シアタークリエで上演されたミュージカル『RENT』を観に行ってきました。東京遠征2公演目の観劇になります(前日は「太平洋序曲」)。
現在は少し落ち着いてきましたが、2年半前は新型コロナ禍全盛期で舞台上演にも大きな影響を及ぼしていました。この『RENT』もそれに翻弄されてしまった作品のひとつ。遠征しマチネを観劇したあとソワレに行こうと思ったら劇場前で”中止”を知るという体験をしたあの日のショックは忘れられない…(その当時の観劇記はこちら)。私はマチネだけは見られたのでまだマシだったけど、それでも開演直前の中止を知るというのは本当に大きな衝撃でした。
それを経てのリベンジ。あの日観られなかったキャストにも、ようやく会うことができた(変わってしまったキャストの方も数名いましたが)。改めて、舞台公演を観ることができるありがたさと幸せを実感した次第です。
今回はマチネとソワレの連続観劇だったので1日で全キャストを制覇。先行で両方のチケットも確保できていたのですが、けっこう後ろの席でオペラグラスが大活躍。それでもクリエは比較的後ろでも裸眼で表情を見ようと思えば見えるし段差もあるので前の人で見づらいといったストレスがないのは良かったです(前と後ろの列の隙間が狭いんですけどね 汗)。
チケットの売れ行きも好調なようでマチネは満員御礼が出ていました(ソワレは見てないんだけど多分出てたと思う)。劇場付近にはチケットを求める人もチラホラ立っていてビックリ。それだけの人気演目になったんだなぁと感慨深いものがありました。
ビックリといえば…今回のパンフレットの大きさ!!新聞紙とほぼ同じ大きさのが出てきてびっくり仰天ww(っていうか、作りそのものが新聞紙みたいで油断するとバラバラ落ちるので要注意)。たしか前回はびっくりするほど小さいパンフだったような気がするんだけど…、落差ありすぎでしょう(汗)。一応パンフを入れる封筒も一緒に渡されますが、購入予定の方は大きめの手提げを持参していったほうが良いと思います。
こういうのも良いんだけど、ただ、パンフレット収集癖のある私としてはできるだけA4サイズ内に収めてほしいかなぁ・・・なんて。収納するのに難儀するんだよねぇ(←約30年分あるものでww)。
これまでのRENT感想(来日公演含む)
以下、超ネタバレを含んだ感想になります。
2023.03.14マチネ・ソワレ公演 in シアタークリエ(東京・日比谷)
※あらすじと概要については2022年来日公演のレポートを参照してください。
上演時間は約2時間45分。内訳は、1幕が1時間20分(80分)、休憩25分、2幕が1時間(60分)になります。
主なキャスト
- マーク:平間壮一<マチネ>/花村想太(Da-iCE)<ソワレ>
- ロジャー:甲斐翔真<マチネ>/古屋敬多(Lead)<ソワレ>
- ミミ:八木アリサ<マチネ>/遥海<ソワレ>
- エンジェル:百名ヒロキ<マチネ>/RIOSKE<ソワレ>
- コリンズ:加藤潤一<マチネ>/SUNHEE<ソワレ>
- モーリーン:佐竹莉奈<マチネ>/鈴木瑛美子<ソワレ>
- ジョアンヌ:塚本直
- ベニー:吉田広大
アンサンブルキャスト
チャンヘ、長谷川開、小熊綸、ロビンソン春輝、吉田華奈、Zinee
ミュージカル「RENT」はミュージカルを中心に活躍している俳優さんだけでなく様々な分野で活躍しているすごい実力者が集結するので、アンサンブルさんたちのレベルが安定している上にとても高いです。ソウルフルな歌を得意とする方やロックな歌い方を得意にする方など様々。そんな個性が一つにまとまり抜群のハーモニーを奏でるのがこの作品の大きな魅力でもあるなと改めて感じました。
全体感想
