主なキャスト感想
伊礼彼方くん(エンジニア役)
伊礼くんはキャスティングが決まったと知ったときから「絶対エンジニアにハマるに違いない」という確信めいたものがあるくらい期待が膨らんでいて、実際に舞台の上で演じる姿に会えるのをとても楽しみにしていました!ついにここまで来たんだね!何だかとても感慨深かったよ。
いやぁ・・・もう、想像していた以上だった!こんっなにも伊礼くんがエンジニア役にハマりまくるとは!!あれは芝居なのか!?と思ってしまうほど”エンジニア”という人物そのものにしか見えないことが何度もあった。大きな体格と、ハーフであることの強み、そしてキャラクターの濃さ。伊礼くんの持っている財産が全てエンジニアという役の中にこれでもかというほど生きてました。今後、市村さんの後を継ぐ”The エンジニア”が語られることがあるとすれば、伊礼くんが一番手に来るだろうなという確信すらもったほど。
伊礼エンジニアはのっけから「アメリカ」に対する執念をこれでもかと出してくる。でも、ドリームランドで働く女の子たちにも基本的にはきつく当たってるんだけど、時折ふとした柔らかさで接することもある。酷い働かせ方はしているんだけど、このエンジニアにだったらついていくしか無いと思わせる魅力がすごく溢れてた。ここの緩急つけた接し方が本当にとても自然で素晴らしかったです。
それからナイフの使い方がとてもワイルドながら繊細。体の一部になってるくらいに使いこなしてて、危ないんだけど思わず見とれてしまったw。
♪ドリームランド♪でのはっちゃけっぷりがまた凄かった!たぶん他のエンジニア役者さんよりも口数多いんじゃないかなww。でもそれがしつこく聞こえなくてちゃんと物語の中に自然に組み込まれてるように思えてしまうのがすごい。伊礼くんの巧みな話術がここのシーンですごく生きてるなって思った。言ってる内容はここにはとても書けないものばかりですけどね(特にお子様にはあまり聞かせたくないようなものだったりする 汗)。
♪生き延びたけりゃ♪はエンジニアの大きな見せ場のひとつですが、ここの歌いっぷりが本当に実に見事。アメリカへ行くという夢の為何が何でも生き延びてやるという執念と共に、伊礼くんが本来持っているエンターテイナーとしての魅力が随所に加味されていて、まるでオンステージショーを見ているかのような面白味がありました。特に敵の目をかいくぐってかつて経営していた「ドリームランド」の廃墟に転がり込むまでの流れが非常にスムーズで素晴らしかったです。
それから「なるぜ、アメリカ!」と叫んだところからのこのナンバーの一番の盛り上がりどころの歌いっぷりが本当にゾクゾクするほど感動して涙が出ちゃったよ!!劇場中を支配するかのような勢いと、フレーズの一つ一つにこれでもかというほど染み込んでいる”アメリカ”への夢。ボロボロの服を着てるはずの伊礼エンジニアがめちゃめちゃ輝いて見えたよ!こんなにも彼に人を魅了するパワーがあるとは、正直ちょっと驚きました。
ベトナムを脱出する手はずを整えるために最後出ていく時に歌う「ハイ、ホーチミン♪」の場面。ここは各エンジニア役者さんのアドリブに任せるようなシーンになっているのですが、伊礼くんは口笛で打ち上げ花火を上げる音を見事に再現してて面白かった!ホント彼は色々器用にこなすよね~w。
2幕のバンコクシーンでの登場。雑踏の後ろから出てくるんですが、伊礼くんガタイが大きいのでめっちゃ目を惹きますね。それに赤いスーツとグラサン姿があり得ないくらい似合ってたww!
