全体感想
私が最後に見た四季の『美女と野獣』は2014年11月(当時は引っ越し直後で落ち着かない時期だったので感想書けずじまい 汗)。あれから約8年ぶりのBBだったわけですが、実は観劇前はちょっと不安な気持ちもあったんですよね。過去の感想を見てもらえれば察していただけると思いますがw、当時飯田洋輔くんのビーストに激ハマりして通いまくった時の熱い気持ちが今もまだ消えずに残ってて…。果たしてリニューアルして色々と刷新されたBBを受け入れることができるのか、これはもう見てみないと分からないなという心境でした。
そんなわけで、どうしても旧演出版のものと比べながら見てしまった今回の観劇だったのですが…良くなったなと思う部分と変えないでほしかったなと思う部分とが半々かな。あくまでも個人的意見なので悪しからず。
まず大きく変わったことのひとつが、主人公がビーストではなくベルになったことでしょうか。それによってベルの物語が以前よりも膨らみを増したなという印象が強かったです。物語の後半に彼女のソロナンバーが追加されたこともその影響かなと。
ただ、私はこれまで初演からずっとBBを”ビーストを主人公にした物語”として観てきた経緯があるので、ちょっと違和感というか…寂しいなと思うところも正直ありました。決してビーストのドラマが薄くなっていたわけではないんだけど、物語の軸がベルに移ったことによって見え方がちょっと変わったかも…みたいな感覚があったのがまだちょっと慣れないところかもしれません。
もうひとつ大きく変わったのがセットです。これは個人的な意見だということを前提で書かせてもらいますが…、私は旧演出版のセットのほうが好きでした。特にお城の場面はなんだかちょっと、世界観が縮んでしまったような違和感がずっとあって…。コンパクトでスタイリッシュな新演出版はより役者の芝居を際立たせるといった意味では有効だと思いますが、私はダイナミックで本当にお城の中に入り込んだかのようなあの立体感ある旧演出版のセットが大好きだったんですよね。
特に図書館のセットがちゃっちくなってしまったのは本当に残念。あれじゃぁ、ベルが大感激するシーンもちょっとなんだか嘘くさく見えてしまう(苦笑)。旧演出版の図書館のセットは本当に凄かったんですよ。それだけになおさら貧相に感じちゃって…。
衣装に関してですが、色合い的にはアニメの世界観を踏襲しつつ旧演出版よりもシンプルで動きやすいものになっていたかなという印象。特に召使たちの衣装がちょっとスリム化してるように見えました。
一番大きく変わったのは”マダム・ブーシュ”でしょう。これ、旧演出では”タンス夫人”っていうちょっと笑ってしまうようなネーミングだったので新しく変わったのは良かったなと思ったわけですがw、衣装も動きやすそうなものになっていました。ただ、腰の横が広く膨らんでてそこから衣装を取り出すっていう形がちょっとまだ見慣れない感じww。”衣装棚”っぽさは前回までのほうがあったかもしれない。
あと印象が大きく変化したなと思ったのがガストンとルフウの関係性です。旧演出ではルフウはガストンに会うたびに必ずと言っていいほどどこかしらボコられる気の毒なキャラだったのですが(汗)、今回見たらガストンはルフウを子分というよりも相棒として扱っている印象が強くボコる回数も激減していました(2-3回程度はあったけど)。
実はこの二人の場面は、今の時代にそぐわないのではとちょっと気になっていたところではあったので変更されたのはすごく良かったなと思います。パンフレットでも演出家さんが「今の時代に合った表現を」と語られていたので、意識されていたんだなと。
そのほかいくつか気になった変更点について。
♪変わりもののベル♪の場面、ベルは眼鏡をかけるようになっていました。そうすることでビジュアル的にも華やかさが少し影を潜めちょっとオタク気味な女の子という雰囲気に。「変わり者」と町中の人が噂する言葉に信憑性が増したなと思います。
ちなみに、「何の本を読んでいるの?」と聞かれた時のベルの返しが変わりました。以前は”豆の木と怖い鬼の話”だったのが、今回から”パリの鐘つき男の話”に。これって『ノートルダムの鐘』ですよね!?そういえば、アニメの『ノートルダム~』ではカジモドが見下ろした町をベルが本を読みながら歩いてる隠れキャラ的なシーンがあったなと思い出してちょっとしたリンクにホッコリしました。
