劇団四季ミュージカル『美女と野獣』2022.12.07マチネ

主なキャスト別感想

ベル:平田愛咲さん

平田さんは2015年から17年までのシーズンでベルを演じられていましたが、私は今回が初見となります。いやぁ〜〜、なんか、すごく新感覚なベルだったなという印象。これまで見てきたタイプとはかなり違う、良い意味でディズニーっぽさが削がれた現代的な女の子だなと思いました。
特に台詞回しがめちゃめちゃナチュラル。台本にある言葉を読んでいる、というのではなくて、その場の感情から自然に発せられた言葉がそのまま出ているリアル感が素晴らしかった。今まで以上にベルという女性が立体的に見えたような気すらしましたよ。平田さんは四季に入団する前にも多くの舞台に立たれていましたから、そういうことも役に影響しているのかなと思いました。

明るくて活発な性格のベルで、どちらかというとちょっと”S”っ気がある現代っ子的な印象が強かった平田ベル。だけど、今の生活にはどこか空虚な気持ちも持っていて笑顔の裏にはチラチラと暗い影が見え隠れしてる。冒頭の♪変わり者のベル♪でのそういった細かく繊細な表情の作り方が実に魅力的でしたね。あぁ、彼女は本当に外の新しい世界へ飛びだしたいんだなっていうのがひしひしと伝わってきたので。

ビーストに対しては最初とても怖がってはいるんだけど決して負けていない。モリースと無理やり別れさせられてしまった時は哀しみと怒りのあまり泣きながらも鋭い視線をビーストに向けていて、それを目の当たりにした彼が思わずちょっと怯んでしまったようにも見えました。このあたりの気の強さも今まで見てきたベルとはちょっとタイプが違うなと見えて面白かったです。
さらにビーストから強引に夕食に誘われるシーンはもう互角以上の対応っぷりで(笑)。泰潤君ビーストは特にちょいヘタレモードも見受けられたので余計やり込められ感が際立ってて面白いシーンになってましたw。

2幕に入ってビーストのこれまでとは違った一面に触れた後は急速に彼に対する興味を募らせていくような印象の平田ベル。スープを飲んだ後の「(口の脇に何か)ついてる」って笑いながら去っていくシーンなんか、めちゃめちゃキュートで可愛すぎっ!!小さな声でコソコソッと教えてあげながらもすごく嬉しそうに楽しそうに走り去っていってて…あれはビースト惚れちゃうだろう!!っていうのが納得でしたね(笑)。
本を読むシーンでのベルはこれまで見てきた印象だとちょっと「お母さん味」が出てる女優さんが多かったんですが、平田さんはビーストと同じ年頃というか…「等身大の女性」感がすごく出てた気がします。それゆえに、すごくリアルなお似合いカップルに見えて新鮮だった。これまでの中でビーストへの”恋心”が一番分かりやすいベルだったかもしれない。ラストシーンのお姫様スタイルはもう眩しいくらいに美しくキラッキラしてました。

ビースト:金本泰潤くん

泰潤くんは横浜で『ノートルダムの鐘』のカジモド役で見て以来だったので本当に久しぶりの再会となりました(当時の感想はこちら)。四季の公式サイトでベルと図書館で会話するシーンのメイキング写真を見た時に”彼のビーストは私好みかもしれない”といった直感があったので、見れる日を楽しみにしていました。
いやぁ…、ほんと、私の直感は間違っていなかった…というか、期待以上でした!!彼のビーストは随所にコミカルな表情や仕草を入れてきてくれてて本当に嬉しかった。約12年前に”これだっ”と感動しドハマりした飯田洋輔くんの演じたビーストを彷彿とさせるような場面も多く(タイプは少し違うけど方向性はそちらに寄ってた気がする)、ところどころでちょっと感極まってしまいました。

森で迷ったモリースを脅す場面ではとても恐ろしい迫力で迫っているんだけど、「野獣の顔を見に来たのか!?」というセリフの端々にはちょっと駄々っ子的な色も滲ませていてちょっと面白かったし、可愛らしいなとも思ってしまう。あれを見た瞬間、泰潤君ビーストは私好みかもしれないと期待が高まったんですよねw。
初めてベルと対峙した時も、声色は威嚇してるし圧もすごいんだけど心のどこかで「美しい彼女を自分のものにできる」といった期待めいた想いみたいなのも。そこにビーストの未熟さが感じられてちょっと愛しくもありました。この感覚、洋輔くんのビーストで見た時の感覚とすごく似てたんです。またそういう気持ちでこのシーンを見れたことがとても嬉しかった。