ジョンがやって来たのを見つけた時の伊礼エンジニア、目がらんらんと輝いてたな。なんか理生くんと伊礼くんが並んでいるのを観るとちょっと”アタタミュージカル”思い出して胸アツになっちゃうww。
この場面はこれまでは歌で紡がれることが多かったけど、今回からはセリフ劇を前面に出しているのでよりドラマの動きも分かりやすくなっていると思います。
悲愴な気持ちで歩くキムと再会したエンジニアの場面もとても印象深い。二人のテンションの落差がこれまでの公演の中で一番色濃く見えてすごい複雑な気持ちになってしまいます。キムは自分の未来がもうないことを悟っているなかで、エンジニアはキムがクリスとうまく話を付けたことでアメリカへ行く道が開かれたと信じてテンションが爆上がりしている。この「陰と陽」のドラマが以前よりもさらに色濃く出るようになったなと思いました。
そしてビッグナンバーの♪アメリカンドリーム♪。もうホント、言葉が出ないくらい最高のステージだった。伊礼くんのエンターテイナーとしての力の凄さを目の当たりにできてとても幸せでした。一秒たりとも目が離せないドラマチックさがとにかく素晴らしい。
アメドリは最初のほうは何のセットも出てこなくて漆黒のなかでエンジニアがアメリカへの憧れを歌い、ライトだけが彼に当たっていくという演出。それなのに、私の目には伊礼エンジニアがその瞬間に思い描いていた世界観が鮮やかに蘇っていく様が次々と映し出されていった。これは本当に凄いことだなと。
それだけに余計、ボーイズやガールズが出てきたときの華やかさが際立っていて…気が付いたら感動しまくってボロ泣きしてしまってた。彼らとの掛け合いも息ばっちりで、さらに伊礼エンジニアが乗りに乗りまくり、キャデラックが出てきたときにテンション最高潮へ。思い出すだけでも胸躍り熱くなる素晴らしいアメドリでした!!
ラストシーン、キムが哀しい結末を迎えた後の伊礼エンジニア。あまりの衝撃に混乱しつつもアメリカへ行くという執念だけは捨てていないように見えました。ジョンに「俺のアメリカ行きはどうなるんだ!!」みたいに必死に追い縋っていて、それをジョンに拒絶された後ただただ無念の表情を浮かべながらガックリと膝を落としてた。どんなことがあっても最後の最後までアメリカへ渡るという夢を捨てきれなかったエンジニアの執念がとても哀しく見えて切なかったです…。
伊礼エンジニア、きっと公演を重ねれば重ねるほどどんどん魅力を増していくと思います。これは新しい彼の当たり役じゃないかな。歌だけでなく芝居の部分もとても良かったし、台本にはない余白の埋め方もドラマが生きていて本当に素晴らしかった。次に再演があった時にはまた是非会いに行きたいと思います。
高畑充希さん(キム役)
充希ちゃんのミュージカル舞台を見たのは約1年半前のミュージカル『ウェイトレス』以来。あのときの繊細でドラマチックな歌いっぷりがとても感動的だったんですよね。でもキムはそれとは全く違うアプローチをしなければいけない役ですから、果たして彼女がどのように演じるのかとても興味がありました。PRで出演したテレビ番組で歌う姿はちょっと迫力が薄いかなぁと思っていたので、実際大舞台の上だとどのくらい勢いが出るか…そのあたりはちょっとドキドキしながら見守る感じだった私です。
最初に舞台中央に現れるキムの場面。充希ちゃんの表情に軽く衝撃を受けました。あれは、”地獄を見てきた顔”そのものだった。あまりにも過酷すぎる現実を目の当たりにして感情が消えてしまった女の子って感じ…。その様子が本当に切なくて、観ているこちらの胸が苦しくなってしまった。やっぱり充希ちゃんは表現力がとても素晴らしい。
クリスとの関係について。ドリームランドで初めて出会った時は「親切な兵隊さん」という印象を抱くものの”好きになるかも”みたいな予感は感じませんでした。望まない仕事に就きながらも今その時を必死に生きるので精一杯といったような雰囲気だったかな。
