ミュージカル『ファントム』 2010.12.09大千穐楽

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お別れの時が刻一刻と近づいてるって思ったらオケの音楽が鳴り出した瞬間から涙がボロボロ後からあふれて止まらなくなってしまった(涙)。ただでさえ泣ける本編の前からこんな状況でして…。

Without Your Music

ここのナンバーは音符がとにかくものすごく難しそうで、これまで大沢さんも歌いこなすのにかなり大変な想いをしているだろうなと感じることがあったのですが…大楽ではそこを見事に乗り越えたって感じでほとんど違和感を感じることなく聞くことができました。

ひとつだけ気になるのは歌の中の言葉と言葉の切りどころかな。どうしても息を入れるために途中で言葉が途切れがちになるんですけど…そこを続けて歌うっていうところまでは難しかったのかなと思いました。が、それ以上に歌の中にファントムの孤独な心が染みこんでいて…それだけでも十分胸打たれるものがありましたよ。

クリスティーンがもしもここから去ってしまったら…と歌うくだりでの感情の入れ方が本当に素晴らしくて…もう完全に大沢ファントムに気持ちがシフトして涙が止まらなくなりました(涙)。そして自分を傷つき泣きつかれた子供の様と歌う時の…まるで自分が子供に戻ったかのような哀しみの渦の中で歌ってる表情がさらに涙を誘う(涙)。クリスティーンからもう一歩も離れられない気持ちが切なくて苦しくて彼と一緒に泣きましたよ…。

そこへキャリエールがクリスティーンを離すようにとやってくる。「嫌だっ!」と拒絶する姿はまるで子供が駄々をこねるかのような幼さが垣間見えます。キャリエール以外の人と接してこなかったが故に人格形成ができなかったんだろうなと思うとホントに哀しくなる…。体全体で怒りの感情を露にしキャリエールを責め立てる大沢ファントムの姿に心がかきむしられるような気持ちに支配されてしまって涙が止まらないです(泣)。

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キャリエールが去った後、クリスティーンの首にかけられていたシャンドンからのネックレスを外しメラメラと嫉妬の炎を燃やしていくファントム。そこに秘められているのはただの怒りではなくてクリスティーンを取られたくないという彼の痛ましいくらいの必死の想いも秘められているように感じるんですよ…。♪Where in the Worldリプライズ♪のナンバーはいってはならない方向へ暴走していく彼の姿が切なくて切なくてまたしても涙涙の連続になってしまいました(涙)。もう本当になんですかねぇ、大沢さんの芝居は。どうしようもなく心が震えて仕方がないんですよ…。

目を覚ましたクリスティーンにキャリエールはファントムの真実を話す。彼は第三者を装いながら自らのことを語っているわけですが…徐々にそれが自分の体験したことに聞こえるように感情を高ぶらせて語っていく様が感じ取れました。篠井さんのこのあたりの演じ分けがとても上手い。

初演ではここで影絵のベラドーヴァが出て息子への愛を歌っていましたが、再演ではカットされたのでキャリエールが事の成り行きを全て言葉で説明する演出に変わりました。でもちょっとここで音楽がほしいかなとは思っちゃったかな…。

憎悪を募らせたファントム=エリックがまず最初に向かったのがカルロッタのもと。オペラ座から出て行くように忠告しても聞き入れなかったカルロッタに背を向けて手袋をはめる表情はゾクっとするほど静かな狂気に満ちている…。あれは怖いよ。

で、許しの花束を彼女に投げつけるんですが…また階段で留まらずにかなり下まで落ちてしまってカルロッタを刺しに行こうとする時に大沢エリックがもう一度それを拾って彼女に投げつけてました。東京公演では私が観に行った回は全て階段のところに収まってましたが、大阪では命中率がイマイチ低かったかも。

ちなみに帽子を舞台袖に投げ捨てる時も前々楽も前楽も柱に引っかかってしまって(汗)、それだからか、大沢さん、脱いで進んでいく時にちょっと慎重になってたかも。その甲斐あってきれいに袖まで飛んできました。で、2回花束を投げつけられた樹里カルロッタですが、その花束もまた勢い余って落ちそうになってて…殺されそうな緊迫した状況の中で必死にその花束を落ちないように掴んでましたね(笑)。

それにしても、あのカルロッタ殺害のシーンでの大沢エリックの芝居は背筋が寒くなるほど恐ろしかった…。ありったけの憎しみをナイフに込めて彼女を刺してたから…。その姿が恐かったんですがそれと同時になんだかとても哀しかったです。ブケー殺しと同じような心境で観たかも。

そのシーンの直後にエリックとクリスティーンのピクニックシーンが出てくる。この時のエリックは童心に帰ったようでものすごくピュア。その落差が観ていて本当に切なくて切なくて涙が後からあとからあふれてきましたよ(涙)。声のトーンも全然違う。想像の世界の中で無邪気にはしゃいでいる大沢エリックの姿は本当に胸を打ちます…。

