劇団四季ミュージカル『ウィキッド』を観に四季劇場・秋まで行ってきました。
※私事ではありますが、約10年に及ぶ関西より西方面での生活が終わり首都圏エリアで上演される作品は基本日帰りで行けるようになりました(←11月中旬までは新居に入れずじまいでしたが 汗)。今回が関東復帰観劇最初の日。交通費が抑えられることのありがたみが沁みる…。でも、関西(他地方)公演に行く機会が無くなるのはちょっと寂しい。
初めて『ウィキッド』を観たのは四季で初演された2007年公演の時。最初の東京での2年間、2010年の大阪、そして2013年の東京公演再演、通いましたねぇ(最後の方は北澤フィエロ目当てだったw)。10回近く行ったかな。個人的にとても大好きな作品だったし当時から人気も高かったので、まさかこんなにも間が空くとは思いませんでした(2016年の北海道以来とのこと)。
約7年ぶりの再演、しかも期間限定上演と銘打たれていたこともあってかチケット戦線は熾烈を極めました(汗)。事前抽選で何とか1回分確保はできていたものの、あと何回か追加しようと欲を出して先行販売にチャレンジしたのですが…いやぁ、ほんっと繋がるまでが長かった(苦笑)。それでもリダイヤル&リロードしまくり執念でwプラス2回分確保。そこから約30分後には完売のお知らせが出たので、全3回確保できたことは本当に幸運でした。
10月19日に初日を迎えてまだ1ヶ月も経っていない頃だったこともあってか、ロビーの混雑はかなりすごかったです。私は余裕を持って開場時間すぐに行ったのですが、グッズ売り場にたどり着いたときにはすでに階段上までの長蛇の列(汗)。そこに並ぶか一瞬躊躇したのですが、開演までは時間もあったし通える回数も限られていたので思い切って最後尾につくことにしました。それでも階段途中の場所ではあったので意外と早かったほうかもしれない。
ちなみにパンフレットのみの販売所は別に設けてあったので、私のようにコレクションとしてのグッズがほしいというのがなければそちらに並んだほうが断然早く入手できると思います(ほとんど並んでなかった)。
事前に通販のサイトでチェックしていたので、だいたい買いたい物は決めてあって。パンフの他にクリアファイル2種類、東京公演限定チャーム、チステリーのマスコット、トートバッグをお買い上げ。ここ最近の観劇で一番お金使ったかも(汗)ですが悔いはないw。チステリー、めっちゃ可愛いです(劇中のはちょっと怖いwww)。ちなみに、通販で売り切れとなっていた東京限定チャームとトートバッグも現地では販売がありました。これは買えないかもと覚悟してたのでゲットできてよかったです。
余談ですが、開演前の大行列に並んで予定したものを購入したのですがその直後にトートバッグをチョイスするのを忘れてしまい(一番欲しかったやつだったのに 汗汗)休憩時間にもう一度売店へ行くことにしたんですよね。
ところが・・・!!!トイレ行列で開演前よりはスムーズに売り場に行けると思った私が甘かった(汗)。劇場内売店は出てきたときにはエスカレーターあたりまで行列が伸びており、スタッフさんが「後ろの方の方は時間に間に合わない可能性があります」とアナウンスしてるじゃないですか(驚)。外のほうが幾分空いてるということだったので慌てて階段を降りて劇場外売店へ。こちらはまぁまぁ列に余裕があったのですが…、如何せんカウンターが2つしかなく、お客さんの選んでる時間が長くなればなるほど順番のめぐりが遅くなるという事態に(汗)。私はそんな後ろに並んでいたわけではなかったのですが、購入が終わって慌てて客席に戻れたときは開演2分前くらいでした(汗汗)。
ということで・・・、今回のグッズ購入教訓。
開幕から間がない頃はなるべく早めに劇場入りして売り場に直行すべし。
劇場内にもラインナップが見れるQRコードがあるので事前にそれを見て買いたい物の目星はしておくべし。特に外売店は会計が2箇所しかないのでその場で選んでいると結構時間がかかってしまい後ろの人までうまく回らない危険性があると思います。色々譲り合って楽しく購入しましょう(休憩時間は20分しかないので並んでの購入は結構リスクあり)。ゆっくり選びたい場合は、終演後余裕を持って並ぶのがいいかと思います。
