ミュージカル『ピピン -PIPPIN-』大阪公演 2019.07.12ソワレ

主なキャスト感想

城田優くん(ピピン役)

どちらかというと繊細な青年といった雰囲気を持つ城田くんにはピッタリの役だったなと思います。屈託のない笑顔や、傷つきやすい脆いところなど、ピピンというキャラクターに見事にハマっていました。それに、コミカルな芝居も柔軟性があってすごく面白かった。

パフォーマンスは数は多くないのですが、ポールの一番高いところまで登っていったり、輪っかくぐりをしたり、最後は空中ブランコで火の中に飛び込む寸前のリアクションをとったりとけっこう体を張ってるシーンがあったのも印象深いです。大柄な城田くんですが、よくぞあそこまで訓練したなと本当に感動しました。

それから何といっても澄んだ歌声が魅力!!これまで舞台で城田くんを見てきて、どちらかというとちょっと声量が足りなかったりパンチ力がなかったりと勿体ないなぁと思うことがけっこうあったのですが、この作品の中では実に伸び伸びと歌っていて心打たれることが多かった。
特に声の伸びには正直驚きました。こんなにロングトーンが響くんだ!とめちゃめちゃ感動しましたよ。何より、城田くん本人がこの役を愛して心から楽しんで演じているのが伝わってきたのが一番よかったです。

 

クリスタル・ケイさん(リーディングプレーヤー役)

クリスタル・ケイさんはこの作品が初めてのミュージカルとのことでしたが、それでこの難易度の高い役を引き受けたというのがまず凄いと思いますね。

歌唱力はこれまでの実績からみても不安は全くなかったし、実際に迫力ある歌声に感動させられることも多かったのですが、それに加えてけっこう大胆なパフォーマンスをするシーンもあるんですよ。特にオープニングで空中ブランコにぶら下がってアクションするところとか。クリスタル・ケイさんはこれを見事に何の不安も感じさせずにこなしていて素晴らしかった!腕の筋肉とかもすごかったし、ぶら下がった姿勢もすごく綺麗だった。相当訓練されたと思います。

あと、お芝居ですが…想像していたよりもずっと上手かった。特にこの役は客席とのキャッチボール的なところもあるので間合いとかも難しいと思うのですが、見事に物語の世界に客席を惹き込んでいて素晴らしかったですね。印象的だったのはフィナーレ。あの”怒り”の芝居はめちゃめちゃ迫力があってビックリしました。
それと、たまに出てくる英語の発音がとてもきれいで…まるで本場の人みたいな雰囲気もあったのもよかった。

 

今井清隆さん(チャールズ役)

チャールズは暴君で冷酷な側面が強いキャラクターでしたが、今井さんは実に柔軟にコメディチックな人物を演じられていたと思います。けっこう酷いことを平気でやるような王なんだけど、タッチが軽いので威厳があるのになんだか可愛さも併せ持っていて憎めない感じ。
コメディ的要素の強い作品の中で悪役的なキャラクターを演じるのってすごく難しいと思うんですが、今井さんはチャーミングで軽やかに演じられていてさすがだなぁと思いました。

特にピピンに対するツッコミには愛情すら感じさせられることも多かったです。
その中で印象的なのは、革命でピピンの手にかかる場面。ここはシリアスとコメディとが合わさったような微妙なシーンでしたが、重くなりすぎずかつ重厚な雰囲気を壊さずに演じられていたのがすごかったです。
でも、2幕で生き返るシーンは超コミカルで面白かったですけどねw。

 

前田美波里さん(バーサ役)

この作品の中で最も大きな見せ場と言っていいのがピピンの祖母のバーサが出てくるシーンです。来日版を観た時には見た目がおばあちゃんな女優さんで見て衝撃を受けたので、前田さんだとちょっと若々しく思えてしまうかもという懸念が最初はありました。

が、前田さんはそれとは違う独自のワールドで見事に客席を魅了されていて本当に楽しませていただきました。たしかに見た目は若々しいのですが、とにかくチャーミングで可愛らしい!セリフの間も絶妙で、行間からはしっかりとピピンに対する愛情が伝わってきました。

さらにはあのパフォーマンス!!来日版はハラハラしながら見てたけどww、前田さんの空中ブランコシーンはただただ美しく圧巻!見事な肉体美でぶら下がる姿は感動的ですらあります。
上の方まで登ると「2階席、3階席のみなさ~~~ん!」と呼びかける余裕まであって大きな拍手が沸き起こってました。パフォーマンスをしてさらに4番までの歌を歌うという・・・非常に難易度の高い役だったと思いますが、見事にそれを成し遂げた前田さんに大きな拍手を送りたい。

きっと、中尾ミエさんも素晴らしいパフォーマンスを披露していたと思います。見れなかったのは残念。

 

霧矢大夢さんは悪役っぽいんだけどセクシーでカッコいい。ソロのダンスはさすが元宝塚だけあってとても美しく迫力がありました。

岡田亮輔くんは久しぶりに舞台で観たんですが、今までとはイメージがガラッと変わっててちょっとビックリ!あんなギラギラした雰囲気の岡田くん見たの初めてなのでとても新鮮でしたね。

宮澤エマさんは1幕はアンサンブルのピエロとして出演していて2幕からキャサリン役なのですが、どちらもとても可愛らしかった。キャサリン役はコメディエンヌ的な面と、ピピンに恋した時の切ない気持ちとを表現しなければいけない難しい役だと思うのですが、上手くこなされていたと思います。歌声も可愛らしかった。

それから、アンサンブルパフォーマーのなかには海外のキャストの方が5人いらっしゃいました。この海外組の皆さんのパフォーマンスが一番重要な大掛かりな見せ場を演じていたのですが、3人はピピン経験者だったようです。

日本人パフォーマーキャストとうまく融合していて、多くの見どころをたくさん作ってくれました。本当に素晴らしかったです。

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後述

大阪初日ということもあってか、カーテンコールでスタンディングオベーションが起こるなか、城田くんから少し長めの挨拶がありました。

そのなかで、「僕が予想していたよりもさらに上回った盛り上がりを見せてくれた大阪のお客さんに心から感動した」って感無量の表情で語っててグッとくるものがありましたね。たしかに、今回の大阪の雰囲気はものすごい熱気でしたから…それがストレートに城田くん始めキャストの皆さんに伝わったのは私も何だかとても嬉しかったです。

その後も『ピピン』に対する愛情を語っていた優くん。本当にこの作品のことを愛してるんだなって思いました。最後に「明日は2回公演~~!」って言いながら手を振っててw。いや~~、この作品をマチソワでやるって…相当ハードだろうなと思いますよ(汗)。怪我なく無事に大阪公演を終えることができたようで本当に良かったです。

この演目は命がけのダイナミックなパフォーマンスがてんこ盛りなので、カンパニー全員の信頼関係が成り立たないとできない作品だと思います。それだけに、一体感がものすごく伝わってきて観ているこちらも思い切り魅了されたんだろうなと。

普段はこういう演目はあまり好みじゃなかった私をこれだけ魅了したわけですが、同じ気持ちの方も中にはいらっしゃるのでは。見ないで敬遠するのは非常に勿体ないと思います。

予想以上に素晴らしかった日本版公演。また機会があればぜひ再演してほしいです。

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