劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』大阪公演 2023.04.30マチネ 日本上演35周年記念カーテンコール

飯田洋輔くん(ファントム役)について

先週で大阪滞在4週目を迎えた洋輔くんだったので、今週からは抜けてしまうだろうなと思っていたのですが(それゆえ切羽詰まって突発観劇に行ってしまった私w)、まさかまさか5週目もステイしてくれるとは!上演35周年記念カーテンコールを洋輔くんファントムで観ることができたなんて本当に感無量です(涙)。事前にチケット入手しておいてよかった…(でもそうなると、彼の楽予想が分からなくなったなといった不安はあるんですが 汗)。

25日にはMBSラジオの番組のゲスト出演が決まっていた関係もあったのかな20分足らずの出演だったけれど、久しぶりのラジオ出演(昨年の大阪公演始まった頃以来?)本当に嬉しかった。

穏やかで朴訥とした洋輔くんならではの口調ながらも、ファントム役を演じることへの熱い想いを切々と語っていたのがとても印象深かったです。♪ミュージックオブザナイト♪の洋輔くんバージョンを聴けたのも本当に嬉しかった(本人的には照れ臭いと笑ってて可愛かったけどねw)。

これまでありがたいことに複数回彼のファントムを見てきたけど、その中でもこの日はなんだかいつもとは違った雰囲気があるように感じられて…。これから先も長く続くであろう洋輔くんの俳優人生の中での一つの大きな節目になった公演だったんじゃないかなとすら。うまく言葉では言い表せないんだけど(汗)、色々ビックリしたというか、圧倒されたというか、、一つの到達点を見たような気がして。その時間を共有できたことは本当にファンである私にとってとても幸せな出来事だったなと思います。

♪ミラー♪

前の週に観た時の♪ミラー♪の迫力もすごかったけど、この日も圧巻の迫力で息が止まるかと思いました。歌の表現力が本当に凄い。そして、「私がいるのだ、その中に」と鏡の中から姿を現した場面。その時の洋輔くんファントムの姿が…まさに”オペラ座の怪人”だった。クリスティーヌと一緒に鏡の中へ魂が吸い取られていくような感覚にさせられてしまった。

この光景を目の当たりにしたときから、いつもの洋輔くんファントムを見る感覚が違うかもしれないと実感。役とのより深い同化というか…そういう見え方がした気がしたんですよね。うーん、これも言葉にするのが難しいんですが(汗)、なんかすごい瞬間に立ち会ってるぞ!?みたいな胸の高鳴りがしたんだよなぁ。

♪The Phantom of the Opera♪

ボートを漕いでいる姿も美しい。ピンと張り詰めた神経が行き届いた指先の動きに少し柔らかさが感じられるのも彼ならでは。隠れ家に着いた時、クリスティーヌに両手を差し出して彼女をエスコートする姿は特に好き。

クリスティーヌが歌っている姿に高揚感を上げていく場面、感情がいつも以上に熱く激しく動いているかのよう。彼女に合わせて口を開け歌う仕草を見せつつも胸の高鳴りが激しくなって下唇を噛みしめる、みたいな感じで。その陶酔してる時の表現が本当に凄く印象深かった。感情が昂るったときに無意識に下唇をクッて噛みしめること多いんだよね。それが私はすごく好きで、今回そんな表情がちらちら垣間見えたことが嬉しかった。

このあとオルガンの前でクリスティーヌに熱き胸の内を切々と歌い上げるのですが…「私はおまえに求めた」のところから「私のために歌ってほしい、どうか」までの表現がめちゃめちゃ胸アツでした。これまでずっと抱えてきたであろうクリスに対する想いがマグマのように沸々と吹きだしてきて止められないって感じ。「どうか」とオルガンの上の楽譜を撫でる仕草はまるで深い祈りのよう。心の底から彼女の歌(=愛)を求めている心情がこれでもかというほどリアルに伝わってきて本当に切なかった。

