ミュージカル『ファントム~もうひとつのオペラ座の怪人~』東京公演 2019.11.20マチネ

全体感想

詳しい感想は東京公演の最後の観劇を終えた後に書く予定なので、今回はなるべく内容に触れすぎないように軽く…(なってるはずw)。

まず最初に全体を見終わった後に思ったのは、「城田優くん、ほんとうにありがとう!!」ってことでした。

今回城田くんが演出を任されて話題となったわけですが、もうほんとに・・・感激しました。随所に『ファントム』という作品に対する愛情が溢れてました。あれは、本当に心の底からこの作品を愛していなければできない演出だったと思います。はっきりと言葉に表すのは難しいけど・・・いかに城田くんがこの作品を大切に思っているかがひしひしと伝わってきたんですよね。私にとっても何より大切でいつまでも温めておきたい存在の作品なので、本当に嬉しかった。

舞台が始まる約10分前からアンサンブルさんが舞台上にセットを運びながら登場。パリの街の光景が本編前から楽しめます。数人のアンサンブルさんがパンフレットを手に売り子もやってるのが楽しかった(もちろん役になり切って)。一人10冊抱えてたようなので、気になる方は声をかけてみてはw。

舞台上でもパリ市民としての会話が普通に繰り広げられてますが、アドリブなのでその日しか見れないような面白いこともありそうです(笑)。
この日面白かったのは警官アンサンブルさんが少年の泥棒追いかけてるときに「膝のお皿が吊った」ってアピールしてて、みんなから「そんなもんどこにあるんだよ!」とツッコミ入れられてたことww。

さらに、劇場の注意事項放送はルドゥ役の神尾祐さんが担当してるのですが、これもかなり面白いです。で、そのさなかに絵描き役のアンサンブルさんが一生懸命描いてたキャンバスを「できた!」とばかりに見せることがあって。このイラストが、神尾ルドゥのアナウンスとばっちり被ってたのが最高でした(笑)。これはぜひチェックしていただきたいかも。

こんな感じでかなり面白い趣向になってるので、時間に余裕のある方は10分前には席についていた方がいいと思います。

そしてアンサンブルさんたちのアドリブ芝居が続いている延長線上で本編の音楽が流れだして物語がスタート。この流れがものすごく自然で思わず拍手したい気分になりました。
なんか、「タイタニック」の開演前の様子をちょっと思い出したなぁ。本編前からドラマが始まっているようでこういう演出は面白いし良いと思う。

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本編内容について軽く…。まず演出について。

あまりにも大沢ファントムの印象が鮮烈で思い入れが深すぎたために2014年に城田くんで再演された時はどちらかというと違和感のほうが正直大きかった、というのはありました。
が、今回の演出舞台を見て・・・これはすごい!!と素直に心が震えました。こういうファントム像、そして彼にまつわる人間ドラマを待ってたんだと。

舞台セットもさまざまなドラマを生み出せるように色々形を変えて観る者を圧倒してました。それから回る盆の演出の使い方もすごくいい!ラストシーンの哀しい美しさが際立ってて滂沱の涙状態になってしまった。

個人的には、カルロッタが♪This Place Is Mine ♪を歌っている途中の後ろの背景の見せ方がとても印象深かった。城田くんがオケにも心を配っていることがあの演出で伝わってきたよ。

ファントムとクリスティーヌがレッスンする場面はこれまで上の方で展開されていて、カルロッタの舞台に対するあれこれ(ここはルドゥの反応が面白いんだけどw)は下でやってる演出だったと思うのですが、今回は両方とも板の上で同時進行として見せてましたね。
上手の方でレッスン風景が、下手の方でカルロッタの騒動が続いてる感じ。ドラマに焦点が当たる方に光を当てるっていう演出がシンプルだけどとても分かりやすく斬新に感じられました。

あと、舞台照明の使い方がとにかくとても面白かったです。ストーリーとごく自然にリンクしていて、照明もドラマの一部なんだということを随所に感じました。このあたりの感性も素晴らしいです。特に2幕冒頭の演出は最高でした。

あと、個人的にすごく衝撃を受けた演出は…やはり2幕の最大の悲劇のシーンですね。
最初は悲しみの表現をだいぶ抑えた演出だなと思っていたら…その直後のあの感情の爆発とともに雪のように舞い散る白い吹雪が…!!!
あまりにも悲しく美しい場面に見ていて涙が止まりませんでした(涙)。この場面のドラマについては後日。

あとはラスト直前のあのシーン。大沢さんバージョンの時もロープを使ってましたが(あの時は力業で登ってたんだよなぁ。大沢さんの腕力が衝撃的だった)今回も登場してた。しかも相当バランス感覚が研ぎ澄まされてないと危ないくらいのやつ。これをまた、演じた加藤和樹君が実にスマートに乗りこなしてて、涙とともに美しいという感情も沸き起こってしまった。
どうか最後まで怪我なくいきますように。

この作品の肝は”ファントム”と呼ばれるようになってしまった一人の哀しい青年の心の内面のドラマと、それを見守り続けてきたある人との因縁のドラマだと思います。

そこに深くかかわってくるクリスティーヌという存在が物語を大きく動かしていく。ロイドウェバーに登場するクリスティーヌよりも幼く未熟な印象がありますが、それだからこそのストーリー展開がとにかく刺さるんですよね。
個人的には、実は、ファントムの物語としてはロイドウェバーよりもコピット&イェストン版のほうが好みだったりします。

あまり細かい内容には触れないようにしますが…衝撃受けたのは、シャンドン伯爵とクリスティーヌの心が結ばれてしまった場面でしょうか。あそこまで繊細に描いたのって今回が初めてではないかな。2014年の記憶がほとんどないので覚えてないだけかもですが(汗)、あれは・・・泣いた・・・!!!!

