ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』に魅せられ続けたこの約1か月半。26日の大千穐楽を目前に控えた25日公演のマチソワ観劇をしてきました!
25日マチネは石丸ファントムの前楽、ソワレは市村ファントムの千穐楽です。
この演目は東京オンリーしか公演ができないということで遠征費とかはけっこう捻出大変でしたが(汗)それでも3回飛んできて5回観れたことは本当に感無量というか…それだけの価値のある作品に出会えた充実感でいっぱいです。
ラブネバが海外で初めて上演された頃の評判を聞いたときには「これ好きになれるかなぁ」と微妙な気持ちになったものでしたがww、そこから年月を経てようやく出会えた日本版ラブネバは、私が想定したもの以上の感動をもたらしてくれました。
「もしかしたらハマる予感がする」と直感して回数多く取っておいて正解だったw。
おかげさまで、帰ってきてから数日はかなりの”ラブネバロス”に陥りましたです、ハイ(汗)。
2019年公演も終わったので、前回よりさらにネタバレに触れまくった感想で振り返っていきたいと思います。
思い入れが深い分かなりの長文になっているので(汗)どうぞご注意ください。ちなみに感じたことはすべて私個人のものですのであしからず。
『ラブ・ネバー・ダイ』の観劇感想一覧
2019.02.25 マチネ・ソワレ〈前楽〉公演 in日生劇場(東京・日比谷)
主なキャスト
<19.02.25マチネ>
- ファントム:石丸幹二
- クリスティーヌ:平原綾香
- ラウル・シャニュイ子爵:田代万理生
- メグ・ジリー:夢咲ねね
- マダム・ジリー:香寿たつき
- グスタフ:大前優樹(千穐楽)
<19.02.25ソワレ 前楽>
- ファントム:市村正親(千穐楽)
- クリスティーヌ:濱田めぐみ(千穐楽)
- ラウル・シャニュイ子爵:田代万里生
- メグ・ジリー:夢咲ねね(千穐楽)
- マダム・ジリー:鳳蘭(千穐楽)
- グスタフ:熊谷俊輝(千穐楽)
最後の最後に初めての熊谷くんが演じるグスタフに会うことができました!
彼はたしか、関ジャニのバラエティ番組に出演して「天使の歌声」と絶賛された子だったんでしたよね。今回が初舞台だそうですが、全くそれを感じさせない堂々たる芝居と美しい歌声でビックリしました!
最近の子役は本当に歌や芝居がしっかりしている。ミュージカル界の将来が楽しみです。
※あらすじと概要については1回目の観劇感想を参照にしてください↓
※2回目の観劇レポ↓
全体感想 1幕
今回はマチソワで両バージョンのファントム&クリスティーヌを一気に見ることができたので、比較しつつ1幕と2幕に分けてシーンごとに振り返りたいと思います。
まず、2バージョンを見て個人的に感じたのは…
石丸さんは「恋愛ドラマ要素強めのファントム」
市村さんは「サスペンス要素強めのファントム」
ということでした(あくまでも私個人の感想ですが)。
お二人比べてみると個性が違っていて、まるで違う物語を見ているかのような感覚になりました。どちらも独自の味があって本当に見応えがある素晴らしいお芝居だったと思います。
♪君の歌をもう一度♪ ~ ♪コニー・アイランド・ワルツ♪
このナンバー、ラミンがファントムを演じていたロンドン公演までは冒頭で歌われてなかったようですね。メルボルン版で改良されて一番最初に歌うことになったそう。単体ではラミンのCD聞いてナンバーの存在は知っていましたが、まさかしょっぱなに出てくるとは思わなくて、最初見た時はけっこうビックリしました(笑)。
でも、壮大で美しい旋律が最初にドーーンとくるインパクトは本当にすごいものがあったので、改良したことは成功だったんじゃないのかなと思いました。
ピアノに向かったファントムがクリスティーヌへの未練を最大限に情感こめて歌い上げるビッグナンバーですが、石丸ファントムも市村ファントムも、それはそれはドラマチックに歌い上げていて・・・冒頭から知らず知らず涙が溢れてしまいました。すごい力のあるナンバーですよ、ほんとに!
惜しむらくは、クリスティーヌの巨大肖像画(苦笑)。日本版はいったい誰をモデルに描いたんだろうか?ってくらいのクオリティでw、そこだけがいつも違和感持って観てしまいましたww。
石丸ファントムは、登場した時から孤独感が漂っていて…その姿を見ただけでもウルっときました。まるで一人取り残された少年のようだった。クリスティーヌと会えないことの寂しさに今にも押し潰されてしまいそうで、思わず駆けつけて抱きしめてあげたい衝動に駆られるような…そんなファントムの印象を受けました。母性本能みたいなものがめっちゃくすぐられたw。
そしてあのドラマチックな深みのある歌声が拍車をかけるわけで…これが泣かずにいられるか!って感じ(涙)。
市村ファントムは、なんていうんだろう…背中からメラメラと張り裂けそうなちょっと危ない空気感を漂わせてた。「無駄にしたこの10年」といった歌詞が出てきますが、その”10年”の重みというのを雰囲気と歌声だけでこれでもかというほど感じさせられましたよ…!!
