劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』東京公演 2021.06.30マチネ

主なキャスト別感想

岩城雄太さん(オペラ座の怪人・ファントム)

お初の岩城ファントム、評判がとてもよかったので会える日を楽しみにしていました。いやぁ…、新鮮なというか、独特の表現なんかもあって非常に見ごたえのあるファントムでしたよ!

まず、歌が超絶お上手!!これまで四季作品で岩城さんと認識して観たものはなかったからか、こんなに歌が上手い方がいたとはと驚きを隠せませんでした。声はどちらかというと高め。佐野さんも高めですがそれとはまた違った質があって、前半部分は聞いていてとても気持ちが安らぐ感覚がありました。

そして何よりも特筆したいのはロングトーンの素晴らしさです!!非常に高いレベルを保った奇麗な伸びのある声に大感動!ちゃんと音楽が最後フェードアウトしていく箇所までそれと合わせて伸ばしきっているのが本当にすごいです。あの歌声はいつまででも聞いて痛いレベル。クリスティーヌが「音楽の天使」と慕うのも納得です。

岩城ファントムは歴代のファントム役者さんの中でも特に「幼さ」がにじみ出ているなという印象が強かったです。モーリー・イェストンとコピット版の『ファントム』に登場するエリックに一番近いかもしれない。っていうか『ファントム』にも出てほしいと思うようなレベル。

ボートのところまではとても紳士的に見えましたが、隠れ家に着いてクリスティーヌの歌声を聞いてる段階からソワソワ落ち着かない感じ。ハットの投げ方もぎこちなくて袖に飛ばずに落ちちゃったほどw。セクシーポーズはしてるんだけど、気持ちの中ではすぐ近くにあこがれの女性がいることでテンションを抑えるのに必死、みたいな可愛さが随所に感じられて新鮮でした。

「The Music of the Night」はあの美声でとても情熱的に歌っていたのがまた印象深い。”クリスティーヌがいなければもう生きていけないよ”って訴える気持ちがひしひしと伝わってきてグッときましたねぇ。
ここの前にも書きましたが、クリスティーヌが気絶してしまった後の反応がまた可愛いw。「えっ!?どうしよう」みたいに動揺して一瞬動きが止まってたのが非常にツボでした。可愛くて母性本能がくすぐられる(笑)。

「イル・ムート」上演中の舞台最上部でのマントの翻しっぷりはめちゃくちゃスマートでカッコいいです。岩城さん、細見ですからキレのあるマントさばきがすごくサマになりますよね。

でもその後のエンジェル像のシーンは…あれは涙なしに見れない!!第一声から声がすごく心細くて泣いてるんですよ…。まるで孤独な少年のよう。クリスとラウルの歌声が聞こえてきたときには片耳ずつ押さえていたのも印象的。徐々に真綿で首絞められてるようなそんな雰囲気で見ているこちらも胸が痛みました(涙)。
それゆえ、直後の怒り爆発がすごい説得力を持っていました。「これほどの辱めを」と歌う直前には「うわぁ~!!!」って感情を爆発させたような叫びを発していたのも印象的。あそこで叫ぶファントム、初めて見た気がします。

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墓場のシーンではあの美声でクリスの心をコントロール。あんな声で誘われたらどんな人でもふらふらってついて行ってしまうよって思いましたよw。それくらい魅力的な惹きつけられる歌声だったと思います。

そのあとのラウルとの対決では対抗心むき出し。「ずいぶん威勢のいいことだな」って言い方は最初自分を優位に見せる余裕があるように見えたのですが、ラウルの挑発とクリスが彼にずっと寄り添っているのを目の当たりにしていくうちにイライラがMAXに(汗)。そして火の玉攻撃も通用せずラウルが彼女を連れて袖に走り去った後の「行くなぁーー!!」がもう、めちゃめちゃ悲痛で…。そして頼りなくも聞こえてしまって…あぁ、岩城ファントム追い詰められてる…って思ったら心が痛くて仕方なくなってしまった(涙)。

TPONR(ポイントオブ~)での黒マント姿の時もソワソワ感がほかのファントムよりも顕著に伝わってきました。自分で企てた計画なのに、艶っぽいクリスを目の前にして心の動揺が抑えきれない感じ。動きがすごいぎこちなかったんですよね。あの時点で「おかしい」と気づいても不思議じゃないレベルw。
でも、クリスから黒マントをめくられた瞬間…ものすごく哀しそうな表情見せてて…なんかそれ見ただけで泣きそうに。さらに自分の指にはめた指輪をクリスにはめるときの泣きそうになりながらも切実に「自分に振り向いて」と訴えかける表情がもう切なすぎた(涙)。クリスが拒絶反応見せてるからなおさら泣けるんですよねぇ…。