その最中、ふっと我に返って「僕は君も魔法だと思う」と告げるシーンがとても印象的です。ちょっと恥ずかしそうに俯きながら恐る恐る彼女に想いを伝えている姿がイジらしくて泣けてくるよ…。何かを言いかけたクリスティーンの言葉を遮るように再び童心に帰ってクリスティーンを連れて想像の世界で繰り広げられている光景を次々に語っていくエリック…。

それはまるで、今の幸せな瞬間が自分の手のなかから零れないようにと必死に繋ぎとめているようにも見える(涙)。それがかえって切なくて哀しいのです…。

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My True Love

エリックの幸せを突き破ってしまうのがクリスティーンの「お顔を見せてください」という一言。今までとても穏やかで優しい笑顔を見せていた大沢エリックの表情が凍りついたようになっていく…。

それをなんとか拒絶しようとするのですが、彼女も一歩も引かない。「外の世界には色々とあるのですよ」と指摘されたときの「だろうね…僕には無縁だけど」っていう大沢エリックのセリフには号泣しましたよ(涙)。なんて哀しい寂しそうな表現をするんだろう、この人は!思い出すだけでも涙が…(涙)。あの「無縁」という言葉にどれだけの想いが込められているか…その哀しみを大沢さんは見事に表現してくれる。

それでも必死に「あなたの全てを知りたいの」と歌うクリスティーン。杏クリスティーンの歌ですが、ここも今までの中で一番安定していてよかったのではないでしょうか。あまり違和感を感じなかった。なので大沢エリックの動きや表情に集中することができて…またしても号泣(涙)。彼女の言葉に答えるべきかどうか迷っている姿が…観ているだけでも思い出すだけでも胸が痛くて痛くて泣けて仕方ないですよ。

そして意を決して彼女の前でひざまづいて仮面を取るエリック…。しかしクリスティーンは衝撃のあまりすぐに顔を背けてしまう。そんな彼女に震えながら近づいて顔に手を当てようとするエリックの姿が哀しくて悲しくて仕方がない(涙)。それでも逃げられてしまって…あの杏クリスティーンの表情がとてもリアルだったので余計に哀しくて仕方なかった…。あのシーンは杏ちゃんすごく頑張ってたと思う。

My Mother Bore Me

ショックのあまりその場に立ち尽くして仮面を落とす、あの、後姿のなんと哀しいことか!

そして振り返ったときの茫然自失の表情…それが、急に顔をくしゃくしゃにしてまるで幼児が親とはぐれて泣き喚いているような表情に変わり…声を上げて泣く。この一連の大沢エリックの芝居は…っていうか、あれは芝居ではないですよ。

彼の中には完全にエリックが宿ってる

目の前で子供のような声で泣きじゃくっているのはエリックを演じている大沢たかおではなく、エリックそのものだった。もう、あの声が…劇場全体に響き渡って彼の哀しみが一気に広がっていくのが手に取るようにわかる。あれを涙無くして見るっていうほうが無理です…。もう、胸が締め付けられるっていうのはああいうことをいうんですかね…。号泣ですよ(涙)。

歌詞の中に母親との思い出が出てくるのですが…その中で「例えどんなに辛いことがあったとしても」というフレーズがあって…その部分を歌う時の大沢エリックは哀しみの涙で声を詰まらせかけてしまうんですよね(涙)。「辛い」というフレーズがどんなに彼を今追い詰めているのかが手に取るようにわかる。

泣き崩れそうになるのを必死に堪えながら歌い続ける彼の姿を見ていたら…号泣を越えて嗚咽しかけましたよ(涙)。私も必死に声が出そうになるの我慢して涙してたら自分の体が涙で震えてるのが分かったくらいだった…。あそこまでの心境になって泣いたのってこれまでになかったかもしれない。

そしてさらに「いつか愛してくれるよね、この僕のことも」というフレーズで大沢エリックは泣きながら母親にすがるような声で歌うんですよ(涙)。そんな姿観てたら私もう、自分が壊れそうになりましたよ(涙)。

そこからクリスティーンへの想いへと移り変わっていく。全身全霊で、まさに命がけともいえる気持ちで彼女への愛を歌い上げる大沢エリックの姿はもう涙でほとんど見えなくなってしまうくらい泣きました…。

枯らした声は涙声からくるものだったし、最後の叫びはまさに彼の魂からの叫び。泣き崩れんばかりの声で体全体を震わせての絶唱…言葉ではもう言い尽くせないほどの感動と衝撃が私の体中を駆け巡りました(涙)。あんな哀しい激しく狂おしい愛の歌を私は今まで聞いたことがない。そして歌い終わった後の表情は…もう狂気に満ちたものになってた…。あの切り変わりがすごいですよ。目が射るようなまなざしになってましたから…。