モリースの自慢の木を切るマシーンはちょっと機械的でカラフルな造りに変わったなと思いました。レバーも大きく持ちやすそう。このシーンの時にモリースがメカを修理するためのヘルメットを装着するのですが、これがけっこうシンプルな造りに変わってしまったので客席からの笑いが起こらなかったのがちょっと寂しかったです(苦笑)。お父さんのコミカルさみたいなものがちょっと薄れたのは残念。
ちなみに、この場面の時にベルとモリースが歌う♪二人で♪というホッコリナンバーがあったのですが、これがまるまるセリフ劇に変わっていました。最初、あれ?歌わないの??とちょっと戸惑ってしまったけど(汗)これはこれでよかったのかもしれない。特にモリースと亡くなった妻のエピソードが追加されたのは良いなと思いました。
♪ひとりよがり♪の場面はベースは以前とあまり変わっていないのですが、ベルとガストンの密着度が少し減ったかなという印象でした。ベルは植物への水やりのほかに洗濯物を片付けるというアクションも加わっている。ガストンがベルの気を引こうと連れまわそうとするのは変わらないのですが、あまりベルに触れようとしてないなといった感じ。旧演出では密着しながらのコミカルな連動の動きがあったのですが、それがほとんどなくなってた。これも時代の流れですかねぇ。
おかげでベルはあっさりとガストンのプロポーズ攻撃から脱出することができてニンマリ状態でした(笑)。
♪ガストン♪での酒場シーン、確か以前まではガストンが座る立派な椅子が用意してあったと思うのですが、これがなくなっていました。なので立ったままでの芝居がメインになった印象。それはそれで良いんだけど、でもちょっと見慣れないせいもあってか違和感がありましたね(汗)。まぁ、ガストンがあそこに座ったせいでルフウがボコボコやられてしまうという流れになっていたので、それをなくすといった意味では必然だったのかもしれません。
カップのダンスは久しぶりに見たけど本当に素晴らしかった!多少タイミングが合わずに小さな掠れた音が響くこともあったけど、それでも全員でダンスしながらカンカン鳴らすシーンは圧巻です。しかも以前よりも踊りのアクションが増えて難易度上がってたんじゃない!?いやぁ、ほんと四季の役者さんたち凄いよなぁと感動です。
召使たちが野獣に対して「もっと紳士的に振舞って」と説得する場面。ここはけっこうコミカル要素が多いはずだったのですが、今回見たらちょっとシリアス的な雰囲気に変わってしまっていました(汗)。野獣がコグスワースに「彼女はどうした?」と尋ねるところも、けっこうイライラ度が最初から出ちゃってて客席からの笑い声も無し。コグスワースの口をムニュッてやる野獣が可愛くて好きだったんだけど、それもなくなっちゃってた。個人的に清水くんのちょっとコミカルな芝居も見たいなぁなんて思ってただけにそこは残念に思ってしまった。
ベルを夕食に誘うシーンもけっこう怒りのパワーがすごくて(汗)客席は笑う暇無しといった感じw。うーーん、今回のBBはあまりコミカルな野獣を見せない演出になっちゃったのかなと思うとなんだか少し寂しかったです…。ただそれもあってかベルが「彼とは一切関わりたくない」と拒絶心を露にするシーンは信憑性が増したなと思いました。
ベルの部屋を見張るルミエールの元にバベットが現れるシーン。ここで二人がイチャつくのは基本的に変わらないのですが、ルミエールがバベットの腕に細かくキスしていきながら「ペッ」と口に入ってしまった彼女の”毛”を吐き出すリアクションがなくなってしまいました。あそこもクスッとさせられる面白いシーンだったんだけどなぁ…。
♪ビーアワゲスト♪はBBの中でもメインディッシュというべき華やかなシーン。ただ個人的には新演出になってちょっと迫力がなくなっちゃったかなぁという違和感はぬぐえません。舞台の奥行きは使って大きく見せてはいるんだけど、平面的で立体感が薄まってしまったような気がして…。歌とダンスの迫力はすごかったんですけどね。でも、ベルが食事を楽しんでいるといった雰囲気は新演出のほうがリアルに感じられたのでそこは良かったなと思いました。
