ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』観劇のため大阪遠征してきました。
もうこのまま永遠に続くんじゃないかとすら思える新型コロナ禍の世の中、私は未だにワクチン接種の機会を得ず…まだまだ緊張感をもって感染対策を徹底しての観劇となりました。
もしかしたらM!のように大阪公演が中止になってしまう危惧もあったため、6月にあった東京公演のライブ配信を一足先に見たのですが・・・なんとか無事に上演にこぎつけることができて本当によかったです。今の時期はカンパニーの皆さんも「最後まで上演できるのか」不安な気持ちでいると思います。そんな心境のなかでもこうして大阪までたどり着いてくれたことに感謝の気持ちしかありません。
やっぱり劇場で観る舞台は気持ちの揺さぶられ方が違いますね。冒頭のアンサンブルさんたちの迫力のダンスとその息遣いを肌で感じた時、心の内側が熱くなるのを感じました。特に今回は両日共にかなりの前方席だったので、目の前で繰り広げられる圧巻のパフォーマンスになおさらドキドキさせられっぱなしでした。
今は舞台へ足を運びたくても運べない状況の方も多い。一日も早くそんな日々が解消され普通に劇場へ行くことができる時が訪れてほしいと切に思います。
グッズは今回もかなり充実。クリアファイルのデザインはめちゃくちゃカッコいいです。さらにビジュアルブックではパンフに載っていない今公演の舞台写真も掲載されているので買い(笑)。2枚一組でメインキャストのブロマイドや舞台写真も販売されてました。こういうの、弱いんだよねぇww。
劇場内では常にスタッフさんが会話を控えるようにと注意喚起を行っていて、全体的にかなり静かな印象。前回M!に行ったときよりも緊張感を持った場内で安心して観劇できました。先日遠征した東京の四季劇場がかなり騒がしかったのでなおさらそう感じたかも(汗)。
いつまでこういう状況が続くか分かりませんが…、事態が落ち着くまでは観劇する側もより一層注意していくことが必要だと思います。
それから、2019年公演に続いて今回の2021年版のDVDも発売が決定したそうです!たぶん配信の時の映像かな。特典も豪華なのでたぶん今回も購入すると思いますww。
以下、ネタバレを含んだ感想です。
2021.07.05~06マチネ公演 in 梅田芸術劇場(大阪)
主なキャスト
7月5日マチネ
- ロミオ:甲斐翔真
- ジュリエット:伊原六花
- ベンヴォーリオ:前田公輝
- マーキューシオ:新里宏太
- ティボルト:・吉田広大
- 死:堀内將平
翔真くんと六花ちゃんのロミジュリコンビ、とても初々しくて可愛くて何度も感情移入させられました。六花ちゃんジュリエットが翔真くんロミオを明るく照らしてくれてるって感じだったかな。ひたむきに愛を貫こうとする二人の姿がとても感動的でした。
7月6日マチネ
- ロミオ:黒羽麻璃央
- ジュリエット:天翔愛
- ベンヴォーリオ:味方良介
- マーキューシオ:大久保祥太郎
- ティボルト:・立石俊樹
- 死:小㞍健太
麻璃央くんと愛ちゃんのロミオとジュリエットのコンビは、とにかく…キラッキラしてました!恋することへの喜びにあふれた二人は、まるで王子様とお姫様のよう。麻璃央ロミオが初々しいお嬢様な愛ちゃんジュリエットをどんどん魅了していくのが分かったし、なんていうか…少女漫画の世界観のような輝きを放っていたのがとても印象深かったです。
全日キャスト
- キャピュレット夫人:春野寿美礼
- キャピュレット卿:松村雄基
- 乳母:原田薫
- ロレンス神父:石井一孝
- モンタギュー卿:宮川浩
- モンタギュー夫人:秋園美緒
- パリス:兼崎健太郎
- ヴェローナ大公:岡幸二郎
シングルは新キャストが3人、前回公演でヴェローナ大公を演じていた石井一孝さんがロレンス神父に、キャピュレット卿を演じていた岡幸二郎さんがヴェローナ大公に役替えをされていました。
