ミュージカル『ジャージーボーイズ 』東京公演 2022.10.13ソワレ(チームGREEN)

主なキャスト別感想

フランキー:花村想太くん(Da-iCE)

フランキー役はフォーシーズンズのオリジナルメンバーでもあるボブ・ゴーディオさんの厳しい審査を突破しなければ演じられないと言われていて、それをクリアした中川晃教くん(あっきー)が初演からずっと一人で背負い続けてきました。あの天使のような完璧な高音と歌唱力を表現できるのは彼以外現れないのではと思っていたのですが、ついにその厳しい基準をクリアしたツワモノが出てきてくれた!それが花村くん。アッキーの推薦もあったとのことで、二人目のフランキーとして彼が登場したことはJBファンの私にとっても本当に嬉しいことです。

花村くんは以前『RENT』のマーク役で見たことがあるのですが、その時の歌声が本当に素晴らしくて…フランキー役も絶対ハマるはずと今回会えることをとても楽しみにしていました。いやぁ、想像以上にフランキーでしたよ!♪Sherry♪の難解な高音部分も何の不安もなくスコーンと透き通るような歌声で聴かせてくれていて、あぁ、本当に二代目が誕生したんだなと感激してしまった。
なんだか時折若い頃のアッキーに見える瞬間もあったなぁ。とても素直な歌い方だし爽やかさの中にもしっかりとした芯を感じさせる歌声も素晴らしい。

それから歌だけではなくお芝居もすごく良かったです。『RENT』の頃は初々しさみたいな雰囲気もあったのですが、あの時よりもずっと進化してる。まだ10代の頃の無邪気だったフランキーが、経験と年齢を重ねていくにつれて円熟味を増し尖った雰囲気をも纏う大人に変化していく過程のお芝居がすごく分かりやすかった。特に妻や娘との関係に苦悩するシーンの花村フランキーはものすごく大人というか…”男性”的で尖ったセリフ回しなどはドキリとさせられるほど切れ味鋭く艶っぽかったです。歌だけでなくお芝居もとても真摯に丁寧に演じているのが伝わってきたのが本当に嬉しかった。

これから回数を重ねていくうちにどんどん深みを増した花村フランキーが完成されていくと思うと本当に楽しみ。チケットのお値段がもう少し優しければあと1回見に行きたかったです。

トミー:尾上右近くん

右近くんのトミーは2020年のコンサート版の時に配信で観て以来。あの時は藤岡君の迫力に押され気味かなと思うこともチラホラあったりしましたがw、いよいよ本編登場となった今回は彼ならではの新たなトミー像を存分に魅せてくれていました。

トミーは何度も警察のお世話になるほどの破天荒なキャラですが、右近君が演じると自由闊達で自分の思う通りに事を運びたがる厄介なところはあれども、どこか柔らかさと品があって”怖さ”みたいな凄味はあまり感じなかったんですよね。それが私にはとても心地よくて、ハチャメチャな行動はしてるんだけどなんだか憎めない右近トミーに感情移入することが度々ありました。
特に印象深かったひとつが、フランキーを発掘し彼がどんどん上達していく姿を見て「俺の自慢だ」とニンマリする場面。この時の表情がどことなく柔らかくて兄貴的な優しさすら滲んでいるように思えたんですよね。あぁ、トミーはフランキーのことを仲間としてちゃんと受け入れてるんだなというおが伝わってきてちょっとジーンと来てしまった。

それから、裏社会から借りた借金が膨れ上がってグループを脱退しなければならなくなる場面も非常に印象深かったです。「またすぐに戻ってくるから」と告げたものの事態はそれすら許されない状況であることを初めて悟った時、彼の目に見る見るうちに涙がこみ上げてきたんですよね…。フォーシーズンズは彼にとって絶対的な存在であり、心の支えでもあったんだなというのが伝わってきてものすごく切ない気持ちになってしまった。断腸の想いでメンバーから離れることを受け入れた時の背中があまりにも心許なく寂しげで…こらえきれず溢れた涙を必死に拭っていた右近トミーはあまりにも切なすぎました(涙)。それゆえ、ラストシーンでイケイケだった頃の自信家だった彼に戻ったのを見た時にはなんだかホッとして嬉しくなっちゃったよ。