あと、ベルがナプキン女子の皆さんと一緒に踊るタイミングがちょっと遅くなった気がします。以前は最初のラインダンスに加わって一緒に数字を唱えていたのに、今回見たらそこに彼女はいなかった。クライマックスのラインダンスの時には参加してたけど、1回目の時もあの中にいて欲しかったなぁというのはありました。
そういえば、チーズクレーター(おろし器みたいなやつ)さんによるソロのダンスパートがなくなってたな。素晴らしい跳躍力と回転で客席を魅了してくれるキャラだったのに削られちゃったのすごく残念。その代わりにドアマットさんのソロダンスがちょっと増えてました。あの姿でアクロバットをやるのって相当な運動神経がないと無理。見るたびに驚愕してしまいます。
ちなみに、初演の頃にドアマット役を演じていたのは坂元健児さん。サカケンさんはこの後ライオンキングのシンバ役に抜擢されたりして着実にキャリアを重ねられたんですよね。退団した今も多くの舞台で大活躍されています。
食事を終えたベルがルミエールとコグスワースに案内されてお城を巡る場面。その間に彼女が食事を終えたことを知らない野獣がこっそりと自分が作った料理を持ってやってきちゃって、ベルが「彼さえいなければいいのに」ってクールな一言を言い放つのを目撃してしまう。ここ、旧演出版では全体的にちょっとコミカルに描かれていてクスクスッとなることが多かったのですが…、新演出ではどちらかというとシリアス路線に寄った感じになっちゃってたなぁ。ベルの一言に野獣がガックリと肩を落としてしまうシーンは可哀そうなんだけどどこか可愛らしさもあって「本当は良い奴なんだな」と見てるこちらも感じられる良さがあったんだけど…、なんかそういう雰囲気じゃなくなっててそれが寂しかった。
あと、コグスワースが案内の途中で「バラックでなければ直すな」(←バロック建築と掛けたシャレww)と調子に乗った発言をしたものの激スベリして撃沈っていうおもろい場面もまるまるカットになってしまってました。あと、スピーカーみたいなやつを逆に持ってしまうシーンもなかったなぁ。好きだった面白いホッコリシーンが軒並みカットされてたのはやっぱりちょっと悲しいものがありました…。
西の塔に入ってしまったベルが野獣に見つかってしまう場面。老婆からもらったバラの花は以前はガラスケースに入っていましたが、新演出からはそのままの姿で飾られていました。ちょっと花も大きくなったような気がする。
野獣に激昂されたベルは恐れおののき城から逃げ去ろうとするのですが、野獣はこの時に「いる権利はない!!」と言いながら彼女の袖を引き千切ってしまいます。旧演出ではその直後に彼がハッとして動揺した表情を見せるようなリアクションを取っていましたが、新演出では「権利はない!!」ともみ合ったところでビリっと破いてしまい我に返る感じに。動揺するまでの時間がちょっと伸びた印象です。そんな野獣をベルが罵った時「僕は…」と咄嗟に釈明しようとしてたのも今回から。だけどその声は届かなくて時すでに遅し、みたいな雰囲気になったのがなんだかとても切なかった。ここはより二人のやり取りが濃くなったように見えてよかったと思います。
ベルが去ってしまった哀しみに沈んだ野獣が心の叫びを歌う♪愛せぬならば♪の場面。ここで「おっ!」と思ったのが、野獣が西の塔の上にのぼって歌っている最中にベルが城から脱出していく姿を客席に見せていた演出です。これはすごく良い!!それが加わることによってより深くビーストの後悔の念みたいなものが伝わってきて臨場感も増したような気がしました。
2幕の狼襲撃の場面。ここはモリースが襲われる時もそうだったのですが、旧演出の時よりもリアルな狼人形が登場する感じになってました。以前は”狼らしきもの”といったあいまいさがありましたが、今回はよりはっきりとそれと分かる。
で、以前は狼に囲まれた時にベルが近くにあった枝を折り応戦するといったリアクションがあったと思うのですが、今回はただ怯えるだけといった感じになってました。さらに野獣が助けに入りながらも噛みつかれるシーンでもベルは怯えて遠くから見てて助けに入ることがなかった。まぁ、実際こんなことが起こったら誰でもあんな状態になっちゃうよねとは思ったんですが…、ベル、ちょっと薄情になったかも、とも(苦笑)。