あと毎回不思議に思うんですが…、キャピュレット家はかなり濃厚なドラマがあるのになぜモンタギュー家は影が薄いのかなぁと(苦笑)。特にモンタギュー卿の扱いが軽すぎて謎ww。原作をまともに読んだことはないんだけど、主人公のロミオの父親でもあるのだからもう少し見せ場を作ってほしかったよ、オリジナルの制作陣。せっかく宮川浩さんがキャスティングされているのに非常にもったいないなぁと…、そこだけがいつも不満だったりします(苦笑)。
あらすじと概要
原作は言わずと知れたウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ロミオ&ジュリエット」で、2001年にフランスでロックミュージカル作品として初演されました。作詞・作曲はジェラール・プレスギュルヴィック。
日本では2010年に宝塚歌劇団により初演された後、ホリプロ・梅芸・TBSの企画ミュージカルとして小池修一郎さん演出のもと2011年に赤坂ACTシアターで上演され現在に至っています。
2011年公演でロミオを演じたのは城田優くんと山崎育三郎くん、ジュリエットを演じたのは昆夏美さんとフランク莉奈さんでした。優くんといっくんはそれまでも様々な作品で活躍していましたが、昆ちゃんと莉奈ちゃんは当時ほぼ全くの新人さん。今ではすっかり演技派の女優さんに成長して…なんだか親のような気持になってしまいますw。
2019年公演時には上演回数200回越えを達成し、特別カーテンコールが大いに盛り上がりました。
そして2021年の今年、ホリプロ制作で初演されてからちょうど10年の節目を迎えたというロミジュリ。もうそんなに経つんだなぁと思うと感慨深いものがあります。これからもどんどん上演記録を更新してほしい作品です。
簡単なあらすじは以下の通り。
モンタギュー家とキャピュレット家が代々憎しみ合い、争いを続けてきたイタリアの街・ヴェローナ。治まらない両家の争いに苦悩した大公は「今後、争いごとを起こした者を処する」と言い渡す。大人たちの確執とは無縁の両家の子供達、ロミオとジュリエット。ふたりはそれぞれ未来の大恋愛を夢見ている。
ある日、キャピュレット家ではひとり娘のジュリエットに、大富豪パリス伯爵を求婚者として紹介しようと舞踏会を開催。そこへ、モンタギュー家のひとり息子ロミオが友人のベンヴォーリオ、マーキューシオと共に忍び込む。
その舞踏会で、ロミオとジュリエットは運命的な出会いをはたし、一目惚れの恋に落ちた。舞踏会にモンタギュー家の侵入者がいることに気付いたティボルト(ジュリエットの従兄弟)の介入で、お互いが敵対する家の者だと知り、ショックを受ける。しかし気持ちをおさえきれないふたりは、密かにジュリエットの部屋のバルコニーで永遠の愛を誓い合う。
<公式HPより抜粋>
元々はダンテの『神曲』に出てくる史実(1302年、モンテッキ家のロメオとカプレーティ家のジュリエッタが恋に落ち、対立する家の抗争に巻き込まれ心中してしまった事件)をモチーフにイタリアの作家が書いた物語を、シェイクスピアがそれを下敷きに『ロミオとジュリエット』の戯曲を完成させたと言われています。
モンタギュー家とキャピュレット家がなぜあれほどまでに憎しみ合い争い続けているかの詳しい背景はミュージカルでは描かれていませんが、そこには根深い派閥の対立が影響していました。
かつてイタリアでは支配権をめぐってローマ教皇グレゴリウス9世と皇帝フリードリヒ2世が激しく対立。それに伴い、イタリア各都市でローマ教皇を支持する「教皇派」と神聖ローマ帝国を支持する「皇帝派」に割れ各地で抗争が繰り返されてきました。
『ロミオとジュリエット』の舞台となった14世紀のイタリア・ヴェローナでも二つの勢力が激しく対立していたそうです。ロミオが生まれたモンタギュー家は「皇帝派」、ジュリエットが生まれたキャピュレット家は「教皇派」を支持していたという背景があるため、二つの家は戦う運命にあったということなのです。つまり、ちょっとした諍いレベルではなく、DNAに互いを憎悪する感情が組み込まれてしまっていたというわけ。
この背景を頭に入れたうえでロミジュリを見ると、より二人の悲劇性が浮き彫りになり物語を堪能できると思います。
全体感想 1幕