以下、かなりのネタバレを含んだ感想になります。
2023年11月7日ソワレ公演 in 四季劇場・秋(東京・浜松町)
主なキャスト
- グリンダ: 中山理沙
- エルファバ:小林美沙希
- ネッサローズ:守山ちひろ
- マダム・モリブル: 八重沢真美
- フィエロ:富永雄翔
- ボック: 緒方隆成
- ディラモンド教授:田辺容
- オズの魔法使い: 鈴木涼太
【男性アンサンブル】
川畑和寛、品川芳晃、帶津翔太、佐野隼平、安倍大夢、岸佳宏、菱山亮祐、奥村響、野村数幾
【女性アンサンブル】
渡辺夕紀、石橋杏実、新宮有香子、竹田理央、倉橋由衣、光井さや、馬場杏奈、石田真子、結城湊海
アンサンブルキャストさんの中にチラホラ大阪オペラ座の時の方がいらっしゃるなぁと思って見ていたら…、なんと、ラウルを演じていた岸くんの名前があるではないですか!これはちょっとビックリ。それからメグを演じてた石橋さんのお名前も。
岸くんは一生懸命探さなくてもすぐに分かりました!っていうか、1幕はけっこう重要な役で登場したので思わずロックオンw。ラウルとは全く違うちょっとダークな雰囲気がたまらなくカッコよかったです。登場するたびに目で追いまくってしまったw。
概要とあらすじ
ベースになったのはライマン・フランク・ボームの童話『オズの魔法使い』(1900年)。1939年にはジュディ・ガーランド主演でミュージカル映画化され大きな話題となりました。1995年、『オズ~』のなかで主人公のドロシーの敵役「西の悪い魔女」に焦点を当てた『オズの魔女記』がグレゴリー・マグワイアによって執筆されます。この作品を原作としてミュージカル『ウィキッド』が誕生しました。
2003年、映画会社のユニバーサル・ピクチャーズなどがプロデュースしブロードウェイで初演。作詞・作曲はスティーヴン・シュワルツ、脚本はウィニー・ホルツマン。初代エルファバを演じたイディナ・メンゼルはディズニー映画『アナと雪の女王』のエルサの声も担当し日本でも人気を博しました。
2004年のトニー賞では9部門がノミネートされ、ミュージカル主演女優賞(イディナ・メンゼル)、ミュージカル装置デザイン賞、ミュージカル衣装デザイン賞の3部門が受賞。
ちなみに、2004年から映画化の企画も出ていましたがなかなか実現に至らず今に至っています(汗)。実現に向けた話が出ては断ち切えるということを何度も繰り返しているのでもう白紙撤回されてしまったのではと諦めの心境に至っていたのですが(苦笑)、2021年に監督やキャストが発表されたとのことでようやく本格始動の兆しが見え始めました。2024年に前後編の2部作として上映予定だそう。
今度こそ本当に映画版が実現する日が来る…のでしょうか。だいぶ待たされた感があるので(苦笑)このニュースを見ても今ひとつ信じられない自分がいますw。
日本初演は2007年の劇団四季。東京で上演されて以降、大阪、福岡、名古屋、札幌で公演され各地で大きな話題を呼びました。2010年の大阪公演中には日本公演通算1000回上演を達成しています。
2008年には初演キャストによるCDも発売されました(2023年現在も発売中)。
初代エルファバを演じた濱田めぐみさんは、この役で非常に大きな注目を浴び一躍人気トップ女優に駆け上がった感があります。あの歌とお芝居は本当に次元を超えるレベルですごかったので、ぜひ聴いてほしい一枚です。めぐさんは退団した現在も第一線で活躍されています。
簡単なあらすじは以下の通り。
人も動物も同じ言葉を話し、ともに暮らす自由の国・オズ。しかし動物たちは少しずつ言葉を話せなくなっていた。
緑色の肌と魔法の力を持つエルファバはシズ大学に入学し、美しく人気者のグリンダとルームメイトに。見た目も性格もまるで違う二人は激しく反発するが、お互いの心に触れるうち、次第にかけがえのない存在になっていく。ある日、オズの支配者である魔法使いから招待状が届いたエルファバは、グリンダとともに大都会エメラルドシティへ。そこで重大な秘密を知ったエルファバは、一人で戦うことを決意。
一方のグリンダは、オズの国を救うシンボルに祭り上げられる。心の内では相手を想い合うエルファバとグリンダ。しかし、運命は二人を対立の道へと駆り立てていく――。
