ミュージカル『四月は君の噓』兵庫公演 2022.06.17マチネ/06.18マチネ

2幕感想

演奏を終えた瞬間に起きた衝撃的な出来事が忘れられず苦悩と恐怖に怯える公生でしたが、その後またいつもの日常が戻ったことに混乱を隠し切れない。かをりの家に招待されても「あの時のことは何だったのか」と落ち着かない。この時に♪君が分からない♪のリプライズが歌われるわけで、1幕とは違ったシチュエーションながらも、噛み合わない二人の気持ちがリンクしてるのが面白いし構成が見事だなと思いました。

かをりの家はケーキ屋さんということで、遊びに来てくれた公生、椿、渡たちにお父さんが張り切ってたくさん用意してくれる。この場面、実際にケーキが登場してきて皆で美味しそうに食べてるんですよね。SNSでケーキ屋さんを教えてと公式さんが呼びかけていたのはこういうことだったのかと納得しましたw。

17日公演の時に登場したケーキはこんな可愛いのだったようで。これは出演者のみんなも思わずテンション上がっちゃうよね。

友達とワイワイ楽しそうにケーキを頬張り笑顔を見せるかをりを、お父さんとお母さんが離れた場所から見守っている場面。1幕で公生がかをりに憧れを抱いた時に歌っていた♪映画みたいに♪のリプライズとして歌われる。
かをりの両親は娘がこれから辿るであろう運命を知っているので、元気に笑いながら友達と過ごしている姿をとても複雑な気持ちで眺めているんですよね。特に「まるで映画のワンシーン」というフレーズがめちゃめちゃ切なくて刺さる…。いつまでもこの光景が続いてほしいという親の切なる願いが伝わってきて涙が止まりませんでした…。

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帰路についた公生を追いかけたかをりは、またしても強引にガラコンサート出場のエントリーを決めたからと告げる。しかも、選曲したのは公生のトラウマにも繋がっていたクライスラーの『愛の悲しみ』だった。「僕にはまだピアノの音が聴こえない」と何とか断ろうとしますが、それでも彼女は諦めようとしなかった。

「二人で演奏した時に聴いたあの拍手の音を忘れられるの?」と問いかけるように歌われるナンバー♪流れ星をつかまえよう♪は、静かなバラード調の旋律から二人の気持ちに呼応するように明るくポップな旋律へと変化していく流れがドラマチックで本当に素晴らしかったです。最初は前を向けない様子だった公生が、必死に「独りじゃないよ、私がいるから」と歌うかをりの声に導かれるように音楽への情熱が盛り上がっていくのが手に取るように伝わってきた。
「あの拍手の音を和すらられるはずがない」という公生の歌のフレーズがとても感動的で思わず涙が零れてしまったよ。二人の心が音楽を通じてどんどん近づき重なってくるのが伝わってきて本当に心が震えました。

ところがガラコンサートの当日、時間が迫っているなかでもかをりは会場になかなかやってこない。焦って連絡を取ろうとしてもどうしても繋がらず、やむを得ず出場を辞退しようという流れに。
でもその時、かをりのことを悪く言う演奏者に出会ったことで公生の心に火がついた。彼の頭の中に「ありのままの君で弾けばいいんだよ」と優しく微笑んだかをりの姿が蘇ってくる。ヴァイオリン奏者がいないなか伴奏者だけとして舞台に立つことを決めた公生の背中に覚悟のような強い想いを感じました。

会場がざわつくなか、一人ピアノの前に座り演奏を始めた公生。しかしやはり頭の中にメトロノームのリズムが響き始め思うような音を出すことができない。その時、彼の脳裏に幼い頃の思い出が蘇ってきました。
なぜ対になっている『愛の喜び』ではなく『愛の悲しみ』なのかと尋ねた時、母は「哀しみに慣れる必要があるからだ」と答えていた。このことを思い出した瞬間、いつも自分に厳しく当たり突き放されていたように感じていた母の違う側面が見えてくる。厳しく音楽を自分に叩きこんだのは、自分の命がもう長くないことを悟っていたからなのだと…。自分の時間が限られていることを知っていたからこそ、なんとかして今後音楽家として息子が生きていけるよう財産を残したかったに違いないと。