基本的に前回公演とセットや演出は変わっていませんね。鉄骨を組み立てた巨大セットは客席からだと人物の動きがよく見えて面白いんだけど、それと同時にミシミシ音がするたびドキリとしてしまう(汗)。あんな不安定なところで動き回れる役者さんたちは本当にすごいなと改めて思いました。
舞台奥に少しリアルな背景映像が映し出されるのは今回からかな。光の演出がとても素敵なのであまり映像に頼った演出はしなくていいかなって感じなんですけど、シーンによっては背景の映像が加わることで立体的に見えていたところもあり、そこはよかったなと思いました。特にヴェローナでの対立シーンは町に奥行きが生まれて若者たちの抗争がよりリアルなものに見えました。
キャストは今公演からメインがほぼ一新され全体的に若返った印象が強いです。黒羽くん以外のダブルキャスト陣はロミジュリ初参加で、名前を知らない若い役者さんたちが殆どでした。ダンサーさんもかなりメンバーが入れ替わっていたようで、これまでとは違った勢いを感じることもしばしば。
一人一人を見ていくとまだ粗削り的なところも見受けられたのですが、それを補って余りあるほどの前にグワーーっと前進していくようなエネルギッシュなパワーは見ていてとても清々しかったし、若さゆえの過ちといったシーンがこれまで以上にリアルに見えてくる利点が大きかったです。これからが楽しみな役者さんたちを新しく発見できたのも今回の楽しみ方の一つでもありました。まだまだ粋の良い若手役者さんがたくさんいると思えたのがとても嬉しかった!
この作品の魅力は何といっても心湧きたつようなロックミュージックの数々です。フランスミュージカルって私の心のツボを要所要所で突いてくるナンバーが多いので、見るたびにワクワクするし何度も行きたくなっちゃうんですよね(笑)。以下、好きなナンバーの場面についていくつか挙げてみたいと思います。
ヴェローナ
オープニングの「死のダンサー」が奏でる世界各国で繰り広げられている争いをバックにした妖しげな雰囲気から、幕が上がるとバーンとヴェローナの町で互いに噛みつかんばかりの勢いで乱闘しているモンタギュー家とキャピュッレット家の若者が出てくる。その熱量はハンパなくて毎回ドキリとさせられてしまいます。「静」から「動」への落差がすごいんですよね。
そしてこのシーンでの見所は何といっても争いを止めに入るヴェローナ大公の登場シーンです。争いのパワーに割り込んでくる大公の存在感には圧倒されますよ!ここで作品へのテンションが一気に高まっていく感じがして個人的にとても印象深い場面です。
憎しみ~いつか
両家が解散した後にお互いの母親が「憎しみ合うのはもう終わりにしてほしい」と訴えるようにして歌うナンバー。テイスト的にはちょっと演歌に似たような濃さがあるなといつも思うんですが(笑)、ここでは特にキャピュレット夫人とティボルトの妖艶なやりとりに目を奪われます。まともに原作を読んだことがなかったので、初めて見たときには「え、そんな関係になってたとは!」と衝撃受けたっけww。
もう一方のモンタギュー夫人のほうは比較的平和なんですが、今回見たらマーキューシオがヤンチャで手品のようにいろんなところからナイフ出してて、ベンヴォーリオが「まだ持ってるのかよ~」みたいにビビったり呆れたりしてるのが可愛かった(笑)。
このあと、ベンヴォーリオがモンタギュー夫人に頼まれて親友のロミオを探すシーンになるんですが…、ここで現代の文明の危機である”スマホ”が活用されるんですよね。もう再演で何回も見ているシーンなので「出たよ」と苦笑いする余裕は出てきたんですがwww、好きか苦手かというと…まだ苦手意識の方が強い(苦笑)。
やっぱりこの作品の世界観に”スマホ”は合わないと思っちゃうんですよねぇ…。そもそもロミジュリの作品は「古典」の部類でもあるので、どうしても現代社会の危機が出てくると異質に感じてしまってふと現実が見えてしまうのが個人的に好きではありません。
♪いつか♪は、諍いに参戦していなかった心優しきモンタギュー家のロミオと、恋に憧れるキャピュレット家の少女ジュリエットが「いつか素敵な人と出会える」予感に胸膨らませながら歌う美しいナンバー。この曲は本当に美しくて、心の奥がジーンと温かくなります。
結婚の申し込み~結婚のすすめ