マチネとソワレを観劇して思ったのは、こうもカラーが違うものになるのか!ということ。
マチネは平間くん×甲斐くん×百名くん×八木さん×佐竹さん×加藤くんといった組み合わせで、どちらかと言うと舞台公演を中心に活躍しているメンバーが揃っていて。すごい”ミュージカル”的な雰囲気のある「RENT」でした。この演目自体が”ミュージカル”ではあるんだけど、ロックミュージカルなので全体的にはポップな作品だと思うんですよね。だけど、マチネメンバーで見たら”歌”で攻めるというよりも”芝居”で魅せていくといった色合いが凄く強かったなぁと感じました。
ソワレは花村くん×古屋くん×RIOSKEくん×遥海さん×SUNHEEくん×鈴木さんといった組み合わせで、歌手活動をしているメンバーが揃っていたなという印象。それゆえに舞台の雰囲気がものすごく”ロック”でした。もちろんしっかりとしたお芝居も魅せてくれていたんだけれども、全体的に”歌”に勢いがあったなぁという印象が強かった。めちゃめちゃ歌唱力高かったしね。
客席の雰囲気もマチネとソワレではかなり違ってて。マチネはじっくりとお芝居を堪能したい感じの人が多いかなといった感じで、ソワレはライブのようにノリノリなお客さんが多く歓声がそこかしこから聞こえてきて盛り上がってました(特にMooooのシーンのソワレの客席の熱量がすごかった!)。まるで違う演目を見たかのような満足感がありましたね。
『RENT』は大好きな作品で2010年公演の時から上演が決まるたびに見ているのですが、今回ほど”愛”というワードが心に強く響いてきたことはなかったかもしれません。
剥き出しの感情で必死に”愛”を求める若者たち、迫りくる”死”の恐怖と必死に戦う若者たち、そんな彼らを見てものすごく『生きる』ことの意味を考えさせられました。みんなもがいてもがいて、挫折しそうになりながらも愛にすがろうとして生きることを諦めようとしない。辛くて苦しい中にも必ずどこかに希望の光みたいなものがふと差し込んできて、「生きている、それだけで幸せなんだ」といったメッセージみたいなものを感じました。
2020年公演の時から今回の2023年公演の間には様々な未曾有の出来事が起こっています。コロナ禍もそうですが、個人的には大きな戦争が1年以上も続いていることが本当にショックで…。「RENT」で描かれている”愛”を伝えることの難しさや”生きる”ことの難しさと尊さの物語を目の当たりにして、なんだか無性に心が震えていつも以上にこみ上げてくるものを抑えることができませんでした。
世界がもっと”愛”に満ちたものであればいいのに…。「RENT」に出てくる若者たちのように夢中で”愛”を見つけに行けばいいのに…。生きたいと願う人の命を簡単に奪うことなんて決してあってはならないのに…。色んなことが頭の中を巡ってしまった。
ちょっと感想が脱線してしまった(←勝手に独りよがりですみません 汗)。
楽曲はもう本当にどれも魂を揺さぶるものばかりで、思いが溢れすぎて感想が上手くまとめられません(汗)。
電源が切れて真っ暗ななかでマークが「飛んだよ!」と叫んだ直後に始まる激しいロックナンバー♪RENT♪はもう、私の心臓が跳ね上がりまくり!!まさに「飛んだよ!!」状態で体中後が逆流するかのような興奮が駆け巡るんですよねw。体が動きそうになるのを必死に抑えなきゃならないほど(笑)大好きなナンバー。
ロジャーが限られた命を感じながら上手く作曲できないことの苛立ちと焦りを歌う♪One Song Glory♪も泣けるんだよなぁ。生きることを諦めているようででもやっぱり生きることに執着したくて、みたいな複雑な葛藤が感じられる印象的なナンバー。
♪Today 4 U♪はもうエンジェルの華やかなオンステージを素直に楽しむ!
