東宝・シアタークリエの新企画ミュージカル『TOHO MUSICAL LAB.』のストリーミング放送を観劇しました。
シアタークリエ発
新プロジェクト始動!!『TOHO MUSICAL LAB.』
最旬のクリエイター、キャストと共に
新作オリジナルミュージカルを制作!7月11日(土)劇場からLIVE映像配信決定‼️#TOHOMUSICALLAB https://t.co/GEhgadpTlz pic.twitter.com/VTqUob6Ogb
— TOHO MUSICAL LAB. (@tohomusicallab) June 22, 2020
新型コロナ禍の影響で長らく上演中止を余儀なくされてきたシアター・クリエでしたが、劇場公演再出発するにあたり新企画が発表されました。全くの新作(テーマは自由)で30分程度のミュージカル作品の応募をかけ、そのうち選ばれた2作品が今回のストリーミング配信限定という形で上演されたわけです。
ストリーミング配信限定ということで、客席に観客を入れないスタイルでの上演。東宝ミュージカルの復帰第一作目ということで、これは見ておかなきゃと思いけっこう早い段階で申し込みしていました。
が、ちょうど重なる時間帯にWOWOWオンデマンドで三谷幸喜さんの『大地』も配信するということが後から発表されて(汗)ストリーミングで観たい作品がブッキングするという初めての事態に遭遇ww。でも、今回はミュージカル優先で(大地はWOWOWで前半まで見て、後日改めてストリーミング購入しました。その感想はまた後日)。
ストリーミングで観るのは3本目ですが、前回はほぼトークショー。
新作の”ミュージカル作品”舞台を観るのは3月末に観たミュージカル『ボディガード』以来。
約4か月弱ぶりのミュージカル作品を観れるということだけで、心の中がそわそわしたりワクワクしたり忙しかった(笑)。あぁ、やっぱり私は舞台が…ミュージカルが大好きなんだなって再確認できたことも嬉しかったりして。
ということで、今回はその時の感想を少しレポしたいと思います。
新作ミュージカル『CALL』
作詞・脚本・演出:三浦直之
出演:木村達成、田村芽実、妃海風、森本華(ロロ)
あらすじ:
ある時は森の中、ある時は深夜の海辺・・・人がいないところを選んで「聴衆のいない音楽会」を開き、旅を続けるガールズバンド「テルマ&ルイーズ」が、とある廃墟に迷い込む。
かつて“劇場”といったその場所で、彼らは思わぬ先客と出会う。<公式HPより引用>
公演が始まる前にメインの役者さんたちによるインタビュー映像が配信されました。
それによると、稽古期間は約2週間とかなりの短期決戦だったらしい!30分の作品とはいえ、そんな短い期間で全てを把握して舞台に立つってすごくハードルが高かったと思います。「1秒も無駄にできなかった」っていう達成くんのコメントがとても印象的だった。
でも、皆さんその大変さよりも、舞台の上で芝居ができる喜びのほうが上回っていたようで(達成くんはSNSとかやってないから忘れられた存在になってるんじゃないかとすら思ったってこぼしてたし)非常に充実した時間だったと目を輝かせていたのがなんだかとても嬉しかったです。
ちなみに、演出の三浦さんに関しては皆さん口をそろえて「とても優しく自由にやらせてもらえた」と語ってました。すごくいい稽古ができたんだなって思いました。あと、『CALL』というタイトルは舞台が終演した後のカーテンコールの時間を意識してつけたと三浦さんがコメントしてました。この時にお客さんがどういう気持ちになるかと…。
それについては最後にちょこっと書こうと思います。
まず最初は真っ暗な空間の時間があって、静寂のなかでの暗がりって…なんだか見るものをすごく不安にさせるんだなって感じました。いつ明るくなって物語がスタートするのかという異様なドキドキ感がすごくて、これは今まで観劇した時にあまり感じたことのない感覚だったかも。
そしてライトが照らされた瞬間、シアター・クリエの舞台の上に田村芽実さん、妃海風さん、森本華さんの明るく笑う姿と、4人の生バンドの皆さんの姿が!あぁ、”ミュージカル”の舞台が始まったんだなぁ…!とそれだけでなんだかちょっと胸が熱くなってしまった。