ジュリエットに結婚の申し込みをするパリス伯爵は毎回色々な役者さんが個性豊かに演じてくれていてとても楽しめる場面。今回の兼崎によるパリスはビジュアルからしてめちゃめちゃ面白かったですw。キャピュレット家としては借金の肩代わりとしてパリス伯爵と娘を結婚させようと目論んでいたわけですが、当のジュリエット本人がこれを全力で拒否w。たしかにあの伯爵とじゃ結婚生活うまくいかないだろうなというのが見ているこちらもすぐに察してしまうレベル(笑)。
この結婚に真っ向から反対していたのがジュリエットに長年片想いを続けていたいとこのティボルトです。でも、家の方針には強く反対できなくて何も抵抗できずにいる。その心の葛藤を歌うナンバー♪ティボルト♪はとても切ない。ジュリエットへの敵わぬ思いが泣けます。でも、その後姿を見つめながら去っていくキャピュレット夫人の目が怖い(汗)。
パリス伯爵との結婚を全力拒否するジュリエットですが、そんな彼女に亭主に浮気された過去をぶちまけて「愛のない結婚のほうが裏切られたときに傷つかない」と歌う乳母のインパクトがすごい(笑)。恋することに憧れるジュリエットの希望を打ち砕きまくる潔さよww。
さらに母親に至っては娘に嫉妬心を抱いてしまっているからか自分の暗闇の結婚生活を暴露(汗)。挙句の果てには、心の隙間を埋めるべく不貞を重ねたことで生まれたのがジュリエットだと禁断の出生の秘密まで打ち明けてしまいパリス伯爵との結婚へ持ち込ませようとする(怖)。キャピュレット家、怖すぎます、ホント(汗)。こんな家にいてジュリエットがグレないのが不思議なレベルww。
世界の王~僕は怖い
モンタギュー家ではヤンチャ者たちが最初盛り上がってるんですが、アンサンブルの永松樹くんが突然ボイパ(ボイスパーカッション)を始めたのにはちょっとビックリした。今まではただワチャワチャしていただけだったけど、ボイパが加わることによってシーンにリズム感が加わっていました。単純になかなか面白いなとは思ったけど、なんだか”クラブ”みたいな雰囲気(行ったことないけどw)っぽくてロミジュリの世界観とはちょっと合わないかなという違和感も覚えました。
ロミオをスマホの位置情報から探そうとするシーンも毎回思うんだけどやっぱりちょっと「いらないシーン」って思っちゃうんだよねぇ(苦笑)。そんな騒ぎに気付かずシレっと現れるロミオは可愛いんだけどww。
ロミオと合流したモンタギュー一族の若者たちが歌う♪世界の王♪はロミジュリのテーマ曲と言っても過言ではない盛り上がるナンバーです。客席からも自然に手拍子が沸き起こって劇場全体が高揚感に満ちていくあの感覚がとても好き!若さ爆発って感じでダンスする若い役者さんたちの躍動感も素晴らしかったです。
このナンバーでの動きってめちゃめちゃ激しいんですが、そのあと間髪入れずに♪狂気の沙汰♪シーンが入ってくるので息を整える暇もなく大変そうだなぁと思って見てしまいました。
マーキューシオはキャピュレット家で開かれる仮面舞踏会に潜入することを思いつく。こっそり入り込んで女をダマくらかして退散っていう、実に幼稚な提案をするわけですがwwロミオ以外はみんな乗り気。キャストが若返ったことで彼らの未熟さがより鮮明に感じられる効果があったと思います。
結局ロミオも断り切れなくて「監視するだけなら」という条件で一緒に行くことになってしまう。これが運命を大きく動かすきっかけになるわけです。
でも、仲間と別れた後ロミオはふと「死」の存在を身近に感じて怯えてしまいます。虫の知らせみたいなやつですかね。この場面は♪僕は怖い♪のロミオの張り裂けそうな気持を歌うソロナンバーと、その後ろで無慈悲に死へ誘うように踊る「死のダンサー」のコラボレーションが大きな見どころです。
舞踏会~天使の声が聞こえる
仮面舞踏会のシーン、とても機械的でポップな音楽がなんだか聞いていて毎回癖になる(笑)。これ、小説の中のシーンだったらクラシカルなダンス舞踏会になると思うんだけど、ミュージカルの世界では現代的なダンスミュージック風で斬新なんですよね。皆がつけている仮面は特撮ヒーローものに出てくるような奇抜な形をしてて違和感あるんですけど(笑)、それ以上に機械的な音楽に乗せて様々な人間模様が交錯していく舞踏会シーンが面白くて好きです。