市村ファントムは『オペラ座の怪人』で演じたキャラクターをさらに高めた雰囲気だと思いました。クリスティーヌに会えない期間の堪えようのない苦しみがビリビリ伝わってくる。まさに、歴史を背負ったファントムでしたね。よく耐え抜いてここまで生きてきたなって思ったくらいだったし。
その後の♪コニーアイランド・ワルツ♪に移るとき、ファントム部屋は上の方に上がってくんですが、その時の芝居も市村さんと石丸さんでは違っていましたね。
石丸ファントムは最初は悶々とした気持ちを抱えているように見えるんですが、サーカスが始まるとすっくと立ち上がって帝王のように手を広げて君臨していました。自分がサーカスを支配しているという自負の表れみたいな感じ。コニーアイランドを仕切ることでクリスティーヌへの気持ちを払拭しようとしたのかなとも思いました。
対する市村ファントムはずっと座ったままでした。サーカスが始まってもジッとしてそこから動こうとしてない。ただただクリスティーヌへの執着心に捕らわれ続けているようで…、ファントム部屋が下に降りてきた時にその苦しさから顔を抑えて悶絶していた仕草を見せていたのが非常に印象に残りました。
♪あなただけに♪ ~ ♪この10年♪
メグ・ジリーとウララーガールズによる楽しいショーの場面。25日はマチソワとも夢咲ねねさんだったのですが、1月に観た時よりも歌も少し安定していて、コケティッシュな可愛さが強調されてて可愛らしかったです。それに何といっても細いっ!!特に脚の細さに毎度驚愕しておりましたw。
この♪あなた~♪の最後のほうに3人の司会進行役が舞台袖から眺めてるんですが、彼らの反応が面白かった。ガングルとスケルチは楽しげにけっこうノリノリで眺めているのに対し、紅一点のフレックはつまらなそうな表情でムクれてるんですよねw。
今回の観劇で初めてそれを発見して、フレックはもしかしたらメグに嫉妬してるのかな?ってちょっとクスっとしてしまいました。
それにしてもこのトリオの3人もめっちゃ個性的で頑張ってましたよね!!私は毎度ガングル役の重松くんの足の長さに驚愕しておりましたw。
メグたちのショーが終わったあとにマダム・ジリーが「まだ次もあるんだから」と喝を入れにやってくるシーンは、毎回『オペラ座の怪人』でのマダム・ジリーの厳しさとが思い出されてニヤリとしたな。
メグはファントムへアピールできたのではとキャピキャピ喜んでいるのに対し、母親のマダム・ジリーは新聞で”クリスティーヌがアメリカにやってくる”というニュースを読んで気が気ではない。
この時のマダム・ジリーの反応が香寿さんと鳳さんとでは違っていたのが面白かったです。
香寿さんは「あの子が今こっちに来てしまったら私の秘めた想いが乱されるかも」といった女性的な焦りを思わせていたのに対し、鳳さんは「これまで私が彼に尽くしてきたことが水の泡にさせられてしまうかもしれない」といった物理的な焦りを感じさせました(あくまでも個人の感想ですが)。
それにしても、鳳蘭さんのマダム・ジリーはやっぱり迫力がすごかったww。クリスティーヌ、下手したら抹殺されるんじゃね!?みたいな危機感覚えたくらいだし(笑)。そんななかで夢咲さんの無邪気なメグの姿はけっこう救いだったなw。
クリスティーヌ到着
ラウルの借金返済のためという名目のために、ハマースタインの誘いで劇場のこけら落としで歌うためアメリカに降り立つクリスティーヌ。ここはセットもかなり大きく動いて、船から降りてくる様子を見事に表現していたのがすごいと思いました。
ちなみにここに出てくる「ハマースタイン」は実在したアメリカのオペラ興行主ハマースタイン1世を指しているらしいですね。『王様と私』や『オクラホマ』などの作曲家で知られるハマースタイン2世はその孫に当たります。
ここはクリスティーヌの登場が非常にドラマチックに演出されるのですが、そこもさることながら、個人的にはいつも「あぁ、タイタニック・・・」と思いながら見てました。一番最初に降りてくる乗客が”ミセス・アスター”ですからねぇ。アスター夫人といえば、夫のジョン・ジェイコブ・アスター4世がタイタニックと共に運命を共にしましたから…。
ラブネバの世界は1907年を舞台にしてるそうなので、タイタニック事故が起こる5年前…。そう思いながら見るとここの場面は毎度すごく切なくなってしまいました(涙)。
