劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』大阪公演 2022.09.27−28ソワレ

飯田洋輔くん(ファントム役)について

この日をもって暫く会えなくなるだろうなという気持ちで客席に座っていたこともあり、なんだか始まる前から寂しくてちょっとウルウルしそうになってしまった(汗)。今年の5月に初めて洋輔くんのファントムを観てからほぼほぼ毎月通ってたからなぁ…。今度からはそこまでフットワーク軽く行けなくなるかもしれないので(岡山よりさらに西へ引っ越してしまった為 苦笑)、思い残しがないように見届けてきました。

♪ミラー♪

「私の宝物に」と歌い始める時の声がこれまで見てきた中でも3本の指に入るほどの迫力でゾクっときました。さらに「無礼な若造め」のところもめちゃめちゃ力が入ってて、ファントムの怒りが燃えに燃えているのが手に取るように伝わってきた。「わ」はいつもすごい勢いだったけど、「ぶ」を強調する歌い方はここしばらく見ていなかったのでこの日の洋輔くんの気持ち乗ってるんだろうなと思えて…ホント嬉しかった。

ミラーの向こう側から姿が見えたとき、”あぁ、やっぱり大好きだなぁ”と改めて思った。ずっとずっと見たかったその姿…、何度見ても胸が熱くなりますがこの日は特に…ね。クリスティーヌに差し出す手も紳士的で美しい。

♪The Phantom of the Opera♪

ボートを漕ぐ仕草、周りの空気を支配するような意思の見える繊細な指使い、そして立ち姿の美しさ。クリスティーヌをちらりと見降ろした時の艶のある視線など、どんどん洗練されていってるような気がします。一つ一つの動きにファントムの心の動きを染み込ませているような感じにも見えたかなぁ。まぁこれは、私が尋常ではない気持ちで洋輔くんを凝視してるからそう思えてるっていうのが大きいんですけどね(汗)。

ちなみに、27日ソワレでは初めてハット飛ばしに失敗。うまく袖まで飛ばずに最短距離で落ちていったのを見て珍しいなと思ったんだけど、ある意味貴重と思った。あと、ダミー人形を見せる場面でシートを剥がすときに最初なかなか掴めなくて最後にやっと届いてバサッとやってたのがちょっと可愛かったな。

クリスが気絶したあとの動揺っぷりは毎回すごくいいリアクションしていて萌えまくってみているのですがw、27日ソワレでは彼女に掛けるマントをちょっと取りづらそうにしていてちょっとドキッとしましたがなんとか事なきを得てました。あのマントの掛け方が本当に優しくてねぇ…。彼女の首のところをちょちょっと微調整しながら気遣っている姿が、あぁ、洋輔くんらしさが滲み出てるなって思えて毎回すごく癒やされてました。

28日はハット飛ばしからマント掛けまですべて完璧に演じてくれました。

個人的には、MotNの時の歌いっぷりがものすごく痺れました。一つ一つの言葉にファントムの切なる想いがこれでもかってくらい込められてる。それに、「私のために歌ってほしい、どうか」と祈るように歌った後のクリスティーヌを見つめる目!!彼女しか見えないといったような狂気と純粋な恋心のちょうど狭間のような印象的な輝きを放っていた。あの表情見た時、自然に涙溢れて止まらなかったよ…!!どんどん進化していくよね。以下に彼がこの役と誠実に向き合っているのかがすごく伝わってくる。

本当に、最高のMotNだった…!!

オルガンに向かって作曲しているシーンも印象深い。彼の頭の中に音楽が降りてきてパッと閃いた後熱心に楽譜に向き合う。この一連の仕草から、いかにファントムが音楽を愛しているのかが伝わってくる。洋輔くんのファントムからは本当に音楽愛が伝わってくるんだよね。それが私はすごく好き。

クリスに仮面をはぎ取られた後の「ぐわぁーー!!」という悲鳴はとてもリアル。そこからの激しい怒りと哀しみ、クリスティーヌへの想い…すべてがとても切ない。特に仮面を返された後に彼女の顔を見つめた後、自分の想いを断ち切るように苦しそうに立ち上がる姿は本当に胸が痛んで泣けます(涙)。このあたりの感情表現、観るたびに繊細になっているような気がするな。

♪イル・ムート♪

本当は前方席で空いているところがあれば間近で見たい気持ちはあるけど、このシーンでのプロセニアム・アーチの場面は見えないのが気になって。どの洋輔くんの姿もこの目に焼き付けたいと思ってしまうのであえて中央からやや後ろの席を取っていました。

