ミュージカル『ファントム』東京公演 2023.08.18マチネ

全体感想とキャスト感想 -2幕-

2幕の始まりはビリビリという音ともに客電がチカチカしたあとバチっと落ちる演出が臨場感あふれててドキドキしますね。幕が開いて出てくるのは、エリックが気を失ったクリスティーヌを乗せた大きなボートを漕いでいる光景。
ここで彼が歌う♪君の音楽なしに♪のナンバーは何とも言えない悲哀がこもっていてのっけから泣ける…。特に「君無しの僕は鳴らない鐘のよう」と自らを表現するシーンがめちゃめちゃ切ないです(涙)。エリックにとってのクリスティーヌは出会ったあの瞬間から欠かせない存在になっていたのだなと思い知らされて胸が苦しくなる。

クリスティーヌをオペラ座地下の隠れ家にあるベッドに寝かせたタイミングでゲラールが血相を変えてやって来る。今すぐに彼女を介抱するべきだと説得するものの、その言葉はエリックには到底受け入れられないもので…。この時エリックが岡田ゲラールに当たり散らす場面があるんですけど、前回公演の時に見たよりもすごい激しさを増してるように見えるんですよね。まるで幼児が癇癪を起して暴れているかのようで、その歪んだ感情がより色濃く感じられるようになってる。これがまためちゃめちゃ痛々しくもあり…見ていて胸が苦しくなります(涙)。
ゲラールには何とか自分の気持ちを理解してほしいのに!っていうもどかしさも含まれてるように見える和樹くんのエリック。最初の会話シーンからずっと、彼の演じるエリックはゲラールを一番近い身内と感じている節がすごく感じられるので余計に切ないです…。怒りの気持ちを必死に抑えながら感謝の気持ちをなんとか伝えるシーンとかもう本当に辛い…。

狂気の表情を浮かべながらどこかへと去ったエリックを確認したゲラールは再びクリスティーヌの元を訪れ「一刻も早くここから逃げ出すんだ」と諭す。でも彼女はエリックのことを「師」として全面的に信頼していて聴く耳を持とうとしない。その様子を見てゲラールはついに誰にも明かせなかった過去の秘密を打ち明ける。
城田くん演出版になってから、ゲラールとベラドーヴァの物語がより切なく見えるようになりました。妻がいる身でありながらも、ベラドーヴァの美しい歌声に触れ愛しい気持ちをどうしても抑えきれなくなったゲラール…。それは決して許される恋愛ではないのだけれど、彼の気持ちが本物だということも痛いほど分かってしまうので責める気持ちにはなれないんですよね。

やがてベラドーヴァに新しい命が宿るわけですが、この場面で喜びのダンスを踊っていた彼女がゲラールの真実を聞いて大きなショックを受ける姿が非常に印象深い。真彩さんのベラドーヴァの気持ちを全てぶつけるような激しいダンスが観る者の心をどうしようもなく抉ってくるのです。
ゲラールとの恋愛が許されないものだと知った後のベラドーヴァの末路はあまりにも哀しいものだった。一人彷徨った挙句に怪しいクスリに手を出してしまうくだりがなんとも言えず痛々しい(涙)。この時の真彩さんの表情が恋愛している喜びとは真逆の破滅的なものになっていてすごい圧倒されてしまいます。

ゲラールに発見され孤独になったベラドーヴァの居場所となっていたオペラ座の地下室へたどり着いた後、彼女は一人の男の子を出産。それがエリックだったわけですが、妊娠中に摂取してしまった薬の影響がその子供に出てしまったというのが哀しい。だけど彼女はエリックを最後まで愛おしんでいた♪ビューティフル・ボーイ♪)。これがALW版「オペラ座~」と大きく異なるところですね。この作品における親子関係でエリックが悲劇的なのは、母親に愛されたという記憶が殆ど植え付けられないまま別れを迎えてしまった事だと思います。
成長し少年となったエリックはある日沼に映った自らの素顔を見て大きなショックを受けてしまう。その姿に心を痛めた父親のゲラールはそっと仮面をつけてやるのですが、それはエリックのためというよりも自らの”罪”を覆い隠す意味の方が大きいように見えて何とも言えない気持ちにさせられる。特に今回の岡田さんの演じ方はゲラールの”心の弱さ”をすごいクローズアップしてるように思えて余計切なくなるんですよね(涙)。

その頃エリックはカルロッタの楽屋を密かに訪れ、恐ろしい凶行に及んでしまっていた(カルロッタの最期)。この場面見るといつも思うんだけど、彼女の生命力って本当にすごいしぶとかったんだなと驚愕させられます(汗)。普通の人ならエリックの2撃目あたりで事切れてるよ(汗汗)。ここは和樹くんエリックの悪魔に魂売ったかのような唸り声も含めてこの作品唯一のホラー場面だと思ってる。