<公式HPより引用>
”西の悪い魔女”エルファバと”南の善き魔女”グリンダの関係を中心に描いた物語。『オズの魔法使い』に登場する少女・ドロシーと出会う前の二人のコミカルで温かい友情と絆がそれぞれの恋愛も絡めてドラマチックに展開していきます。
上演時間は約180分(3時間)。
内訳は、1幕90分(1時間30分)、休憩20分、2幕70分(1時間10分)となっています。お手洗い休憩がちょっと短めではありますが(特に女性)、けっこう個室数は多い方だと思うので順番はサクサク進んでいたようでした(それでも後方列だと超ギリギリになりそうですが 汗)。
全体感想・主なキャスト感想
初めての中断トラブル
まず今回の観劇で驚いた出来事があったのでちょっと触れたいと思います。
2幕が始まって20分程経過した頃だったかな。その直前からなんとなくセット周りがバタついてるなとは思っていたのですが、役者さんの熱演が素晴らしかったのでさして気にはなりませんでした。
ところが、ネッサとボックの山場になるシーンが終わり次のシーン(グリンダとフィエロの婚約式)が始まったところで突然役者さん全員が舞台上からいなくなったかと思うと不自然に舞台幕が降りてきて真っ暗に(汗)。「!??」となっていたところで今度は急に客電が点灯し客席内が明るくなってビックリ!!オズの国から前触れもなく突然現実世界に舞い戻り(苦笑)場内もざわつき始めました。この一連の予期せぬ出来事に私も最初は動揺したのですが、直後、悟りました。
機材トラブルによる中断とはこういうことなのか…!
いやぁ、約30年間観劇を続けておりますが・・・ストーリー途中で突然中断するというトラブルに遭遇したのはこれが初めてです。これまで様々な演劇舞台でたま〜〜に”中断”トラブルに遭遇したというレポートは目にしていましたが、まさか自分も体験することになるとは思わなんだ。
かなり「ウィキッド」の世界観に没頭しながら見ていたので、突然ストップして客電がつくと”夢から覚めて現実を直視する感覚”みたいな不安はこみ上げてきました(汗)。多分役者さんやスタッフさんはそれ以上の動揺が走ったと思いますよ。
中断中は客席内がざわつきましたが場内スタッフさんが冷静に「いましばらくお待ち下さい」とアナウンス。大きく動揺する人はおらずかなり落ち着いていたと思います。始まるまで信じて待つっていう余裕すらあったかもしれない。今回のお客さんはあの激戦のチケット戦線を勝ち抜いてきた猛者揃いだったと思うので、みんなある意味”プロ”だなとそこに感心してしまったw。
ちなみに私は中断しているとはいえ”この時間もまだ2幕の世界は続いている”と思いひたすら静かに再開を待っていました(なかにはスマホ開いてる人もチラホラいたけど)。
やがてスタッフさんから開始予定時間が発表され一安心。止まっていたのはおよそ10分間くらいでしたが、”このまま終わってしまったら…”という不安も正直あったので(汗)体感的にはそれよりもちょっと長く感じてしまったかも。でも、舞台開始のアナウンスが流れると客席からは自然と温かい拍手が沸き起こったのは感動的でした。改めて、舞台はステージと客席が一つになった素晴らしい芸術だなと実感。ある意味とてもレアな体験ができました(なるべく遭遇したくないけど 苦笑)。
さて、作品内容について。最後に『ウィキッド』を観たのは2013年(当時の感想はこちら)でしたから…実に10年ぶりの再会。さぞかし懐かしく感じたり忘れてたりすることも多いだろうな、などと予想しながら客席に着いたのですがw、始まってみてビックリ。あのオーバーチュアの音楽が聞こえてきた瞬間に「あぁ、これこれ!!」と記憶が一気に蘇ってきた。っていうか、つい最近見た光景だ…くらいの感覚に。楽曲の旋律も歌詞もセリフも頭の中に入っていた自分に驚いてしまったw。それだけ個人的に『ウィキッド』という作品が好きだったんだなということを再確認しました。
1幕
オープニングでドラゴン時計がワッサワッサ動き出す光景を見て、10年前の記憶がつい先日見たかのように鮮やかによみがえってきました。あの瞬間は本当にワクワクしますね。あれ、スタッフさんが手で動かしてるのがすごいっ!