♪Music of the Night♪

いつも洋輔くんファントムのMotNには感情を揺さぶられるのですが、この日はこれまでとはちょっと違う感覚で聴き入ってしまった。なんというか…まるで教会で賛美歌聴いてるような感覚、みたいな。すごく神聖な瞬間に立ち会ってるような気がして胸が震えました。歌詞の一つ一つに魂こめて歌ってるのがいつも以上にリアルに伝わってきたんですよね。その旋律に乗った言葉は優しく、熱く、甘く、そして威厳に満ちている。この表現力は本当にすごいなと。

「心の赴くまま、君は私のもの」の歌いっぷりは特に圧巻だったなぁ。溢れんばかりの熱く激しい感情が大きく盛り上がり、そしてその直後に静かに切実な気持ちを歌う、みたいな。「動」と「静」相反する旋律のなかにクリスティーヌを必要としているというファントムの思いの丈がこれでもかというほど詰まっていました。

ダミー人形に驚いたクリスが失神してしまう場面での洋輔くんファントムの焦りっぷりは毎回ツボだし癒し。あの時だけはやっぱり”かわいい”って思っちゃうw。

オルガンの前で作曲してるシーンでは、これまで以上にエキセントリックな雰囲気だったのが印象的でした。頭の中に音楽が降りてきたときの「あぁ、これだこれ!!」みたいな昂ぶりっぷりが肩で息するほど激しかった。他のファントムに比べると洋輔くんはいつもちょっと抑え気味かなと思っていたのですが、この日は音楽に対する並々ならぬ執着心みたいなものが見えてきてすごく良かったです。

クリスに仮面を剥がされた瞬間の叫び声はいつもよりも悲痛な響きに聞こえて胸が痛かった…。彼女を狂ったように責めたてている時も、怒りよりも哀しみの感情のほうが勝っているように見えて…「呪われろぉ…」とうずくまる場面への説得力がより強く増していたかなと。匍匐前進で彼女に迫っていく時も今にも泣きそうな雰囲気で本当に哀しい(涙)。「おぉ…クリスティーヌ…」と彼女に背を向けて蹲る洋輔くんファントムは涙無くして見れません。
仮面を返してもらった後に彼女に触れようとする場面、寸でのところで思い止まるのですが…この時の耐えてる表情がまたすごい辛いんですよね(涙)。断腸の想いで下唇をクッと噛みしめながら目を背けてる。彼女にどう向き合っていいのか戸惑う気持ちも見え隠れしていて本当に切ないです。

♪All I Ask of You(リプライズ)♪

エンジェル像から姿が現れた時から深い哀しみのオーラがすごくて…もう、あの姿を見ただけで胸が締め付けられるように苦しくて息苦しくなってしまいます(涙)。声色は泣いてるように聞こえてきて…。ここ、いつもは洋輔くんが演じている役が苦しんでる姿に自分も苦しくなってたんですが(←間違った見方してますが悪しからず 苦笑)、この日はそれ以上に、今そこに生きているファントムの底知れぬ深い絶望と哀しみみたいなものがひしひしと伝わってきて…自分の中の時が止まったような感覚になってしまった。いつものフィルターをかけずに見ている自分がいたことにも驚いたほど。

哀しみから怒りへと感情が切り替わる場面、クリスとラウルのラブラブシーンの幻聴に苦しみ片方ずつ耳を塞ぐのですが、洋輔くんファントムはどちらかというと塞ぐタイミングが少し遅いような気がします。聴きたくないクリスとラウルの歌声なんだけど、あまりにも哀しすぎてなかなか手に神経が行き渡らない…みたいな。ようやく両耳に手を当てた時には哀しみのメーターが振り切れちゃって嫉妬の怒りが湧いてくるといった感じ。彼のこのシーンでの繊細な表現が個人的にすごく印象深い。

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♪マスカレード♪

レッドデスで登場した後、自らが作曲したオペラ「ドンファンの勝利」の楽譜をアンドレに投げ渡す場面。今回も両手でナイススローイングだったのですが、力が入ったからかいつもよりちょっと投げ飛ばされた楽譜が宙を舞う速度が速かったように見えましたw。ファントムの彼らに対する軽蔑と怒りの感情が垣間見えた気がしてこれはこれで良いなと思います。