それから、”ベラドーヴァ”をゲラールが語る場面。あれは、”そうきたか”と思った。ここは彼女のダンスシーンが肝になってきますが、晴香ちゃん、ものすごく美しかったよ!

それを聞いたうえでのクリスティーヌのあの行動…。ここは今までとちょっと印象が違うように描いてたかな。彼女の「幼さ」が引き起こすわけですが、今回は彼女にも同情の余地を残せるような、そんな表現方法になってました。

クライマックスのエリックとゲラールの会話は涙なしには見れません!!!溺れるくらい泣いた(涙)。

とにかく、随所にこの作品に対するリスペクトが詰まっていて…私は何よりそのことがとても嬉しくて心が震えました。次回の感想はもう少し内容に触れたいと思います。

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主なキャスト感想

加藤和樹くん(ファントム/エリック)

10月にミュージカル『怪人と探偵』を観に行った時、和樹くんのファントムは絶対ハマる!という確信があったのですが、その時感じた私の勘は間違いじゃなかったと思いました。それどころか、想定していた以上の鬼気迫る迫真の芝居で・・・何度和樹くんの魂の叫びのようなシーンに涙させられたか分かりません!!

今までに見たことのないような激しい内面をさらけ出していたり、クリスティーヌの前でおびえながらもこの上なく幸せそうな表情を見せたり、ゲラールの前で感情の不安定さを露呈させたり・・・とにかく、見どころだらけだった。
和樹くんのエリックに関してはほかにも語りたいことだらけなのですがw、また追々に。

木下晴香さん(クリスティーヌ)

晴香ちゃんのクリスティーヌはとにかく可憐でキラキラしてました。若くて純粋な屈託のない笑顔が本当に可愛らしくて、エリックが歌声以外にもどうしてもひかれてしまうのも納得。

レッスンを受ける前と受けた後の歌い方の差も巧く演じていたと思います。ちょっとオペラ的な歌に関してはまだ苦戦するところがあるのかなとも思いましたが、それも逆にクリスティーヌのリアルさにつながっていたんじゃないかな。

廣瀬友祐くん(シャンドン伯爵)

廣瀬くんはファントム役もイケそうな感じがしていましたが、シャンドン伯爵の美しい紳士っぷりには思わず息をのむくらいだった!!凛として美しく、いかにも大富豪の育ちのいい青年といった雰囲気。お坊ちゃまというよりも、ザ・伯爵って雰囲気でクリスティーヌをエスコートする姿がこの上なくハマってました。

そんな完璧男子が恋に落ちてちょっとはしゃいでしまう的なお芝居もよかったです。クリスティーヌの前ではカッコいい自分を繕いきれない、みたいなところがこの上なく可愛かった。ファントムが嫉妬に狂うのも納得です。

岡田浩暉さん(ゲラール)

岡田さんがあんなにも白髪が似合うようになったとは!初めて見たかも。
岡田さんの演じたゲラールはとにかく愛情深くて・・・後半の真相が明かされていくあたりからのお芝居は全部泣かされました(涙)。芝居が本当に温かいんですよね。クリスティーヌをエリックから遠ざけようと必死になっていたのも、彼女のためというよりもエリックのためといった印象の方が強い。

クリスティーヌが戻ってきたときに事情を聴くシーンがあるのですが、これまでは彼女を責めるような言葉を言っていたのが今回なくなっていました。岡田ゲラールならそのことも納得できる。

エリアンナさん(カルロッタ)&エハラマサヒロさん(ショレー)

エリアンナさんのカルロッタは、とにかく「やりすぎだろう(笑)」って思えるほど徹底してコミック的なキャラクターを貫いてました。ものすごく分かりやすい。わがままで傲慢で、この人とはお近づきになりたくない感満載なんですけど(笑)、それでいてどこかチャーミングで憎み切れない魅力がありました。

そんなカルロッタを支える夫のショレー。エハラさんが演じているということもあってかこちらもコミカル路線でとにかく面白いww。「ショレーちゃんですっ」みたいに可愛くおどけて見せたりするのがけっこうツボった(笑)。

この二人のコンビは、『ファントム』のなかでも異質でありながらちょっとオアシスっぽい感じ。いいスパイスになっていたと思います。

神尾佑さん(ルドゥ)

ルドゥは出番的にも少ないのですが、まじめで実直そうなキャラがすごく印象的でカッコよかったです。とにかく神尾さんの抑えた芝居が素敵だった。そんな彼がちょっとコミカルな一面を見せるカルロッタの舞台上での出来事の場面。まじめな顔して「コメディじゃなかったのか」って反応してるのがとてもかわいいので必見w。

佐藤玲さん(ジャン・クロード)

確かこの役は前回までは男性が演じていたと思うのですが、今回からは女性が演じることになっていて驚きました。雑然とした舞台裏のなかで凛とした存在が生きてましたね。透き通った声もよく響いて、シャキシャキと動いていた姿が印象的でした。

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後述

あーーーー私の大好きな『ファントム』が帰ってきてくれて本当にうれしい!!モーリー・イェストンの音楽にこれでもかって酔いしれながら滂沱の涙を流す。私の心をあり得ないほど震わす数少ない作品の一つです。

東京であと2回、大阪で2回予定。全力で観ます!!

この日は終演後にトークショーがありました。レポは別記事にて↓。

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