彼女たちはあえて誰も観客のいない場所を選んで歌っているけっこう変わった3姉妹ガールズバンド。まさにクリエの客席にも誰もいないわけで…やけにリアルな世界観だなと思いました。でも、彼女たちが誰もいない空間に向かって何かを呼び掛けても、それに対するレスポンスは一切返ってこないわけで…あるのはただ静寂のみというのが何とも言えない切なさみたいなものも感じさせられたかなぁ。
♪誰も聴いてくれないなら、誰にも聴かせたくない♪
という彼女たちが歌う歌詞もすごく印象的だった。誰もいない劇場で歌うからこそ、胸に刺さってくるみたいな…。明るいポップロックの歌なのに切なくなってしまうという何とも不思議な感情が沸き起こってきました。
歌い終わった後、森本さん演じるシーナが奥のほうから舞台衣装みたいなものを持ってきて「これ、メルカリで売れないかなぁ」とか言ってくるw。もしもお客さん入ってたらクスクスって笑い声が起こるところだよなぁと思ってしまうw。
この森には使われなくなった劇場があって、彼女たちはそこで歌っているという設定のようでした。そしてなぜかバンドメンバーたちも呼んで姫海さん演じるオドリバとシーナが衣装漁りに舞台袖へワイワイと下がってしまう(笑)。まぁ、ちょっと強引かなと思えるシーンでもありましたが、30分という時間制限があるのでここはまぁスルーでいいかな、みたいなw。
一人だけそこに加わらなかったのが田村さん演じるミナモ。彼女は上2人の姉と比べてちょっと変わった子のようでしたが…そのあたりの人物描写がやはり短い時間だけでは描き切れてなかったかもしれない。何で彼女だけ演劇を見たことなかったりちょっと不思議ちゃんなキャラなのか、そのあたりはもう少し触れてほしかった気がします。
独り舞台の上に残ったミナモはそこでステップを踏むのですが…、その音の響きにちょっと感動!!お客さんがいたらまずあの音は聞こえなかったと思うから。舞台の板の上の音って、誰もいないとこんなにも響くのか!!と驚きました。
ミナモが静寂に向けて歌を歌っていると、客席から一人の青年が現れて彼女のパフォーマンスに拍手を送ります。しかし彼女は「拍手」の意味を知らない。それに対して「感謝を伝えたい」と語る青年の名前はヒダリメ。ここでようやく、達成くんが登場ーー!!
#木村達成 #TOHOMUSICALLAB 「CALL」無事に終わりました。13日19:00まで試聴いただけます!近いうちに劇場でまたお会いしましょう~ pic.twitter.com/eGMYOu23xt
— アルファエージェンシー (@alpha_agency) July 11, 2020
やばっ!!!達成くん、めっちゃ可愛くて萌えが止まらなかったんですけどーーー(笑)!!!これまで目力のあるちょっと強気キャラで観ることが多かったので、ちょっとオドオドした気弱な青年役はめちゃめちゃ新鮮に映りました。
達成くん演じるヒダリメは実は”ドローン”でかつては劇場の様子を記録していたという。まさか”ドローン”役で来るとは思わなかったからその設定にまずびっくりしたよw。
今は「羽根」が壊れて飛べなくなってしまったというけれど、劇場が満員だった頃には「RENT」「ジャージーボーイズ」「ウェディングシンガー」といった作品を撮影していたという。どれもクリエで上演された作品ばかりではないか!この名前聞いただけでもなんだか胸熱だったよ…。
ミナモはヒダリメの話に興味津々で何度か彼に近づこうとしますが、ヒダリメはそんな彼女から逃げるように常に一定の距離を取り続けてました。これがいわゆる、ソーシャルディスタンスですね。作品応募の条件の中にも「感染予防対策が盛り込まれている」っていうのがあったので、あぁ、こういうことかと納得しました。
このあとしばらく二人芝居となるのですが、そのほとんどが誰もいないクリエの客席部分で展開されていたのも斬新でした。観客がいないからこそできる演出でしたね。
シーンとした客席のなかで、ヒダリメとミナモは一定の距離を保ちながらも会話を繰り広げ心の距離感だけがどんどん近づいていく。特に、客席中央ブロックでヒダリメがかつて撮影した客席のある人物について語り合う場面はとても印象的だった。
ある作品に必ず姿を現す男女2人のお客さんがいて、最初は一番遠くの離れた席に座っていたのが…徐々にその位置がお互いに吸い寄せられるように公演ごとに近づいていったのだという。一般的にそんな巧いこと座席選ぶことはできないと思うので現実的にはあり得ない話ではあるのですが、それでもこのシーンはなんだか自分のなかで受け入れられてしまった。