食事に来ないベルに苛立つ場面はもう秀逸中の秀逸!!召使たちとのやり取りがめっちゃ可愛い。「どうしたらいいか分からぬっぅ!!」って戸惑ってるお芝居とか最高。ベルに一目惚れはしてるんだけど、どう表現していいか分からなくて召使たちに駄々をこねちゃうっていうガキっぽさがたまらん(笑)。
ベルを無理やり食事に誘い出そうとする場面では、召使たちを交えての連携っぷりがとても面白い。威嚇はするんだけど、平田ベルがけっこう気が強いタイプだったこともありどんどん泰潤くんビーストが精神的に追い詰められて混乱しちゃうっていう構図が最高に可愛くて萌えまくりました(笑)。「威張ってることを認めたのね」とやり込められた直後の「くぉーーーーっ!!!」みたいな動揺っぷりなんか本当に可愛すぎて”これだよこれ!!”と私のテンションも爆上がりww。熱狂的に通うほど大好きだった洋輔くんビーストと雰囲気がすごく重なって見えて…ここのシーンも本当に嬉しかったなぁ。

ベルの態度に苛立ち動揺しまくってたビーストがバラが散るのを見て焦る場面。ここで彼は”紳士的に”振舞うべく自分で料理することを思いつくのですが、この時の「なんとかしなくっちゃ!!」と自分を奮い立たせる芝居がこれまた超絶可愛らしかった。いやぁ、あれは萌えます、ホントにw。あのあと必死になって失敗重ねながらワチャワチャ料理するビーストの姿が容易に想像できてしまう。
だけど、結局その気持ちは彼女に届くことがなくて。「これを食べてくれるかな」って言ってた時のワクワク感がすごく愛らしかったので、現実を目の当たりにしたときのガックリ度が痛いほど伝わってきてめちゃめちゃ切なかった。このあたりの落差の付け方の芝居が泰潤くん、絶妙だった。

西の塔へ入ったベルに激しい怒りをぶつけてしまう場面。「お前には権利は(いる)ない」と彼女の袖を引き千切ってしまうのですが、そのすぐ後に我に返ったあとの「違うんだ…」って弁解しようとしてる声色がもう泣きそうになっててめっちゃ切ない(涙)。必死に彼女を留まらせようとするけどその気持ちは届かないわけで…飛びだしていってしまうベルの背中を見つめながら「分らないんだ君には」と告げる場面は…、苦しい気持ちを吐き出すように叫んでた。これが本当に哀しげで見ててちょっと胸詰まって涙出ちゃったよ。自分の未熟さがこれでもかというほどビーストの心を絞めつけてるような気がして堪らなかったです。
そしてその気持ちのまま歌われた♪愛せぬならば♪がもう圧巻!そこにはベルへの飽くなき想いが溢れんばかりに詰まっていました。久しぶりに泰潤くんの歌をがっつり聞いたけど、本当に素晴らしい。清水くんにも負けない迫力のロングトーンも最高でした。

2幕、狼に襲われたベルを救出したあと治療してもらう場面。ここは清水くんの時はあまり痛い感情を表に出さないような雰囲気があったけど、泰潤くんはかなーり痛そうにしてましたw。悲鳴も上げちゃうわけですが、これもまた旧演出の時のビーストを思い出させるような雰囲気だったんですよね。あの可愛さがめちゃめちゃ好きだったので失われていたわけではなかったと分かって嬉しかった。
ベルから「助けてくれてありがとう」と告げられた直後は呆然としたような表情で「どういたしまして」と答えてた泰潤くんビースト、めっちゃ萌えた(笑)。何が起こったのかすぐに理解できないけど、あの瞬間に彼の中の感情が一気にうごめき出したなというワクワク感もありました。