そしていろんな人たちがゴチャゴチャになったままいつの間にか誰も周りにいなくなった(劇中では二人以外は見えなくなったというニュアンスかな)ところで、ロミオとジュリエットが出会ってしまうわけです。演出的には『エリザベート』の♪最後のダンス♪のシーンと似てるんだけど(小池先生演出だからか)、ロミジュリは二人だけにすることによって初対面の時の衝撃がより鮮明に表現されていて見ていてすごくドキドキします。
一目会っただけでビビビどころじゃないくらい惹かれ合ってしまった二人が歌う♪天使の声が聞こえる♪は壮大でドラマチックなバラードナンバー。強烈に惹かれ合いながらも少し照れてるロミオとジュリエットの初々しさが個人的にはとても可愛くて好きです。その「照れ」を乗り越えた先のキスシーンもとても初心で美しいんですよね(今はコロナ禍なので実際に唇を合わせる演出ができないのが残念ですが)。
でも、雑踏に紛れて別れ別れになってしまった後にお互いの家のことを知ってしまいショックを受けたジュリエットはその場から逃げ出してしまう。彼女を引き留められなかったティボルトは大きく傷ついてしまうわけですが、個人的には仮面をつけていたとはいえなぜギリギリまでモンタギュー家の侵入に気づかなかったのかがちょっと謎ww。服装とか明らかに怪しい行動してたわけだから気づくんじゃないかなと以前から疑って見てしまう(←コラ 笑)。
本当の僕じゃない
このシーンのティボルトは本当に切ないです。今ではすぐにキレてしまう危ない男という不名誉なレッテルを張られてしまっていますが、幼い時には「勇気溢れるヒーローになりたい」という純粋な夢を持っていたのに、骨肉の争いを続けるキャピュレット家とモンタギュー家の環境が彼にそれを許さなかったんですよね。
相手を憎み戦い続ける意識を植え付けられてしまったことを振り返り、胸抉られるような気持で「本当はそんなことを望んでいたわけじゃない」と歌うティボルトの姿が泣けます…。気が付いた時にはナイフを振りかざし戦っている自分にずっと苦しみ続けているティボルトの悲劇に胸が詰まる想いがしました(涙)。そんな彼が唯一救いとして想い続けているのがジュリエットだったのです…。
バルコニー
ティボルトが胸が避ける想いでジュリエットへの想いを歌い上げている頃、ジュリエットはロミオへの想いに胸を焦がしていました。この落差がすごいよなぁ(汗)。ジュリエットの中にはたとえ敵の家であってもロミオへの想いは燃え盛る一方なわけですから、ティボルト、ほんと報われなさ過ぎて辛い…。
そこへやってきたロミオは、バルコニーの上で目を輝かせているジュリエットを見つけると柱をよじ登って彼女の元へ一直線、非常に積極的w。原作を知らなくても「ロミオ、あなたは何故ロミオなの?」とジュリエットが告げるバルコニーの場面だけは有名で多くの人が知るところではありますが、ミュージカル版はかなり現代的なにおいがしますww。
二人はさらに愛を深め、感極まったロミオは「結婚しよう!!」とジュリエットに突如告白(笑)。それに対してジュリエットは最初驚いたもののすぐにOKしてしまうという、今の時代にこのシーンを見ると非常に危なっかしくてハラハラしますw。二人の恋の燃え上がり方が尋常ではないスピードで加速していて、その先に悲劇がチラホラ見え隠れしているようにも思えちゃうんですよね(汗)。
ただ、ここでも「君の携帯番号教えて」ってワードが出てくるんだよなぁ(苦笑)。ここで一気に現実が見えてしまうというか、ロミジュリの世界観がいったん止まってしまうような気がするのです。やっぱり何度見ても慣れない(汗)。結局ジュリエットは携帯持たせてもらってないので番号の交換は果たせず、持っていた「花」で連絡とり合うことになるんですけどね。最初からそれでいいじゃん、みたいな(苦笑)。
思い立ったらすぐ行動のロミオは良き理解者でもあるロレンス神父の元を訪れるのですが、ロレンス神父は”薬草”の実験に夢中になってたっていう設定が面白いw。ここはけっこう以前はアドリブが多くて思わずクスっとさせられることが多かったのですが、石井カズさんはオーソドックスに台本通りのスタンダードなお芝居に徹していましたね。