カルロッタがカエルの声になってしまうシーンに登場する洋輔くんファントムのケタケタ笑う姿が私は大好きだった。困惑する人を見てあざ笑う姿は可愛くもあり、ゾクっとさせるものもあり。こんなに冷淡な笑い方をする芝居の引き出しもあったんだなって、すごくうれしかった。

♪All I Ask of You♪

エンジェル像から姿が現れた時の表情はとにかく苦しそうで哀しげで…もうあの表情を見た瞬間から私の胸も締め付けられるように苦しくなってしまう。それから、「愛を与えた」からの歌い出しの声のなんと哀しく寂しい…そして美しい響き!!その声色に、ファントムのあの瞬間の感情がすべて詰まっていた。歌声から感情が手に取るように伝わってくる。洋輔くんファントムが哀しみの感情に押しつぶされている姿を見て、私の心はもう張り裂けそうになってました…。

このシーン、ほんっとに切なくて苦しくてたまらないんだけど、あの瞬間に彼の演じているファントムの想いを共有できていることに幸福感も感じてた。一緒にあの時間を過ごせていることが、哀しいんだけどとにかく本当に嬉しかったのです…。

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♪マスカレード♪

レッド・デスで登場するシーンは、「スペクタクルな夜」のフレーズの時に階段上に出てくるときからつい注目しちゃうw。なんというか、貫禄がすごく出たなぁと思う。立ち姿からファントムの圧倒的オーラがビリビリ感じられる(個人的感想ですけど)。

”ドンファンの勝利”の楽譜をアンドレさんに投げる時は、今回は両日共にナイスなコントロールで投げてましたね。いつかもっと雑にぶん投げる姿も見てみたいかもw。

顔の表情は見えないけれど、クリスティーヌを見つめている時の「まだ離さぬ」のとき、彼女への激しい感情が彼の中で燃えているのが感じられます。立ち姿だけで感情が伝わってくるお芝居、本当にどんどん進化してるなと思う。

♪墓場♪

十字架から現れた後の声色のなんと優しく美しかったことよ…!!特に「忘れたのか、エンジェル」の歌い方が天から降りてきたかのような響きに聞こえて涙が止まらなかった。あれはもう、心の中でクリスティーヌと一緒に歌わずにはいられないよね、「エンジェルオブミュージック、私の大切なひと」と。ほんっとに心が震える歌声だった。

ラウルに気が付いてからの火の玉攻撃している時の洋輔くんファントム、ものすごい冷たい表情してた。ラウルに対する敵意から”クリスティーヌは私のもの”という絶対的自信を見せつけようとする芝居の迫力がすごい。でも二人が立ち去ってしまう姿を目の当たりにしたときの「行くなぁあ!!」は一転して心の大きな動揺を見せる。ここのメリハリの効いた感情表現が素晴らしかったです。

この墓場の場面はラウルの出現によってファントムの感情の乱高下が激しいので演じるのも大変だと思います。が、そこに挑んでいくことによってどんどん洋輔くんの新たな引き出しが開いていくような気がして胸が熱くなっていました。

♪The Point of No Return♪

今回ものすごくドキリとしたのが、冒頭の歌い出しです。「心に潜む密かな願いに導かれおまえは来た」のフレーズのシーン、ここはいつも旋律通りに歌われてきたのですが…、28日ソワレは「来た」のところを歌ではなく”言葉”として発していたんですよね。私はそのワンフレーズを聞いた時にものすごい鳥肌が立って涙腺が決壊してしまった(涙)。セリフを語るように歌っているその姿に感激して心が大いに震えたのです。洋輔くんとファントムという演じている役がこれまで以上に一体化したように思えて本当に嬉しかった(涙)。
かつての四季では譜面通りに歌うことが絶対とされていて、こういう瞬間にはお目にかかれないことが多かった。だけど、その瞬間瞬間の役者本人と役との気持ちの重なりによって色んな表現や個性が出るのは悪い事だと思わないし、むしろそうあってほしいと思っています。本来歌う部分を自然に”言葉”として発したシーンを見て、洋輔くんの役者としてのさらなる進化を感じとても感動しました。

黒いフードを被っているので最初のほうは表情をうかがい知ることはできません。でも、その立ち姿からファントムのクリスティーヌに対する抑えようにも抑えきれないといった激しい感情が盛り上がっていく様がものすごくリアルに伝わってきた。歌のフレーズの一言一言・・・、一言一句にファントムの気持ちが乗り移っているようで…見ている私も一緒にどんどん胸が苦しくなってくるレベル。