♪墓場♪

十字架から現れた洋輔くんファントム、その姿はさることながら…歌声が…いつにも増して天使の響き!!!なんと柔らかく美しい響きなんだろうか。その第一声が聞こえてきた瞬間から自然と涙が溢れて止まりませんでした(泣)。鈴のような輝く藤原クリスティーヌの歌声をそっと包み込むような優しさすら感じたなぁ。

そしてラウルが現れた後の三重唱の場面。ここは三者三様の歌に耳を傾けなければなシーンではあると思うのですが…この日はファントムの圧倒的な劇場中を揺るがすような魂の歌声に魅入られて彼の声しか聞こえてなかった。なんだろう、あの、これでもかというほど心を熱く揺さぶる歌声は。これまで感じてきた以上の感情の波が私の中でうねってて、胸の内側をかきむしられるような苦しさすら感じましたよ。すごかった、ほんとに(これ以上の言葉が見つからない)。

クリスと二人だけの世界に割って入ってきたラウルの存在に気づいた後の狂気の芝居もすごかったです。特に「ブラーヴォーーー!!」のシャウトは聴いている誰もがビクッとしてしまうほどの迫力。洋輔くんとは思えないほど冷たく狂気に満ちた眼差しで火の玉をガンガン飛ばしまくる姿にゾクッとする恐怖を感じた。
そこからの、クリスティーヌが去ってしまった直後に発した「行くなぁーーー!!」の悲痛さったらなかったよ(涙)。彼女への執着が強まれば強まるほど、その届かない想いに苦しめられ自分の首を絞めていくかのような洋輔くんファントムのなんと哀しいこと…。

♪The Point of No Return♪

ドンファンの部屋から黒いフードを深くかぶって登場したその瞬間から、クリスティーヌへの想いが全身から溢れ出そうになっているかのような雰囲気でした。特に「お前はもはや私のもの、心を決め運命に従え」と訴えるシーンはクリスが自分の元に戻るような呪文を唱えているかのようでもあったような。「もはや引けない」と徐々に彼女へのアプローチを狭めていくシーンになっていくと、息遣いが心なしか荒くなっていく様子がうかがえる。クリスと結ばれる未来を思い描きながら「未知の愛の悦び」と歌うシーンは特に官能的で、何としても自分のものにしたいといった強い欲求がフードの下の体からどんどん放出されていくのが分かる。

だけど、最初に至近距離まで接近したところで思わずその先に進むことに怯えたかのように反射的に顔をそむけてしまう。それまでは本当にクリスをそのまま襲って自分の懐に入れてしまうのではといったかのような積極性があったのですが、最後の最後のところで踏み込む勇気が持てなかったのかなぁ、みたいな。
洋輔くんファントム、クリスを欲する想いはこれでもかってくらい飽和状態なのにイザというところで怖気づいてしまう臆病さをすごくリアルに感じるんですよね。このあと一歩を踏み出せない不器用さがなんとも言えず愛しい。

クリスと一旦距離が離れた後、クリスティーヌの挑発的な歌が続いている間…ベールの下の洋輔くんファントムの体がどんどん落ち着きを失っていくのが分かる。椅子に座り彼女の存在を感じながら肩で息をしたり無意識に手の指が動いたり…。その行動の一つ一つが全てクリスに向いているわけで、もう本当に、どれだけ狂おしいほど彼女を求めているかというのがこれでもかというほど伝わってきた。その姿からは「ぼくには君がどうしても必要なんだ!」と切実に訴える想いが強く感じられる。クリスの顔が自分のマスクに触れ後ろから抱きしめられた時、その手を逃すまいと必死に自分の方に引き寄せてしまう姿は痛々しくもあり、そして、ひたすら哀しいのです。

表情を表に出さない状態で、ここまで繊細に熱くファントムの心情を表現してくるとは…もう、言葉が見つからない。

正体に気づいて逃げようとするクリスを強引に舞台中央へと引きずり戻した洋輔くんファントム。二人同じフレーズを歌い向かい合う中で、ファントムは彼女と想いが繋がっていると信じたいわけですがクリスティーヌは彼のベールを外しその正体を観客に晒すといった予想外の行動を取る。この瞬間の洋輔くんファントム、彼女が自分と同じ方向を見ていないことを悟ってしまったからか…驚きと悲しみとが入り混じったような表情で一瞬固まり、その後今にも涙が零れそうになるのを必死にこらえて彼女から距離を置き背中を見せる。この数秒後の沈黙の背中からは”ファントムの底知れない孤独感”が滲み出ていました(涙)。

