ミュージカル『October Sky(オクトーバー・スカイ)-遠い空の向こうに-』を観るため大阪まで遠征してきました。
新型コロナ禍の世の中ではありますが、感染状況も下火になっていることで以前よりも遠征がしやすくなった気がします。もちろん感染防止対策はかなり念入りにして出かけていますが、後ろめたさや感染に対する恐怖感みたいなものはちょっと和らいだかな。改めて観劇できることのありがたさを感じてしまいました。
『October Sky』のカンパニーも無事に東京・大阪公演を完走!!本当にお疲れ様でした。ここ最近は公演中止になってしまう作品もだいぶ少なくなりましたが、それでもカンパニーの皆さんは常に今まで以上の緊張感をもって臨んでいたと思います。大阪の最後まで公演できて本当に良かった。おかげで私も生で観ることができました。
今回の大阪公演の劇場は森ノ宮ピロティホール。
ピロティに来るの本当に久しぶり…!遡ると…2018年に渡辺麻友さん主演の『アメリ』を観に来て以来かもしれない(汗)。個人的に好きな劇場なのですが、なかなか作品的に来るご縁がなくて遠のいていました。
劇場は2021年9月にリニューアルしたばかりとのこと。ロビーはあまり変わっていないように見えましたが、ステージ部分はなんとなく新しい感じがしました。音響もよく均等にクリアに音が聞こえてくるのがいい。客席もなだらかな傾斜でどの角度からも見やすいのがポイント高い。少なくとも、オ〇ッ▽ス劇場のサイドよりも全然見やすいと思う(今回も実はサイド席でしたがストレスなく見れた)。
それからもう一つよかったと思う点が、女性トイレ。すごくきれいにリニューアルされてました。ここもポイント高い。
大阪駅からは少し離れていますが、ピロティはまた行きたい劇場です。来年は上演される好みの作品がまたあればいいなと思います。
以下、ネタバレを含んだ感想です。
2021.11.12 マチネ公演 in 森ノ宮ピロティホール(大阪)
主なキャスト
- ホーマー・ヒッカム:甲斐翔真
- ジョン・ヒッカム:栗原英雄
- エルシー・ヒッカム:朴璐美
- ミス・ライリー:夢咲ねね
- ロイ:阿部顕嵐(7ORDER)
- ドロシー:中村麗乃(乃木坂46)
- オデル:井澤巧麻
- クエンティン:福崎那由他
- ケン:畠中洋
- ジム・ヒッカム:青柳塁斗
- アイク・バイコフスキー:筒井俊作
- エミリー:礒部花凜
アンサンブルキャストの皆さんも実力派揃いでどの役も歌、芝居共に素晴らしかったです。
義理の息子であるロイにいつも暴力を振るうアルを演じた大嶺巧さん、最初配信で見たときは”一人だけ海外の俳優さんがいる”と勘違いしてしまうほどの彫りの深さでかなり際立っていました。どこかで見たことある名前だなぁ…と思ったら、劇団四季の『CATS』だったことを思い出した!客演だったんですね~。知らなかった。とにかく歌も芝居も迫力があってどこにいても目で追ってしまうほどの存在感。素晴らしかったです。
ミスター・オーティス役ほかを演じた角川裕明さん、久しぶりに舞台姿を拝見しましたが相変わらず素敵な歌声と貫禄のお芝居。面白かったのがサイエンスフェスの審査員役。お調子者のオデルに一言告げる場面は毎回違うコメントだったようで、私が観劇した時には「君、私の家のハムスターに似てるね」でした(笑)。そんなお茶目なところも好きです。
メアリーほかを演じた秋山エリサさんも印象深かったです。夫のバイコフスキーと一緒のシーンはなかったのですが、彼に対する深い愛情をあのワンシーンで見事に表現されていたと思います。メアリーの心情がひしひしと伝わってきてめちゃめちゃ泣けました(涙)。それとは正反対のクールなサイエンスフェスの審査員役も面白かったです。
それから、密造酒の売人を演じてた國末慶宏さんもノリノリの歌いっぷりで印象的でした。少しコワモテな裏社会的な雰囲気を出しながらもフランクな一面が垣間見えるキャラで面白かった。♪ムーンシャイン♪は客席から手拍子も沸き起こり盛り上がってました。
あらすじと概要
この作品の原作は、元NASAの技術者であるホーマー・H・ヒッカム・Jr.が自伝を綴った「ロケットボーイズ」です。
1999年アメリカにてジェイク・ギレンホール主演で映画化され大ヒットしたそうです。
私は映画の方は未見で今回のミュージカルで初めて物語を知ったのですが、評判もかなり良いので機会があれば見てみたいなと思いました。
映画公開後にアメリカでミュージカル化の動きがあり、2015年にシカゴで、2016年にサンディエゴでトライアウト公演が行われました。ブロードウェイ公演を見据えていながらもいまだ実現に至らず、今回日本がそれに先んじて上演することに。”本公演”という位置づけとしては日本が世界初演という意味合いを持つのかもしれません。