大阪公演での大沢エリックのこのシーンは明らかに東京公演のものを超越してました。大阪まできて本当によかったと思いましたね。これ以上の歌と芝居にはたぶんこの先もそう簡単には出会えないと思ったから…。

エリックの下から逃げ出してしまったクリスティーンはキャリエールと出会い泣きながら彼の顔を見てしまったことを告白します。その時の篠井キャリエールの「無責任な優しさは残酷なものだ」という台詞回しがグッときます(涙)。彼はエリックのことを一番分かっているから…。そこへ駆けつけてきた古川シャンドンがクリスティーンを大切そうに抱きしめる姿も印象的でした。

そして、ついにカルロッタの死が知られることに。自分は下品な人間だが彼女の歌を聞くと幸せな気持ちになれたと涙ながらに語る石橋ショレーの姿がとても切なくて泣けました(涙)。

ついに追われる身となったエリックが警官から銃を奪うんですが、この時の大沢さんの表情の芝居がものすごく印象的。銃を手に取った時なにやら不思議そうな表情を見せ、次第にそれが自らの武器であることを悟って狂気の眼差しで銃を彼に向けるんです。

ゾクっとするようなあの狂気の眼差しが恐くもあり切なくもあり…やっぱり涙…。そして浴びてしまう一発の銃弾…悲劇の始まり…。彼が傷つくことはつまりはストーリーの終わりも近づいているわけで切なくてたまらなくなりました(涙)。

銃弾を再び浴びて傷ついたエリックを地下室へと連れて行くキャリエール。その時の血のあとに気がついてルドゥ警部が躊躇いながらその後を追っていく姿も印象的でした…。彼はキャリエールと旧知の仲だっただけに迷いが生じていたんですよね。

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You Are My Own

傷ついたエリックに水を差し出し、それを苦しみから吐き出してしまう姿を目の当たりにしたキャリエールはこれまで抑えてきた罪悪感が一気に噴出してしまう。「醜いのはお前の顔じゃない、私の心だ」と語る篠井キャリエールの姿が切なくて泣けます(涙)。この想いをずっと心の中に秘めて生きてきたんだって言うのが痛いほど伝わってくる。そして、ついに自分が父だと名乗り出る。その瞬間の、大沢エリックの穏やかな感動に満ちたような表情が忘れられない…(涙)。

「認めてくれるかい、私が父だと」と歌うキャリエールに「気づいていた、あなたのこと、分からないはずがないだろう」と応えるエリックの、なんとも幸せそうなことか!おそらくはあれが本当の彼の姿なんだろうなと思ったら涙がまた止まらなくなりましたよ(涙)。

キャリエールに抱かれながら子供のように彼に甘え「母さんの話を聞かせてくれないか」と語るエリックの姿は涙無くしては見れない…。母親の優しさをまるで昨日のように語り聞かせるキャリエールは父親の顔だったし、それを聞き入るエリックは息子の顔だった。「やっと一緒になれた」という彼の言葉が胸を突きます(涙)。どんなに過去の瞬間を待ち望んだんだろうなと思ったら号泣(涙)。

篠井さんも涙声で歌ってたし、大沢さんは幼い子供のような表情でその胸に顔をうずめてた…。前2公演ではキャリエールの腕を必死に掴んでいた大沢エリックでしたが、大楽ではその力もなくなったかのようにただ父親の胸の中で目を閉じていましたね。その姿が逆に更なる涙を誘いましたよ(涙)。

そこへエリックに会いに戻ってくるクリスティーン。その声に再びすがるように近づいていくエリック。しかしそこにはシャンドン伯爵もいて…彼の存在に気がつくとエリックは途端に狂気に支配されてしまう。クリスティーンの名前を叫ぶ古川シャンドンの必死さがとてもよかったです。自分の体の痛みを忘れシャンドンに銃を向けるエリックの姿は私にはとても哀しく映り涙がまたまた止まらない…。

今にも彼に引き金を引きそうなエリックでしたが、クリスティーンの「やめて!!」という叫びが耳に入り…彼に向けては銃を撃たなかった。このシーンのときの杏ちゃんの鬼気迫る芝居が東京の時よりもずっとよくなってました。泣けるんですよねぇ、この場面も。最後の最後にエリックは一番憎んでいた相手を殺すことを思い止まるんですよ…クリスティーンのために…。銃を上に向けて撃ったときのあの胸かきむしられるような大沢エリックの表情を目の当たりにしたら号泣ですよ(涙)。