グッドニュース
シャボン玉が噴出してくる装置に乗って現れるグリンダはこの時点では”皆の中心に立つ善い魔女”。あのセットとかも当時と全然変わってなくて嬉しくなった。このシーンでオズの国の人々が喜びに溢れ”悪い魔女が死んだ”と歌う場面は今見ても切なくて泣けてしまいますね…。「誰にも愛されることなく、一人死んでいった」ってものすごく辛辣なワードだよなぁと。
冒頭でそう思ってしまうのは、『ウィキッド』の内容を知っているが故。おそらく2回以上見る人は同じような気持ちになるんじゃないかな。そんななか、ふと寂しげで複雑な表情を見せるグリンダがとても印象深いです。
”悪い魔女”との関係を問われた”善い魔女”グリンダが彼女の物語を回想する場面。ここでマンチキン国総督を演じてたのが岸くん!!目を皿のようにしないと見つからないかもなんて最初思ってたけどwwすぐに分かりました。っていうかメインじゃないけどかなり重要な役だし。
グリンダ役の中山理沙さんはメインで見るのはたぶん今回が初めて。冒頭は美しく力強い高音を響かせ威厳のある”魔女”の雰囲気でしたが、改装場面に入った後はかなり突き抜けた能天気なキャピキャピお嬢ちゃんになってて面白かった(笑)。グリンダはこの落差が面白いんですよねぇ。
エルファバと同室になることを皆が嫌う中、全く違う意図で手を挙げてしまったグリンダがそれに選ばれてしまうくだりは何回見てもクスッとなるw。ただ、もう少しふっと力を抜いた感じでやってほしいなぁというのはあったかも。
魔法使いと私
マダム・モリブル先生から”魔法”の才能を評価されたエルファバが喜びを爆発させる場面。一人だけ緑色の肌で学校初日から白い目で見られてしまう彼女。表向きは強がってるけど、その見た目からこれまでも差別されて心が傷ついてきたことは容易に想像できる。そんなエルファバがあの瞬間、初めて他人から認められたと歓喜する気持ち…めちゃめちゃ分かるよ。分かりすぎて泣けた(涙)。
エルファバ役の小林美沙希さんは、メインとして見るのはこれが初めてでしたが歌い方にとても好感が持てました。濱田さんのような突き抜け感とは違うのですが、声に張りもあったし何より役としての想いが真っ直ぐ伝わってきたのがすごく良かった。
あと、久々の八重沢モリブル先生…めっちゃ迫力あったわぁ!威圧感がすごいw。初演の頃以来だけど、あの時より迫力増してた気がする。
大嫌い!
