朗読劇『ラヴ・レターズ -LOVE LETTERS-』2020.02.25ソワレ 加藤和樹×愛加あゆ

公演感想

『ラヴ・レターズ』は今公演が上演30周年という節目の年。そして、加藤和樹くんと愛加あゆさんのコンビがちょうど500組目にあたるそうです。そんな記念の回に観劇できたことは非常に幸運でした。

1幕はアンディとメリッサの幼少期から学生時代までの書簡のやり取りが読まれます。

ということで、和樹くんは白いシャツと黒のパンツ、素足(もしかしたら短い靴下はいてたかも!?)に靴といったスタイル。髪型も前髪を下ろしてふわっとナチュラルなちょっと可愛らしい少年のような印象で・・・、こんな和樹くん初めて見たかも!!と内心けっこうテンション上がってましたw。

愛加さんは華奢でスタイルもよくてさすがは元タカラジェンヌさん。1幕はオフホワイトなワンピース姿で登場。可愛い笑顔の中にちょっと気の強さも見え隠れするような印象でした。

台本は会場で販売されているものとほぼ同じものだと思われます。

私は10年前に観に行ったときに購入していたので、今回久しぶりに公演終了後に開いて読み返してみました。これを読むと分かるんですが、最初の方の手紙のやり取りの部分は8割くらいが「ひらがな」で書かれてあるんですよね。アンディが男子校に転校してしまうあたりまでかな。

愛加さんが演じたメリッサはちょっと気が強いおしゃまな女の子って感じで、和樹くんが演じたアンディはそんな彼女を穏やかに受け止めている感じ。メリッサの言動にちょっと戸惑いは感じているものの、いつも優しく見つめていてそんな彼女に密かな好意を抱いてる男の子が私の脳裏に浮かんできました。

ちょっとプライドが高そうな女の子のメリッサはアンディの「告白」にも結構つれなくて「じゃあ好きでいさせてあげる」みたいな塩対応w。それでも心が折れないアンディがちょっと不憫になる前半です。なにせ、和樹くんの声が柔らかくて優しい雰囲気なのでなおさらかわいそうに思えてしまった。

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違う学校に通うようになってからは、お互いの身の回りにあった出来事を報告しあう手紙のやり取りが続きます。アンディの学校生活はけっこう充実している様子がうかがえるのですが、メリッサのほうは母の再婚相手と折り合いが悪いようで精神的不安定に陥っている。それゆえ、ちょっとしたことでもすぐにアンディに噛みつくような言葉を綴ったりしていて少し痛々しい。

やがて二人はそれぞれ寄宿舎生活を余儀なくされることとなりますが、メリッサがますますヒステリックになるのに対してアンディはそれなりに生活が充実していることが伝わってくる。そのため、手紙を得意としないメリッサに対しても、アンディは興奮気味に学園生活について超ロングレターを送りつけているw。
その手紙に対するメリッサの反応が「ちょっと長すぎたわね」っていう正直なものでw、この時は客席からもちらほら笑い声が聞こえてきました。

アンディのロングレターを聞いている間、愛加メリッサはかなり退屈そうな表情をしていて動きも落ち着きのない感じでした。2回くらいお水飲んでたかな。
逆にそれには気づいてない和樹アンディが夢中で自分の身に起きていたことを読んでいて、この二人の対比が見ていてとても面白かった。

やがて嫌悪していた母の再婚相手との離婚が成立しそうになることで、少し落ち着きを取り戻すメリッサ。休暇にはアンディとの逢瀬も実現するわけですが、相変わらずアンディのほうが気持ちが盛り上がっていてメリッサはなかなかそれに乗ろうとはしない。けっこうキワドイ行為もやってるっぽいんだけど(汗)、恋人になりたいってストレートに表現してるアンディに対してメリッサはあまりはっきりした態度を見せない。
和樹くんの読み方がとてもソフトで優しいので、はっきりした答えが返ってこないたびになんか聞いてるこちらももどかしく感じてしまったw。

そうこうするうちにメリッサはまた家族のことで大きなショックを受けてしまう。詳しい事情は語られないものの、実の父にワクワクしながら会いに行ったのに自分の望んでいた関係には至れなかったことが伝わってきて切なかった。この事件がきっかけでメリッサは何度も来るアンディからの手紙に返事を書くことができなかったんですよね。
アンディは経済的には少し苦労しているけれど生活自体は充実しているのに対し、メリッサはお金持ちなのに家庭の事情が重なり情緒不安定に陥ることが多い。そういうのもあって、なかなかうまく意思の疎通ができていないのかなと思ってしまった。