そこから急速に二人の仲が接近するわけですが、一番印象深かったのは図書館でのやりとりの場面。少年のように目を輝かせながらベルの読むアーサー王の物語に没頭するビーストが感動のあまり「僕が何かということを忘れさせてくれる」と伝えます。この時の、「僕が誰か…」と言いかけたあとの「僕が何か…ということを」のセリフの言い方がめちゃめちゃ泣けました…!!
最初は興奮して嬉しい気持ちを伝えていたのに、「誰か」と告げた直後に今の自分の現実が急に見えてしまって一瞬言葉を詰まらせてしまってたんですよ。そして哀しそうに「何か」と言い直すわけで…これ、本当に心揺さぶられました(涙)。ビーストの哀しみや絶望感がものすごくリアルに伝わってきたんです。それゆえ、ベルから「人と違うと言われた時の気持ちが分かる、それがどんなに孤独かも」と言われた時に感じた”心の共鳴”みたいなものがすごくリアルに感じてホント泣けた。彼女から食事に誘われて「もちろん、イエスです!!」とテンション爆上がりなビーストの姿見たら思わず涙零れちゃったよ。

ベルとの食事に臨む前のルミエールとコグスワースとのやり取りは新演出になってからだいぶ簡略化されてコミカルな場面がカットになりましたが、ここは本当に残念だなぁと。泰潤くんのビーストであのコミカル芝居をぜひとも見てみたかった。愛しさアップに繋がる予感しかないですから。
このあとベルとの食事をするビーストの場面になりますが、食事中にどう対応していいか分からなくてベルと同じ仕草をまねてウジウジしてる姿がもう、めちゃめちゃ可愛い泰潤くんビースト!!ここで愛しさレベルアップさせてくるとは(笑)。ダンスを教えてもらってる時のたどたどしさとか、もう本当に可愛いしかなかったです。

食後に何とか勇気を奮って告白しようとするものの、なかなか実行に移せないビースト。何度も「心のままに」と自分に言い聞かせている泰潤くんビーストは観ていてものすごく背中を押してあげたくなってしまう雰囲気だった。
でも、浮かない顔をしているベルを見た時に彼女の気持ちを優先して自分の告白のことを後回しにしてしまう。彼のビーストはどちらかというと子供っぽい未熟さが滲み出ているところからスタートしているように見えたので、この変化はとても感慨深いものがありました。そんな彼の心の成長が嬉しいのですが、それは同時に彼女との別れを決断させるものでもあるわけで…。最後まで自分の気持ちを告げずにベルを思いやったビーストの姿はとても愛しく切なかった(涙)。ポット夫人から「やっと愛することを知ったのね」と告げられた時の、あの何とも言えない哀愁のこもった呆然とした表情に涙が出そうになっちゃったよ…。

ぐるぐるの後のシーンですが、泰潤くんは外見的にはどちらかというとディズニーの王子様タイプ的な雰囲気ではないなと正直感じたんですけど、それ以上に屈託のない満面の笑顔がとても微笑ましくて可愛くてキュンとした。ベルを愛しそうに抱きしめた時の表情は嬉しさのあまりちょっと泣きそうになってるようにも見えてグッと来たな。

今回彼のビーストを観れて本当に良かったです。ちょいちょい大好きだった洋輔くんのビーストを彷彿とさせるような場面も見せてくれたし、なんだか色々と本当に嬉しかった。たぶん、回数を重ねて見れば見るほど愛しくなるビーストになるんじゃないかなと思います。泰潤くん、ありがとう。

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ガストン:酒井康樹くん

酒井くんはメインで見るのは今回たぶん初めてだったと思います。ムキムキの筋肉も美しく、ガールズたちが憧れるだけのオーラがあるガストンでした。
「粗野で頭が空っぽ」とベルから評されてしまう彼ですが(汗)、酒井君のガストンはそれプラスちょっぴりチャーミングさも加味されててところどころ可愛いなと思うことも。あのつぶらな瞳がなんだか印象的で、この物語の中では”悪”的な存在なんだけど、どこかに汲めないところも感じさせる雰囲気があったのが非常に好印象でした。ルフウとの関係もちょっとマイルドで”相棒”として可愛がってる感が出てたのも良かったなぁ。