ベルが野獣のケガの手当てをするシーン。以前は野獣の痛がり方がけっこうコミカルに表現されていたと思うのですが、今回見たらものすごく真面目な雰囲気になってて笑いが一つも起こっていませんでした(汗)。チャーミングな野獣の姿よ、どこへ行った…。
図書館でベルがアーサー王の物語を読み聞かせる場面はとても感動的でした。旧演出の時よりも二人の距離感がとても丁寧に描かれていて、ゆっくりと着実に心が通じ合っていく様子が手に取るように伝わってきた。ベルが城に滞在していた時間はそんなに長くないけれど、ふとしたきっかけからお互いに理解しあっていくまではとても濃厚に描かれていたと思います。特に客席に背を向けて本を読んでいる二人の姿がめちゃめちゃ良い。これは旧演出版でもあったんだけど、個人的には新演出の雰囲気のほうが好きかもしれません。ちなみに、ベルはここでも眼鏡をかけています。
あと、「みんなとは違う自分」という想いをベルと野獣が共有していくシーンもとても良かったな。セットを簡素化したことによって、二人の寂しい心が共鳴していく様子をジンワリ感じさせるような雰囲気になっていて感動的だった。
♪人間に戻りたい♪の場面は演出がだいぶ変わりました。以前はポット夫人やルミエール、コグスワースといったメインの召使以外のキャラクターが勢揃いして「人間に戻りたい」と歌っていたのですが、今回からメインの召使と一緒に歌っているのは”かつて人間だった頃の自分たち”の幻影といった感じになってた。ここは小さなお子さんにはちょっと分かりにくいかもしれない。どちらかというと大人向けの演出になったかな。
召使たちが人間だった頃の自分を懐かしみながら、早くあの頃に戻って楽しく暮らしたいという願望を強く持っているのだなというのがより深く伝わってきたような気がします。私はこの新演出、好きですね。
野獣がベルとの食事会に備えて準備するシーン。ここも以前は客席からクスクスといった笑い声が聞こえてくるようなコミカルな雰囲気があったのですが、今回はすごくストレートに真面目な感じに変わっていて何の笑いも起こらなかった(汗)。あそこは野獣のキュートな一面が見えるほっこりシーンだったんだけどなぁ。もう少し柔らかい雰囲気に戻すことはできないのだろうか。ちょっと寂しかった。
ベルと野獣がダンスを踊りながらさらに心の距離感を詰めていく♪美女と野獣♪のナンバーはとても温かい素敵なシーンでした。
ダンスを終えた二人が語り合う場面。以前は庭のベンチに腰掛けながら語ってたと思うのですが、今回見たらベンチっぽいところには野獣の鏡が置いてあるだけで二人は立ち話といった感じになってました。うーん、ここもなぁ、座っているからこそ温かみのある雰囲気があるみたいなところがあっただけに変わってしまったのは残念。それに伴い、ルミエールとコグスワースが野獣に鏡を見せて告白の勇気を後押しするといったシーンもカットになってしまいました(苦笑)。
ただ、野獣が父親を心配するベルに向かって「彼の元へ行って」と促すシーンはとても自然な雰囲気になっていてよかったです。以前は告白しようとドキドキしたタイミングと「行ってあげて」と促す言葉が近かったので急に思えなくもなかったのですが、今回見たらちょうどいい時間差になっていて違和感がありませんでした。
ベルがモリースに「私の中で何かが変わったの」と語る♪チェンジインミー♪。ここが新しく加わった場面ですが、ベルというキャラに奥行きが生まれたような気がしました。「ありのままの相手を受け入れる」ことへの喜びに溢れていて感動的です。ナンバーもドラマチックで壮大でとても素敵。BBの世界観にピッタリです。やっぱりアラン・メンケンさん、すごいよなぁ。
ベルが野獣のことを想いながら歌い上げ、モリースとの間にほっこりした時間が流れたなと思った時についにムシュー・ダルクが登場します。ベルをなんとかモノにするためにガストンがダルクを買収して悪だくみの計画を話すシーンがごっそりカットされているので、やっと出てきたかと思ってしまったww。メイクも以前のオドロオドロしい妖怪みたいな雰囲気ではなくてちょっと”人間”に寄せた感じにww。