さらにクリスと一夜を過ごした後に「一緒に暮らそう」と提案を受けた後も”恋愛”の感情にまでは辿り着いていないように見えたかも。それよりも、この人と一緒にいれば不幸な生活から逃げ出せるかもしれないといった希望にすがろうとする気持ちのほうが強いように感じたんですよね。
♪サン・アンド・ムーン♪の場面はこれまで二人の恋愛感情がグングン盛り上がっていくドラマチックさを感じていたのですが、充希ちゃんとサンウンくんの関係はそこからはちょっと一線を画したように思えて逆に新鮮だったかも。
♪ウェディング♪シーンのときの充希ちゃんキムはとても穏やかで優しい表情をしていて思わず涙が出そうになってしまった…。それまでずっと切羽詰まったような雰囲気が強かったから、クリスと出会ったことであの瞬間だけは幸せを感じることができたんだなと…。なんかそう思うだけで泣けちゃったんだよなぁ。
このあとトゥイが乱入してきて大騒ぎになるのですが、充希ちゃんはトゥイに対して強い言葉で拒絶しようとしながらも、心のどこかで「裏切ってしまってごめん」という謝罪の気持ちがあるように見えて切なかったです…。特に神田トゥイはキムへの恋心を前面に出しているのでよけい切ない二人に見えてしまった。
どちらかというと、今回の物語はキムとクリスの恋模様よりもキムとトゥイのすれ違う悲恋物語という印象が強かったかもしれない、私は。あくまでも個人の感想なのであしからず。
トゥイがタムに危害を加えようとする緊迫した場面。それまで充希キムは何度も縋るような眼差しでトゥイに「お願い、私の気持ちを理解して」と必死に訴えているように見えていたので余計切なく感じてしまったなぁ…。自分の命とも等しい存在のタムに命の危機が迫ったあの瞬間、彼女はそれを救うということだけに集中していた。様々な意識がどこかへ飛んだかのようなギリギリの感情表現が充希ちゃん、凄かったです。
ただ一つ気になったのは…やはり歌声の力強さがあと一歩足りないところだったかなぁ。我が子の命が奪われそうになった場面でもあるので、そこはやはり声にもっと切迫感が欲しかった。必死に歌っているのは伝わるんだけど、私としてはさらにその上の激しさがほしいと思ってしまうんですよねぇ…。
♪命をあげよう♪はタムを本当に大切に想っているんだなぁというのがひしひしと伝わってきた。抱きしめ方一つにしてもすごい母性にあふれていて…息子を見つめる視線には本当にグッと来るものがありました。ただここの最後の歌い上げのところも、あと一歩パワーが欲しかった。表現力は抜群なだけに惜しい!!
ジョンからクリスのことを聞いて喜びにあふれる場面。充希ちゃんのキムはクリス会いたさに思いが募りすぎてボロボロ涙を流しながら歌ってて…それ見ただけで見ているこちらももらい泣きしてしまった(涙)。愛しい人に会えるという喜びを爆発させているシーンですが、充希ちゃんの場合は「恋」よりも「救いを与えてくれる人」としてクリスを見ている印象のほうが強かったかな。
エレンと対峙したときに大きな衝撃を受けてしまうキムの場面。真実を聞かされた瞬間に彼女の脳裏からは「クリスとタムとの幸せな家族の生活」という理想が風船が弾けたかのように消えてしまったように感じました。
「タム引き取ってよ」とエレンに迫るときの凄みが本当に痛々しくてねぇ…。あの時彼女の中にはもう「タムの未来」しか考えられなかったんだなと思うとすごく切なくて涙してしまったよ…。そして最後にクリスを思いながら「懐かしいキス」と歌う場面…。充希キムがあまりにも儚く美しく見えてまたさらにボロ泣き(涙)。このあたりの表現力も実に繊細で本当に素晴らしい。
クライマックス、タムと最後の時間を過ごしていた充希キムは怖いくらいに静かで穏やか。息子のぬくもりを少しでも長く感じていようと抱きしめ続けてる姿が泣けて仕方なかった…。そしてエンジニアがタムを迎えに来てその体から引き離した時、充希キムは息子の方向に手を伸ばしそれまで堪えていた涙が溢れ居たたまれず顔を背けていました(涙)。あれはもう、号泣だったよ・・・。タムへの思いの強さ、母としての思いに泣いた…!!