そして隠れ家へ再びクリスを連れ去るんですが、この時はもう幼児性が剝き出し状態。「クリスティーヌ、なぜ?なぜだ!??」はもう、彼のありったけの心の叫びが悲痛すぎて観ているこちらも辛い…。孤独な少年が本心を抑えきれなくなったような感じ。

嫌がるクリスに無理やり花嫁衣装を着せるときは錯乱状態に近く、「醜さは心の中よ」とクリスに説得されてもその意味が全く中に入ってこないような感じでした。
そして興味深かったのがラウルがクリスを助けにやってきた場面。ラウルにだけは弱みを見せたくないらしく、椅子に座って指の爪を磨いてみたりと「余裕のある自分」を演出してたんですよね。あくまでも彼にだけは常に優位でいたいという子供染みた行動がすごく新鮮で面白かったです。

それでもクリスはラウルを助けようとしてて、そのことが理解できなくてどんどん混乱。ほしいものが手に入らず気持ちが不安定になった子供のように落ち着かなくなり、楽譜の譜面を撫でまわしたりと目の前がだんだんわからなくなっていくさまが彼自身の崩壊を見ているようで…。
そんな岩城ファントムを見ていたら心の中で「クリスティーヌ、早く岩城ファントムを救ってあげて!!」と叫んでる自分がいました。ほんと、一刻も早く救ってあげたいと思っちゃうほど揺さぶられたんですよね…。

そしてキスシーンのあとの岩城ファントムはというと…、思っていたよりも「無」な感じだった。動揺があまり表に出ていない感じ。自分でも何が起こったのか理解が追い付いてなくて、でも、ラウルを開放しなければという本能が動いたって感じだったかなぁ。それが逆に切なかったよ…。
二人を逃がすために叫ぶ「行け、行ってくれ、お願いだーーー!!!」はもう、絶叫状態…。彼の心の中がぐちゃぐちゃになってどうにもならなくなってるんっだなっていうのが伝わってきた。

その後の「マスカレード」ではまた孤独と生きていかなければならないのかという悲しみに満ち溢れていて本当に泣ける…。そのあと、クリスが戻ってきて指輪を渡されるのですが、その手を少し微笑みながら握りながらも話したくない感情に駆られていて…。でも最後は手放しちゃう。その瞬間に彼の心が少し救われたことになるのかなって思いました。哀しいけれど、結果的にはよかったという安堵感もありましたね。

でも、彼女がいなくなった後、指輪を握りしめた時に「アイ・ラブ・ユー」ってめちゃめちゃ愛を込めたセリフを口にした岩城ファントムはもう、涙なしには見れなかった(泣)。あの場面で2回目の愛のセリフを発したファントム、初めて見たよ!!なんて切ないんだろうって、観ているこちらの胸が締め付けられるほどだった…。彼はこの時本当の愛を悟ったんだろうなって感じたな…。

で、想いに浸ってるときにクリスとラウルの歌声が耳に入ってきて…、「あ、行っちゃう…」みたいな感じで泣きそうになりながら遠くに消えていく二人を見送る岩城ファントム(涙)。こんなの、泣くしかないじゃないかーーーー(涙)!!!もうほんと、切なかったです…。

これはもう一度会いに行きたくなるレベル。岩城さんの今後の進化にも期待したいと思います。

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山本紗衣さん(クリスティーヌ)

紗衣さんのクリスは深みのある歌声がとても魅力的なのですが、それ以上に感情豊かで見ていて感情移入がとてもしやすいです。怯えるときはとことん怯えて、陶酔に浸る時はどこまで行くの!?ってくらい周りが見えないような感じになってる。一つ一つの感情をとても素直に演じられているなという印象がありました。

ラウルとの関係は恋に恋してる感がAIAOY(オールアイ~)で見受けられたのですが、もうその様子がキラキラしていてとても可愛らしい。それに対してファントムに対しては好奇心といった感情がとても強かったように思います。なので、彼女の愛を必死に求めてる岩城ファントムがなおさら気の毒になっちゃうんですよね(汗)。

印象的だったのはクライマックスでファントムへの憎しみの感情から慈愛の感情が沸き起こってきた場面。キスをした後一度その場を離れますが、もう一度ファントムの元に戻るクリス。もうその時は何とも言えない悲しげな今にも泣き崩れそうな表情になってて思わずもらい泣き(涙)。あの瞬間に初めてファントムとクリスの気持ちが繋がったのかなと思うと本当に切なかったです。

加藤 迪くん(ラウル)

