ミュージカル『スクルージ』 2013.12.25千穐楽

神奈川芸術劇場(KAAT)で25日にだけ上演されたミュージカル『スクルージ~クリスマスキャロル~』を観に行ってきました。

直前まで有楽町にいたのでかなーりキツイ状況で…足がガクガクになるほど走りましてw。あんなに全速力で走ったのはいつ以来だろうか、みたいな。KAATに着いたときには息も絶え絶え状態だったのですが、結局冒頭からは間に合わず。でも、かなり早い時間に案内してもらえたのでほぼ最初から見ることができました。

12月8日から17日までは赤坂のACTシアターで上演されていて(私も10日に観に行きましたが)…その後25日に一日だけ神奈川芸術劇場で上演されることになった『スクルージ』。クリスマスのまさにその日に1日だけとは、なんともタイムリーな。その大千穐楽であるソワレ公演に駆けつけることができたのは本当に幸運でした。

私はこれまで約18年間色々な舞台を観に行ってきましたが、その中でも最も忘れられない宝物のような作品がいくつかあります。『スクルージ』はそのうちの一つです。16年前に初めて観たときの感動と衝撃…。それをこうしてまた25日に観られることが嬉しくてたまりませんでした。無理をしてでも駆けつけられて本当に良かったです。

25日ソワレは大千穐楽ということで特別カーテンコールがありました。スタンディングオベーションの中、司会の武田真治さんが前に出て挨拶。「どうぞお座りください」という武田さんのコメントで客席は再びみんな着席w。
それにしても相変わらず武田さんはコメントの一つ一つが面白かったですね。ご本人真面目に語ってるんだけど、なんだかクスっと笑えてしまうみたいな…ユーモアがあります。私は直前まで嗚咽寸前に号泣しまくっていたので、武田さんの司会でようやくそれが収まりありがたかった(←あのまま外に出たらホントに危なかったので 爆)

安崎求さん

「こんな格好ですで話すのは非常に恥ずかしい」と言うコメントで会場が笑いに包まれていました。たしかに、マーレイの扮装で素で話すのはご本人恥ずかしかったかもw。安崎さん、フライングは舞台経験の中ではこれが初めてだったそうで…ご本人は何と、ものすごい高所恐怖症で釣られるたびに手足が震えていたらしい。なので、マーレイの芝居がよりリアルに見えたかもと言って笑いを誘っていました(笑)。でも、この日のラストフライングでようやく克服できたような気がすると語られてて「今後は楽しくフライングができる気がします」と。「みなさんにやればできるということを伝えられたかもしれません」と最後に語られてて拍手を浴びていました。
すると、武田さんが「ホリプロにはピーターパンもありますのでそちらの方でぜひ」みたいにコメントしてて会場が大笑いに包まれていましたww。

今陽子さん

武田さんから「エネルギッシュで稽古場ではいつもムードメーカーでした」と紹介された今さん。何を語るのかと思いきや、突然ジャズ調の英語歌詞でクリスマスソングを熱唱しだして皆びっくりwww。キャストも呆気にとられてて、客席からは徐々に手拍子が起こる中、市村さんが「なんでここで歌ってるんだよ~」みたいな感じで苦笑いしながら隣の人に泣きついてて面白かったです(笑)。
全力で歌い切った後、「歌で表現しました」と満足げな今さんでしたがww武田さんから「皆さんコメントも聞きたいと思いますので」と促されて再び。「市ちゃん(市村さんの愛称)とは今回42年ぶりに舞台でご一緒しました」とコメントされてて皆びっくり。市村さんに大賛辞を贈るコメントで締めくくられていましたね。

今井清隆さん

武田さんから「初めて会った時にこんな人いるんだと思いました」と紹介されて戸惑いまくりだった今井さんw。さらには「こんな日本人離れしたルックスと歌声の人がいるんだと思って」と畳みかけられてもう、苦笑いするしかないみたいな状況で(笑)。よほど今井さんの存在は武田さんにとって衝撃だったようです。
そんな紹介を受けた今井さん「今さんの後ですごいやりにくいです」と最初にコメントして会場が爆笑ww。で、この作品への想いが溢れていたのか、「今日この作品を見ないと、意味ないですよね」と直球コメントする今井さんww。さらには「今日じゃないとクリスマスの感じが本当に出ないんじゃないかと、今日の人はホントにお得だと思います」と続けたもんだから、後ろで市村さんたちからハラハラしながらそれを聞いててそれも笑えたなぁww。最後に現在の精霊のセリフ「限られた時間を精いっぱい生きろ」というのを自分自身にも言い聞かせながら演じていたと語る今井さん。
「来年も上演されるんですよね?」と市村さんに聞いたところ、市村さんは来年はスケジュールが空いてないと言われたらしくwww、「再来年は?」と聞いたら「そんな先のことは分からない」と返されたらしい(笑)。