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やがて学生生活の中でお互いに違う相手ができたんじゃないか、みたいな疑心暗鬼が起こったりして手紙の内容もギスギスしがちになっていきます。なかなか返事を返してくれないメリッサに対して「地獄へいけ!」なんていうアンディの苛立った文面も出てきたりしてけっこう衝撃的w。あんなに好きだってアピールしてる相手にそこまで言うとはw。
これまで穏やかに手紙を読んでいた和樹くんが、苛立ちを表すこのセリフの時にはクワっと牙をむいたようなトゲある読み方していてちょっとドキリとしました。

そんなすれ違いをしていた二人でしたが、ようやく対面が叶って愛を語り合える機会が訪れたにもかかわらずお互い満足する関係には至れなかった。そのことで大いに落ち込んでしまう二人の手紙のやり取りが切ない。特にテンションが高かった文面を綴ってたアンディの落胆っぷりは聞いているこちらとしてもなんだかかける言葉もないって感じです。

そんな落胆するアンディにメリッサは「原因は手紙だ」とハッキリ告げる。「私は現実のあなたではなく手紙のあなたしか知らないから、あの時も肩越しにもう一人のあなたを探してしまった」という文面が印象的だった。
二人の時間の多くを「手紙」でのやりとりが占めているので、そういう感覚にさせられてしまったのかなぁと。それはそれで悲劇かもしれない。メリッサは「今後は手紙はやめて電話にするべきだ」と強く要望しますが、アンディは寮の都合もあるからとかたくなに「手紙」でのやり取りを希望する。

「手紙」での交流か、「電話」での交流か。二人の意見は最後まで噛み合わないまますれ違いを続け、メリッサは他の男子からの誘いに乗ったことを綴り「最後は電話の勝利ね」と一言添える。
そんな彼女に対してもアンディは「これが最後になるとは思わない、愛している」と綴る。どこまでお人好しなんだよーーー!と思ったところで1幕が終わりw。
読み終わった後の和樹くんと愛加さんは役から抜けてちょっと柔らかな表情になって舞台袖へ。

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15分の休憩後、2幕は服装を変えて登場する二人。

和樹くんは髪型を大人っぽく少し上げた感じで、いつものカッコいい雰囲気。服装は黒のジャケットとパンツでシックないでたち。愛加さんも黒のワンピースに着替えて少し大人の雰囲気に変わっていました。

2幕の二人はめまぐるしく環境が変わっていくので、聞いているほうもけっこうな集中力が必要かもしれません。どちらかというと1幕よりもドラマが濃い。ちょっと昼ドラちっくな展開もあったりw。

アンディは海軍に入隊して様々な国を渡り歩く。それに対してメリッサは絵の才能を生かして芸術家の道を歩み始めていた。それゆえ、お互いに会える日の伺いは立てるもののなかなか予定がつかずに月日だけが過ぎていく。
そうこうするうちに、アンディはなんと日本で芸者の女性と恋に落ちて結婚してしまった。ここが一つの大きな分岐点となるのですが、「日本」が舞台になってることがすごく意外だなぁとw。アメリカの方が書いた本なのでね。

アンディの結婚にショックを受けたメリッサはさんざん手紙で文句をつらつら綴りますが、それに対するアンディからの返信は一向に届かない。メリッサとしては、いつも自分だけを見てくれていたアンディが違う女性に気を移したことが相当悔しかったのかなぁと思いながら聞いてしまった。その複雑な女心を愛加さんは感情豊かに読み上げていました。
そして痺れを切らしたかのように、メリッサは付き合っていた男性と結婚してしまう。これ、本当に愛していたのか怪しいところだなと思っちゃった(苦笑)。で、招待を受けたアンディはというと、固い文面で出席できない旨だけ知らせてくる。なんとも複雑w。