髭なしラウルの加藤くん、精悍で凛々しく若さゆえの真っ直ぐさがとてもまぶしいです。ラウルはファントムの敵役みたいな立ち位置ではあるのですが、加藤くんのラウルはそれ以上にまっすぐにクリスティーヌへの愛を貫いていて好感が持てます。

一番印象深いのはクライマックスでクリスがファントムにキスをしたときの反応。2回目のキスの時にすぐ目をそらすラウルを多くみるのですが、加藤@ラウルはけっこうギリギリまで二人の様子を見届けたあと「敵わない」って表情で目をそらすんですよね…。それがなんだかとても泣けました。

増田守人さん(アンドレ)・平良交一さん(フィルマン)

相変わらず息ぴったりのコンビでとても楽しませていただきました。増田さんはカルロッタにおべっか使いながらもちょっとデレってなっちゃうところが可愛い。平良さんはゴシップ好きで新聞紙を小気味よく袖に投げていく仕草がめっちゃダンディでカッコよかったです!でもこの日は新聞が1部袖に行かないで戻ってきちゃいましたけどねw。

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木村智秋さん(マダム・ジリー)・松尾 優さん(メグ・ジリー)

木村さんはこれまで「ウィキッド」のエルファバなどパワーのある女性が多かったので、比較的「静」を求められるマダム・ジリーに配役されたのはちょっと意外で興味がありました。木村@ジリーは、これまで見てきた歴代ジリーの中でも一番感情表現がしっかり出るタイプだなという印象で非常に斬新で面白かったです。特に後半、ラウルに呼び止められてファントムの正体を語るシーンは、まるで怪談話を聞いているかのような鬼気迫る話しっぷりwで観ていてゾクゾクきました。これは今までにない新しいタイプの誕生かも!次回もぜひ見てみたいです。

松尾さんは歴代メグの中でも本当に歌がお上手で声もすごく奇麗なので安心して聞いていられます(メグ役はこれまでけっこう微妙な方が多かったので 汗)。クリスへの純粋な友情も見ていて好感が持てました。

河村彩さん(カルロッタ)、山口泰伸さん(ピアンジ)

河村@カルロッタは相変わらずパワフルで勢いのある歌声が魅力的。クリスティーヌに対する嫉妬心もあるのですが、それはカルロッタのトップとしてのプライドからくるものであって、河村さんのお芝居からは嫌味な感じがあまりないのが個人的に好きです。

山口ピアンジはもう、この作品の中の「癒し」そのもの!!殺伐とした雰囲気の中で何度山口ピアンジに救われたかって感じで。もうとにかく表情や行動が可愛らしいのなんの!!特にカルロッタへの愛情がすごく純粋で、彼女がうれしいと自分も嬉しいといった表情してたのがこの上なく愛らしく癒されました。
それだけに、PONRで殺されてしまうシーンが本当に切ないんですよねぇ。山口さんのピアンジだけは生き残ってほしかったと思うほどですw。

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後述

カーテンコールは盛り上がり、3回目あたりからスタンディングに。終演後の音楽が奏でられている間に3回くらい幕が開いたのがちょっとビックリ。これまでは音楽が鳴っている間は幕は開かなかったのですが、最近は開けるようにしているのかな。
カーテンコールの旅に岩城ファントムがカンパニー全体を見渡しながら「行くよー」みたいな合図を送ってみんなで手を繋いで前に走ってきてお辞儀するの、すごく萌えました(笑)。ついさっきまで哀しみの涙に暮れたお芝居してた人とは思えないほど可愛かったですw。

で、あとから知ったんですが…、コロナ禍でできなかったトークイベントが映像特典として付加されるのが1日後の7月1日からだった(汗)。あと一日ズレていればーーー!!っていうか、週頭がこの30日だったんだからこの日からにしてくれたらよかったのになぁ(苦笑)。遠征だと帰りの飛行機が決まってしまっているので「あと1日追加」っていうのができない。これだけは悔しかった…!

今回は「アナ雪」の後に何か見れるものはと探して決めた『オペラ座』観劇となりましたが、結果的に見に行って本当に良かったです。新しくファントムに配役された岩城さんを見ることもできたし、収穫が多かった。

秋劇場での『オペラ座』は来年1月に楽を迎え、そのあと大阪に来るとのこと。大阪ならば少しは行きやすくなるんだけど…たぶん生オケじゃないと思うんだよなぁ。なのでやはり、東京にいるうちにあと数回行きたい。本心では、生オケで歌う洋輔くんのファントムが見たくてたまらない…。キャスト発表がギリすぎて遠征者には残酷(涙)。何とか奇跡的に会いたい…。でも、観れたらおそらく一点集中で泣きまくる予感がww。でもやっぱり会いたいです。

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