最初はロミオの結婚したい相手がジュリエットであることに驚いたロレンス神父でしたが、愛し合う二人を察して「秘密裏に懺悔の時間に結婚式を挙げたらどうか」と提案してくれます。でもその様子を「死」がじっと見つめているのが恐ろしい…。ロレンス神父の薬草研究も後半に意味を持ってくるしね…。
綺麗は汚い~あの子はあなたを愛している
ジュリエットの使いとしてモンタギュー家の領域に潜入しロミオに会いに行った乳母。これも毎回思うんだけど、なんであんなバカ大きいUFOみたいな帽子をかぶって行ったんだろうなと(笑)。ヤンチャ者のモンタギュー家の若者たちがそれをイジり倒すのは目に見えているだろうに。
この時に歌われる♪綺麗は汚い♪は同じシェイクスピア作品の「マクベス」に出てくる一節でもあります。ミュージカルでは、ロミオに恋をすることは何よりも難しいと乳母をバカにする若者たちと、それに対抗する乳母って感じで比較的楽しい雰囲気で描かれています。(マクベスでは「善人には美しいものと見えても悪人から見れば醜いものと映るものだ」という例えで用いられているらしい)
これ、乳母がキャピュレット家から来たということがバレなかったから平和にロミオに会わせてもらえたけど、バレたら命が危ない危険任務だったよね(汗)。そう思うと毎回ハラハラしてしまうシーンでもあります。
無事にロミオと会って彼の人柄を肌で感じた乳母は好印象を抱く。幼いころから母親のように愛情を抱いてきたジュリエットが彼の元で幸せになれるようにと祈りを込めた乳母のソロ♪あの子はあなたを愛している♪はとても感動的です。どんどんバラが咲いていく後ろの背景映像にも注目。
エメ
乳母からロミオの気持ちが変わっていないことを知らされたジュリエットは、ロレンス神父の教会を訪れロミオと秘密裏に結婚式を挙げます。二人を見守る乳母と神父の表情がとても優しいのが泣けるんですが、同時に「死」もその場にいるというのが不安を掻き立てられる。
この1幕ラストに歌われる♪エメ♪は「アーメン」という意味だそうで、まるで讃美歌のような美しくドラマチックな旋律に涙が溢れます。若く純粋な二人を柔らかく包むような楽曲が素晴らしく、このミュージカルの中でも特に好きなナンバーです。
全体感想 2幕
1幕ラストの美しい♪エメ♪が感動的なのですが、幕が下りる直前に忍び込んでいた両家の若者が偶然それを目撃するという事件が発生。この時にもスマホが活躍するんですよねぇ。ロミオとジュリエットの神聖な二人きりの結婚式の場面をスマホのカメラで撮りまくって拡散するという(苦笑)。
現代でもこういうことってあり得る話だと思えるが故に、ここでまたストーリーの世界から少し外れて見えてしまうのが本当に惜しいと思ってしまう(汗)。やっぱダメなんだよなぁ、個人的にあのスマホの演出…。
街に噂が~今日こそその日
まず最初にロミオとジュリエットの結婚を知ってしまうのがモンタギュー側の若者たち。彼らのスマホに次々と二人の結婚式の写真が広がっていくという、何とも奇妙な光景(苦笑)。
マーキューシオとベンヴォーリオはこのことに失望感を隠し切れない。そこへやって来たロミオに「おまえの結婚はうまくいかない、早く夢から覚めるんだ」と必死に説得しますが、それでもロミオの気持ちは全く変わりませんでした。「女なら他にいるだろう」と歌う仲間たちに、本当に愛する人と出会う素晴らしさを訴えるロミオの真っ直ぐな純粋さがとても清々しく心地がいいです。たとえ仲間から非難されようとも、彼女への愛を貫き通すという熱い想いがひしひしと伝わってきて見る者の心を打つんですよね。
でもそのことをどうしても理解できないベンヴォーリオとマーキューシオの苛立つ気持ちを思うとちょっと切なくもなります。友達に裏切られたって気持ちになっちゃうよなぁ、どうしても…。特にマーキューシオの複雑な感情がとても痛々しい。
そんな彼らのシーンから「死のダンサー」がキャピュレット家のティボルトサイドへと導いていく演出がこれまた不気味なんですよね(汗)。ギュイーーンっていう音楽も不吉を掻き立てられる。