最後に武田真治さん

「この仕事をずっとやって来て皆さんに何か返せるものがないかとずっと考えていたら、この作品に出会えた」と語っていたのがとても印象的で胸が熱くなりました。「この先もこの作品がずっと上演されていくことを願います」というコメントに会場から大拍手が起こっていました。
最後に紹介できなかったアンサンブルや子役さん、オケやスタッフに拍手をと促して会場が温かい雰囲気に。ちなみに、他のメインキャストはマチネの時にあいさつを行っていたようですね。

市村さんの挨拶の前にスペシャルプレゼントとしてキャストのサイン入りのパンフレットが3名に当たる抽選会がありました。市村さんがくじを引くたびにオケのドラムが派手に鳴ったりしててかなり盛り上がってましたw。まぁ、私はこの手のものにはご縁が全くないということで(苦笑)。

そして〆に市村正親さんからご挨拶

「再演は2年後ということで…」と市村さんが最初に語り出すと武田さんがササッと出てきて「本当ですか!?」と念押し(笑)。すると「ほぼ僕の心の中では」と付け加えてて笑えましたが、本当の本当に実現してほしいです!!この作品は市村さんにとっても大好きな舞台だということで、今回久しぶりに再演できたことが本当に嬉しいと語っていました。
キャストについては市村さんたっての希望でということで、武田さんと今井さんと安崎さんが呼ばれたことが判明。「真治は苛めがいがあるからw」と語ってたのが笑えましたww。「僕も再演に向けてスクワット頑張りますのでまた皆さんとこの作品でお会いできればと思いますと締めくくり大きな拍手が沸き起こりました。

クリスマスソングを歌うとかはなかったけど、楽しくて素敵な特別カーテンコールでした。

これまでの「スクルージ」感想一覧

主な出演者

エベネザー・スクルージ:市村正親、ボブ・クラチット:武田真治、イザベル/ヘレン:笹本玲奈、ハリー/若き日のスクルージ:田代万里生、ジェイコブ・マーレイ:安崎求、過去のクリスマスの精霊:愛原実花、フェジウィッグ夫人:今陽子、現在のクリスマスの精霊:今井清隆、トム・ジェンキンス:石井雅登、ティム坊や:加藤憲史郎 ほか

以下、ネタバレを含んだ感想です。

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個人的にかなり思い入れが深い作品なのでこの先ちょっと長くなると思います(汗)。

冒頭にスクルージ以外のキャスト全員で歌われる♪クリスマスキャロル♪が本当に美しい。舞台セットの街の様子もシンプルだけどどこか温かくて最初からジーンときてしまうのがこの作品。皆さんのハーモニーもとても美しかったです。途中からしか聞けなかったけど、半分は間に合ってよかった(汗)。

この温かいシーンが終わるとセットが捌けてスクルージとボブ・クラチットのいる暗い事務所が出てくる。明るく温かい雰囲気から突然マイナスオーラ漂う部屋が出てくるこのメリハリも面白いです。そんなところに相応しくないような明るく能天気なスクルージの甥のハリーがやってくるのも印象深いですね。そんな彼にイライラしまくりのスクルージ。この日観た市村スクルージは赤坂で見たときよりもめちゃめちゃヒステリックになってて声が上ずってました(笑)。それでなんかすごくコミカルっぽくなってて、でも個人的には抑えてイラついてる市村スクルージのほうが好きかなぁ。千穐楽ということで市村さんのテンションも上がってたからでしょうかw。