クリスとの最後の時間も、ただ必死にタムのことを頼むと伝えようとしていて…。あんな姿目の当たりにしたらクリスは立ち直れなくなるんじゃないかと思えるレベルだった。
もう本当に繊細な表現力がところどころ素晴らしかった充希ちゃん。やっぱり芝居の人だなぁと思いました。それだけに、歌声にあと一歩のパワーが感じられなかったことだけが残念だったかなぁ。
大阪公演で大千穐楽を迎えたとのこと。ハードスケジュールを縫っての出演だったと思います。本当にお疲れさまでした!!
クリス : チョ・サンウンくん(クリス役)
サンウンくんは2006年から2011年まで劇団四季に在団していて「三雲肇」という芸名で大きな作品に主要キャストとして頑張っていた役者さん。「ライオンキング」「キャッツ」「春のめざめ」などに出演していたということですが、私は四季時代は一度も見たことがなかったんですよね(汗)。「キャッツ」が好きなネッ友さんは見たことがあるとのことですが、評判はなかなか良かったようです。名前だけは私も知っていたので、どんな歌や芝居を見せてくれるのか…今回はじめて見るのを楽しみにしていました。
ちなみに彼はかつてロンドンでトゥイ役として舞台に立っていた経験があるのだとか。クリスとは全く違うキャラをどう演じていたのかちょっと興味がありますね。見てみたかったかも。
サンウンくんのクリスは木訥とした雰囲気で他のG.I.達から比べるとちょっとのんびり屋さんといった感じ。おそらく舞台の中でもちょっとトロい子で、でも正義感にあふれていることから慕ってくれる友達もいて…みたいな。体格はすごく良くて腕の筋肉とかも立派だっただけに、見た目と雰囲気のギャップがいいなと思いました。
「クラブに戻る」と力なく告げたキムに「一緒に暮らそう」とクリスが提案する場面。このときのサンウンくんのクリスはキムが自分の心の穴を埋めてくれる存在になるかもしれないという希望を見出して引き止めていたように見えました。充希キムも恋愛というよりも「自分を救ってくれるに違いない人」という雰囲気を醸し出していたので、二人の想いの方向性がピタリと合致しての♪サン・アンド・ムーン♪だったなと。
キスの回数は多いけれど、なぜか大恋愛に発展していくような予感はあまり感じなかったかな。とにかくこの地獄のような日々から逃げ出したい一心みたいな…そういう切迫感のほうが強かったように見えたのが印象的でした。
面白かったのは♪ウェディング♪場面のときに「靴を脱ぎなよ」と女の子から指摘されて脱いだ後の行動。何も考えずにカウンターの上にボンッって置いちゃっててww、それを見た女の子たちがビビりながらも「しょうがないなぁ」と苦笑いして床に揃えてました(笑)。当の本人はポヤッとした表情でキムの謎の仕草を眺めててw、なんか可愛い熊さんみたいだったよww。
3年後のシーンでベッドで悪夢を見て飛び起きる場面。それまでちょっと表情の動きが物足りないなぁと感じなくはなかったのですが、この時の狂ったようにキムの名前を叫ぶシーンはものすごく真に迫っててグッときました。3-4回「キムッ!!」って叫んでたっけ…。彼の心の中にはベトナムに残してきてしまった彼女のことがずっと消えなかったんだなと感じた瞬間でもありました。
ジョンからキムのことを聞いて動揺する場面、サンウンクリスからは彼女に対する恋愛感情をあまり強く感じなかったので「どうしよう」と動揺する姿がすごくリアルに感じました。「今は愛する妻がいるよ」という歌詞が一番しっくりハマるのはサンウンくんクリスかもしれない。
サイゴン陥落の回想場面、サンウンくんクリスは必死にキムを探し出そうとしているんだけど気持ちとは裏腹に行動に機敏さがなくて色々とタイミング逃してしまっているかのような悲しさがあった。アタフタしているうちに問が閉められ引き裂かれてしまった二人。ジョンに「砕ける夢今砕けろ!!」と迫られて引きずられるようにヘリへ向かわせられる場面も切なかったなぁ…。