観劇前に聞いたラジオ番組で洋輔くんが「ファントムはクリスティーヌに助けてよと訴えている意味合いが大きい」というようなことを語っていたけど、このPoNRの場面はまさにそれだよなぁと思った。
「どんな時でも二人の誓いは決して変わらないと、言ってほしい、僕を求めて」と歌っている時、声が少し涙声になってて…今にもそれが溢れて崩れそうになるのを必死に堪えてるようにも見えてとにかく辛くて切ない…。

”僕の音楽は君がいなければ完成しないんだ”、”君の存在だけが僕を生かしてくれるんだ”

こんな切実な思いを込めて指輪を彼女に送りながら「I LOVE YOU」の言葉を伝えようとしてたのかと思うともう…堪らないです(涙)。でもその気持ちは彼女に正しく伝わっていなくて。というか、自分を思い通りにさせるため攫う計画になっていると悟ったクリスは、逆に怒りの感情が湧いてきて舞台上でファントムのマスクを全て剥がすといった強硬手段に出てしまうわけで。二人の気持ちが噛み合わないままファントムがどんどん自暴自棄に追い込まれていく姿がとても痛々しく哀しかったです…。

追手が迫るなかクリスティーヌを乗せたボートを漕いで隠れ家へ急ぐファントム。その船上でファントムは自分の容姿が全ての元凶だと投げやりな言葉を吐き捨てるのですが、追手の声が聴こえてくると「クリスティーヌ、なぜ、なぜだ!?」と泣き声にも似た歌声で彼女を問い詰める。この時の洋輔くんファントム、今まで見てきたなかで一番心理的に追い詰められてる感が強くて自分の居場所がなくなってしまう恐怖感に包まれているような雰囲気がして…見てて胸が抉られるような想いにさせられてしまいました(涙)。彼がこれまで歩んできた蔑まれ憎まれ受け入れを拒絶され続けてきた人生が今まで以上にはっきりと見えた気すらして、本当にひたすら哀しかったです…。

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怪人の隠れ家

クリスティーヌを強引に隠れ家へ連れてきた場面。洋輔くんファントムはかなりの興奮状態で大きく肩で息をしながら彼女を床にたたきつけてた。
そのあとクリスから「飢えた悪魔の餌食の私」と激しく罵られるのですが、この日は悪魔”というワードに前回ほど大きくは反応していなかった印象。でも、彼女から”悪魔”と指摘されたことにはものすごく大きなダメージを負っていることはかすかな表情の変化で読み取れました。この時「醜く歪んだこの顔」と自分の姿を呪うのですが…、ちょっとうっすら自嘲ともとれるような笑みを見せてたんですよね。彼のファントムでこの表情を観ることはこれまで数回あったのですが、そんなに多くない。だからこそ、今回は彼の孤独がより濃く浮かび上がってきたように感じられてものすごく苦しくなりました…。自分の人生を呪いながら自嘲する姿ほど哀しいものはない…(涙)。

さらに泣けたのが「母にも嫌い抜かれて」と生い立ちを語り出す直前の涙…!!自らの顔を呪った時にふと蘇ってきた思い出したくない過去が浮かんできて、あまりの哀しさにどんどん声がか細くなっていくんですよ(涙)。なんって切ないの…!!!このシーンを歌ってる時の洋輔くんファントムは今にも消え入りそうに小さく儚く見えて、その悲しみの世界に一気に引きずり込まれていくような感覚にさせられた(涙)。

自らの哀しい生い立ちを歌った直後は、その思い出を激しく振り払い狂気の眼差しへと変わる。「穢れは心の中よ」と訴えるクリスティーヌの言葉は音としてだけ入ってきているといった感じで、内容は彼の心には浸透していない。それ故、彼女の言葉を聞かずに自らの世界に没入して花嫁衣裳のセッティング(毎回指さし確認までしてるw)する姿はとても痛々しいです。
特に理性を失った眼差しで幼子のような笑みを浮かべながらクリスにブーケを手渡す場面は哀しすぎる…。どうにかして自分の世界に彼女を引き入れたくて仕方ないって感じなんだよなぁ。その必死さが観ていて本当に辛かった(涙)。