で、メリッサは一応結婚生活は上手くいって子供も授かりますが、アンディは日本女性との結婚に失敗して離婚をしてしまっていた。しかしその後彼は大学院に進んで法律家を目指す道へ。和樹くんのちょっとお堅いまじめ青年的な読みっぷりがツボで、挫折を経験したアンディが再びきりっと前を向きながら進む姿が浮かんできました。
ところが、メリッサのほうは「結婚生活は上手くいっている」といいながらも「婚姻法をなんとかして」と書いてきたりしてちょっと雲行きが怪しい。二人目の子供が生まれてもあまり喜びは伝わってこないのが聞いていてヒリヒリしました。

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そして懸念した通り、メリッサの結婚生活は破綻。逆にアンディは再婚相手を見つけ結婚、順調な人生を歩みだすわけで…この出来事がメリッサの精神を再び不安定にさせてしまうことに。でも、彼女が自分の結婚のことで病んでしまっているとはアンディは思ってない節があって、ことあるごとに幸せな日常のことを綴ってしまっている。
もともと「恋人」とも言えないような関係の二人だっただけに、こうもすれ違いが多発してくるとけっこう聞いているほうも疲れてくるんですよね(苦笑)。

でも、和樹くんも愛加さんも惹きこむような朗読をしてくれるので、なんだかんだで二人の世界に引き戻されていくような感覚がありました。

やがてアンディは弁護士となり順調にキャリアを積んでいきますが、メリッサは相変わらず情緒不安定気味。その一番のストレスが子供たちに会えないことのようで、アンディにSOSめいた手紙を綴っています。が、それに対する反応は薄い。

そしてついに政治家にまでなってしまったアンディ。何この順調すぎる人生は!とツッコミ入れたくなるww。メリッサも落ち着きを取り戻し個展を開いたりするのですが、何度誘っても予定が合わないアンディはなかなか見に来てくれないわけで…。
若い頃はアンディのことを翻弄していたメリッサが、大人になって孤独になるに従ってどんどんアンディに依存するようになっていくのが何とも言えない(汗)。

自分の生活が安定し、結婚生活も上手くいっているアンディはやがてメリッサに対して「定型文」のコピー手紙を出すようになってしまう。これはメリッサにとってショックだったというのは分かる。
アンディにとってメリッサは「腐れ縁の幼馴染」みたいな感覚なのに対し、メリッサはアンディとの関係を必死に濃いものに変えようともがいてる感じ。でももう出会ってからこの時点で40年が経過していて…時の流れっていうのはなんとも残酷だなぁと。

どんどん生活レベルが開いていくアンディとメリッサでしたが、すれ違い続けていた二人がとうとう再会するときが訪れる。そして何度目かの再会の時、とうとう一線を越えた関係にまでなってしまった二人。
アンディは家庭を大切にしていたはずだけど、やっぱり弱ってるかつての愛した人を目の前にしたら…ってことになっちゃったのかもしれないなぁ。和樹くんの大人な読みっぷりがセクシーで、愛加さんがその優しさと大きさに頼り切った雰囲気になってて、この場面はすごく官能的だった気がする。

ところが、メリッサに気持ちを持っていかれながらも自分の生活も守りたいアンディは距離を置く提案をする。一度結ばれてしまったことで気持ちの高ぶりを抑えられないメリッサは混乱しますが、マスコミに関係をネタに追いかけられるようになってからさらに精神的に追い詰められてしまう。
しかし、アンディは選挙で勝利することを優先させたことでメリッサにかまっていられない。どちらも自分のことしか考えられない二人。あまり感情移入できるような関係ではないけれど、こういう生々しいところが人間臭いなとも思ったかも。

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そして、選挙に当選したアンディはメリッサと再び会って別れを切り出す。たとえ自分たちが結婚できたとしても上手く関係を築くことはできないと察していたアンディ。奥さんと別れて自分を選んでほしいと念じてきたメリッサにしてみたら衝撃以外のなにものでもない出来事なわけで…、手紙だけなら交流を続けられるっていうアンディの言葉はとても残酷です。

メリッサはどんどん精神を病んでいくのですが、愛加さんが涙をぬぐいながら必死に読み進めていて…見ていてものすごく胸が痛みました。
横で読んでいる和樹くんはそのことに気が付いていないことになっているので淡々と言葉を綴り彼女への呼びかけを読み上げてましたが、内心は心に嵐が起こっていたような気持になっていたんじゃないかなと…。

そしてあるとき「死」というワードがメリッサの手紙のなかに出てきたことで、胸騒ぎを覚えたアンディは何度も「会いたい」と手紙を送り、ついには彼女の了解を得ないままその計画を実行するとまで書いてしまった。