事務所からだれもいなくなった後に「過去などいらんと自分の殻に閉じこもって歌うスクルージ。彼が吐いている歌詞は「金しか要らない」とかなりダークな感じなのですが、音楽はなぜか温かい。このミュージカルの一番好きなところは音楽に温もりを感じられることです。スクルージがどんなに捻くれて金の亡者みたいなことを歌っていても、そのどこかに彼の中の孤独が見え隠れしている。だから私は最初からスクルージが嫌いになれない。14年前にはそういう感情はなかったんですが、年月がたって自分の見え方が変わったのかなぁと思いましたが…やはり市村さんの緻密な演技力も大きかったんじゃないかとも思います。
町で出会う人々に借金の利子をどんどん吊り上げていくシーン、ここもテンポが良くて面白いです。特にトムとのやり取りは「1週間待ってください」「じゃあ7日」「ありがとうございます…って1週間じゃないか」といった感じの丁丁発止があって笑えますww。その帰りにスクルージはトムにただでスープをもらうわけですが、楽のこの日は「もっと肉を入れろ!」と市村さんのアドリブが(←東京で見たときはなかったので 笑)。あれは可愛くて面白かったです。

一人で家に戻ったスクルージが身支度をするシーンは市村さんの独壇場。じいさんという設定なので(市村さんは年齢の割には相当お若いですが)服を脱ぐ仕草が大変そうなのですが…その一つ一つがとにかく可愛らしい。特にマフラーを洋服掛けに掛けた後腰を痛めてしまう仕草とか、手袋を脱ぐのになぜか準備運動みたいな格好になっていたりとか(笑)。そんなコミカルで可愛らしい市村スクルージだから、いくら偏屈でも嫌いになれないんだよなぁ。この一連の動きは16年前と変わってないんですけど、たぶん客席をものすごく意識してあの動きをしているんだと思います。そんなところがものすごく市村さんらしい。

マーレイが突然現れるシーンは何度見ても迫力あります「エベネザー・スクルーーージ!!!って扉を開けずにババッと現れますからね(笑)。何もない所で座るシーンではまたしても市村スクルージが「足がプルプルしてるぞと合いの手入れて笑いが起こってましたww。そのあとすぐにグオーってマーレイのフライングがはいりますが、高所恐怖症とは思えないくらいの見事な飛びっぷりでしたよ、安崎マーレイ(笑)。
そんなマーレイの存在を信じられずに扉を開けて「どうぞお引き取りを」と腰抜かしてる市村スクルージも可愛いですw。マーレイが歌う♪精いっぱいこの世で生きろ♪長い手を持つゾンビ軍団も出てきて面白い。囲まれたスクルージが恐ろしさのあまり自分の指を思わずしゃぶってしまっているのですが、この時の市村スクルージの仕草がまた可愛くて仕方ないです(笑)。

マーレイが去った後に歌われる♪わしのせいじゃない♪、金を取りに来たのかと思い金庫を別の場所に隠すときに「やるもんかっ」と暖炉に叫んでリフレインするシーンがあるのですが、この日はヒステリックバージョンでw響きが実に面白いことになってました(笑)。だけどこの歌はスクルージの孤独がこれまで以上に浮き彫りになるので聞いているうちにだんだん切なくて泣けてくるんですよね…。

マーレイが予言したとおりに夜中の1時にまず第一の精霊が現れます。スクルージが寝床に入って当りが暗くなったときにひっそりと椅子に座る過去の精霊がうっすら見えました(笑)。愛原さんの精霊姿はやっぱりとても美しくどこか宝塚的。この役は過去も元宝塚の女優さんが演じてましたが、それが一番雰囲気に合うのかもしれません。あまりの美しさにスクルージが照れまくって「二人きりでどこ行こうっていうんだと下心見せてるような言い方するんですが、ここも本当に可愛らしくて面白くて市村さんらしさが出ていて好きでした。

過去の精霊と見に行ったのはスクルージが一番幸せだったころのクリスマス。♪12月25日♪のナンバーでは若き日のスクルージがフェジウィッグ氏のところで楽しいクリスマスパーティに参加している頃が歌われます。阿部さん演じるフェジウィッグさん、「ぶんちゃぶんちゃ♪」ってはしゃいでる姿がとても可愛かったなぁ~。若き日のスクルージはハリーを演じている万里生くんが担当してるんですけど、この時はもみあげが長くなっているんですよね。そこで出会ったイザベルに恋心を抱く若き日のスクルージ。二人が徐々に距離を縮めていく姿を友人たちも温かい目で見ていてくれてて…、あぁ、スクルージにもこんな時代があったんだなと思うと泣けてきます。