歌声、立ち姿、唯一露出している「手」の繊細な動き・・・ベールの下で愛しくてたまらない人と共に舞台に立ち、触れられたことに対する溢れんばかりの感情が湧き水のように吹きだしていく洋輔くんファントム…。必死に感情を落ち着かせようとしても、最後に彼女と密に触れ合ったあの瞬間に彼の中で歯止めが効かなくなったのだと思う。そこに持って行くまでの感情の動きが本当にリアルで自然で…切なく苦しい。涙なしには見られなかったよ…!狂おしいくらい「自分のものにしたい」という感情に溺れていく彼の姿はあまりにも痛々しく、哀しかった(涙)。

ちなみに、27日はクリスが顔の部分の黒いフードをめくるときに中途半端な感じになっちゃって、洋輔くんファントムの表情が一瞬「!?」って感じで固まってたように見えたの可愛かったw。でもその後すぐに自分でマントを後ろにやってて、あ、自分で見せちゃうんだって思えてちょっと面白かった(笑)。

指輪をクリスの指にそっとはめる場面での歌声は…やっぱり私には「祈り」の言葉に聞こえてしまう。”お願いだから、どうか、僕を受け止めて”という、悲鳴にも似たような彼の切実な心の叫び…。あんなに縋るような目で必死に訴えている姿…思い出すだけでも涙が出るよ(泣)。どうにかその願いをかなえてあげたいという気持ちで見入っていたのは私だけではないのではないでしょうか。
気持ちが届かずすべての姿を彼女によって晒された直後、悲鳴にも似た喚き声をあげ泣きそうになりながらクリスティーヌを連れ去っていった後ろ姿はとてつもなく痛々しく見えた。

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怪人の隠れ家

クリスティーヌから「飢えた悪魔の餌食」と罵られる場面、以前はこの言葉を聞いてものすごいショックな表情を浮かべていたけれど、この時見たら少し自嘲にも似たような諦めにも見えるような悲しい表情をしていて…それが私の心にものすごく刺さりました。自分は悪魔な存在だと改めて自覚した後、少し投げやりに過去を語ろうとするのですが…母親とのくだりになるとものすごく寂しそうな孤独を纏った少年のような雰囲気を醸し出している。
母親との関係のくだりはこの一瞬にしか出てこないけれども、洋輔くんファントムはここで今までには見せなかった孤独で哀しい表情を浮かべていました…。すぐそのあとに打ち消すように「哀れみはいらぬ」とクリスの花嫁衣裳準備に入ってしまうのだけれども、母親とのことが彼の中で大きな心の傷としてこびりついているというのは痛いほど伝わってきました。

クリスの花嫁衣裳の準備、以前はけっこう丁寧にベールを微調整したりしてたけど、今回見たらものすごく乱暴に扱っていて少し驚きました。何が何でも自分の手元に置いておくのだという追い詰められたような余裕のない気持ちがそうさせていたのかもしれない…。そう思うとなおさら哀しくてね…。

ラウルが現れた後は半狂乱のようになりながらも、あくまでも”優位に立つ自分”を見せようとするファントム。それでも心の苛立ちは抑えきれず、落ち着かず手をいじったり足を組んだり視線はなかなか定まらない。だけど「情け知らず」と罵られた時の「情けなど持たない」と逆上するシーンは彼の本音の部分が漏れてしまってるわけで…。ラウルが現れクリスティーヌが彼の元へ走っていったことで洋輔くんファントムがじわじわと精神的に追い込まれているように見えて…もう見ていて私の感情も崖っぷちに立たされているような感覚になってた。

そしてさらに印象深かったのがクリスから「哀しみの涙今、憎しみに変わる」と罵られた後。ラウルの首にロープを掛けたところまでは狂ったような笑い声をあげながら挑発しまくっていて、「もはや引けないぞ」とクリスに最終判断を委ねようとすらしてた(いつもはオルガンのところで「もはや~」と歌い出してたけど、28日は最後の「ぞ」のフレーズのところまでオルガンから離れた場所で歌ってた)。クリスに自分かラウルかの選択を迫ろうとする感情が昂ってたんだろうな。
彼女から「憎しみ」というワードを聞いた直後、洋輔くんファントムはこれまでとは少し違うニュアンスの芝居をしてたかも。今まではクリスの激しい罵りの言葉にショックを受けて感情コントロールが効かなくなるような雰囲気だったけど、今回見たら…自分のやってしまっているこれまでの行動が彼女にその言葉を言わせてしまっているのか、といったかのような”後悔”にも似たような感情に襲われているように見えたんですよね。自分は何か間違っているのかと、どうすれば彼女は自分の方を向いてくれるのかと、必死に事態打開のための考えを浮かべようとしてももう何も出てこない。その現実にもがき苦しみ急速に心理的に追い詰められていっているようで…哀しくて苦しくて…辛くてたまらなかった(涙)。