感情表現の一つ一つがとても繊細で、無茶ばっかりしてきたキャラのなかにも共感できる隙を与えてくれるお芝居をしてくれた右近くん。これまでにはなかった新しいトミー像で大いに楽しませてくれたと思います。次回公演があった時また是非見てみたい。

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ボブ:有澤樟太郎くん

有澤くんは今回が初めましての役者さん。これまでは主に2.5次元ミュージカル(刀剣とか)での活躍が多かったとのことで、まず長身でものすごく美形なことに驚きました。さらに足が長いっ!!こんなに足がスラッと長い人がいるのかと、登場するたびに思わず見入ってしまったほど(笑)。

ここ最近は東宝系の大きな舞台作品に2.5次元出身の役者さんが進出してくることが多くなりましたが、有澤くんはその中でもかなりの逸材だなと思います。あの華やかな顔立ちと抜群のスタイルはものすごく舞台映えするし大きな武器になる。それに、歌もお芝居も本当に素晴らしかった。
とても素直でまっすぐな有澤ボブの歌声は、チームGREENに大きな爽やかな風を吹かせていたと思います。ソロ♪Cry for Me♪の歌いっぷりも清々しい若さに溢れていて非常に感動的でした。

それから、ボブのフランキーに対する前のめりな感情のお芝居がものすごく良かった。ボブは初めてフランキーの歌声を聞いてからずっと彼に魅了され続けるわけですが、有澤くんはグループに加入する前から”フランキーLOVE”な空気感をずっと出していた。なのでこっそりと楽屋でフランキーにだけパートナー契約を結ぼうと持ち掛けたり、ニックがいるのにそれに気づかないように「フランキーと二人でトミーの借金を返していく」と宣言してしまったりする場面の説得力がものすごく強かったように思います。
また、2人体制になった後に「僕は裏方に回る」とフランキーにソロをやらせるよう持ち掛ける場面も印象的。フランキーの才能をさらに生かすために裏方に徹するというボブの想いがものすごくリアルに伝わってきました。

プライドが高くて理論派で、だけど先のことばかり見ていて目先の危機に躓いた時には動揺してしまう未熟さもあって。完璧そうに見えても挫折には弱いといったキャラクターがすごくハマっていて見応えがありました。今後も色々な作品で見てみたい役者さんです。

ニック:Spiくん

Spi君のニックは2018年公演、2020年コンサート版に続いて3度目。今回のチームGREENの中では唯一本公演を経験していることもあってか、皆の支柱のような存在感を放っているように見えました。彼がいるだけでしっかりとフォーシーズンズとしての結束が固まっていたような、貫禄すら感じたかも。最初日本公演で見た時よりも確実に進化したニックになったなと思えたのがなんだかとても嬉しかったです。

ニックは1幕はどちらかというと前のほうには出ずセリフも少ないのですが(2幕で「俺はこれまでほとんど喋らなかったけど」というセリフがあるほどw)、Spiくんはなんだかすごい存在感があって。無口なキャラでたまにトミーに口にする言葉と言えば「俺も自分のバンドを作ろうかな」ということくらい。このセリフ、後から振り返ってみるとものすごく重いなって思うんですよね。メンバーの中ではずっと縁の下の力持ちみたいな存在だったけど、本心では自分も前に出て脚光を浴びたいという願望があって…。その気持ちが滲み出ての「自分のバンドを作ろうかな」発言なんじゃないかとSpiくんのお芝居を観てすごく感じました。

ニックは偶然ボブがフランキーに個人的なパートナー契約を結びたいと持ち掛けている現場を目撃してしまうわけですが、この時のSpiくんの何とも言えない置いてけぼりを食らったかのような哀しそうな眼差しがめちゃめちゃ泣けた…。セリフはなくても表情で内に秘めた感情を語るお芝居が本当に素晴らしかったです。
2幕になってトミーの借金問題が明るみに出た時にニックは溜め込んできた本心を表に爆発させるわけですが、それまで彼が抱えてきた心のモヤモヤがひしひしと伝わってきたのでこの場面の説得力がすごかった。さらにグループを脱退すると宣言するシーンも、「その気持ち、めちゃめちゃわかるよ」ってものすごく共感できてしまう。そこに至るまでの繊細なニックの感情の動きをSpi君はとても丁寧に演じ切ってくれてました。今後さらに進化していく彼のニックに期待したいです。