乗り込む前にキムの名前を叫ぶ場面。これまで見てきたクリス役者さんは「キーーーム!!」という感じで叫んでいましたが、サンウンくんは「キムーーーーーー!!」と叫んでた。この呼び方は初めて聞いたかも。韓国人の彼だからこそのあの発音になったのかもしれません。
エレンにキムとの過去を打ち明ける場面、クリスはその中でキムのことを「泥沼の中で見つけた安らぎ、一時の夢」と涙ながらに歌います。このフレーズもすごくリアルに思えたなぁ。本当にその通りだったのだろうなと。これまで見てきたクリスのなかでサンウンくんの歌いっぷりが一番しっくりきたかもしれない。
キムにとっては「一生の安らぎと夢」の存在だったクリスだったけど、彼は「戦地で巡り会えた一時の安らぎと夢」という認識だったわけで…。同じベクトルを向いているように見えて、実は目指したところが違っていたんだと思うと切なくてたまりませんでした(涙)。
エレンに対しては自分の身も心も委ねられる一生の相手として想っているクリス。キムとの過去を知って取り乱した彼女に自分の気持ちを必死に泣きながら訴え「今は君だけ」と歌うシーンは痛々しくて切なくて苦しかったなぁ…。
キムの最期の時を目の当たりにした場面。命の炎が消えかかる中で必死にタムの未来を託そうとする彼女の言葉を、サンウンくんクリスはまともに聞くことができないくらい動揺しまくっていて見ていてすごく辛かった…。そしてやっぱり、キムの最後のキスを積極的に受けに入っていませんでしたね。目の前で起こったことに理解が追いつかず、ただただ混乱してその名前を呼ぶことしかできなかったクリス…。彼の最後の叫びがあまりにも痛切すぎて涙が止まりませんでした。その後のことを思うと心配になってしまうレベル(涙)。
サンウンくん、よく通るスコーンとした歌声がとても聴き心地が良くて素晴らしかったです。ただ個人的にはもう少し顔に表情を出しても良かったんじゃないかなと。もっと出ると想像していただけに、意外と動かなかったのでそれがちょっと意外だった。歌声も表現力も繊細でとてもいいので、後もう少し表情がほしいかな。最後まで頑張って欲しいです。
ジョン : 上原理生くん(ジョン役)
上原くんは2017年公演のときに観て以来。あの時は1幕の暴れキャラっぷりと2幕の真面目キャラとの落差があまりにも大きくて、ジョンという人をどう解釈していいか戸惑うほどだったのですが(汗)今回また新しい雰囲気になってどう変わっているかとても気になっていました。
冒頭の荒くれっぷりが今回も迫力満点だった上原ジョン。歌声に深みと迫力があるからなおさら見てる者を惹きこむ力があるよね。乗り気がしていない様子のクリスを必死に盛り上げようとしてるんだけど、結局は自分自身のテンションが上がってそれどころじゃなくなっちゃうみたいになっていたのは面白かったw。
ジジに対して酷い仕打ちをするジョンですが、拒絶された後にずっとクリスに愚痴をこぼしまくっててクリスが呆れながらそれを聞き流してる図っていうのも面白かったな。
2幕、上原ジョンは本当に1幕とは別人のように地にしっかり足を付けたような真面目で熱い男になって登場してくる。あまりにも雰囲気が違うので彼の心変わりの背景が見えるのかちょっと心配になったのですがw、「こんな私でも教えられたのだ」というフレーズをものすごく大切にしっかりと歌ってアピールしていたのでジョンの空白の時間を思い描くことができて良かったです。
上野くんの時もそうだったけど、理生くんのジョンも♪ブイドイ♪のナンバーを聞いていると彼がどんな体験をして心を入れ替えることになったのかというドラマが鮮明に浮かんできました。取り残されてしまった罪なき子供たちの目を見た時に受けたであろう大きな衝撃…。彼の人生の中の重要なターニングポイントだったに違いない。