エルファバとグリンダがそれぞれ親に向けて手紙を綴る場面。ここで二人の性格の違いがくっきり分かれて見えるのがとても楽しい。特に、グリンダがグダグダ長い文章を書いているのに対し(←まるで私w)エルファバがたった一言だけで表現するシーンは何度見ても面白いです(「おばか」の言い方が最高ww)。
この時点では二人ともめちゃめちゃ拒絶し合ってるのですが、それ以上に他の仲間たちもエルファバを一斉に嫌ってるという流れがちょっと見ていて胸がチクリとなりますね。舞台「ハリーポッター」でも主人公が孤立する場面が描かれてますが、あちらはちゃんと親友が最初からいるという設定なので安心して見れる部分が大きい。
果たしてここからどうやってエルファバとグリンダが心を通わせる展開になっていくのかというのが大きな見どころだと思います。
ディらモンド先生の授業の場面、演じてる田辺容さんがめちゃめちゃハマり役!!『オペラ座の怪人』のブケーや『JCS』の司祭でしか見たことがなかったので、それとは全く違う柔らかで優しい雰囲気がとても新鮮で癒されました。”おひるごはん”食べるシーンが最高に可愛かった。でもその直後に現れる八重沢マダム・モリブルの圧がめっちゃ怖いっ!!まさに”目でコロス”勢いw。
人生を踊り明かせ
楽しみにしていたフィエロ登場場面。富永雄翔くんは四季では『ロボットインザガーデン』以来だったけど、グラサンつけて寝そべってる姿がめちゃめちゃ可愛くてカッコよく期待以上!!一気にテンション上がったよ~。富永くん、四季以前にアンサンブルとして何度か作品見てきたけど(2019年のファントムとか)、今回メインキャストで選抜されて本当に良かったなぁと思うし嬉しい。
富永フィエロは登場した時はチャラいキャラではあるんだけれど(エルファバとやり合うところとか)、どこか影を背負っている雰囲気が漂ってるのが印象的だった。笑った顔もどことなくちょっと寂しそうで、その後に続く彼のドラマが繋がりやすいなと思います。
この場面でグリンダはフィエロに一目ぼれするんですが、ボックにはひたすら塩対応なんですよね。演じてる緒方隆成くんはたぶん今回が初めましてだと思うのですが、笑顔が柔らかくてとても可愛らしい。純粋にグリンダを想ってる気持ちが伝わってくるだけに、彼女から「ビック」と名前を間違えられまくって相手にされない姿を見るとホント可哀そうになってしまう(汗)。
可哀そうと言えばネッサ。フィエロと二人きりになりたいグリンダがボックを追い払うためにあえて孤独なネッサの相手をさせようとするわけで…。森山ちひろさんのネッサは生真面目そうで孤独でいるのが定めと諦めた感じだったので、ボックから突然声をかけられ驚いてしまう場面がとてもリアルに見えました。彼女にとっては戸惑いとワクワクが重なった瞬間なんだけど、グリンダは二人を追い払うためにこう仕向けてるわけなので…その後の悲劇がチラついてしまうのです。
ダンスパーティーの場面、グリンダはウッキウキでフィエロと一緒にいてボックは思わず嫉妬してしまう。そのモヤった気持ちのままネッサと向き合って「君は素敵な人」と告げるのですが…、ここの二人の気持ちのズレが見ていてハラハラします。ネッサは心からボックの言葉に喜んで彼に想いを寄せてしまうけど、ボックはやっぱりネッサよりグリンダなんだよね。
その一方グリンダと一緒にいるフィエロは表向きは楽しそうにしてるのですが、やはり本音では物足りない気持ちが滲み出てる。富永フィエロはこのあたりの芝居がとても繊細。セリフ回しがちょっと単調なのは気になったところだけど(汗)表情が良いんだよね。
そのタイミングで、グリンダからもらった”ダサい”黒い帽子をかぶったエルファバが会場に現れる。エルファバはネッサを気遣ってくれてかつ帽子をプレゼントしてくれたグリンダを見直しつつあって。だけどグリンダは親切でやったことではないので(むしろ悪意があった感じだし 苦笑)罪悪感を感じてしまう。