加藤潤一くんのボブ・クルーはとてもチャーミングでめちゃめちゃ可愛かった。おネェな雰囲気がめっちゃハマってて何度も萌えちゃったよ。でもその反面仕事では厳しい一面も見せていて、そのメリハリの効いたお芝居が非常に魅力的で素晴らしかったと思います。

山路和弘さんのジップ・デカルロは迫力満点!!前回まで演じていた阿部さんとは違う”本物”感がすごくて見ていてゾクゾクきました。ジップはマフィアの大物ですがどちらかというと静かな雰囲気であまり感情をグワッと出してこない。それでも山路さんは佇まいと周囲を威圧する目力でその場を圧倒。黒い世界のオーラがムンムン漂っていました。
ところが2幕の最後のほうに出てくる神父さん役はものすごく慈愛に満ちた優しいオーラを感じさせてくれて…とてもジップを演じていた人とは思えないレベル。悲しみに沈むフランキーにかける言葉が温かくてめちゃめちゃ泣けました。山路さんはやっぱりすごい役者さんだなぁと改めて。

戸井勝海さんは初演の時以来だったので、再びジャージーで再会できてうれしかったです。トミーとニックと一緒にバンドを組んで一緒のシーンは実に楽しそうに歌っていたのがとても印象的。特にこの時はセリフはないんだけど、音楽やってることへの悦びが滲み出てて良いんですよね。それでもすぐに牢獄行きになっちゃうんですがw。
トミーに借金を渡すノーマン・ワックスマンは初演の頃と比べるとかなり闇深い雰囲気が色濃くなっていて、返済できなかったらすぐに始末されそうな恐ろしさが全身から漂っていました。多額の借金を重ねたトミーに対し「俺の部下たちが暴れ出しそうなのをもう食い止められない」と語るシーンの凄味はゾクっときたなぁ。それから、「俺はお前たちの音楽が好きなんだよ」と告げる場面も印象深いです。そうじゃなかったらとっくにお前は消されてると暗に伝えているわけで…穏やかな口調なのが逆に怖かったよ!戸井さんの静かながらも凄味のあるお芝居がとても印象的でした。

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後述

カーテンコールはスタンディングオベーションのなか♪Jersey Boys♪メドレーが流れ、大いに盛り上がりました。グリーンライトを点灯させたペンライトがここで活躍!このご時世なので一緒に声を出して歌うことはできないけれど、ペンライトを振りながら手拍子してるとキャストの皆さんとの一体感が感じられてものすごく気分が高揚します。♪Big Girls Don't Cry♪ではサビの部分で一緒に振り付きで踊っちゃったりして(コロナ禍前の公演の時にレクチャーされたのを覚えてた私ww)。まさに、客席と舞台の上とが一緒に創り上げたという達成感みたいなものもあって、最後まで本当に楽しめました。

その後のカーテンコールも大盛況で、それに応えてSpi君たちが花村くんを少し前に出して「何かコメントしなよ」みたいに促してたのですが、結局「ありがとうございました」って少し恥ずかしそうに一言告げるのが精いっぱいみたいな一幕もw。さっきまであんなにシッカリとしたお芝居と歌で魅了してくれた花村くんなのに、素に戻るとシャイで可愛らしい一面がある子なんだなってホッコリしました。

最後に大きな手拍子が鳴り響くなか、舞台袖で演奏しているメンバー一人一人をカメラがクローズアップしていって。モニターに映し出される皆さんはとても良い表情を向けてくれていて、それだけでまたジーンときてしまった。

チームGREEN、本当に凄く良かった!翌日もう一度観に行きたかったけど、資金不足と飛行機の時間の関係もあったので泣く泣く断念。また再演があった時に同じメンバーで見たい!!

チームBLACKは11月の大阪公演を観に行く予定。ここ最近は公演がストップすることもだいぶ少なくなったけどまだ油断できる状況ではないので、無事に幕が上がるのを祈るのみです…。

新歌舞伎座のチームBLACKを観るのをめちゃめちゃ楽しみにしていましたが、遠征費の捻出が厳しい情勢となり断腸の想いで行くのを諦めることにしました(トークショーも聞きたかった 涙)。旅行支援、上手く繋がらないし仕組調べてる間に2日も経たずに終わってしまうとは…。円熟したアッキーのフランキー、見たかった!!
改めて、大阪が遠くなってしまったのだと実感する次第です…。

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