりも今回のサイゴンはかなり物語の世界観が変わった部分も大きいこともあってか違和感なく見ることができて本当に良かったです。

西川トゥイ、ウェディングのシーンの最後に飛び込んできたときキムを見つけての「いた!!」というセリフは本当に彼女を心配して探し回っていたという気持ちがダダ洩れてたのが非常に印象的だった。あれが彼の本心の部分だったんだろうなと。彼がキムに対する本気の気持ちを出したのはあの時だけだったかもしれないと思うとなんだかちょっと切なくなってしまった。
クリスの姿を見た瞬間に西川トゥイはキムへの恋心よりも「国」に対する忠誠心が一気に上に行ってしまう感じ。もうゴリゴリの共産主義者に染まってしまっているんだなというのがひしひしと伝わってきてゾクっとした。最後捨て台詞を吐いて去っていく時もすごい冷たい目をしていた。

サイゴン陥落でエンジニアにキムを探しに行くよう命じる時も、表情をほとんど変えずに終始冷徹な雰囲気をキープしている感じだったのがとても印象深かったんですけど、その姿がなんだかある役者さんにめっちゃ似てるように見えて何度見かしてしまった(2階席からだったのでなおさら)。西川トゥイ、阿部サダヲさんに似てませんか!?ちょいちょい気になって「サダヲさん!?」って思っちゃったよw。

バラックで息を潜めながら生きていたキムに再会するシーン。この時も冷静な表情を殆ど崩していなかったのですが、国への忠誠心は誰よりも熱いのだなということは痛いほど伝わってきました。キム個人への愛情というよりも「国」を選んでほしいという想いのほうが強いように思えて仕方なかったです。西川トゥイのなかでは、”キムを愛すること=国を愛すること”なんだろうなと思った。
だけどキムはそういった政治的なことは全く頭になくて、ただただクリスに対する愛を貫こうとしてるわけで…完全に気持ちがすれ違ってる。どんなに熱心に説得してもキムの気持ちが動くことは絶対ないだろうなという未来が早い段階から見えてしまうのがなんだか哀しかったですね…。

キムがクリスとの子供・タムを呼ぶ場面。この瞬間に西川トゥイは初めてその表情に恐怖の感情を滲ませていました。彼にとってアメリカは憎き敵でしかないわけで、愛するキムがそのアメリカと情を交わし子供を産んだという事実に激しいショックを受けたことがリアルに伝わってきた。今回吐き気を覚えるリアクションをしていたのはちょっと驚きでしたね。そこまで拒絶反応があったのかと。
まだ神田くんを見ていないので彼がどんなリアクションをするのか分からないのですが、西川トゥイにとってタムという存在は吐き気がこみ上げてしまうほど”邪悪”な存在でしかなかったんだなというのがなんだか非常に衝撃的でした。

そしてトゥイの最期の場面。これまでずっと険しい表情で「国を選べ」とキムに迫り彼女に素直な愛情表現をしてこなかった彼が、死を悟った時に初めて自らの本心を行動に表す。あれは本当に泣けたーーー(涙)!!西川くんの芝居を観て、トゥイもまた戦争に翻弄された犠牲者の一人だったんだなってすごく思ったよ…。

西川くん、これまではダンサーのイメージがとても強かったんだけど歌声がすごく綺麗でめちゃめちゃ上手い!!お芝居もとても丁寧だったし何と言ってもやっぱり立ち姿は美しかった。もう一回見たらまた違う感想が出てくるのかもしれないと思ったので、今回限りになったのが残念に思ったほど(チケット代高くて 汗)。今後も西川くんにはどんどん歌う作品で活躍してほしいな。

知念里奈さん(エレン役)

2017年公演の時に観て以来2度目の知念さんエレン。前回見た時は「ちょっとキツめかなぁ」と思ったのですが、今回はあの時とはだいぶ印象が違っていてかなり柔らかい雰囲気になったなぁというのがとても印象的でした。歌声は力強いんだけど、クリスに対する愛情とかキムに対する複雑な心境とかとても繊細に演じられていたと思います。

海宝くんのクリスと並んで見ると知念さんのエレンはちょっと年上の姉さん女房的に見えますね。クリスは戦争のトラウマに苦しんでいることが多い人物なので、エレンは必死にそれを癒そうとする。「どんなことがあっても支え続ける」という強い信念をもって彼の苦しみを共有しようと寄り添う姿はとても感動的でした。年上ならではの包容力みたいなものがとても大きくて、知念さんと海宝くんのコンビはなんだかすごくしっくりくるなぁと思いながら見ました。

キムと対峙する場面はこれまでのサイゴンとはちょっと雰囲気が違ってて、今まで以上にキムの心情に寄り添おうとするエレンの姿を見た気がします。特に前回公演から加わった新曲ソロ♪メイビー♪がまたさらに変わった印象が強かったので、彼女の心情を想うと胸が痛んで仕方ありませんでした。知念エレンは自分のクリスを手放したくないという本音を必死に押し殺しながら「諦めてもいい」と歌っているようで…それがすごく哀しかったです。

青山郁代さん(ジジ役)

青山さんのジジはドリームランドでジョンに酷い仕打ちを受けた後に歌う♪わが心の夢♪のナンバーの歌いっぷりが本当に素晴らしかったです。少しハスキーな声質がよけいにジジの哀しみを浮き立たせているようで…。ジジは本役としての出番が序盤だけで終わってしまうのですが、青山さんはここでかなり強烈なインパクトを残されたと思います。

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後述

やっぱり『ミス・サイゴン』は何度も見たくなる作品。ハッピーエンドではないにもかかわらず、なぜか「もう一度見に行きたい」と思ってしまう。年々ブラッシュアップされて物語の印象も変化・進化していくのでやはり何度も行きたくなってしまいますね。

今季のサイゴンは大阪であと1回、違うキャストの日を選んで確保しています。次は一階席なので近くから見える景色が楽しみです。どうか無事に観ることができますように…(祈)。

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