時を同じくしてティボルトもロミオとジュリエットの結婚を知ってしまう。ティボルトの荒くれ方は尋常ではなく、仲間たちをも食い殺してやるといったような激しさが恐ろしい(汗)。唯一の心の救いだったジュリエットが敵の家のロミオに奪われてしまったのですから、彼の絶望感たるやマーキューシオやベンヴォーリオとは比べ物にならなかったと思われます。
♪今日こそその日♪を歌うなかでどんどんロミオへの憎悪を募らせてしまうティボルト。最初の女性経験を語るところからの一気に怒りの炎に包まれていく様がすごい(汗)。このシーンでティボルトの服の前の部分をアンサンブルさんがずらしてはだけさせる演出が出てくるんですが、あれは何度見てもドッキリしますなww。必要性はともかく(笑)かなーりセクスィーですw。
決闘~代償
そしてついに憎しみのパワー全開のままぶつかり合うモンタギューサイドとキャピュッレットサイド。ティボルトは止めるために駆けつけたロミオを侮辱し挑発しまくりますが、ロミオはそれに乗せられることなく必死に争いを止めるべく体を張る。
やがて争いはティボルトとマーキューシオの憎しみに満ちた争いへと発展していき、二人の間に割って入ったロミオの隙間をかいくぐったティボルトのナイフがマーキューシオの体を貫いてしまう悲劇が…。
死を前にしたマーキューシオが最後にロミオに語り掛けるシーンは何度見てもグッときて涙がこみあげてしまいます。あんなにジュリエットとの結婚を猛反対してたのに、最後の最後にそんなこと言うなんて…(涙)。「俺はお前の家を憎む」という言葉が物語全体の悲劇を象徴していたように思えてなりません。
そして、親友の死に我を失い憎しみの感情に駆られたロミオはティボルトに復讐してしまう。一撃ですからね、怒らせたら一番恐ろしい人物はロミオだったのかもと思ってしまいます(汗)。
事件のあと一度は恐ろしさから逃げてしまうロミオでしたが、周囲が集まってきて犯人は誰だみたいな流れになると泣きながら現場に戻ってくる。ここで逃走しないっていうのがロミオの素直さなんですよねぇ…。本来は死刑になるべきところを大公の恩情で町からの追放となります。
神はまだお見捨てにはならない~娘よ
追放が決まったロミオはロレンス神父を尋ね「追放は死刑と同じだ」といって涙を流すのですが、ジュリエットに頼まれて様子を見に来た乳母から励まされ何とか立ち直っていきます。さらに乳母はジュリエットと一晩を過ごすための時間まできっちり手配してくれてるんですよね。このシーンは神父様と乳母の絶妙なコンビネーションも見所です。ほんと、ロミオは周りの人に恵まれてたよなぁと思います。
なんとかジュリエットとの一晩の夫婦の時間を過ごせたロミオ。早朝にひばりの鳴き声が聞こえてくるっていうくだりは有名です。離れがたい想いを押し殺して別れ別れになる道を選ばざるを得ない二人がとても切ない…。でも、ジュリエットの母が起きたというのに立ち去りがたいロミオを見るとハラハラしてしまいますね(汗)。手引きした乳母も気が気じゃなかったかとw。
断腸の想いでロミオと別れた直後、ジュリエットはパリス伯爵と強引に結婚させられる手筈とされてしまったことに絶望してしまいます。このシーンでパリスがティボルトの「お悔やみに」とやってきているのですが、ナルシストっぷりは健在でどこか浮世離れしちゃってる異質感が実に面白いですww。まぁ、この人と結婚したらジュリエットはお飾りにされるだろうなという未来が見えちゃうんですけど(汗)。
ジュリエットとしては自分はもうロミオの妻だという自負があるので断固それを拒否しようとしますが、そんな娘に苛立った父親のキャピュレット卿は思わず頬を叩いてしまう。ここでついにジュリエットは鬱積した想いが爆発。両親にとってあまりにも痛すぎるところを叫んで飛び出します。ここで初めてキャピュレット夫妻は自分たちの「罪」を自覚させられたのかなぁと思える印象的なシーンでした。
それゆえ、一人きりになったキャピュレット卿が「本当の娘ではないと気づきながらも」ジュリエットへの愛しい想いが真実であることを歌った♪娘よ♪がとても切なく胸に沁みます(涙)。
