【ミュージカル映画】『レ・ミゼラブル』 舞台版との比較感想

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バリケード~恵みの雨
ABCカフェの後に「民衆の歌」が出てこなかったことに不自然を感じていましたが、舞台で言うところの2幕頭に出てきました。しかも、ラマルク将軍の葬列にアンジョルラス達が割り込んで仲間を引き入れていくという、舞台よりもかなりダイナミックな演出に。それにしても、いつもとは違うところで「民衆の歌」が入ってきたのでなんだかちょっとビックリしたな(汗)。人数もハンパなかったしね。さすがは映画。

そのさなか、マリウスの手紙がバルジャンに届けられるシーンがあるのですが…ここは映画と舞台とではかなり違います。舞台ではマリウスが少年と見間違えたエポニーヌにビックリしながらもコゼットへの手紙を託します。マリウスは彼女を戦闘に巻き込みたくないがゆえにこの行動に出るわけですが、エポニーヌはマリウスの傍にいたいがために再び戻ってくる、という流れ。そのさなかに「オン・マイ・オウン」が歌われるわけです。

ところが、映画ではマリウスは少年の格好をしたエポニーヌに何の反応も示さずに普通に振る舞っている(汗)。さらにコゼットへの手紙はガブローシュに託していました。おそらく幼い少年を戦闘に巻き込みたくないという解釈でそうなったのかもしれません。ガブローシュはバルジャンに手紙を託しますが、帰ろうとする彼にバルジャンは町に近づくなと忠告してていました。舞台ではエポニーヌにかけていたその言葉をガブローシュにかけているということになりますね。

バリケードが作り上げられていくシーンは映画ならではの迫力がありました。舞台ではもう最初からバリケードできてて組み合わさるだけだったのでw。映画では学生たちの呼びかけに民衆たちが窓から家具を投げ入れててものすごい光景に!!迫力あったけど、戦いの前に落ちてくる家具のほうが怖いよ、と思わずツッコミ入れてしまった(爆)。でもなんだかリアルですごかったな。あんなふうにしてバリケードができて行ったんだと思うとなんだか感慨深いものがあった。

仲間のふりをしていたジャベールがガブローシュに見破られ学生裁判にかけられるシーンは映画のほうがコワイです。逃げようとするジャベールを舞台ではいとも簡単に捕まえて黙らせてましたが、映画ではフルボッコ状態(汗)。ちょっとジャベールに同情しちゃったよ…。

そのあとエポニーヌの死が描かれるわけですが、ここも映画と舞台とではだいぶ印象が違います。舞台ではバルジャンの元に使いに出されていたのはエポニーヌだったのでそこから戻るときに敵から撃たれて死んでしまうといった演出でした。しかし、映画ではエポニーヌは使いに出されていないので始めからバリケードの中にいてマリウスたちと共に敵と戦っている。その最中、マリウスが敵に狙われて撃たれそうになるのですが咄嗟にエポニーヌが彼を庇い代わりに撃たれて死んでしまうという顛末になっています。これは明らかに、映画のほうが悲劇性が高い(涙)。まさかエポニーヌがマリウスを庇って死ぬという結末になると思っていなかったからショックで涙が出ました。彼女が歌う「恵みの雨」も舞台とは違った悲しみが込められてて切なかった。

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共に飲もう~彼を帰して
ガブローシュからマリウスの手紙を受け取ったバルジャンはその内容を読んで動揺します。舞台では手紙を読んだ後にすぐ彼の元へ駆けつけようとする素振りを見せていましたが、映画ではかなり葛藤していたのが印象的です。これまで溺愛してきたコゼットについに恋人が現れたことで、彼女が自分の元から去ってしまう日がとうとう来てしまったのかと狼狽えるバルジャン。まさに花嫁の父の心境ですよね。最初のうちはマリウスのことを敵視するような感じだったんですが、徐々に彼がどんな人物か知りたくなりバリケードへ行くことを決意。このあたりの心情も舞台では描かれていなかった余白の部分なのでとても興味深かったです。

バリケードに入ることに成功したバルジャンは狙撃兵を見つけ手柄を立てたことで学生たちの信頼を得ます。このあたりは舞台と同じ。ジャベールを逃がすシーンも基本的には変わりなかったと思います。カモフラージュで銃を撃った時、ジャベールが死んだことを確信した学生たちが銃でガンガン叩くのは映画では出てきませんでしたが。

そのあと、学生たちにしばしの休息が訪れる。酒を飲みかわしながら歌う学生のシーンですが、ここ、舞台ではアンジョルラスとグランテールの関係性が一番感じられるところなんですよね。しかしながら映画ではグランテールの「死など無駄じゃないのか」って歌うシーンがクローズアップされなかった為、あまり二人の対比が感じられなかったのが残念。舞台では「死が無駄じゃないのか」と革命に対し疑問符を投げたグランテールの元にすごい勢いでアンジョルラスがやって来て、彼が差し出す酒ではなく他の仲間が差し出した酒を飲みその考えを否定するんです。

でも、去り際にアンジョルラスはグランテールに寂しい背中を見せる。ここまで学生たちを引っ張ってきたカリスマ学生のアンジョルラスも、実は心の底では死への恐怖があるのかもしれないってことを感じさせます。私は舞台で展開されるこの二人の微妙なやりとりが好きだったんですよね。それが映画では出てこなかったことが残念。