で、ガストンたちは「モリースが野獣を見たという戯言を言って狂ってるから連れ去ろう」と騒ぎ立てるわけですが、ベルはそれをやめさせるために野獣からもらった鏡で本当に”彼”が存在することを証明してしまう。するとモリースも「あいつだー!!」と興奮状態に。この場面、少し前までは野獣への印象がちょっと変わったように見えてたのにやっぱり彼の中では恐怖の対象という意識が抜けなかったんだなと思ってしまう(苦笑)。
ガストンは村人たちに「野獣は我々を襲ってくるぞ」と扇動し、ベルの制止もむなしく城へと突入していきます。そして城の扉を無理やりこじ開けると…ここまでは以前までと同じだったのですが、城の中に煽られた村人たちが雪崩れ込んでいって召使たちとバトルを繰り広げる場面がごっそりとカットされてしまいました(汗汗)。これはちょっと違和感大きかったなぁ。何のために村人たちが出てきたのか分からないし、突入したと思ったらすぐにガストンが野獣を発見して戦うシーンになってしまったので唐突感が否めない(苦笑)。ちょっと短縮してもいいから召使と村人のバトルシーンは入れてほしかったです。
ガストンと戦って傷ついた野獣にベルが縋り愛を伝える場面。以前はけっこう高い位置で展開されていましたが、今回からセットが一新されたこともあってかだいぶ下のゾーンで演じられていました。グルグル回転のところはけっこう上がっていく感じで、ちょうど舞台中央のところで「あの姿」がバーンと現れる。ここの見せ方はドラマチックでよかったなと思いました。
ちなみに、野獣回転シーンは初演の頃からずっと目を凝らして見ているのですがwwその細かな仕組みは未だに分からずじまいです(笑)。大雑把なところはなんとなく予想はついてるんですけどね。まぁ、ディズニーマジックは細かく追及しないのが良いということで(笑)。
主なキャスト別感想
ベル:五所真理子さん
五所さんは「オペラ座の怪人」でのメグ・ジリーでしか見ていなくて、その時はあまり深い印象に残ることはありませんでした(すみません)。が、今回ベル役で見てビックリ!!こんなにも素敵な歌声とお芝居で魅了してくださる方だったとは!!
特に良いなと思ったのは、ベルが「みんなとは違う」という寂しさを常に感じているというシーン。眼鏡をかけて登場するといったことも影響していましたが、それ以上に表向きでは明るい笑顔をみせながらも実際は「世間に馴染めない自分」に対してほの暗い気持ちを持っているのがとてもリアルに伝わってきました。なので、野獣に本を読み聞かせた後に「人と違うって言われることの痛みが分かる」と告げるシーンにものすごい説得力があったと思います。このあたりの繊細な演技がとても良かった。
歌も凛とした響きで美しく、ベルというキャラクターにピッタリ。特に新曲の♪チェンジインミー♪の歌いっぷりは見事でした。
ビースト:清水大星くん
8月まで『オペラ座の怪人』でファントムを演じてた清水くん、こうしてビースト役でまた見れて嬉しかったです。野獣メイクは旧演出の頃よりも”人間”に寄せたスッキリ感があったので清水くんのイケメンな表情が分かりやすく出てました。
彼はセリフ回しもお国訛りが出ることがなくとてもスムーズで聴き取りやすいのが素晴らしいと思う。そして何より歌のパワーがすごいです。野獣はソロナンバーがほとんどないのですが、1幕ラストの♪愛せぬならば♪での爆発力は強烈なインパクトで、あれだけでお金払った甲斐があると思う人は多いのではないでしょうか。特に最後の「この身を」のところの余韻の伸ばしっぷりがすごすぎ!!ファントムの時も思ったけど、いったいどんな肺活量してんねん!?って感じですw。
清水くんのビーストはものすごく真面目で不器用で一本気な青年といった印象。”本当はベルと素直に向き合いたい”と思っているのにどうしても行動がそれに追いつかなくて、前半は常にイライラした感じ。それ故、怒りの芝居のパワーは凄まじく小さなお子さんはビビッて泣いちゃうんじゃないかと途中でちょっとハラハラしてしまいましたw。