クリスとエレンが「キムとタムはバンコクに残して支援することにしよう」と決めた時、上原ジョンはものすごい勢いでその決断を責めてました。彼はキムのクリスを愛する気持ちを目の当たりにしてますから、それが彼女にとってどんなに残酷なことなのか分かりすぎるほど理解してしまうんだろうなと思った…。だけど、それ以外に何か妙案があるかと聞かれたら何も出てこなかったわけで、自分の無力も呪ったかのように背を向けた姿がとても切なかったです(涙)。
新しい演出になってからまたさらに理生君のジョンに厚みが生まれたように感じました。ハマり役だよね。できれば次回公演でもまた見てみたいです。
トゥイ : 神田恭兵くん(トゥイ役)
神田くんも2017年公演以来。その前にも神田トゥイは観ていたのですが、あまりにも泉見くんが演じたトゥイに感情移入しまくりすぎたせいかなかなか印象に残らなかった時期があったんですよね。ところが5年前に久しぶりに見た時、「こういうトゥイに会いたかった!」というかなり私好みのドンピシャなお芝居をしてくれて大感動したんですよね。あれからまた年月を経てどのくらい進化しているのか、どう変わっているのか、ちょっとドキドキしながら登場を待ちました。
トゥイが♪ウェディング♪の場面の最後に乱入してくる場面、「いた!!おまえ!俺と帰ろう!」という最初の歌い方がもう、心底心配して立って気持ちがダダ漏れしまくっててグッときたよーー!その後の「助けに来た」というフレーズがものすごく立体的に聞こえる。神田トゥイはやっぱりキムのことが大好きでたまらないんだなっていうのがこれでもかというほど伝わってきてすごく嬉しかったです。
クリスと初めて対峙したときに彼に敵意を剥き出しにするわけですが、西川くんと違って「国の敵」ではなく「恋敵」として見てるんですよね。「親の約束を何故守らない!?」とキムを責めているけれど、本心ではキムと結婚できることをすごく楽しみにしていたんだろうなというのが痛いほど伝わってきた…。もうほんっと、神田トゥイの恋心の報われなさが切ない…。まるで「オペラ座の怪人」のファントムのようにも思えちゃったよ(←最近見すぎてるせいもあるけどw)。
キムと3年ぶりに再会した場面、神田トゥイは必死にキムへの自分の恋心を訴えようとする姿勢が見えてめちゃめちゃ泣けました…。特に「戦いながら見たよ、嫁いでくる夢を」と歌っている時の表情がすごく切実で、苦しい状況の中で彼がキムと結ばれることだけを信じて戦い続けていたんだというのが痛いほど伝わってきた(涙)。
でもキムはどうしてもトゥイの気持ちを受け入れることができなくて全く想いが届く様子がない。このすれ違いが本当に切ない…。さらに、キムがクリスを未だに思い続けていることを悟るとものすごく苦しそうな表情を浮かべてて…、あぁ、神田トゥイはやっぱり泉見トゥイの路線を継承してくれてるんだなと胸いっぱいになりました。
それから、クリスを想い続けるキムに逆上して部下たちに彼女とエンジニアに暴行を加える場面も印象深かった。ここは西川くんと演じ方が全然違うんですよね。西川トゥイは二人がいたぶられている間も表情をほどんど動かさず背を向けていましたが、神田トゥイはキムの叫び声を聞いて心が悲鳴を上げているような表情を浮かべてた。そして、ついに耐えきれなくなって部下たちを下がらせたのだといった感じ。この一連の芝居がホント切なくて泣けて仕方なかったよ…。
もうひとつ、西川トゥイと神田トゥイの大きな違いがタムを目撃した時の反応です。西川トゥイはタムを「敵国との息子」と捉えているように吐き気をもよおすリアクションを取っていましたが、神田トゥイは「恋敵との息子」といった気持ちの方が強くショックのあまりその場に崩れ落ち震えるというリアクションを取っていました。