その時初めて公生のなかに母親から愛されていたという実感が生まれたように見えました。酷い言葉を投げつけた直後に母を失ってしまったことで、本当の心から目を背けて生きてきてしまった。「僕の中にあなたはいたのだ」と母の愛を受け止めることができた公生の姿に涙が止まりませんでした…。
自分の心と誠実に向き合ったことでピアノの音が聴こえるようになった公生。その時初めてずっと囚われ続けたトラウマと決別するように母に別れを告げる姿が非常に感動的でした。

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その頃かをりは病院にいました。ガラコンサートの日に倒れてしまうなんて哀しすぎる…。「私がいない世界でも君はどんどん前に進んでいってしまうのだろうな」と歌う♪私がいなくても♪のナンバーがあまりにも切なすぎる。
公生の背中をずっと押し続けてきたのは彼女自身。でも、一緒に旅を続けることができないかもしれないことを自覚した時に、置いていかれる自分を想像してしまい孤独な気持ちに襲われてしまう…。

それでも、公生たちの前では入院中でも明るく元気に振舞うかをり。さらに「またコンクールに申し込んでおいたから」という強引さを発揮して彼を混乱に陥れてるw。
久しぶりに友達とワイワイ楽しい時間を過ごしたかをりは、「そろそろ検査の時間だから」と別れを告げる。複雑な気持ちで帰っていく公生の背中を見つめながら「もっと君の音楽が聴きたい」と歌うかをりの姿がめちゃめちゃ泣ける…。さらにそのあと看護師さんがやってきて「もう点滴の準備していいかな」と訪ねてくるんですよね。かをりはそのことをみんなに悟られたくなくて小さな”嘘”をついていたわけで…切なすぎて涙涙だったよ(泣)。

季節は過ぎ、秋の学園祭の時期に。ずっと入院中だったかをりも駆けつけて楽しい時間を過ごす。この時彼女は退院して元気になったと明るく振舞っていました。
渡と一緒に楽しそうに過ごすかをりの姿を、公生は複雑な心境で見つめている。そしてそんな彼の姿を椿が切なそうに見つめていた。椿の公生に対する片想いもめちゃめちゃ切ないんですよねぇ…。彼の気持ちがかをりにあって自分には向いていないことを知っていながら、それでも「私の方を見てほしい」と歌う姿が泣けたなぁ。

暫くすると、渡とはぐれてしまったから「君を代役に任命します」と公生のもとにかをりがやって来る。きっとそれも彼女がついた小さな”嘘”だったと思う…。かをりが「一緒に流れ星を見たい」と願ったのは渡じゃなくて公生だったんだよね。このあたりがホント、すごく複雑な心境になっちゃう。渡くん、不憫だよねぇ…。でも公生はこの時点でもまだかをりの気持ちが自分に向いてることに気づけないわけで、色々ともどかしい(汗)。

誰もいない場所で美しい夜空を眺めるかをりと公生。でも、その穏やかな時間はすぐに終わりを迎えてしまう…。名残惜しそうに帰ろうとした時、かをりは彼にだけまだ入院中であることを告白する。その言葉に驚き言葉を失ってしまった公生でしたが、立ち上がれない彼女を心配して車椅子を用意してくれるところが本当に優しくて温かい(どこの車椅子かは分からないとのことだけどw)。
彼女を病院へ送るなかで、「せっかくの一日の相手が渡じゃなくてごめん」と謝る公生。自分の本心とは違うことを告げざるを得ないところがとても切ない…。あくまでも自分は彼女の代役でしかないと思い込んでるんだものなぁ。そんな彼の言葉をかをりは複雑な想いで受け止めてる。

公生の優しさを背中で感じながら「彼と過ごした時間を死んでも忘れない」と歌うかをりがまた切ないんですよね…。本当はお互いに同じ方向を向いているのにそれに気づけないままなのがもう…。♪時間よ止まれ♪のナンバーはめちゃめちゃ切なく美しい旋律で、これでもかというほど二人の心情を鏡のように映し出しているようで泣けました。