♪しあわせ♪は音楽が本当に切なくて美しい。楽しいクリスマスを回想してスクルージはボブの給料を上げてやらなかった自分を少し悔いる…。そんな中で歌われる、若き日のスクルージとイザベルの恋の歌。二人が近づく姿を見ながら、かつて本当に愛していたイザベルとのことを思い出すスクルージ…。若い頃の自分の背中をイザベルのほうに押す姿が泣けて仕方なかった…(涙)。そして若き日のスクルージがイザベルを抱きしめると同時に、現在のスクルージも同じように今そこにいない彼女を大切そうに抱きしめるんです…。その手の中には誰もいなくて、でも、確実にイザベルの温もりがあって…あの時の市村スクルージの表情がもう切なくて切なくてここから涙がボロボロ零れて仕方なくなった私(泣)。最後に3人で歌う「しあわせ、望めば叶うもの」という歌詞がなんとも美しくて…そして哀しかったです。

婚約してからしばらくして、若き日のスクルージは金しか目に入らなくなってしまった。様々な裏切りや辛い出来事に遭遇してしまい人を信じられなくなったスクルージ…。そんな彼を悲しく見つめ去ろうとするイザベル。そんな彼女に過去の精霊の静止を無視して「愛している!今でも愛しているんだ!!」と叫ぶ現在のスクルージの姿がまた哀しくてたまりません…。しかしその声はイザベルに届くことがなく…結婚指輪を秤にかけ、「私の存在はお金に比べるとこんなにも軽い」と告げて去って行ってしまう。過去の自分に向かって「追いかけろ!」と促すシーンで客席から笑いがチラホラ起こってたんですが、私はあそこでは笑えない…。過去の過ちを悔いて精神的に押しつぶされそうになってるスクルージの姿があまりにも哀しすぎてたまらないから…。

♪君…君…♪はその流れで歌われる曲で、涙なくしては聞けないです。過去のスクルージがイザベルへの想いを歌うのと呼応するように今でも愛する気持ちを切々と歌う市村スクルージが本当に切ない…。特に「君、すべてだよ」のフレーズがもう、思い出しても泣ける(涙)。二人で歌う「あぁ、誰より愚か者」と自分を責める歌詞がこれまた悲しく…「思い出の中で生きる俺さ」と歌う現在のスクルージが返されたイザベルからの婚約指輪をいつも身に着けていたことがわかるシーンがまたさらに涙を誘いました(泣)。
過去の精霊が去り際に「なぜあなたは甥のハリーを可愛がってくれないの?と告げる。ここで彼は、過去の精霊が若くして亡くなった自分の唯一の味方だった大切な妹のジェニーだったことを知るんですよね…。「私の大切な大切なお兄ちゃん」っていう過去の精霊の言葉がスクルージの胸に哀しく突き刺さる。もっと話がしたいと追いかけてももう時間がなくて…
「過去はもう取り戻せない、だからこそあなたが大切に思う人にはあなたの愛情を隠してはいけない、どれだけ愛を持っているかを伝えなさい、あなたが愛する人たちが去ってしまってからではもう遅すぎる」
と告げて去ってしまう。それに応えるように必死にジェニーへの愛を訴えるスクルージですが、時は待ってくれなかった…。ここももう、本当に、切なくて切なくて…思い出しただけでも涙が出てしまうくらい泣けます(涙)。過去の精霊の言葉も胸にすごく刺さるというか…この作品は本当に大切なことを伝えてくれているなぁと思いました。

再び一人残されたスクルージが♪わしのせいじゃない♪を歌うシーン、ここはリプライズではあるんですが、マーレイが去った後に歌うのとは違う感情になっているんですよね。少しずつ、自分の人生を変えなくてはという意識の変化がある。でもそれを「できない」と否定してしまい「わしのせいじゃない」と締めくくる。その葛藤が哀しくてすごく泣けます。

そんな時に現れる第二の精霊、大迫力の現在のクリスマスの精霊。今井さん、本当にあのコスチュームがお似合いで(笑)。後ろに出てくる巨大クリスマスツリーの存在にも負けてませんでしたね。この二人のやり取りは直前までの切ない展開とは違ってコミカルで面白い。市村スクルージが現在の精霊の迫力に圧倒されながらも"優しさのしぼり汁"の虜になっていく様子が本当に可愛くて楽しかったです。こういう芝居も本当に魅せてくれますよねぇ。
♪人生が好き♪の場面ですが、ここは16年前と14年前に診たのとは違う展開になっています。以前は町に繰り出した二人は機械仕掛けのイザベルと若き日のスクルージの人形に出会って、動きが止まってしまった二人のネジをスクルージが回してやり二人をくっつけてやる、みたいな演出があったと思います。それが今回は町の人たちが慌ただしくも楽しそうに歩き回っているところに出くわすといったシンプルな演出になっていたと思います。彼らが♪クリスマスキャロル♪を歌う中、市村スクルージが後ろでフライングの準備してて、一番最後に「好きだから」の歌詞と共に飛ぶといった形になってました。前回までの演出も感動的だったけど、今回からのもシンプルで感動的で良かったと思います。