クリスティーヌが清楚な微笑みを称えて少し戸惑いながら静かに降りて来るのに対し、ラウルは神経質で「子供の写真を撮るな!」と一喝したりとピリピリムード。姿格好は『オペラ座~』での子爵様とかぶりますが、10年の月日を経てだいぶ雰囲気が変わったなというのがすぐに察せられる。
ラウルの生活は荒んだものらしく、今回の借金もギャンブルで失敗したというのがなんだか悲しいんですよねぇ。
ただ、私個人としては、あまりラウルがここまで身を崩したことに衝撃はなかったかもしれない。『オペラ座~』を観た時からラウルとクリスは最終的に一緒になる決断をしたけれど、常にファントムの存在というのは付きまとうだろうなと思っていたので、心のどこかで「いつかこじれるかも」的な予感があったんですよね(苦笑)。なので、あぁ、やっぱり・・・みたいな(汗)。
このあと、”ハマースタインのお迎え”と称して怪しい巨大馬車が現れるんですが、どう見てもそうじゃないだろう的なインパクトww。そこにバックにはファントム関わってるなと感じさせるわけですが、ひとつ気になったのが、船のシーンが出て来る直前の場面です。
プレビュー公演の時にはファントムが最初からクリスをアメリカに呼びつける形だったそうですが、改訂版からは最初は本当にハマースタインからの誘いでアメリカにやってくるという形に変わっているんですよね。
で、ファントムは船が到着する直前にクリスティーヌがアメリカにやってくるという新聞を読んで衝撃を受けているシーンが出てくるんですが・・・これ、客席の下手側に座ってる人は気付かない人が多いと思います(汗)。
というのも、下手側からは非常に見えづらい”舞台下手の天井に近い場所”でそういうリアクションしてるので(苦笑)。私も最初は全く気がつかなくて、2回目に上手から見えて「そうだったのか」と思ったくらいだったw。
下手すると、見えづらい位置に座ってる人は一番最初からファントムがクリスをアメリカに呼び寄せたって思っちゃったんじゃなかろうか?実はそうじゃなくて、新聞で知ったファントムがハマースタインと直前交渉してああいう形になったっぽいという展開だと思うので、あの演出は非常に分かりづらいなと。
もし再演があるとしたらなんとか変更できないものなのだろうかと余計な心配をしてしまいました(苦笑)。
クリスたちが乗った馬車が動き出すと同時に、上の桟橋からファントムが「♪おいで、エンジェル・オブ・ミュージック♪」と歌うのはけっこう鳥肌モノでしたね。
特に、市村ファントムのこの旋律を生で聴けたというのは嬉しかったです。
♪なんてひどい街!♪ ~ ♪心で見つめて♪
ハマースタインが用意した馬車に乗っていないので、当然ラウルはハマースタインと会うことができなくなり酷い荒れ模様に(汗)。それをクリスティーヌが必死になだめようとしてるわけですが、愛情からというよりも、ラウルに対する無意識の罪悪感みたいな雰囲気が感じられていたのが印象的でした。その理由はこのシーンの後に起こるわけですけどね(苦笑)。
平原クリスはちょっとおっとりしていて、ラウルの怒りに対してもそんなに激しく動揺していない印象だったのに対し、濱田クリスはどこかビクビクした感じでラウルに必死に寄り添おうとしていたなぁという印象だったかな。
万里生くんのラウルは小野田くんに比べると感情表現が素直。思ったことをバーっと表に出してしまうような危うさがあった。直情的な感じだったかな。
だけど、怒りに任せて息子のグスタフにキツく当たってしまった直後「しまった…」というふうにものすごい後悔した表情を見せてた。抑えたくても抑えられないイライラにラウル自身もすごく苦しんでいるんだなっていうのが見えて切なくなりました。
グスタフとの関係も、小野田ラウルは愛してるのにその感情を素直に出せない不器用さがあったのに対し、万里生くんのラウルは謎のオルゴールを一緒に眺めるときにすごい優しい父親の顔を見せてた。愛情表現の出し方としては、万里生くんの方が分かりやすい父親なのかなって思いました。
不安定な父親の様子に哀しい表情を見せた息子のグスタフをクリスティーヌは優しく歌ってなだめます。この♪心で見つめて♪のナンバーは子守歌みたいで聴いていてとても心地良いし、流れるような旋律が実に美しく、毎回私までもが癒されまくってましたw。
平原クリスはグスタフに対して「友達」のようなフランクな感情で接しているように見えたのに対し、濱田クリスは無償の愛を惜しみなく与えているかのように見えたのも印象的。特に濱田さんは「母性を強く出したい」と語っていたので、まさにその通りのクリスティーヌだなって思いました。