最初に日本側がこの作品に注目したのが2015年のトライアウト公演時だったそうです。しかし、ブロードウェイ進出を目指していた途上にあったことから本家アメリカの制作陣から上演の許可がなかなか下りなかったということですが、コロナ禍にありながら少しずつ舞台公演が行われていた日本に「トライアウトの意味を込めて」ということで上演が許可されたという経緯があったとのこと。
ここ最近舞台が円盤化されることが増えているなかで「オクトーバースカイ」は許可が下りなかったというのはこういった背景があったからなのかなと思います。しかし、生配信のリピートがOKされたそうですから、日本のクオリティの高さが認めてもらえたのかなとちょっと嬉しかった。将来的にまた再演してほしいし、その時には円盤化も許可される希望があるかもしれません。
簡単なあらすじは以下の通り。
1957年、人類初の人工衛星スプートニクが宇宙へ飛び立ち、ウェスト・ヴァージニア州の炭鉱町コールウッドでその姿を見た高校生ホーマー(甲斐翔真)は自身もロケットを打ち上げたいと言う夢を抱き、悪友のロイ(阿部顕嵐)とオデル(井澤巧麻)、そして科学の知識を持つ、いじめられっ子のクエンティン(福崎那由他)を仲間に引き入れて「ロケット・ボーイズ」を結成する。
しかし、ロケットは失敗続き、炭鉱の責任者である父のジョン(栗原英雄)はホーマーの行動が理解できず、父子は激しく対立、そんな二人に母のエルシー(朴 璐美)は寄り添い続ける。
最初は馬鹿にされていたボーイズだが、高校の教師のミス・ライリー(夢咲ねね)や炭鉱の人たちの助けを借り、全米科学コンテストへ向けて、少しずつ前進する。
<公式HPより抜粋>
全体感想
今回は開演前と終演後の客席からの写真撮影が許可されていました。面白いのは、「OCTOBER SKY」の文字が数分後に動き出して「ROCKET BOYS」という文字に変化、そしてまた数分後に「OCTOBER SKY」の文字へと戻っていく…といった繰り返し映像を楽しむことができたことです。
実は「OCTOBER SKY」というタイトルはホーマー・ヒッカムの自伝「ROCKET BOYS」のアナグラム(文字遊び)になっていたんですよね。
それから、メインタイトルの日本語の意味は”10月の空”ですが、これは、ストーリーの発端にもなっている”ソ連が人類初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功した日”が1957年10月というところに掛けているものと思われます。これがもしも8月とか9月だったらアナグラムは成立しないわけで、すごい奇跡的な意味を感じずにはいられません。
私が観劇した日の客入りは7割強くらいかなぁ。後ろの方がだいぶ空いていたのが本当にもったいなくて…。本家がまだトライアウト公演で止まっているということで日本が最初に”本格的な公演”として上演した経緯もあってか、上演前はあまり派手にPR活動はしていない印象がありました。
でも、蓋を開けてみれば本当に素晴らしいストーリーと音楽で…たぶん、今年初めのミュージカル『カンパニー』の次に号泣しながら観たと思う。
大千穐楽はほぼ満席だったとのことでしたが、本当ならばそれだけでなくもっと多くの人に見てほしかったなと思える作品。個人的に心揺さぶられるシーンの連続で終わって数日たった今も思い出してはジーンときているほどです。
ストーリーは原作や映画というベースもあるので全体的にまとまりがよく、流れもつかみやすかった。ロケットボーイズたちの葛藤や成功、先生と教師の確かな絆、家族の物語…、色々な側面のドラマが正面から描かれていて心が熱くなる場面も多かった。
音楽もロック調なものからカントリー調なライトで楽しいもの、さらには登場人物の心情をリアルに伝えてくる重厚でドラマチックな旋律までどれもとても印象深い。ストーリーと見事にリンクしたメロディで、ストレートプレイの芝居を見ているような感覚になるナンバーもいくつもありました。
ただ、歌う方としてはかなり難易度は高そう…って思ったかも。1曲の間の音の高低差がかなりあって歌うのに苦労してるなぁと思うキャストの方もチラチラいらっしゃったかな。そんななかで完璧を貫いていたのが、甲斐くん、朴さん、畠中さん。この3人の歌唱力には本当に驚愕させられました!
以下、個人的に印象深かったシーンについて次のページでいくつか挙げてみたいと思います(SNSでも公式さんが言ってた「ここが推し」みたいなやつ)。