クリスティーヌがラウルの前に立ちはだかってファントムをにらみつけた時、洋輔くんファントムはそれを凝視することができず泣きそうな表情になりながら顔を背けその場を離れて行ってた。「救えるのは君だけ」「もはや戻れない」クリスティーヌに投げかけていた彼のこれらの言葉は自分自身に向けられているようでもあった。最後のほうは泣きそうになるのを必死にこらえるように歌ってたし…、打つ手を無くして逆に追い詰められて八方塞になっていく様を観るのは本当に胸締め付けられる想いだった(涙)。
クリスを脅すような言葉をぶつけながらも、その心は苦しみにもだえ苦しんでいて必死に”僕を受け入れてよ!!”と悲痛な叫び声をあげているかのようにも見えたんだよね…。そんな姿見てたらもう、息が苦しくて心臓止まるかと思ってしまったほど(涙)。

クリスティーヌからキスを受けた後、以前は「無」になる表情に思えることが多かったけど、この日観たら、自分の中で今現実に起こった出来事を頭の中で総動員して必死に理解しようとしているように見えました…。最後に自分の唇にそっと手を触れながらクリスティーヌの方を振り向いた時、憑き物が取れたかのような、幼子に戻ったかのような表情になっていたのも印象深い。

ラウルのロープを断腸の想いで断ち切った時の何とも言えない呻き声がまた哀しすぎる…。あの瞬間に自分の望んでいたものを諦めてしまったかのように「二人して出ていけ」と力なく歌っていた。それが彼の精一杯…。それでも立ち去れずに呆然と見つめていたクリスを見て感情の抑えが効かなくなり「行ってくれ、お願いだ!!」と泣き叫ぶ。堪えようとした感情が漏れてしまった洋輔くんファントムのなんと哀しい姿よ…(涙)

猿のオルゴールの顔を半分隠しながら歌う♪マスカレード♪。彼女を失ったことへの哀しみを語り掛けるように、必死に声を絞り出しながら歌うその音色は涙無くしては見れませなんだ(涙)。「仮面に隠れて生きてきたこの人生」と歌い終わった直後の力なく涙に暮れる姿は哀しすぎて胸がこれでもかというほど締め付けられる…。
クリスティーヌが帰ってきた瞬間、弾かれたように立ち上がるもすぐに彼女の手にある指輪が目に入り…この時、そっと哀しげな笑顔を浮かべたように見えたんだよね…。予測した未来が目の前にあって、自分はそれを受け入れなければいけないんだというような悲しい表情だった。

クリスから指輪を受け取った後の「I LOVE YOU」はこの上なく優しく哀しい響き。初めて愛情を知った時にそれを手放さなければならない哀しみが溢れているようにも聞こえたな…。去り行く彼女に向けて伸ばす手があまりにも切なすぎる(涙)。
自分の指に指輪をはめてそっとキスをしたあと、ふとクリスが投げ捨てていったベールが目に入る。あの時、彼女への断ちがたい想いがこみ上げてきたかのように泣きそうになりながらそれをかき集めていて…。ベールに残る彼女の存在を確かめようとするかのように涙声で絞り出す愛する人の名前…。「クリスティーヌ…」と顔を寄せながらホロホロと泣いている姿に私の気持ちは哀しみの渦に巻き込まれていくかのような状況になってしまった(涙)。

そして、最後に歌われる♪ミュージックオブザナイト♪の一節。ありとあらゆる感情を込めた、魂の歌声だった(号泣)。本当に、すごい表現力だったよ…!

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後述

洋輔くんのファントム、本当に観に行くたびに新たな発見があったり進化があったりして本当に堪能させてもらいました。おそらく、この先もさらに新たな化学反応や進化があるに違いないけど(10月には再びの弟・達郎くんラウルとの共演もあったみたいだしね)…、私が見に行ったあの日は、その瞬間の一番最高の姿を見せてくれていたと思ってる。

次に会えるのはいつになるかな…。『オペラ座の怪人』大阪公演の千穐楽も2023年8月末と決まったし、その先の公演地は発表されていないからもしかしたら暫く上演されないかもしれない。大阪までますます遠いところに引っ越してしまったけれど、時間と資金がある時にはなんとか会いに行きたいです。本当はCATSでの洋輔くんも見たいんだけどねぇ…。名古屋はなかなかに遠い(汗)。

そろそろ佐野さんが全国公演を終えられたタイミングでオペラ座に戻ってきそうな予感もありますね。新しく演出が変わったシーンもあるので、そこを佐野さんがどう演じられるのかも興味があるな。機会があれば観に行きたいと思います。

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