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2幕の始まり方も前回公演までと違う演出と歌になってます。冒頭の「クリスマスの願い」というナンバーが「優しさのミルク」というナンバーに変わっていました。聖歌のような美しい旋律の以前までのナンバーとは違って、楽しい雰囲気のものになっていましたね。ここが変わったのはどうしてかなぁと。今回の楽しい音楽もよかったけど、個人的には美しい以前までのナンバーのほうが好きだったので…。
そのあと再びスクルージのフライングシーンがあるのですが、よく見てみるとこの時の飛んでるスクルージは市村さんじゃなかったw。パンフレットに「フライングスクルージ」っていう配役があったのでもしやと思っていましたが、2幕は違う役者さんが飛んでるんですね。
現在の精霊に案内されたのはボブ・クラチット家。子供たちが走り回り、奥さんとボブは食事の準備をしている…貧しい中でもとても幸せそうな家族の姿がそこにある。ボブの奥さんは過去の精霊の愛原さんが演じています。この温かく幸せそうな雰囲気に武田さんのボブがまたピタリとはまっている!もう本当に温かいお父さんで…なんか見ているだけでも心に沁みましたね。彼にこんな一面があるとは知らなかった。

元気な子供たちの中で一人病弱そうな末っ子のティム。足を引きずりながらも懸命に生きている彼の姿に釘付けになってしまうスクルージ。そして、ティムが歌う♪美しい日♪・・・これ、本当に、涙なしには聞けません!!前奏流れただけでボロ泣きしてしまった(涙)。健気なティムの姿に衝撃を受け彼がどうなるのかと現在の精霊に思わず尋ねてしまうスクルージですが、それに対して「死ぬなら死んでもらおう、そうすれば無駄飯食いの数が減る」とかつて自分が人々に言っていた言葉を返されるシーンがグサリときます。この日のティムは加藤清史郎くんの弟である憲史郎くんだったんですが、歌もなかなか上手でした。ミスサイゴンの時には一言も話さないタム役だったので、今回初めて歌を聞けましたね。お兄ちゃんとよく似てて可愛いです。

次に案内されたのがハリーの家で行われているクリスマスパーティー。スクルージの姿が見えないので招待客の女性が彼の座っているソファに次々に押し寄せるシーンは何度見ても笑えましたww。ハリーは乾杯するときにスクルージおじさんのためにと毎年告げてはブーイングを浴びている。なぜあの爺さんのために乾杯しなければならないのだという友達に、少し皮肉を込めつつも「本当に僕はスクルージおじさんが好きなんだ」と明るく語るハリー。万里生くんのハリー、前回観たときよりもものすごく生き生きして弾けた感じですごく良かったなぁ。能天気でちょっと抜けてて明るいキャラがそのまま出ていたような感じでした。そんな彼を支えるヘレン役の笹本さんも可愛くて素敵!

♪牧師さんの猫♪で楽しい夜を過ごす面々に交じり、スクルージもその輪に加わってて楽しい一夜を過ごす。でもその時間はあっという間に過ぎて次々に帰っていく人々。自分の悪口を言いまくっていたハリーの友達にはペシッとおでこ叩いたりしてるスクルージが面白い(笑)。でも、帰っていく人々の背中を見て「もうお帰りですか…、今日は楽しかった、ありがとう」と自然に感謝の言葉が出てくるスクルージは見ていてとても切なくて泣けてきます…。その過程で、ヘレンの姿にイザベルを重

♪しあわせ♪リプライズを歌うスクルージがまたさらに切なくてたまりませんでした…。
楽しい時間を共に過ごした現在の精霊もやがて時間がきて去ることに。そんな彼にスクルージは「話したいことはまだ山ほどある」と引き留めようとしますが、