別れ際、かをりは自分の気持ちに蓋をすることが苦しくなったからか公生にだけ”本当のこと”を打ち明けます。大きく動揺する彼の姿を見て、「私のことなんか忘れちゃえばいいんだよ」と強がるかをりがあまりにも切なすぎる(涙)。
彼女が去った後、再び大きな不安にさいなまれてしまう公生の姿が痛々しすぎて見ていられない…。「また独りになってしまう」というフレーズがホント辛かったよ(涙)。

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激しいショックを受けた公生は、一緒にかをりのお見舞いに行こうと言う渡の言葉を拒絶してしまう。その言葉に「あまりにもひどいんじゃないのか」と怒りをぶつける渡でしたが、その直後にかをりの真実を話して泣き崩れてしまった公生に言葉を失ってしまいます。が、すぐに「それでも会いに行くべきだ」とあえて背中を押す。

この場面、めちゃめちゃ切なかったなぁ。たぶん渡くんはかをりと接する中で彼女の気持ちは自分とは違う方向を向いていることを早い段階で察していたんじゃないかな。いつも女の子にモテモテだった彼が彼女に対してどのくらい本気だったのかは分からないけれど、好きだっていう気持ちは確かだったと思うんだよね。その上で「自分の気持ちを伝えろよ」と親友の背中を押してると思うと、なんだかすごく複雑な心境になっちゃう。

その様子を見ていた椿は公生に「かをりの気持ちは渡に向いてて望なんかないんだから」と告げてしまう。彼女も自分の気持ちを抑えることに限界を感じてしまってるんだなと思うととても切ない…。公生の気持ちが自分に向かないことを知りながら、「それでも私の方を見てほしい」と歌う姿は、すごく素直でリアルな感情だよなと思いました。
かをりと公生は本当は想い合ってると観ているこちらは感じるけれど、椿は苦しい片想い状態だもんなぁ…。渡も「彼女が求めてるのは俺じゃない」って歌っていたからさらに切なかった。

その後、公生は勇気を奮ってかをりと向き合うことを決意しかつて彼女が食べたいと語っていた”カヌレ”を買って病院を訪れる。外で食べたいとせがむかをりを背負い屋上へ向かう公生。この時間もきっと二人にとってはかけがえのない瞬間なのだと思うと涙が溢れて仕方なかった…。

久しぶりに再会できたものの、彼がコンクールに向けてのピアノの練習をまだしていないことを知ると憤慨してしまうかをり。なかなか上手くかける言葉が見つからない公生でしたが、彼女は力強く「私は最後まで足掻くよ!」と告げる。そして、コンクールと同じ日に手術をする決断をしたことも…。
それでもコンクールに出ることに後ろ向きな公生。「今の状態でピアノが弾けたら奇跡だ」と諦めモード。そんな彼に「奇跡は簡単に起こせるよ」と答えるかをり。このあと♪Perfect♪のリプライズが歌われるのですが…もう、涙涙で前が見えなくなるくらい泣いた。自分にとって公生こそが奇跡そのものだったんだよって歌ってって…涙なしには聴けないよ(泣)。

次第に彼女の中に公生への想いが泉のように湧き上がってくる。もっともっと彼のことを知りたいのに、時間がそれを許そうとしてくれない。足掻こうとしても容赦なく過酷な運命が追いかけてくる。やがて孤独に押しつぶされそうになって「怖い」と涙するかをりを、公生は後ろからしっかりと強く抱きしめてやる。あの時彼の中でようやく悟ったんじゃないかな、彼女の本当の気持ちを(涙)。

そして、運命のコンクールの日がやってくる。

ここから先の展開は、マスク1枚潰すほど大号泣の連続となりました。顛末を書いて語りたいのは山々ですが、後々のためにもネタバレは避けた方がいいかもしれないという気持ちもあるので止めておこうかなと思います。

新作ミュージカルを見てあんなにも激しく心が揺さぶられて泣いたの、本当に久しぶり。この物語を、あの音楽を届けてくれたことに心から感謝。クライマックスからラストシーンまでの光景はこの先もたぶんずっと忘れない…。

だけど、かをりちゃんの”嘘”の真実はちょっと残酷だったなとも思います。でもそれも含めて”青春”なんだろうね。

キャスト感想は次のページにて。

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