どちらのトゥイも本当に見ていて辛いのですが、神田くんのほうがキムへの恋心を前面に出している印象が強かったのでなおさら切なく感じてしまったかもしれません。特に最後の「婚約してるんだ!!」の絶叫はあまりにも哀しすぎて思わず涙…。その気持ちをアメリカが攻めてくる前にもっとハッキリと彼女に伝えていたらこんなことにならなかったのかもしれないのに…とかいろんな気持ちが過っちゃったよ(泣)。
撃たれた直後、神田トゥイは必死にキムの頬に手を当てようとしていましたが、何かを伝えようとしているところで事切れてしまっていた。それがなおさら哀しくて涙が止まりませんでした…。
2幕で亡霊として登場した時の迫力はすごかったなぁ!目をものすごいひん剥いてキムのことを凝視してた。あれは怖い!!それだけ彼女への気持ちへの無念さが彼の中では消えてなかったんだろうなと思ったかな。
神田トゥイ、本当に期待以上で最高でした!!めっちゃ切なかったよ…。神田くんはコロナ禍の中で苦労を重ねてきた俳優さんだけど、それでも頑張ってきたことが今花開いているような気がしてとても嬉しかったです。これからも応援しています。
松原凜子さん(エレン役)
松原さんは今年観たミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳」でマミヤ役を熱演していた姿が記憶に新しい。今回はアタタミュージカルとサイゴンのスケジュールが被ってエレン役に専念とのことで。あの力強いマミヤとは違ったエレンをどのような雰囲気で演じられるのかとても楽しみにしていました。
クリスと同じベッドで眠っていたときの場面。悪夢にうなされたクリスに対して戸惑いながらも後ろから必死に抱きかかえようとしながら「言えないことを打ち明けて」と訴えかける姿がとても印象深かった。妻であるからこそ、その苦しみを一緒に共有したいという切実な気持ちがひしひしと感じられてねぇ…。だけどクリスはそのことを話せる精神状態まではいってなくてなかなか意思の疎通が難しい。それでも「私は信じているから」と強い眼差しで彼を支える決意を歌うシーンの松原エレンはとても頼もしく懐の大きな女性に見えました。
キムが突然訪ねてきたときの場面。知念さんとは違って、クリスがキムに会いに行っていることに対する不安な気持ちが漂っていました。それゆえ、最初にキムに相対したときの態度がちょっと冷ややかだったように見えたかな。
彼女がクリスを愛した人であると悟ったとき、自分の知らなかったクリス像が浮かんできたかのように動揺していた松原エレン。だけど、必死に自分を奮い立たせてキムと対等に話をしようと努力してて…その心中を思うと見てるこちらの胸が傷んでしまうほどでした(涙)。
キムが走り去っていった後、クリスへの愛とキムに対する同情心との板挟み状態で混乱しながら歌う♪Maybe♪は圧巻だった。キムの張り裂けそうな気持ちも痛いほど分かる、でも、自分自身のクリスに対する愛も捨てたくない。「私は身を引いてもいい」という歌詞が出てきますが、松原さんの場合はそれとは裏腹に”私はクリスを諦めたくない”という想いのほうがより強く出ているように聞こえた気がしました。彼に対する強い愛情の想いがこれでもかというほど伝わってきたがゆえに、なおさら切なかったです(涙)。
クリスが泣き叫びながらキムとの過去を語る場面。それを見つめていたエレンも「私とあの子どちらを取るの」と最初は迫っていましたが、最後の方にはクリスの過酷な経験談を聞いて「彼は私が愛する人、私が守らなければならない人」という意識をさらに強めていったように見えた。本当に最後までとことんクリスに大きな愛を注いだ人だなと想いました。