「死んでもいいさ」と歌う青年がマリウスだと気付いたバルジャンが彼を想い歌う「彼を帰して」はとても感動的でした。ここのシーンはどちらかというとバルジャンのマリウスに対する心情にクローズアップしているなという印象ですね。

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苦悩の夜明け~下水道
夜が明けて民衆たちが助けに来ないことを知る学生たち。ここは映画も舞台も同じですが、映画だと部屋の窓を次々と閉ざしていく民衆の様子も描かれていてなんだか余計に物悲しさが漂っていました(涙)。

攻撃が始まると銃弾が足りないことに気づきガブローシュが敵の死体から弾を取りにバリケードの外に出て撃たれて死んでしまいます。ここの流れも舞台と映画はほぼ同じ。舞台だと撃ち手の姿が見えませんが、映画だとハッキリと映されているので、最初の攻撃は威嚇だったのだということが分かります。しかしそれにもめげずに挑発してくるガブローシュに敵は思わず彼に向かって引き金を引いてしまった。撃った方も後味の悪い出来事だったことが伝わりました。ちなみに舞台ではガブローシュは傷つきながら必死で集めた弾を入れたカバンをバリケードの上の仲間たちに投げようとするのですが、映画ではそれすらできないまま死んでしまった…。まぁ、舞台でも投げてもバリケードまで届かないことのほうが多いんですけどね。

ガブローシュの遺体は学生の一人が出て抱きかかえながらバリケードの中に運んできます。舞台ではそのままだったのでなんだかちょっと救われたような感じ。その死にショックを受けた学生たちは自分たちも死ぬ覚悟を固めます。このあたりの必死感は舞台のほうが感じられたかな。マリウスが撃たれてしまうシーンは舞台だと弾を取りに行く途中ってことになってましたが、映画ではバリケードの中にいてそのまま撃たれちゃった感じ。それに気づいたバルジャンが必死に地下へ運ぼうとするシーンは同じですが、映画のほうがやたらリアルな描写でドキドキしました。舞台だと戦闘中ではなく戦闘が終わった後に息のあるマリウスを抱えて舞台下にもぐってく演出ですからね。このあたりがちょっと違うかな。

バリケードが陥落するシーン、戦闘はやはり映画のほうが迫力あります。リアルで痛々しい。演出的に違うのはアンジョルラスとグランテールが死ぬシーンですね。舞台では傷ついたマリウスを見て死んでしまったと絶望したアンジョルラスが武器ではなく赤い革命の旗を振りながら自ら撃たれて死んでいく。それを見たグランテールも発作的に彼の後を追うように酒瓶を振り回して撃たれて死んでいきます。それに続いて他の学生たちも奮闘虚しく死んでいくんですよね。バルジャンもそれと同じタイミングで肩を撃たれ気絶します。

しかし、映画では学生たちが死んでいって最後に残されたアンジョルラスとグランテールが建物の2階に行き、そこで無抵抗のまま撃たれ死んでいくという演出になってました。舞台で印象的なアンジョルラスの後ろ反りの死にざまがバリケードではなく建物の2階からという演出だったのはビックリ!見てる方が怖い(汗)。

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ジャベールの自殺~カフェソング
下水道に逃げ込んだマリウスを背負ったバルジャンは疲れからその場に倒れてしまう。ここは基本的に同じですが、映画で見る下水道はそれはそれは汚い水で(汗)。あんなところに倒れるだけでもゾッとしちゃうよ…。そこへ流れてきた遺体からお宝を次々に盗んでいくテナルディエが出てきます。舞台では下水道でのテナルディエのソロナンバーがあるんですが、映画ではまるまるカットされてセリフのみになっていたのが意外です。マリウスの指輪を盗むシーンはクローズアップされてましたね。ちなみにテナルディエに気付いたバルジャンは映画では彼を脅しマリウスを背負って立ち去りますが、舞台では気が付いたバルジャンを見てテナルディエはそそくさと逃げ出してます。

マリウスを背負って彷徨い歩くバルジャンの様子は舞台よりもやはり映画のほうがリアルでスリリングです。バルジャン、顔が泥で真っ黒になってますし、服もボロボロ。舞台ではけっこう小奇麗な格好ですからねw。そんなところにジャベールが登場するわけですから…映画版はもうサスペンスまっしぐら。舞台だと光の当て具合で緊迫感を表していてそれはそれでいいんですけどね。

ジャベールはバルジャンのマリウスを助けたいという必死の形相に根負けして初めて彼を自らの意思で逃がしてしまいます。そんな自分が許せなくて、ジャベールは自ら命を絶つ。舞台だとセーヌ川の橋の欄干を乗り越えて高らかに歌い上げながらジャベールは水の渦に飲み込まれていきますが、舞台では橋ではなくて渦を巻いてるセーヌ川の上にある壁みたいなところを歩いてます。しかも、かなり淵の部分を歩いてるのでまるでサーカスのよう。この演出はおそらく、「星よ」のシーンと対比させてるんじゃないかと思いました。あの頃の執念と、今の絶望。同じようにギリギリの淵を歩いていてもジャベールの心境は変わっている。飛び込むシーンは迫力満点で・・・あれに飲み込まれたら死ぬよなって納得いく映像になってました。

仲間を失ったことに自責の念を抱いたマリウスが哀しみの中歌う「カフェ・ソング」。ここは舞台と基本的に同じですが、映画ではマリウスが歌っているときに仲間の霊が現れなかったことがちょっと残念でした。

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