個人的にお気に入りだったのは、ベルにプロポーズを断れれてしまった後のリアクション。ガールズたちがすぐに結果を聞きにやってくるんだけど、断られたショックを見せたくなくて腕立て伏せ姿で誤魔化すんですよね(笑)。ここでサバ読んで「千回っっ!!」ってドヤ顔見せるところがなんだかいじらしくて可愛い酒井くんのビースト。思わずクスッと笑ってしまった。

コッグスワース:雲田隆弘さん

雲田さんは『オペラ座の怪人』でちょっとコミカルなレイエ役を見た時に”コグスワース役も面白そう”と思っていたのですが、想像以上にコメディ色が強くてめちゃめちゃ楽しませてもらいました。セクスィーながらも弁が立つ大木ルミエールとの丁々発止のやりとりはまるで芸人さんのコンビ芸を見ているようww。どちらも遠慮なく言いたいことをぶつけ合いながらも尊重し合ってる感が出ていて本当に面白かったです。大木君のあの雰囲気を引き出していたのも雲田さんのあのハイテンションなキャラがあってこそだったと思うな~。

ツボだったのはルミエールの暴走を諫めるためにストップをかけるところの「ちょっと待てぇ~!」のセリフ回し!!あのちょっと声が裏返っちゃうところとに…なんか、千鳥のノブさん味を感じまくっていたのは私だけでしょうか(笑)。それ以外にもルミエールへのツッコミっぷりが最高に面白くて、BBをより立体的に楽しめるような雰囲気を作ってくれていたように思います。

バベット:杉野早季さん

杉野さんのバベットはキュートなんだけど大人っぽい女性の雰囲気がすごく出ていたのがとても印象的でした。おそらく人間だった時代は男性たちから熱い視線を向けられていたんだろうな~~的なものがプンプンww。ベルを見張る時の大木ルミエールとのイチャイチャっぷりは特に艶っぽくて、ちょっとお子様には早いかも的な大人の雰囲気が漂っていました(笑)。

後述

前回は中段やや後ろぎみの席からの観劇でしたが、今回は少し下手寄りながらも1ケタ台列からという超舞台と接近した位置からの観劇だったので座っただけでドキドキしてしまいました。あれっ?こんな前方席のチケット取れてたっけ??と動揺してしまったほど(笑)。
至近距離から見るBBはとても刺激的で臨場感たっぷりでめちゃめちゃ楽しめました。♪ビーアワゲスト♪の時は火力の熱が伝わってきたし、ルミエールが蝋燭を付けた時にはその熱の風圧を感じられたり。あと、ドライアイスはめっちゃ浴びました(笑)。実際に舞台の上と同じ空気感を直に体験できたのはとてもいい経験でした。

ただ、私はBBに関しては演出が変わったとはいえ初演から観ていて馴染みがあったので至近距離から見るのを楽しむことができましたが、初観劇やそれに近い方はもう少し後ろの席から全体像を見たほうが物語の世界に入りやすいかもしれないなと思います。離れた席から見たほうが伝わることもたくさんありますのでね。

そういえば帰りの道すがらに学生団体さんたちの感想の声が聞こえてきたのですが、そのなかで数人の男子生徒諸君が「俺はガストンが一番好き!」って熱弁してて微笑ましかったです。男の子的視線で見るとガストンは確かに魅力的に写るのかもしれないなと思いました。
で、その後の感想が「ガストン悪者みたいに描かれてたけど、一番悪い奴はあの爺さんだと思うぞ!!」と熱弁ww。あぁ~~~、この感想、めっちゃ分かる気がすると密かに同意しほくそ笑んだ私です(笑)。モリースが鏡の中の野獣を見た瞬間に「あいつだ!!」と興奮し出す場面は新演出になってから「え・・・(汗)」って思っちゃってたのでww。そう思っていたのは私だけじゃなかったんだとちょっと安堵した帰り道でしたw。

BB観劇はこれでしばらく予定が入っていません。前回見た時はあまりテンションが上がらなかったけど、今回また盛り返すことができて良かったです。でもまぁこれは、見る人の好みの問題ですからね。それぞれ好きなタイプがあるだろうし、両バージョン見比べて楽しむのもいいと思います。私は、泰潤くんのビーストがとてもとても好きだったし感謝もしています。来年いくつか予定していますが、その時にまた会えればいいな。

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