松原エレンは激しく葛藤しながらも最後はクリスへの愛を貫く強い女性に見えました。あのエレンだったらクリスが人生をともにしたいと思うのも納得。キムとの関係に揺れ動きながらもクリスを愛しぬくという難しい役柄をとても魅力的に演じられていたと思います。
青山郁代さん(ジジ役)
メインキャストの中では青山さんがジジ役として2度目。ドリームランドでの♪わが心の夢♪の歌いっぷりが本当に切実で今回も胸打たれました。なんとしても今の苦しい生活から抜けてアメリカで幸せをつかみたいというジジ。「私いい奥さんになるよ」ってジョンにすがりついている場面は特に切なかったなぁ…。きっと彼女ならアメリカへ行けることになったらその幸せを噛み締めながらいい奥さんとして”彼”を支える存在になるのだろうか…。だけどそれはかなわない夢だった。
キムがクリスと一緒に出ていった後、ミス・サイゴンになれたにもかかわらず誰の相手にもなれずに一人でトボトボと歩いていく後ろ姿がとても悲しく切なかったです…。
青山さんは2幕では♪アメリカンドリーム♪のキャデラックの女性としても登場。この時はとってもセクシーで妖艶な笑顔を浮かべていてキラキラ輝いてます。後ろを振り向いてコートの前をババッと大胆に見せる仕草は女性の私でもドキッとしてしまうw。1幕では酷い出来事ばかりな役だったので、2幕のビッグナンバーで綺羅びやかで楽しそうな姿を見れたのは個人的に嬉しかったです。
後述
この日のカーテンコールも大盛りあがりで、キャストの皆さんの充実した笑顔がとても印象深かった。神田くんは2回目あたりのときに空いた手で小さくガッツポーズしてたなぁ。伊礼くんは最後のカテコのときに生声で「ありがとう!」(拍手音でよく聞こえなかったけど、多分そんな感じだったと思う)って叫んでたし。
新型コロナ禍で舞台がストップすることも多かったから、大阪の舞台に立てていることを皆さん一様に味わい深く噛み締めているかのようでとても感動的な光景でした。
ちっちゃいタムの藤元くんを囲んで充希ちゃんとサンウンくんが一緒にお手振りしてる姿はめっちゃ可愛くて萌え〜〜。まるで本当の家族のよう。あの衝撃的な悲しいラストが嘘だったかのような平和で優しい時間が流れてた。キムやクリスにもこんな時間が訪れればよかったのに…ってちょっと思ってしまう。
地方公演はまだ途上ですが、大阪で出演や組合せが最後になってしまうキャストさんも出ているようですね。充希ちゃんは大阪でラストだったとのこと。見れて良かった。伊礼くんは松本まで別公演(アタタミュ)のため抜けるようですね。
みつきちゃんとは最後になりましたが、サイゴンカンパニーはまだまだ走り続けます。
愛知公演に行けないのは残念ですが、次回は松本🏯
残念ではありますが、愛知の時期スケジュールが空いたので「北斗の拳」に出演する事が出来ました。
まさかこんな偶然が!! pic.twitter.com/EF5RtxRubv— 伊礼彼方 Kanata Irei (@irei_kanata) September 18, 2022
素敵なお写真がいっぱい!カンパニーの雰囲気の良さが伺えます。またみんなに会えますように。
本当はあと1回くらい追加したい気持ちがあったのですが、資金の関係で断念…。引っ越した先からの遠征も考えなくはなかったけどw、チケット代的に今年度のサイゴンは今回で打ち止めになりそうです。観たかったけどねぇ(未練w)。
どうかどうか、今度こそはストップすることなく皆さん健康で全てのツアーを回り切ることができますように。素晴らしい作品なので全国の多くの方に観ていただきたいです。最後まで頑張ってください!
次回のサイゴン公演は何年後になるかなぁ…。できれば2年後くらいに実現させてほしいかなと。作品の持つ惹きつける力が半端なく力強いので、この先もずっと上演してほしいと思います。2022年版の『ミス・サイゴン』、本当に本当に最高でした!!ありがとうございました!