そのお客さん二人を再現するべく、ヒダリメとミナモが徐々に座席を移動してついには1席空けて隣り同士になる。ちょっと甘酸っぱい雰囲気になったなと思ったんだけど、語りの中の二人はその位置に座ったのを最後に劇場に来なくなったという話をしたところで何とも言えない切ない空気に満たされていく。
でも、ヒダリメはミナモにその席に座っていたお客さんの拍手の音が好きだったと語り、彼女にそのリズムを伝授します。独特のリズムで手拍子を始めるヒダリメに合わせ、ミナモも手を打ち始める。この時に流れる二人の温かく可愛い雰囲気になんかジーンときちゃったな…。
そこへ舞台衣装に身を包んだオドリバがステージに戻ってくる。衣装だけでなくまさかのカツラまでつけて登場という徹底っぷりにちょっと笑ったw。
ヒダリメとミナモは彼女に見つからないように客席に姿を隠しますが、ステージで歌い出したオドリバの声を聴いて思わず席を立ちあがり一緒にあの手拍子を打ち始める。
そしてミナモは「歌声を誰かに聞いてほしいと思ったことはないの?」と尋ねる。それに対して「私は景色に聴いてほしいと思って歌ってるよ」と答えるオドリバ…。たとえ人の姿はなくても、目に映る景色に聴いてもらえれば幸せだという彼女のセリフは胸を打つものがありました。
そしてシーナも着替えて舞台上に戻ってきてオドリバと記念撮影を始めるのですが…、使っているカメラが「写ルンです」だったwww!!あれ見た瞬間、思わず「懐かしい!!」と声が出てしまった(笑)。あれが全盛期だった頃を知らない人も多くなってきた昨今なだけに、なんだかタイムスリップしたような気持になったよw。
ミナモは二人の姉に「歌が終わった後に拍手で静寂を包み込みたい」と目を輝かせながら提案する。彼女たちを見つめる観客はヒダリメ。彼も彼女たちを自分のデータフォルダに保存すると目を輝かせる。その時の表情がめっちゃ可愛くてキラキラしてて…なんかそれだけで泣けちゃった。
「聞こえてますか!?」というミナモの声に、ヒダリメは「聞こえてるよ!」と返事をする。彼女たちのライブで、彼は初めて耳に聞こえるレスポンスを行ったわけです。ここも印象的だった。そして『CALL』というナンバーを歌う3人。これまでとは違う色を感じさせるライブだった。
「君の名前呼ぶんだ」
というフレーズが歌われるとカメラが舞台の傍に寄る。それはヒダリメの目線でもあって、彼はいつの間にか舞台の上に一緒に上がり共に歌い始めます。バンドの音もこれまで以上にはじけ、ヒダリメは生き生きとダンスも披露する。
そしてあの独特のリズムの拍手を打ち鳴らしながら歌はクライマックスへ!!
クリエの客席には誰の姿もないけれど、私にはなぜか、彼らに手拍子を送り笑顔を浮かべている観客が確かに見えた気がしました。でも、その顔を・・・笑顔を・・・実際に彼らに目に見える形で、耳に聞こえる形で届けられないことがどうにもこうにももどかしくてたまらなかった。
歌い終わった達成感で笑顔で見つめ合う4人のシーンでこの舞台は幕を下ろします。
弾ける笑顔で客席に向かって頭を下げるキャストの皆さんたち。あぁ、なんで、そこに、私たちの姿はないのだろうか。なぜ、万雷の拍手の音を実際に届けることができないのだろうか。彼らの前に広がる空の客席がこんなにも切なく映るとは…!!!
楽しかったな、みんな舞台に立って第一歩を踏み出せてよかったな、と思った反面、彼らに直接レスポンスを送れないことへの切なさもこみあげてきて・・・気が付いたら涙がボロボロ溢れて泣いてました、私(涙)。心底、あぁ、”劇場に帰りたい”って思った。
色んなことを感じさせてくれた素敵な作品だったと思います。
私は、いつか子供を産んで、おばあちゃんになって、子供の子供が生まれて、またその子供が生まれて、その子供がおじいちゃんおばあちゃんになって、私はとっくに死んでしまっても、ずっと劇場に生きててほしいです。ずっとずっと、劇場に死んでほしくないです。ずっとずっとずっと、劇場が大好きです。 pic.twitter.com/10TbmyJ8tx
— 田村芽実 (@Tamura_Meimi) July 11, 2020
田村さんのこのツイートのコメントも、劇場愛に溢れていて思わずこみあげてくるものがありました(涙)。
皆さん、素敵な時間をありがとうございました!!
2本目の『Happily Ever After』感想は次のページにて。