ラウルがクリスティーヌを助けに来た瞬間の彼のファントムはゾクッとするほど冷たい表情になる。玉座に置かれていたクリスのダミー人形を排除する時の落とし方もすごく不気味。持ち上げてからすぐ脇にユラッとした雰囲気で手を離してボトっと落とすって感じ。そこに激しさがないからこその怖みがあるのがとても印象的です。
そして玉座に座る時の仕草は、やっぱり足を組みながらなんですよね。前回も驚いたけど、足をクロスさせながら椅子に座る動作ってかなーリ難易度高そう。あの時だけはちょっと物語の世界から外れて「洋輔くん、すごい体幹」と感心してしまいますw。

ラウルの首にロープをかけて締め上げる場面。「この償いは彼女の代わりにお前がするのだ!」と歌う最後のフレーズの「だ」のところ、これまで以上の狂気の高笑いをしていて背中に戦慄が走りました。そこに居たのは、ただただクリスティーヌを独占したいという想いだけで暴走している哀れな怪人の姿だった。彼が狂気に走れば走るほどどんどん自らを追い詰め真綿で首を締めていくような苦しみにハマっていくようで、もう辛すぎて見ていられない(それでもシッカリ凝視して見たけど)。

「もはや引けないぞ」とオルガンに辿り着いた時の洋輔くんファントム、これまでよりもさらに大きく肩で息をしてたように見えました。この時点で精神的にも肉体的にも追い詰められて疲弊のピークにきているのが伝わってくる。でも、まだこの時点ではクリスティーヌが自分の元へ戻ってきてくれることを信じる気持ちがあるように感じたんですよね。彼女の方を見つめながら、「たのむ、たのむ」って念じているように見えて…それがまた切ないんだよ(涙)。この時の気持ちはラジオでも語ってたけどきっと、「僕を生かしてくれるのは君だけなんだ」といった懇願の気持ちが強かったんじゃないかな、とも…。

だけど、そんなファントムを睨みつけながらクリスティーヌは「哀しみの涙、今、憎しみに変わる」と歌う。この”憎しみ”というワードが洋輔くんファントムの中に浸透した瞬間の、全ての希望が打ち砕かれたといった表情で下唇を噛み顔を歪めもがき苦しみ崩れ落ちていく姿がもう…、筆舌しがたいほど辛いし哀しいのです…(涙)。立つことすらまともにできないほど大きなダメージを食らっていることが火を見るより明らかで…あれは本当に涙無くしては見れなかった。

その後も必死にクリスティーヌに食い下がってはいますが、そこには絶望感しかなくて…。あの”憎しみ”という言葉を浴びた瞬間に彼女が自分の元に戻らないことを悟ってしまったように見えて仕方なかった。
「救えるのは君だけ」と歌うフレーズがありますが、表向きはラウルを救い出すことができるのはって意味になるけど、私には”ファントム自信を”救ってくれるのは君だけなんだという裏の意味が透けて見えてくるような気がしたなぁ…。「許さない、選べ」の言葉を血を吐くような気持で告げた直後はもう、今にも気持ちが溢れて泣き出してしまいそうになるのを必死に堪えてるのが分かる。肩が激しく上下してたし表情も歪んで口元が震えてたよ…(涙)。隠れ家に着いた時(いや、PotNの時かな)からずっと、彼女に全身で”助けて!”と心で訴え続けてるんだよね…。それがもう、見ていて辛くて苦しくてたまらなかったです(涙)。