「やりたいことをすべてやる時間などない、だからこそ、人生を限られた時間の中で精いっぱい生きることがコツなんだ」

と告げます。「人の一生は短い、ある日突然お前はここにはもういない」…このセリフもグサリと来ます。精霊の時間んに比べれば人間の生きている時間はあまりにも短い。だからこそ、その時間を無駄にしてはいけないという現在の精霊の言葉は今現代の私たちにも問いかけているような気がして…。

♪より良い人生♪リプライズでは、再び一人残されたスクルージが以前とは明らかに違う感情で歌います。今置かれている自分の状況に対し「なぜこんなに暗いんだ、何も見えない…」とうめくセリフは涙なしには聞けません(泣)。そして自分にも「よりいい人生があるのではないか」と確信を持って歌う。スクルージの胸によみがえるハリーの言葉、イザベルの言葉、過去の精霊の言葉…すべてを受け止めて新たな人生を歩もうと思い直していくこのシーン、もう号泣でした…。スクルージにより良い人生が訪れることを願わずにはいられない。市村さんの素晴らしい歌声がとてもドラマチックでさらに涙があふれて止まらなかった(泣)。

そして最後に訪れる未来の精霊。その姿はこれまでとは違って悪魔のような暗くおどろおどろしい恰好をしている。顔はドクロで長いひげがあり、言葉は一言も発しない。宙を浮いているかのように移動する姿はまさにこの世のものではない。それこそが、スクルージの未来の姿を的確に暗示しているんですよね…。
最初に案内された場所はスクルージの事務所の前。皆がなぜかわからないけど歓喜しているのですが、ここも前回公演までとはちょっと演出が変わっていたような気がします。以前見たときにはスクルージの私物を窓から放り投げてそれを下で待っていた人々が拾って大騒ぎするといったシーンだったと思うのですが、今回はそれが無くなってて一人の女性が袋を抱えているのみでした。ものすごくシビアになるからああいったシンプルな形に変えたのかな。

トム・ジェンキンスが歌う♪サンキュー・ベリーマッチ♪は初めてこの作品を見る人の耳にも残る名曲だと思います。皆がスクルージに感謝して楽しそうに歌っていて、それを見てスクルージは自分が皆からすごく好かれているんだと勘違いしてしまう。その後ろにスクルージの棺桶が出てくるわけですから…シーン的にはものすごくシビアなんですよね。でもそれに気づかないスクルージは皆と楽しく歌い踊る。このナンバーで手拍子をしていいものかどうか迷ってしまいます(汗)。

真実に気付かないまま次に案内されたのはボブの家。暗く沈みかえった家の中で涙するクラチット夫人の姿を見たときにスクルージはティムの姿がないことに気づきます…。悪い予感が走った時、次に案内された場所が墓場。小さな十字架の前でボブは涙するんですけど…武田さんはもう、墓場が出てくると同時に涙していて…もうその姿見ただけで涙腺が決壊です(泣)。泣き崩れるボブの姿に衝撃を受け言葉を失い体を震わせるスクルージ…。そしてもう一つの墓が自分のものであることを知り恐怖でどうしようもなくなってしまう。

さらに追い打ちをかけるように、マーレイが再び現れてスクルージ用の巨大な鎖を持ってくる。マーレイの鎖が可愛く見えるほどスクルージの作り続けた鎖は巨大なものに…。押しつぶされ、恐怖と混乱に包まれた中、現実に戻ってくるスクルージ。今までの自分はその時までのことは幻だったと片づけていたかもしれないけれど、今回はそのすべてを受け止めるんですよね。明らかにスクルージが変わったと思わせるこのシーンがとても感動的です。

♪もう一度始めるぞ♪は生きていることへの感謝の気持ちが痛いほど伝わってくる名曲中の名曲だと思っています。過去を捨てて新しい未来を歩もうと歌い出すスクルージを見て、涙腺大決壊…。「どうしていいか分からない、天使のように軽やかだ」と呟きながらカーテンを開け、夜が明けてきた街に向かって「メリークリスマス」と叫ぶと答えが返ってくる。そんな些細なことがスクルージにはとてつもなく幸せなんですよ…。忠告に来てくれたマーレイに礼を言うスクルージ、その上を微笑みながら飛んで行くマーレイの姿も泣けます!彼の鎖もこれで解き放たれるようにと祈らずにはいられない。