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そしてついに逃げ場を失い、クリスティーンはエリックを守りために銃を警官に向ける。「来ないで!」と叫ぶ時の杏クリスティーンの何かに取り憑かれたかのような表情がとてもよかった。「逃げてください」というクリスティーンの言葉に弾かれるようにロープに乗り移るエリック。いつも思うんですけど、あれだけ激しい動きをしてきてよくあのロープを登っていく力があるなぁと…それだけで感動ものですよ。

ここはアクションシーンみたいになっていますが、実際には本当にとっても哀しいシーン。銃口を向けているキャリエールに対し「助けてくれ、どうすればいいかわかるだろう?」と懇願するエリックの言葉が哀しくて哀しくて…。そして最後の

「母さんのところへ行きたい…父さん!」

というあまりにも切な過ぎる願い…。引き金を引いたキャリエール。初演のように躊躇うことなく一気に銃を撃つキャリエールの姿もまた哀しくて仕方がないです(涙)。撃たれた瞬間、もう、滂沱の涙ですよ(涙)。あぁ、これで本当にお別れなんだって想いが私の中に駆け巡ってしまってあの銃声がいつも以上に辛くて辛くて仕方がなかった…。

死の間際、クリスティーンはエリックの仮面をそっと外しその顔を愛しそうに触れながら♪You are musicリプライズ♪を歌う。その声を聞きながらこの上ない幸せそうな表情でキャリエールを見つめ最後の最後にクリスティーンの顔を見て微笑みこの世を去ってしまうエリック。

彼を狙っていた警官たちも哀しみの空気に満ち溢れ、角川さんなどは警帽を外して沈痛な面持ちで頭を下げててそれだけでも涙を誘いました…。大楽のこのシーンは本当に尋常な気持ちでは観れなかったですよ…とにかく寂しくて寂しくて…(涙)。

この気持ちが最後まで抜けなくて、カーテンコールのときも楽しくても涙が自然に溢れて出てしまって大変な状況になってました、私(汗)。

こうして、大沢さん主演の『ファントム』は幕を閉じました。私は本当にこのカンパニーで奏でられた『ファントム』が好きでした。最初の頃はちょっと色々ありましたけど(汗)最後はホントに「終わりよければ全て良し」みたいな感じで。正直、終わってしまったことをまだ受け止めきれずにいるくらいです…。

カンパニーの皆さん、本当に素晴らしい時間をありがとうございました。

 

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最後に、主演の大沢たかおさんについて少しだけ。

初演の『ファントム』を観る前までは彼のことをあまり良くは受け止めていなかった私。しかし、彼の最初の歌を聞いた瞬間にそれまで抱いていたイメージが一気に崩れるのを感じました。『ファントム』は私と大沢たかおさんを改めて出会わせてくれた作品でもあります。あの時の歌唱力を超えた大沢さんの芝居に衝撃を受けたことは忘れられない思い出です。

それから2年、大沢さんのファンクラブに入って改めて出会った『ファントム』は素晴らしい進化を遂げていました。ミュージカル俳優のような歌い方ではないけれども、初演よりもさらにドラマチックに歌い上げられたナンバーの数々は私の心をこれ以上ないほど揺さぶり続けました

歌が上手いとか下手とか…大沢さんの場合は私はそういう感覚では捉えられません。そういったことを超越する、まさに命がけの全身全霊を込めた大沢たかおの渾身の芝居にこれまで感じたことのなかったような感情が沸き起こりました。大沢たかおさんの生の演技を観に行く、というのではなく、大沢たかおさんが創りだした…彼の中に宿ったエリックに会いに行く、そんな感覚。大沢エリックと出会えている時の私は本当に濃密な素晴らしい時を過ごさせてもらいました。

ミュージカル『ファントム』はこの先もきっと再演する機会があると思います。作品も曲も大好きなのですが、たぶんそこにはもう大沢たかおさんはいない…。彼よりも歌や芝居がしっくりくる役者さんが演じられる日が来るかもしれません。

でも、私にとっての『ファントム』でのエリックはもう大沢さん以外考えられないんです。あの魂の全てを注ぎ込んだかのような大沢さんの芝居は何にも変えがたい私の中の「宝物」です。きっと一生…。

こんなすごい役者さんと出会わせてくれた『ファントム』はいつまでも私の中で特別な存在であり続けると思います。そしてこの作品にここまで入れ込ませてくれた大沢たかおさんのエリックもずっと心の中に住み続けると思います。

ミュージカルは本当にもうこれっきりですかね?気が向いたらまたいつでも帰ってきてください(笑)。


大沢たかおさん、ミュージカルファンの一人として心からお礼を言いたいです。こんなに真摯にミュージカルに向き合ってくれて、あんなに魂が震えるほどの芝居を魅せてくれて、本当に本当にありがとうございました。

以上、これまでかつてないほど熱い『ファントム』感想でした(汗)。ここまでたどり着いてくれた皆様、ありがとうございました。

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