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恐ろしい場面の後は美しくも悲しすぎる物語が怒涛のように続く『ファントム』。直前の行動が嘘のように穏やかでオドオドした表情を見せながらもクリスティーヌとの束の間のデートを楽しむエリック。ここで一度客席降りがあるのですが、二人は大阪の時と同じく最前列前の通路を横切る感じでしたね。後方扉からはエリックの”従者”たちがワラワラと現れてゆっくり静かに舞台上に上がっていく感じ。
舞台上に戻ったエリックにクリスティーヌがふと見つけた小花を彼に手渡すシーンはとても感動的です。この時の和樹くんエリックの何とも言えない嬉しそうな幸せそうな表情があまりにも可愛らしくてピュアで…それだけで涙が出てしまう。真彩さんのクリスティーヌもより一段と母性が増していてその温かさがエリックの心を包み込んでいるかのような感動を覚えます。

小さなピクニックの時間を楽しんでいる最中、クリスティーヌはエリックの心にさらに踏み込むような発言をする。もしもあの時彼があの“詩”を彼女に見せていなければ、その悲劇は起こらなかったのかとも考えてしまうけど、遅かれ早かれゲラールから経緯を聞いてしまった彼女は同じことを聞いたのではないかなと思ってしまう。
思いもよらぬ彼女の言葉に混乱し心を乱されていく和樹くんエリック…。ここからの彼は本当に涙無しには見れませんよ(号泣)。必死に自分を守ろうとしているなかでクリスティーヌが告げる「愛していないと言われるまで諦めない」という説得の言葉はあまりにも残酷です…。彼女にとってのエリックに向ける”愛”は恋愛ではなくて”人間愛”だというのは分かるんだけど、クリスティーヌを恋愛対象として見ているエリックのことを想うと本当に居たたまれなくなる(涙)。

愛しいクリスティーヌの”願い”から逃げようとするエリックに、彼女は優しく温かい声で♪まことの愛♪を歌い寄り添おうとする場面も思い出すだけでウルウルきてしまう。この時の真彩さんの母性がすごくて、和樹くんエリックが泣きながらも次第に気持ちを持っていかれてしまう光景がなんとも言えず切ない(涙)。このナンバーを創り出したコピット&イェストンのコンビ、本当に凄すぎるよ!!聖歌のように美しく清らかで、残酷で…。見ていて色んな感情が泉のように湧きだしてくる。
そしてついにエリックはクリスティーヌの”願い”を叶える決意をするのですが…、その後の二人のやり取りがあまりにも哀しすぎて涙腺大決壊(泣)。腰を抜かしてしまったクリスティーヌに向けてそっと微笑み「だ…大丈夫?」と手を差し出す和樹くんエリックの優しさがさらに涙を誘う。真彩クリスティーヌも必死にその想いに応えようとしてるのは痛いほど伝わるんですよ。だけど、若い彼女はどうしても受け入れることができなかった…。こんな悲劇的なことってある!??ってくらい哀しくて仕方ないです、本当に(号泣)。

さらに哀しいのは、去ってしまったクリスティーヌの後ろ姿を呆然と立ち尽くしながら見つめている和樹くんエリックの背中。そこにあったのはただひとつ、”孤独”だけ。もう思い出すだけでも涙腺がヤバくなるよ(泣)。その後次第にこみ上げてくる激しい絶望に錯乱状態へと陥っていくエリックが痛々しすぎて…。激しい感情が爆発すると同時に森が崩れ去るあの演出を考えた城田くん、天才だと思うよ。その光景の美しさと哀しさの色があまりにも鮮やかすぎて胸が締め付けられる。
その場に慟哭しながら崩れ落ちる和樹くんエリック、その気持ちが鎮まるのを待たずに♪母は僕を産んだ♪のナンバーに入っていく演出がさらに辛い(涙)。前回公演の時よりもエリックの深い絶望感が伝わってきて大号泣ですよ…。このシーンは何度見てもエリックと一緒に泣くよなぁ。特に「愛して呪って…愛して」と歌うラストは堪らない気持ちになる、本当に(号泣)。

泣きながらシャンドン伯爵の元に戻ってきたクリスティーヌは事情を語るのですが、「今すぐ戻って先生に謝らなければ」というセリフが城田くん演出になってから違和感なく聞けるようになりました。クリスティーヌは本気でエリックの想いを受け止めようと努力してたからね…。だけどもう時すでに遅しだったというのが何とも言えない。
心が壊れてしまったエリックはついに暴走。多くの罪を重ねていく姿がもう痛々しくて見ていられないくらい哀しい(涙)。それと同時に、加治くんショレが変わり果てたカルロッタの姿を見てショックのあまり泣き崩れる場面も本当に辛いです(涙)。