服毒・ロミオの嘆き~どうやって伝えよう
ヴェローナを追放されて知らない遠くの町にやってきたロミオはずっと心ここにあらず状態。いつの間にか踏み入れてはいけないような場所に入り込んでしまうわけですが、ここで恐ろしいのがヤクの売人を「死のダンサー」が演じていることなんですよね(汗)。ロミオの傍らに常に粘着している「死」の存在に見ているこちらもゾクッとさせられてしまう。
ただ、ここも非常に現代的な場面になっていて…スマホが重要なアイテムになってるのがやはりどうも慣れません(汗)。最初ロミオは「ヤク」には手を出さないんですけど、夢遊病者のようになってたので簡単にスマホをスリ取られてしまうわけで…、そのせいでロレンス神父からの超トップシークレットな連絡が彼に伝わらなくなっちゃう。
うーーーん、なんだかなぁ、なんだよなぁ(苦笑)。この一番大事なシーンのところが現代的であることによって、物語からちょっと切り離されてるように感じてしまうのが残念(汗)。
ロレンス神父のトップシークレット事項というのがジュリエット仮死計画の件。ロレンス神父が最初に「薬の研究」をしていた場面がここで生かされるっていう展開は面白いと思います。でも、そのことを「さっそくロミオにメールしなきゃ」っていうところに繋がっちゃうのが今もって違和感でしかないww。そもそもこの作品のなかで「メール」っていうワードをあまり耳にしたくないんだよなぁ(汗)。ちなみにロレンス神父様はガラケー派ww。
ジュリエットが一定時間仮死状態になった事情を全く知らないベンヴォーリオが、親友であるロミオに「自分が伝えに行かなければ」という悲壮感でいっぱいの覚悟を歌う♪どうやって伝えよう♪は見ていて気の毒でしかありません…。せめて彼にだけはこっそりと事情を教えてあげていればよかったのにと見るたびに思ってしまう。
ベンヴォーリオからジュリエットの死を知らされたロミオは絶望して自分も「死」を明確に意識する。この時に「確実に死に至るクスリ」を買い求める相手がまさに「死のダンサー」なんですよね。ロミオはこの時初めてその存在をハッキリと自分の中で認識するっていう演出がとても印象的です。死のダンサーとロミオが「クスリ」の取引を巡って踊るシーンは妖しくそしてどこか儚く美しい。
ロミオの死~罪びと
キャピュレット家の霊廟に駆けつけ仮死状態となっているジュリエットを発見したロミオは「本当に死んでしまったのか」と涙する。ただでさえ追放されたショックから立ち直ってないところにこのダメージはもう本当に致命的です。一刻も早くジュリエットとの再会をと迷わず「クスリ」を飲み干すロミオのシーンは何度見ても切なすぎて泣ける(涙)。
ロミオが死を迎えたと同時のタイミングで目覚めるジュリエットっていうのが残酷だなぁと。あと1分早く目覚めていれば…って見るたびに思ってしまう。最初はロミオが疲れて眠ってると思い無邪気に「来てくれた」と喜んでしまうジュリエットがとても哀しいです。
いくら起こしても目覚めないロミオに、仮死計画を知らず本当に死んでしまったことを悟ったジュリエットは大きな衝撃を受け、ロミオが持っていた短剣を迷わず手に取る。この最期のシーン、二人の手が繋がれた状態になっているのが唯一の救いに思える。
ロミオとジュリエットの「恋愛」はこうして哀しい結末を迎えるですが、本当の意味でのこの物語のテーマはその後に訪れます。骨肉の争いが引き起こした大きな悲劇を経て、それまで抱いてきた憎しみの感情を乗り越えていく両家の場面は何度見ても涙があふれて仕方がないです。大切な人を失って初めて、争うことの愚かさに気づいた両家が離れてしまったロミオとジュリエットの手を再びつなぎ合わせるシーンは特に泣けます(涙)。あれだけ憎しみ合うことを宿命としてきた人たちを和解へと導いたのは「愛」だったというラストがとても神々しく見えました。
このラストシーンは斜めにかかった十字架の上の「死」の存在にも注目です。自らの思惑通りに事が運んだと思いきや、最後の最後に予想外の展開となりそれに屈していくまでの動きが非常に印象的なのです。そこも一緒に注目して観るとより深いラストシーンに思えてきます。
キャスト感想は次のページにて。