妙な動きをして浮いてしまうエルファバを見かねたグリンダが「一緒に踊ってもいい?」と同じ動きをする場面は個人的にとても好きです。あの瞬間に二人の友情物語がやっと動き出したといった感じ。
ポピュラー
ダンスパーティでようやく心が通じ合ったグリンダとエルファバのやり取りは何度見ても和むし楽しい。私はグリンダが告白すらしてないのに「フィエロと結婚するの!」と先走って”秘密の告白”とドヤ顔でエルファバに報告しちゃう場面でいつも笑ってしまうww。何でも思い通りに事が運んできたであろう彼女らしいセリフだなと。
でも、エルファバが「父親に愛されてない理由」を打ち明けたときにグリンダが「あなたにとっては秘密かもしれないけど真実じゃないわね」と答えるシーンはとても感動的です。この言葉にエルファバはどれだけ勇気づけられただろうと思うよ。グリンダがただの能天気なお嬢様ではない一面が見られるとても大好きなシーン。
エルファバがグリンダのファッションレッスンを受けて戸惑いながらもついていこうとする場面はとても楽しい。髪の毛を揺らす「キラキラ~~」のセリフ、小林エルフィはできる限り中山グリンダの口真似しようと頑張ってる感じが好感度大でした(初演の頃はムスっとした感じのセリフ回しだったのでw)。あと、グリンダがエルファバに魔法をかけようとして失敗するシーンも好き。中山グリンダの力みっぷりと戸惑い顔の小林エルフィの対比が最高ww。
私じゃない
授業の前にグリンダのレッスンを思い出して髪の毛を触りながら「キラキラ~~」の練習をするエルファバは何度見ても可愛い。その姿を不思議そうに見つめてるフィエロも可愛い。だけど、バカにされたと思っているエルファバに「君は君のままでいいのに」と素直な想いを告げる富永フィエロの声色がすごく優しくてグッと来た。ダンスパーティの時に彼女に釘付けになった時から「ありのままのエルファバ」に想いを寄せてるんだなっていうのがすごく伝わってきました。
ディラモンド先生が無理やり連れ去られてしまったあたりから物語が少しずつシリアス路線に。入れ替わりに檻に入れたライオンの子供を連れてくる怪しげなグレーの男たち。よく見ると、真ん中のグレー紳士は岸くんではないですか~!ここでも結構重要な役演じてます。
怯えるライオンの子供に動揺したエルファバは怒りをぶつけるのですが、それと同時に魔法がかかって生徒たちもそれに操られる。たった一人何も起こらなかったフィエロ。「君はそのままでいいのに」と言ってくれた彼にエルファバは好感を抱いたんだと思えるシーンでもあります。受け入れてくれたこと、嬉しかったんだろうなと。
フィエロに手伝ってもらってライオンの子供を逃がそうとするんだけど、最初の内は意思疎通がうまくいかなくてケンカ腰の二人。特にエルファバは自分を守るために相手に言葉を挟ませない勢いでまくしたててしまう。だけど、フィエロはそんな彼女にイラッとしながらも付き合ってくれてるんですよね。今回そんな彼を見て初めてこの時点で”優しい青年なんだな”って思ったかもしれない。
ようやく落ち着きを取り戻したエルファバは、なぜ自分と一緒に行動してくれたのかと彼に尋ねる。それに対し「僕は自由気ままなやつだ」と自己否定的に突っかかるフィエロですが、エルファバは「あなたはちっとも幸せそうじゃない」と答える。彼女はフィエロのことなんだかんだ文句言ってたけど、ちゃんと彼の内面を見つめてくれてたんだなって思えて泣けてくるんですよね。あの瞬間、フィエロはエルファバに本気の恋心を抱いたんじゃないかなと思う。
モリブル先生から「オズ陛下に会える」と知らせを受けたエルファバは大喜び。この時にモリブル先生がみせる”魔法”が後半に意味を成してくるのが興味深い。