2幕でベルと心の距離が近づき出してからは声色が柔らかくなり、彼が本来持っていた優しさの面が表に出てくる。柔らかくなったことでベルの気持ちが素直に受け入れられるようになり、「人と違うことの孤独」を彼女と共有するようになるといったくだりの芝居はとても良かったです。
ラストのぐるぐるからのバーン(抽象的表現ですがww)は、第一印象、「ジーーザーース!!!」でした(笑)。めっちゃジーザスに見えちゃったよ(清水くんのジーザス好きなんです)。
ガストン:金久烈さん / ルフウ:山本道さん
金久さんはソンダン55の時によく拝見していた役者さんで、今回本当に久しぶりとなりました。どちらかというとダンスの人といった印象が強かったのですが、ここ最近ではLKのスカー役も経験されているようで、迫力のあるお芝居がとても良かったです。特にあの筋肉はすごい!!金久さんってこんなにムキムキだったっけ!?と思ったほど。きっとトレーニング頑張られたんでしょうね。歌の迫力も素晴らしかったです。
山本さんはアナ雪のヴェーゼルトン役で見ていましたが、ルフウ役もめちゃめちゃハマってました。これまではどこかずるがしこいキャラといった雰囲気があったのですが、山本ルフウは可愛らしさが際立っていてなんだか見ていてちょっとホッコリしちゃった。
ルミエール:大木智貴くん / コッグスワース:吉賀陶馬ワイスさん
大木君はアンサンブルでは見たことがあったかもしれないのですが、メインとしては今回が初めて。2014年には『ミスサイゴン』にもアンサンブルとして出演していたということなのでどこかで観たことはあったかもしれません。
いやぁ、最高のルミエールでした!!なめらかなセリフ回し、ウィットに富んだ会話の雰囲気などなどどれもドンピシャです。艶のある良い声は色気すら感じさせるもので、なんだか見ててちょっとドキドキしてしまう。さらに歌も最高に上手いです。これからどんどん魅力的なルミエールになっていくのかと思うと本当に楽しみ。
ワイスさんのコグスワースはどんな感じになるのか最初あまり想像がつかなかったのですが、めちゃめちゃハマっててビックリしました。この役はどちらかというともう少し上の年齢層の役者さんが演じることが多かったのですが、ワイスさんは真面目で頭が固いところがありながらも柔らかくユーモアあふれたセリス回しがとても楽しくて好感度大。多きルミエールとのコンビも最高でした。
ミセス・ポット:潮﨑亜耶さん / マダム・ブーシュ:戸田愛子さん
塩﨑さんは今回初めましての役者さんでしたが、柔らかく優しい母性溢れるセリフ回しがとても素敵でした。ポット夫人は野獣の母親代わりみたいなところもあったりする役だと思っているのですが、それにはちょっと若いかなとは感じつつも、回数を重ねていくうちにそういった雰囲気も深まってくるんじゃないかなという予感はあります。温かい歌声にとても癒されました。
戸田愛子さん、今年の夏に『オペラ座の怪人』で厳しいマダムジリーを演じられていたのが一転、コミカルで親しみやすい豪快さのあるキャラクターがとてもチャーミングで素敵でした。衣装も今までの公演の時に比べるとスタイリッシュになっていたのでより美しさが際立つ感じになってたと思います。美しい歌声も健在で見所充分でした。
後述
最初はちょっと不安もありましたが全体的にはとても楽しめる舞台でした。新演出になりセットが簡素化されてしまったのはちょっと残念に思ったところはあるのですが(カットされてしまったシーンも含め)、これからはそれに慣れていかなければなと。ただ、それには少し時間はかかるかもしれません。積極的に次も観に行きたいかと問われれば、YESだとはっきり言えないのが正直なところです。
んーー、やっぱり、10年前の時の熱狂した記憶が今のバージョンを素直に受け入れがたくしてるかなというのはあるかな。私が好きになりすぎたんだと思います、洋輔くんのビーストを。でも、今回のパンフレットを見たら名前がなかったので(真っ先にキャストページから見たww)、今後追加されていくとしても彼ではない新しい役者さんが入るんじゃないかなと。
次回は違うキャストで見てみたい。四季は1週間前にしか出演者教えてくれないから(出たとしても突然変わるのもありだし)遠征だと突発ができないのがちょっとツライ。