「はじめるぞ、変わるんだ!魅せよう世界に遅くはないぞ」と歌いながら自分の財産をすべて持って出かける準備をする。そして徐々に溢れる希望に胸を躍らせながら「世界に感謝思い出そう、あの時をもう一度、はじめるぞ俺は!」と歌い上げるスクルージ!!もう私大大大号泣(涙)。思い出しただけでも涙溢れてしまう。市村さんの歌い上げが本当に素晴らしいです。
町に繰り出したスクルージは傍にいた子供に大きな七面鳥を買ってくるように頼む。この時の子役の子がすごくチャーミングで可愛かったな。私は個人的に子供が苦手なんですが、このミュージカルを見ると子供が好きになりそうになるので不思議です(笑)。

そして♪人生が好き♪を歌いながら前回断った募金に寄付をする約束をし、おもちゃ屋のプレゼントをすべて買い占める。あまりの変貌ぶりに驚き戸惑いを隠せない人々ですが、サンタに扮したスクルージの姿を見てそんな彼を受け入れていきます。そんな優しさあふれる雰囲気も素晴らしいし心が温まるんですよね。そしてサンタ姿のままスクルージはボブの家を訪れる。子供たちにプレゼントを渡し、クラチット夫人には現金を渡し(笑)、七面鳥を使ってほしいと至れり尽くせり。そしてティムには回転木馬を贈るスクルージ…。「メリークリスマス、ティム」と抱きしめるその優しさにまたしても涙が止まらない…。自分の正体を明かすとボブたちは「スクルージさん、気が変になっちまった!!」と大混乱しますが、スクルージの優しさを素直に受け止める。ボブの給料を上げ、ティムのために病院を見つけようと語りかけるスクルージの姿に「あなたを信じます、すべてを信じます」と答えるボブにもまた涙!!

再び町に繰り出すスクルージ、トム・ジェンキンンスに会い借金を帳消しにすると宣言、さらに他の人たちの借金も帳消しにしてしまう。そんな彼の変わった姿に喜んだ町の人たちは♪サンキュー・ベリーマッチ♪を歌って、今度こそ本当に心からスクルージに対する感謝を表現します。町中の人を巻き込んでこの歌を歌うサンタ姿のスクルージは、それはそれはもう幸せそうで…それを見るだけでもこみ上げてきました。

そして、ハリーとの再会…。シャンパンを持ち「おまえとクリスマスを過ごさなかったことを心から後悔している爺さんからだ」と差し出す姿にまた涙涙…。ハリーの妻であるヘレンにはかつて自分がイザベルから返された婚約指輪を託します…。彼女に似ているヘレンの姿にイザベルを重ねて思わず涙するスクルージを涙なくしては見れなかった(泣)。そしてハリーの家に行く約束をします。

「大好きだよ、クリスマスが…大好きだよ、子供たちが…、大好きだよ、人間が!!」

と高らかに宣言するスクルージの姿に町の人たちも涙していてそれ見ただけでももうまたしても涙腺が大変なことになってしまった(泣)。スクルージが掴んだ新しい幸せの形が本当に泣けました…。
再び町に繰り出し、♪サンキュー・ベリーマッチ♪を楽しそうに歌うスクルージ達。雪が降り出す中、町の人たちと別れまた一人になるスクルージ。でもそこにはもう孤独の影はない。客席に向かい、メリークリスマスと叫んだあと「わしはこれで失礼します、支度があるんですよ、クリスマスを過ごすんです…家族と一緒に」と告げる。そんなスクルージの喜びにあふれた表情を見たら涙がまた倍以上溢れてきて私もう、嗚咽寸前です…(涙)。

最後の最後に市村スクルージが歌う♪もう一度はじめるぞ♪リプライズは今後も深く心に刻まれるほどドラマチックで…ラストの「はじめるぞ、俺は」の歌い上げでほぼ嗚咽。拍手も歌い終わらないうちにワーーッと沸き起こり…本当に本当に感動的なラストでした。

涙がいくらあっても足りないほど泣きましたね、やっぱり今回も。ストーリーの素晴らしさ、楽曲の素晴らしさ、そして市村スクルージの素晴らしさ…!!!何度見ても最高です。本当に大好きな作品です。2年後に再演あるかもって話が出たので…ぜひとも実現させてほしいです。14年も待たせないでーーーw。再演決定するまで死ねないよ。それまではCD聞いて我慢します。

素晴らしい感動をありがとう、スクルージ!!また出逢えて本当に嬉しかった!!!また2年後に!!!

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