旅立ちの日、エルファバを見送りに来たグリンダでしたが、想い人で結婚してくれると疑いもしなかったフィエロが自分ではない人に意識が向いているのを察して気持ちがざわついてしまう。彼女にとっては初めての挫折ってやつだろうなと。そのフィエロもエルファバの前ではどうしても素直になれなくて餞別の花だけ渡して逃げるように帰ってしまうのがなんだか可愛らしい。
エメラルドシティー
フィエロとの関係が上手くいかず嘆くグリンダに同情したエルファバは一緒にオズ陛下のいる”エメラルドシティー”へ行こうと誘います。
そのシーンから舞台の色が一気にエメラルドグリーンへと変わっていく演出は何度見ても心が躍る。「ここでは誰も私のことを後ろ指さしたりしない」と感極まるエルファバと、そんな彼女と一緒に喜んでくれるグリンダ。二人の明るい笑顔に何故かグッとくるものがありました。
そしていよいよ陛下とのご対面。この日のオズ陛下を演じていたのは鈴木涼太さん。これまではどちらかというとロマンスグレーが似合う年代の役者さんが演じているといった感じだったので(ナベさんはちょっと違うタイプだったけどw)涼太さんはちょっと若いかな、なんて思ってたのですが・・・、見てビックリ!爽やかな笑顔が素敵なめっちゃ紳士的オズ陛下ではないですか!!!思わず釘付けになってしまいましたよ。
これまでどちらかというと若い青年役で見ることが多かったので、オズ陛下役が似合う年頃になったんだなぁと思うとすごく感慨深いものがありました。♪センチメンタルな男♪は甘く切ない響きでうっとりしてしまう。
最初はオズ陛下と和やかな時を過ごすグリンダとエルファバでしたが、新しい報道官としてモリブル先生が登場するとちょっと空気が変わる。エルファバの魔法を試し難しい呪文の本を読ませるシーンでのオズ陛下への目配せがけっこう怖かった(汗)。
見事にそれを読み解いて空を飛びたいというチステリーや他の猿たちの背中に羽を生やす魔法を成功させたエルファバでしたが、彼らが苦しんだ姿を見て動揺してしまい取り消したいと訴える。でもそれに対してモリブル先生は「そんなことできません」とピシャリ!あの時の八重沢モリブルの目がめちゃめちゃぎらついてて怖かった(汗汗)。そして涼太陛下もダークな顔をジワジワと見せ始めて一気に不穏な空気に。このあたりの変わり目の展開がまた面白いところ。
動物の言葉を奪っていた張本人がオズ陛下だと知ったエルファバが彼を責める場面。ダークな顔になったオズ陛下が「世の中の不平不満を反らせるためには共通の敵を作ることが必要なのだ」と言い放つシーンはとても印象深い。これ、架空の世界だけのことじゃないなとハッとさせられるんですよね。現実世界でもこれを実践している国は多い。それがどんなに愚かなことなのか、改めて思い知らされた気がしました。
自由を求めて
オズ陛下に反発したエルファバはその場を逃げ出し、グリンダも慌てて追いかける。でも、エルファバは信念をもってオズ陛下を拒絶したけどグリンダは特に不満とかはないわけでw、「さっさと謝っちゃいなさいよ」とけしかける。こういうところを見ると、やっぱりグリンダって甘やかされて育てられたお嬢様なんだなって思っちゃうw。
それにしても、モリブル先生の煽りっぷりが恐ろしい。八重沢さんの芝居がとにかく迫力ありありでエルファバへの辛辣な言葉の一つ一つに背筋が寒くなるレベル。確実に初演の頃よりパワーアップしてるのがすごい!
最初はエルファバと一緒に最後まで行動しようと腹を決めたはずのグリンダでしたが、追手の声を聞いて実は怯えているエルファバを悟ってしまい躊躇いが生じてしまう。それでも彼女に寄り添おうとしたグリンダは優しい。
そして一幕ラストの一番大きな見せ場へ。ここはもう、ほんと、自然と涙が溢れます。鳥肌がすごい!!小林エルフィの確固たる信念を感じさせる力強い歌声に心の底から感動しました。特に一部セリフとして歌っている箇所があったのがすごく良かった。
この一幕が終わった後は今年も客席のざわめきが止まりませんでした。これこそが『ウィキッド』!!
やっぱり長くなったので2幕の感想からは次のページにて(汗)。