♪Tango: Maureen♪はマークとジョアンヌが恋のライバル同士として対面しつつもどこか意気投合していくところが面白い。
♪Out Tonight♪のミミの圧巻ステージからの♪Another Day♪は何度観ても心が震えるし泣きます。ロジャーの孤独な心の中に必死に入っていこうとするミミ。そんな彼女を受け入れたい気持ちが湧き上がるのを必死に否定しようとするロジャー。自分の病気のことが足枷になってどうしても前に進めない彼の心情を思うと切なくて切なくて涙が止まりません。
ライフサポートの場面もなんだか胸が苦しくなるんですけど、ゴードンが登場するシーンを見るといつも海宝くんのことを思い出します。まだ今のようにメインで活躍する以前、この役を演じてたんですよね。あの時から大成するんじゃないかというオーラがあった。
♪Santa Fe♪から♪I'll Cover You♪は、エンジェルとコリンズがどんどんお互いを受け入れて愛を注いでいく過程が微笑ましい。
♪Over the Moon♪はモーリーンのワンマンショー。初めて見る人はこのシーンが一体なんなのかよく分からないかもしれませんが、ベニーが自分たちを追い出そうとしているということを誇張して抽象的なパフォーマンスで訴えてる、という捉え方で見るといいかもしれません。
♪La Vie Bohème♪は1幕ラストの一番勢いがある場面。ここも歌詞の意味を理解しようとするとなんだかよく分からないと思うのですが、言葉遊びを交えながら彼らが自由に表現することを感情むき出しにして訴えている、って感じに捉えればいいかなと。
この場面のクライマックスでロジャーはミミが自分と同じ病だと知るんですが、その時の彼の抑えていた感情が解放されていくような表情がとても印象深いんですよね。同じ気持ちを分かち合える人に出会えたんだっていう安堵感みたいなのもあったんじゃないかなと。
♪Seasons of Love♪
「525,600分 この時を、どう数える、一年を」
毎回見るたびにこのフレーズに涙する私。今年は特に沁みたなぁ…。1分1秒も無駄な時間なんてないんだっていう想いがいつも以上に響いてきて、気がついたらぼろぼろ泣いてた。
♪Take Me or Leave Me♪はジョアンヌとモーリーンの激しい痴話喧嘩w。お互いに「ありのままの私を見て!!」って訴えてるんだけど、それを受け入れるのは愛情があってもすごく難しくて。面白いんだけど考えさせられるシーンです。
で、この時に微妙な関係になったロジャーとミミ、別れが迫るコリンズとエンジェルが抱き合いながらジョアンヌとモーリーンのやり取りをじっと見つめてるんですよね…。この光景がなんだかとても切なくて苦しい。さらにもっと切ないのが、仲間たちから遠く離れた暗い場所に一人でぽつんと座ってみているマーク。彼の孤独が色濃く出る演出に胸が痛くなります。
♪Without You♪は弱りゆくエンジェルを必死に支えようとするコリンズの姿がとにかく泣けます。その傍らで関係に亀裂が入り始めたロジャーとミミがいて。ロジャーとまっすぐ向き合えず薬に走ってしまうミミの苦しみ、ミミを信じたいんだけどそのことを伝えられず苦しむロジャー。最後に二人が刹那の中で抱きしめ合う姿は胸打たれます。
♪Contact♪はかなり生々しい人間を描いた場面。表現もセリフもけっこう際どいんですが(汗)エンジェルの最後の「生」への激しい執着を描いているような気もしていたたまれない気持ちになります。最後のコリンズの「終わった」のセリフがとにかく哀しい。
♪I'll Cover You <リプライズ>♪はコリンズが愛するエンジェルに魂の限りを叫ぶ歌でもあり…何度聴いても涙がこみ上げてきて仕方ないです。
エンジェルとの別れをきっかけにロジャーはますますミミを遠ざけるようになってしまう。愛しているのにミミを失ってしまうかもしれない恐怖に襲われて怯えたように逃げ出してしまうロジャーが哀しい。去っていくその背中を♪Goodbye Love♪と千切れそうな気持ちで伝えられなかった愛を必死に叫ぶミミも本当に哀しいです。
そして、「一人だけ生き残る」と核心を突かれて言葉を失ってしまったマークも辛い。たくさん友だちがいるように見えて実は彼は常に孤独を抱えていて。彼のような疎外感を感じてしまうことは私にも経験があるのでめちゃめちゃ感情移入してしまいます。
ロジャーはミミから遠ざかるように逃げ、マークは寂しい自分の気持ちを押し殺すように望まない仕事を受けていましたが、結局最後には”本当の自分”を取り戻していきます。その心の動きを歌った♪What You Own♪は二人の再生へ向かう激しいエネルギーが込められていて胸が熱くなりました。
クライマックスでミミが予想外の形でロジャーたちの前に現れる。♪Your Eyes♪は今までずっと言えなかったロジャーのミミへのありったけの愛の気持ちが込められていてとにかく泣けます…!!このあとさらに予想外のことが起こるわけですが、ミミの「エンジェルに会ったの」というセリフには今回も号泣してしまった。私はやっぱりあのシーンはこの作品の”希望”だと思う。
♪Finale B♪で仲間たちが全員笑顔で集まって「No day but today」と声高に歌い上げる。その光景のあまりの眩しさと尊さに嗚咽してしまうんじゃないかってほど涙が止まりませんでした。毎回ラスト本当に泣くんだけど、今回はマチネもソワレもどちらも大号泣だった(涙)。
かなり長くなってしまったのでキャストの感想は次のページにて(そちらもやたら長いので要注意 汗)。