クリスティーヌからキスをされた直後の反応は昨年とちょっと変わったなぁと思います。この日観た時も本当にすごい苦しそうで…。顔が歪んで今にも泣き崩れてしまいそうになりながらユラユラと彼女から離れてく感じ。生まれて初めて受けた彼女からの”無償の愛”にどう向き合えばいいのか分からなくて混乱して戸惑ってる。オルガンのすぐ近くに行ったところで、ようやく自分の唇に手を触れて自らに起こった出来事を悟る。この一連の感情の動きがとても激しく、見る者の心をさらに揺さぶりました。
ラウルの首に掛かった縄を焼き切る場面、これまで見た中で一番苦しそうだったなぁ…。「ぐあぁぁ~~!!」と響き渡る叫び声から、彼の心の中の葛藤が手に取るように伝わってきてめちゃめちゃ泣ける(涙)。本当は抹殺してやりたいほど嫉妬してる相手だものね。それを逃がす決断をするわけですから・・・大声を上げなければ行動に移せないっていう気持ちは痛いほど分かります。

クリスとラウルを逃がすときの「行け、行ってくれ、お願いだぁ!!」はもう声が掠れんがばかりの絶叫。その悲痛さが私的にはもう辛いの極致で呼吸困難状態に(涙)。あまりにも涙が止まらな過ぎて、マスカレードの場面がよく見えなかったほど…。猿のオルゴールに片手をかけ「この人生」というフレーズを歌い終わった後、感情が抑えきれなくなって声なき声で泣き崩れる姿に涙涙また涙…。
戻ってきたクリスティーヌの手を握る時は、優しくそっと包み込むような感じで。「I LOVE YOU」のフレーズには、素直で純粋な彼の中の本物の想いがこれでもかというほど詰まってました。クリスが完全に立ち去ってしまったのを確認した後、返された指輪をはめてそっと優しくキスをするのですが…この仕草がもう本当に柔らかくて温かいんですよ。あの雰囲気は、洋輔くんだから出せる空気感だと思う。

そのまま立ち去ろうとした時にクリスティーヌが脱ぎ捨てたウェディングベールが目に入り抱きしめるわけですが、この日は洋輔くんファントム、拾い上げようとする手が一時だけ止まる瞬間があったんですよね。クリスティーヌの面影を抱きしめる資格が自分にあるのだろうかといった戸惑いが感じられてものすごく切なく哀しかった(涙)。だけど溢れんばかりの彼女への想いは止められなくて、まるで零れ落ちた愛情のかけらを必死に拾い集めるかのようにベールを自分の胸に抱いて泣いていた…。

クリスティーヌがラウルと去っていく姿を見届けた後、最後のMotNを絶唱「夜の調べと共に」の最後の「に」の音に、彼女への気持ちを余すところなく乗せている想いがこれでもかというほど伝わってくる。そして、離し難い想いに飲み込まれそうになるのを必死に堪えてベールを手放す。つまりそれは、クリスティーヌへの募り募った愛しい気持ちを断腸の思いで断ち切るということ。玉座に座る時も肩で息をしていて…今にも息が止まってしまいそうな苦しみが伝わり激しく心揺さぶられました。あんなに最後まで苦しそうな姿見たの、初めてかもしれない。

最後のシーンのあまりの繊細で壮絶な感情表現に大きな衝撃を受けました。切なくて本当に哀しくてたまらないんだけど、洋輔くんが役者としてまた一歩大きな階段を上ったなという喜びも同時に湧いてきたかな。すごい瞬間に立ち会えたのかもしれないと思うと、本当に嬉しかったです。

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後述(上演35周年記念カーテンコール)

通常カーテンコールが行われた後いったん幕が下りて、拍手が鳴り響くなかアンドレ役の増田さんフィルマン役の佐藤さんが登場されました。ここから特別カーテンコールの流れになります。
増田さんからは『オペラ座の怪人』が日本上演35周年を迎えられたことの感謝、佐藤さんからは大阪千穐楽の日まで今後も変わらず頑張っていくことが告げられました。増田さんは定型文ながらも挨拶の言葉一つ一つにすごく熱がこもっていて、時折少し目を潤ませてるんじゃないかなといった雰囲気だったのがとても印象的でした。トークショーの時も切々とオペラ座愛を語っていらっしゃいましたものね。

