劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』東京公演 2020.11.15マチネ

主なキャスト別感想

佐野正幸さん(オペラ座の怪人・ファントム)

佐野さんのファントムは感情の起伏を惜しみなく表に出してくるので大好きです。クリスティーヌに対して優しい顔を見せるときにはトコトン甘く歌いますが、ラウルが絡んできて嫉妬に駆られると鬼のようなむき出しの感情を顕わにする。この不安定さが佐野ファントムの最大の魅力だと思います。

特にクリスティーヌへの想いが届かずに苦悶する表現力はピカイチ。エンジェル像の上で嘆き悲しむシーンも、クライマックスの隠れ家でラウルとクリスティーヌに嫉妬心を剥き出しにして精神的に崩壊してしまうシーンも、見ているこちらにその痛みが直接伝わってきて切なくて本当に泣けるんですよね…。

そしてラスト、クリスティーヌから指輪を渡されて初めて自分の口から愛を告げる場面は、まっさらでピュアな気持ちがありったけ込められてきてめちゃめちゃ感動的でした(涙)。このあたりの表現力が佐野さん、素晴らしいです。

ただ一つ残念なのが『ミュージック・オブ・ザ・ナイト』の最後の高音の歌い方が不安定だったことかなぁ。最後の「中に~~」のフレーズは静かにスーーっと伸びていく感覚が欲しいところなのですが、歌い方を微妙に変えてすぐに音が切れてしまっていました(汗)。
2幕ラストの「夜の調べと供に~~~」の伸ばしっぷりはとてもドラマチックでロングトーンが生きていただけに、ちょっともったいないなとも思ってしまった。ファントム役の連投が続き大変だと思いますが、頑張ってほしいところです。

山本紗衣さん(クリスティーヌ)

紗衣さんのクリスティーヌは3年前の広島公演以来だったのですが、その当時よりもさらに丁寧にクリスティーヌの心の機微を表現されていてとても素晴らしかったです!歌声の安定感も抜群ですし、そこに乗せる感情の乗せ方も非常に巧い。

今回の演出は今までにも増してクリスティーヌの葛藤の部分を丁寧に表現していることもあり、より深く感情移入しながら見ることができました。

特に印象的だったのは、ファントムの仮面をはがしてしまった後に彼の哀しみを察知してそれを返す場面。全体感想でも少し触れましたが、あの瞬間の紗衣さんの演じ方がとても柔らかく懐の大きさみたいなものを感じさせられてとても感動したんですよね。
あの時の芝居があったからこそ、2幕クライマックスでファントムと対峙するシーンにより大きな説得力が生まれていたような気がします。

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加藤 迪くん(ラウル)

加藤君は以前『人間になりたがった猫』のスワガード役を演じている時に一度見たきりだったので、今回のラウル役をとても楽しみにしていました。スワガード役も若々しく生き生きと演じていてとても好印象だったんですよね。

で、よく見てみると…加藤ラウルは髭をつけてない!!いや~、久しぶりです、髭無しラウル見たのは(笑)。柳瀬大輔さんが初期のラウルを演じていた時以来じゃないだろうか(それより後にもどなたかで髭無しラウル見たことあるかもですがw)。あまりにも久々だったので逆に新鮮でした。たまに”ラウル”に見えなくなることもww。
っていうか、加藤ラウルの横顔がなんとなく平岳大さんに見えてしまうことも。それくらい精悍でカッコいいビジュアルでした。

まだラウルとしてのキャラを完璧に掴みきれてない部分もあるかなって思うこともありましたが、若さゆえの突っ走り感はすごくリアルで面白かったです。お坊ちゃま感はあと一息って感じたんですけど、前に突き進む若さゆえの危うさみたいなものは印象深いものがありました。

歌声はとても聞き取りやすかったし歌唱力もバッチリです。今後さらなる磨かれたラウルになるのを期待したいと思います。

河村彩さん(カルロッタ)・山口泰伸さん(ピアンジ)

河村カルロッタと山口ピアンジの組合せは2年前の京都と同じでした。

河村さんのカルロッタはかなり気が強くて周りを振り回しまくるんですが、ピアンジに対してはけっこう柔らかい雰囲気出してるんですよね。そんなところが好き。
山口ピアンジはとにかく可愛いですっ!ハンニバルのときに必死に象の上によじ登ろうとしてるシーンなんかはめっちゃ萌えます(笑)。カルロッタにも忠実で彼女を愛してるっていうのが伝わってきて見ていると癒されるんですよね。

戸田愛子さん(マダム・ジリー)・松尾 優さん(メグ・ジリー)

戸田さんのマダム・ジリーは厳しさのなかにも愛情深さが随所に感じられるところが好きです。ただ厳しいだけではなく、時には母性のようなものを感じさせるお芝居が魅力的。特にめぐに対する視線が厳しさの中に温かさがあって好きです。

松尾さんのメグ・ジリーは今回初めましてだったのですが、とてもキュートで可愛らしく好印象でした。メグ役の女優さんは経験が浅い方が演じる機会がけっこう多いので歌が不安定に感じる人も多いのですが、松尾さんはとても丁寧に歌いこんでいたし歌唱力も申し分ありませんでした。将来が楽しみです。

増田守人さん(アンドレ)・平良交一さん(フィルマン)

増田アンドレと平良フィルマンはベテランのコンビですね!もう何度もお二人の組合せで見ていますが、安定感ハンパないです。

舞台芸術に興味津々でトラブルが起きた際にも必死になってる増田アンドレに対して、舞台芸術にトンと興味がなくて投げやり的な平良フィルマンの凸凹感が面白い。でも話が進んでいくにつれて平良フィルマンもトラブルを収めようと必死になっていくわけで、なんだかんだで良いコンビネーションなんですよね(笑)。

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後述

今回は新・秋劇場の2階席サイド寄り(S席ゾーン)からの観劇でしたが、とても見やすかったです。前方だとオペラグラス無しでもほぼほぼ役者さんの表情が見えます。それに、2階からだと舞台の奥行きも見えてくるのでより作品を楽しめたような気がします。
ファントムが上から現れるシーンが見やすかったり、シャンデリアが目線まで登ってきたりと2階ならではの楽しみ方もあるのでおススメです。

新しい劇場で再スタートを切った『オペラ座の怪人』。ロングラン予定なので今後新しいキャストもデビューしていくのではないでしょうか。個人的にはやっぱり飯田洋輔くんの登場を心待ちにしています!!洋輔くんのファントムを実際の作品で観ることが、ファンになってからの私の夢でもあるので(ちなみにファンになって今年で10年になります)。

新型コロナ禍の影響がまだまだ長引きそうなので色々と心配も多いですが、1公演でも多く上演できることを願ってやみません。

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