これが決定打になっちゃったわけで・・・・。

アンディはメリッサの母にあてた手紙を送りますが、その内容はメリッサへの手紙そのものだった。

今の奥さんたちへの気持ちはどうなの!?と思うけど、いまさら存在の大きさに気づいても遅いよ!って思うんだけど・・・

これまで比較的落ち着いた雰囲気だった和樹アンディが、感情を昂らせてこみあげる涙を止めることができず、時折声を詰まらせながらその手紙を必死に読んでいる姿を観たら・・・胸が苦しくなって、切なくて、私も一緒に泣いてました(涙)。
アンディにとってメリッサは、「腐れ縁の幼馴染」でも「恋人」でも「愛人」でもない、もっと深い…言葉にできないような・・・そんな、失ってはならない特別な存在だったのだなって思いました。

このアンディの独白の間、これまでずっと前を向いていたメリッサが初めて彼のほうに体を向けてその言葉に耳を傾けます。涙でうずくまる和樹アンディを見つめ、時折励ますように優しく言葉をかける愛加メリッサ…。

ラストシーンに近づくにつれ、二人に当たる照明はどんどん暗く落ちていく。

「ありがとう、アンディ」

暗闇の中でスッと温かな光が差し込んだかのようなメリッサの声が、さらに涙を誘いました。

カーテンコールでは晴れやかな表情の二人の姿があって、なんだか心底ほっとしてしまった。和樹くんが愛加さんをリードしてる雰囲気で、腕を差し出したり、ハグしたりしてたのが和んだな~。

この作品は約2時間ほとんど動きがないなかでの朗読劇なので、役者の力量みたいな部分が顕著に出る難しい演目だと思います。和樹くんも愛加さんもアンディとメリッサの世界観を十分に表現して伝えきってくれました。とてもすてきなカップルでした。

和樹くんの声はすごく朗読に向いてるって今回思いました。優しくて温かくて包み込まれるような心地よさがあった。アンディの姿はそのまま和樹くんに重なっていく感覚もすごくあった。
前日は大阪で『フランケンシュタイン』の千穐楽公演をやっていて、その翌日でのこの『ラヴ・レターズ』公演。とてもタイトなスケジュールだったと思うけど、この作品に対する熱い思いが伝わってくるような素敵な朗読を魅せてくれました。

500回公演にふさわしい、素敵なパフォーマンスでした。和樹くん、愛加さん、演出の藤田さん、ありがとうございました。きっと青井さんも天国から拍手を送っていると思います。

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後述

新型コロナウィルスの影響が拡大する時期だったこともあり、今回東京へ出るのは正直ちょっと怖い部分もありました。とりあえず、自己防衛だけはしっかりするようには心がけました。なるべく手すりには触れない、とか、人との距離は空けるようにする、とか。念入りな手洗いは当然です。

マスクは食事以外は装着。食事もできるだけ早めにホテルに入って夕飯はコンビニで購入したものをホテルで済ませたくらいです。
劇場内も8割以上がマスク姿だった。ほんとは観ている間だけでも外したいんだけど、ここ最近はどんなに涙が零れても外せない(汗)。今回もラストシーンでかなり涙が出たのでマスクに浸み込んでちょっと大変なことになりましたw。

そして2月下旬、ついに政府の要請でほぼすべての舞台公演が中止に追い込まれる事態となりました。私が行くはずだった作品も2つ(デスノート大阪と来日RENT)ほど中止となってしまった(残る1つも微妙な情勢 汗)。

ウィルス拡散を防ぐ対応としては致し方のない措置だと理解はしますが、やはり無念の気持ちはあります。でもカンパニーの皆さんのほうがもっと辛い思いを抱えているのかもしれない。生活苦になる役者さんも出てくるかもという悲痛な声もあって…胸が痛みます。

この時期の中止や延期はやむを得ないと思うけど、窮地に追い込まれてしまうかもしれない役者さんやスタッフさんたちを救済する道は確保してほしいです…。今回のような緊急事態になったとき、弱い立場に立たされてしまう人になんとか救いの手を…。
こういう時私なんかは本当に何もできないわけで…色々複雑な感情が渦巻いています。どうか再びまた同じ顔触れの皆さんと笑顔で再会できる日が訪れますように。

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