このあと『オペラ座の怪人』のナンバーから♪プリマ・ドンナ♪のナンバーを歌いながらキャストの皆さんが順番に登場して客席に挨拶されていました。マスカレードがくるかとおもっていたら、プリマだったのがちょっと意外。でも、35周年の感謝を込めたカテコで歌うにはこのナンバーが一番ふさわしかったのかもしれません。
劇中では7重唱となるのでなかなか一人一人の歌詞を聴き取るのが難しいナンバー。でも特別カテコでは「そう、プリマ・ドンナ、ぜひ」という支配人’sのみのパートを男性アンサンブルさんが合唱、「プリマ・ドンナ歌を再び」のパートからは女性アンサンブルさんが合唱、ピアンジのパートやカルロッタのパートは河村さん永井さんが単独で歌う、最後は全員で主旋律を歌うといった感じだったのでとても聴き取りやすかったです。

女性ダンサー役の方たちは劇中のバレリーナ姿で華麗に舞うように踊りながら登場、メインのキャストさんたちは二人一組で登場といった形。メグ役の黒柳さんとセットで手をつなぎながら登場したのがにこやかな笑顔のブケー役の田辺さんだったのがちょっと面白い組み合わせでしたね。劇中では黒い笑顔しか浮かべていない田辺さんですが、素の姿はとても愛らしい笑顔でなんかすごく新鮮だった。

そして♪プリマ・ドンナ♪のナンバーが最後の盛り上がりに差し掛かった時に、満を持してファントム役の飯田洋輔くんが登場。出演者全員に見守られながら一番奥から現れた彼の姿を見た瞬間、感情が一気にあふれ出して大号泣してしまいました(涙)。記念すべき公演のカーテンコールで、主役として一番真ん中に誇らしげに立つ晴れやかな洋輔くんの姿を目の当たりにしたときは本当に感極まってしまった。あの時の感情はちょっとこれ以上言葉では言い表せない。この素晴らしい瞬間に連れてきてくれて、本当にありがとうと感謝の気持ちでいっぱいです。

歌が終わる時に「オペラ座の怪人35周年記念」が記された看板が降りてきて客席からは盛大な拍手が送られました。

この後は通常カーテンコールになるのですが、お手振りで舞台に捌けるってタイミングの時に洋輔くんが去り際35周年の看板に敬意を表していた姿がとても印象的でした。前日の29日にこの仕草をしたという事で話題になっていたのですが、翌日の30日にも同じように対応してくれて嬉しかった。
いつもはここで舞台終了といった流れになるのですがアナウンスが流れても拍手は鳴りやまずで、この日は閉じた幕の間からラウル役の光田くん、クリスティーヌ役の藤原さん、ファントム役の洋輔くんが1人1人現れて最後に3人でお辞儀といった一幕がありました。これも29日と30日両日あったようですね。

こんな感じで35周年記念公演は大いに盛り上がり幕を閉じました。

私の「オペラ座~」歴は今年で28年目に突入。色々な場所で、色々なキャストさんと出会いました。今回の記念公演を観ながらふと思い出したのは、大好きだった小林克人さんのこと。99年公演のラウル役(四季に入団されたばかりの頃で1度きりしか見れなかった)、2005年~2007年にフィルマン役で出演されていました。海劇場の千穐楽を迎えた同じ年の秋に天国へ旅立たれてしまって…、私はあの頃の小林さんの年齢をもう越えてしまった。
もし今もまだ元気で御存命だったなら、どんな役を演じられていただろう。はたまた歌の世界で活躍されていたのだろうか。

35周年の舞台、時折どこかに小林さんの魂が息づいているようにも感じてふと涙が零れました。今、天国からどのような想いでこの作品を観ているでしょうか。洋輔くんのファントムを見てどんなことを感じているでしょうか。色々なことが頭をよぎります。

ブロードウェイでは先日ロングラン公演が終了してしまったそうです(コロナ禍の影響が大きかったらしい)が、日本では大阪の次の公演地が横浜と決まり(2024年上演予定)まだまだ歴史を紡いでいきそうです。たくさんの人の想いを乗せて、これからも長く多くの人に親しまれていく作品でありますように。

私の大阪オペラ座観劇はまだ楽までいくつか続きます。洋輔くんに会えるシーズンはあと1回かなぁ。岩城さんのファントムにもそろそろ会いたいです。

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