凶行に及ぶ中で傷を負ったエリックを密かに匿うゲラール。エリックも彼なら助けてくれるはずだと信頼している気持ちがあるのが伝わってくるところがなんとも言えず切ない(涙)。深手を負い自らの命の期限を感じたエリックは「あなたも僕の顔を見たい?」と尋ねる。ここから先の二人のやり取りはもう嗚咽が漏れるのを必死に堪えるのが大変になるほど泣きました(涙)
あの会話を重ねていく中で、ゲラールがこれまでずっと抱えてきた罪悪感から少しずつ解放されていくようにも見えたかなぁ。そして和樹くんエリックが岡田さんゲラールから”真実”を聞いた時にどこか安堵したかのような表情を見せたのがめちゃめちゃ泣けるんですよ…。

岡田さんゲラールが”息子”であるエリックに語るように歌い始める♪君は私のすべて♪は心が震えまくって仕方ないです。微妙な距離感を保ってきた二人の気持ちが最後の最後にようやく一つになる瞬間はとても儚く美しい。もう少し早くにそんな関係を築いていればエリックは底知れぬ孤独と向き合わずに済んだかもしれないのにと思うと居たたまれなくなる(涙)。
歌の最後、エリックとキャリエールはお互いの時間を埋めるように抱き合い涙する。この時和樹くんエリックが大阪で見たとき以上に「父さん!!!」と叫びながら岡田さんゲラールの腕の中で慟哭してて…もうその光景見た時に自分が壊れちゃうんじゃないかってくらい泣いたよ(号泣)。

でも、二人の幸せな時間はシャンドン伯爵とクリスティーヌが現れた瞬間に儚く終わってしまうわけで…。嫉妬の感情に囚われたエリックは「クリスティーヌは僕のものだ!!」と狂ったように叫びながら恋敵に猛然と剣で向かっていくんですが、この時城田くんシャンドンは殆ど抵抗せず防戦一方なんですよね。まるでエリックの哀しみを察知したかのようにも見えて…それがまたさらに涙を誘いました(泣)。

そして、エリックの物語は彼が望んだ哀しい形で終わりの時を迎える…。この時の岡田ゲラールの慟哭は見ていて胸が張り裂けそうになるし、一部始終を上からじっと見つめている城田シャンドンの哀しげな瞳もすごく印象深い。
ラスト、今にも消え入りそうなエリックを抱きながら真彩クリスティーヌが歌う♪ビューティフル・ボーイ(リプライズ)♪はとても温かく美しく、そして優しさに溢れてました。

大阪の時もそうだったけど、今回の東京公演も最後まで溺れるくらい泣いた観劇だった。改めてミュージカル『ファントム』への思い入れが自分の中でとてつもなく深いことを再確認しました。こんな素敵な作品を創り上げてくれたカンパニーの皆さんには感謝しかないです。

次回は楽直前の9月に観劇する予定。これが生で見れる最後の『ファントム』なので心して向かおうと思います。でも、本当に待ちに待った城田くん演出公演の再来だったので…本当は終わってほしくない気持ちがものすごく強いです…(涙)。

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後述

カーテンコールはこの日も激アツで盛り上がりました!!私はもう直前まで滂沱の涙を流しまくって精魂使い果たしたみたいな状態になってしまっていたのですがw、この舞台だけはスタンディングで讃えずにはいられないっ!!キャストのみなさんが舞台中央に勢ぞろいして、上の方のオケの皆さんの姿も現れて…その光景を見てまた自然と涙が溢れて胸いっぱいになってしまった。

最後のカテコのときには和樹くんと真彩さんがカップルで登場して客席に手を降ってくれるのですが、和樹くん、このときもずっと”エリック”なんだよね。ちょっとオドオドしながら恥ずかしそうに手を振る姿になんだか心が温かくなるし救いを感じます。あの瞬間までが『ファントム』の物語なんだと思う。

そして…東京公演が中日を迎えたタイミングで、ようやく舞台のダイジェスト動画が出ました。この編集が本当にニクイくらいに泣かせにきてて…。冒頭から涙腺がブワッと緩んでしまったではないですかっ(←褒めてます)。

それと同時に発表されたのが、和樹くんの千穐楽と城田くんの大千穐楽の2公演ライブ配信決定のニュース!!

大阪公演の時に大きいカメラが何台か入っているという情報があって、そのなかに”ライブ用の撮影機材”もあったらしいというのを知った時に「もしかしたら楽の配信あるのかも!?」と確信めいた期待をずっと抱き続けてきたんですよ。それが本当に現実のものに!!!楽公演はFCでも落選してしまったので(苦笑)このニュースは本当に本当に嬉しいです(涙)。ありがとう、梅芸!!!
この勢いで、今公演のBlu-ray化も実現していただけないかなぁ…なんて。高望みになるかもしれないけど、前回公演からまた更に深みを増した今回の舞台をぜひとも円盤として残してほしいという気持ちは強いです。

2019年公演版DVD(2種類)発売中

過去のミュージカル『ファントム』感想一覧

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